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FAP02:第02弾 "ターシャとマリューシャ"


皆様、こんにちわ~♪


なんか筆が乗り、昨日と出勤時間と昼休みで1本書き上げた暮灘です(^^;


というか仕事しろよ、自分(笑)




いや、それはともかく今回はいよいよ【突撃お嬢】のもう一方の主人……モガッ!?(;□;)!!


ターシャ

「にゃははは♪ この前書きはターシャがジャックしてやったぞ! ありがたく思え」


マリューシャ

「作者殿、申し訳ありません。これもお嬢様の願いを叶えるため。無礼は承知の上です」


モガーッモガーッ!(わかったから猿轡と亀甲縛りはやめいっ!)


ターシャ

「始めましてだな? 読者の諸君。我々が何者なのかは本編に譲るとして、我らが活躍を堪能するのだよ♪」


マリューシャ

「以後、お見知り置きくだされば幸いです」




プハッ!

な、なんかいきなり濃いのが出てきちゃったけど、こんな感じのエピソードですがお楽しみ頂ければ幸いですf^_^;








"キュバッ!"


雪風の彼方に見えた、幾条もの閃光……


それはM4A2のキューポラから身を乗り出していた"カロル・アストナージ"自由ポーランド軍中尉が何が起こったか知覚する前に彼の身体を車外へと弾き飛ばす強烈な衝撃となった……


僅かに遅れて聞こえる風音に混じった膓を揺らすような砲声……


そう、アストナージは……いや、アストナージ率いる亡命ポーランド政府の装甲偵察中隊は、ロシア人の完璧な"待ち伏せ砲撃(スネーク・ショット)"を受けたのだった。









**********




「やっぱり【F-34(76.2mm41.5口径長戦車砲)】は特に遠距離の貫通力にイマイチ欠けるわ。初弾で撃破できたのって、"ターシャ"が思うに命中した内の半分くらいじゃないかしら?」


そう"車長席"でのたまうは、野暮な国防色でなく、「どこのザフ○だよ?」と言いたくなるような、いかにも上質な【深紅のコート】を纏った"幼女"だった。


いや、慰安婦(もっとも"現地調達"を基本とする赤軍に慰安所を設ける風習はないが……)ではなく、純戦闘員として従軍してる以上は年齢的にリアル幼女かどうかは解らないが、身長は140cmにどう鯖読んでも……というか分厚い冬期戦用ブーツの踵の高さを入れても遥か届かないのだから、そう表現されても仕方ないだろう。


雪のような白い肌に肩で揃えた少し猫っ毛気味の淡い金色の髪、吸い込まれそうなアメジスト色の大きな瞳は、彼女の気高さを示すように強い光を宿している……


チャームポイントは首に巻いたフワフワの綿飴みたいなチンチラのマフラー。


首が短いというより、全体的に(つくり)がちんまいので、毛皮のマフラーのボリュームに顔が半分埋もれているような感じもまたキュートだ。




とにかく……

誠にその姿はまごう事なき"美幼女"!!


頭にチョコンと可愛く乗っけた赤いベレー帽が真っ赤なおリボンで、真っ赤なコートがピンクのフリフリのベビードールだった日には、間違いなく【そのスジの人々(というか無垢な縦スジが大好きな人々)】が血みどろの奪い合いを始めること請け合いだ。


特にベリヤやベリヤとかベリヤあたりが……




☆☆☆




比喩でなくて"フィギュア(お人形さん)のように可愛い"女の子……


そんな彼女がゴツいソビエト戦車に乗り込んで指揮を取ってるというのは何ともミスマッチだが、ギャップ萌え〜♪と喜べるほど、状況は緩んではいない。


ちなみにギャップ萌えというなら、背中に交差させて背負う【PPSh1941(通称"バラライカ")】短機関銃×2が更に拍車をかけているとだけ書いておこう。




☆☆☆




この【重武装機甲幼女(?)】の名は、"ターシャ"……というのは愛称で、潔いまでに真っ平らな胸のネームプレートを見る限り、本名は


【タチアナ・"バラライカ"・ロジェストヴェンスカヤ】


というらしい。

もしかすると日本海海戦の有名人と関係あるのかもしれないが、今のところは不明。

ただし、真鍮製のネームプレートの反対側のツルペタ……もとい。胸に飾られた階級章を見る限り階級は、

……

……

……

"特務"大尉?




いや、まさかそんな筈はないだろうと思うが、赤軍で階級詐称なんて命知らずはいるわけない。


だとすると……本物か?




「遠距離貫通力無いのは当たり前です、大尉殿。そもそも我が国の戦車は1km以遠の、ましてや移動目標に満足に当てられると思って作られてませんから」


そう答えたのは同じくらい白い肌だが、ターシャとは対照的な……取り立ててグラマーという訳ではないが、スラリとした長身に切れ長の涼しげな瞳を持つ、二十歳絡みの美女……

トレードマークは透き通るような長いストレートの銀髪だろうか?


いや、それはともかく驚くべきは彼女達がどうやら1km以遠からアストナージ達を撃ち、尚且つ少なくない数の命中弾を出したという事だ……


どうやら、史実通り【普通の42年式T-34戦車】……という訳ではないらしい。




「いかんなぁ〜。"マリューシャ"、いかんよ。ターシャ的にはそれは納得いかないのだよ」


"マリューシャ"と呼ばれた美女、ネームプレートを見る限り


【マトリューシュカ・キンスコフ】と言う名の同じく"特務"軍曹らしい彼女は、"砲手席"から愛らしい車長へ向き、


「とは言われましても……」


「実際にターシャ達は当てたじゃん?」


ニヤッと笑うターシャ。


「やっぱり、戦車砲はロングレンジから一方的に叩けてこその華。"ミーシャのおっちゃん"の言う通り、T-34も【ZiS-3(76.2mm51.6口径長砲:本来は野砲)】は……開発が間に合わなかったにしても、せめて最初から【F-22(76.2mm48.4口径長砲:本来は野砲)】とか積めば良かったのだよ。そうすれば……」


ターシャはウインクし、


「欧州平原で一方的にアウトレンジからなぶられる……なんて事態は避けられたんじゃないかな?」




そんな茶目っ気たっぷりなターシャに鼻血を吹きそうになるのを抑えながら、マリューシャは軽く嘆息して、


「ターシャ"お嬢様"。いつも言っておりますが、"赤いナポレオン"の異名を持つ我らが【沿海州(プリモーリェ)】の方面軍最高司令官をつかまえて愛称のみならず"おっちゃん"等と……」


「あーあー。車内雑音が酷くて聞こえなーい」


マリューシャは気を取り直すようにコホンと咳払いすると、


「それに【欧州革命作戦(バルバロッサ戦役のソ連名)】は、帝国主義的狂信者の魔の手より、ポーランドを防衛した我々の勝利です」


しれっと言い切るマリューシャだったが、


「マリューシャ、ポーランドから意気揚々とプロイセンやチェコに攻めたのに、何をどうやったらポーランド防衛戦になるのかにゃ?」


「……お嬢様」


ターシャは苦笑し、


「はいはい。頭の中は真っ赤で腹の中は真っ黒ななお偉いさんの前では、こんなこと言わないから。さて次弾同じく徹甲、装填終わった? ほい、アゴーン!(撃て!)」


「ダー」









**********




(きっとマスケット銃の一斉射で壊滅したオールド・ガーズのカンブロンヌ将軍はこんな気分だったんだろうな……)


車外に投げ出されたアストナージは仰向けに転がり、降り積もる雪を見ながら薄ぼんやりとした思考でそんな事を考えていた。


ただし、自分はカンブロンヌ将軍ほど運が良いか解らないが……

彼の遺したとされる【フランス語の五文字】を吐いた心境は大いに理解できた。


アストナージは頭を降り、ゆらゆらと頼り無げに立ち上がる。

だが……


"ガツンッ!!"


再び派手に火花を上げ、何かが彼の乗っていた"ディーゼル・シャーマン"に音より速いスピードで叩き付けられる。


幸い、誘爆こそしなかった。

していれば、アストナージは痛みを感じる前に細切れになってただろう。


「クソッタレ……!!」


だが、直感的に理解してしまう。

そう、自分の乗っていたシャーマンが自分を遺して乗員ごと"死んだ"事を……




☆☆☆




「ヤポンスキー(日本人)も中々にいい仕事するじゃない♪ さすがに曾祖父(ひいおじい)ちゃんを破っただけの事はあると言っておこう☆」


第2射も【ソ連戦車にあるまじき命中精度】を"中隊全体"で叩き出したターシャが上機嫌に告げると、


「確か照準器は、"日本光学機器"製でしたか?」


と聞くマリューシャに、


「そうなのだよん♪ 1軸砲安定装置(ガン・スタビライザー)は"大日精機"、砲駆動モーターは"馬渕電動"。ついでに通信機は"日本電子"製……【ゾルゲ機関】もやるもんだわ」


「民生品に混入して発注/マカオのダミー会社を仲介して輸入……戦後復興のドサクサに紛れての調達とは、悪くない手際です」


ターシャはフフンと笑い、


「人が食ってくにはお金がかかるのだよ。国が勝とうが負けようが、あるいは戦争だろうが平和だろうが。生きていくには必ずね?」




それにしてもはっきりと言えるのは、ターシャとマリューシャが座乗するこの【T-34】が、史実にあったそれと大幅に異なる性能……いや"内容"を保有しているのは確かだろう。


他にも可笑しな点はある。

この時代のソ連戦車は、車長が砲手を兼任することが普通だ。

しかし、【ターシャのT-34】は一昔前のプロイセン式(というか現状のワールド・スタンダード)な車長(ターシャ)砲手(マリューシャ)、二人以外は装填手/通信手/操縦手の五人編成のオーソドックスな物だった。




「元々ヤポンスキーは細かい仕事得意だし好きだしね〜。そのうち精密機器に関しちゃ、ゲルマンスキーはともかくアメリカンスキーは抜くんじゃないかしら?」


「まさか。相手は品質管理や規格統一を編み出した国ですよ?」


「どうだろうね〜? アイツら結構あれで大雑把だから。さて、マリューシャ……」


ターシャは実に楽しげに微笑み、


「そろそろフィナーレの開幕と参ろうではないか♪」


「ダー」


釣られるようにマリューシャは柔らかく微笑み、戦車にはありえない装備……【オープン・リール・デッキ】を操作する。

ターシャは満面の笑みで、


「Now It's Show Time!!」










**********




「な、なんだぁ!?」


アストナージは自分の耳を疑った。


そう、吹雪の音に混じり聴こえてきたのは、


「ロシア人の行軍歌……だと?」


そう、それは正しくは


【カチューシャ】


と呼ばれる、最近になり赤軍内で流行ってきたと言われる真新しいマーチであった。


しかし、その【カチューシャ】は他の部隊で歌われるあらゆるカチューシャに比べても"異質"だった……




カチューシャは村一番の器量良し


幸せになる為に生まれたような娘


やがてカチューシャは恋に落ちて結ばれる


夫は働くしか能がないような無口な男


でもカチューシャは幸せだった


でもカチューシャは幸せだった




☆☆☆




「にゃははは! いい感じにノってきたゾっと!」


ターシャは蹴り上げるようにキューポラのハッチを開け放ち身を乗り出すと、


「全車、突撃せよっ!! 完膚無きまで叩き潰すのだよっ!!」


自らも背中から2丁のPPSh短機関銃を抜き放ち、景気よく振り回し始める!




☆☆☆




「俺は夢でも見てるのか……?」


自分の戦車を潰され、為す術もないまま中隊が壊滅する様を呆然と見るしかできないアストナージ……


だが、彼が茫然自失してる最大の要因は、敵の戦闘力ではない。

状況のあまりの異常さだ。




美しい少女達の声で紡がれる行軍歌……


吹雪を凌駕する勢いで突撃してくる中隊規模の強力な敵戦車……


そして、キューポラから上半身を乗り出し、短機関銃を振るう愛らしい幼女……




ここがかつての祖国で今は敵地。

紛れもない戦場である筈なのだが、アストナージはそれを理解することをどこかで拒否していた。


(まるで出来の悪いコメディだ。さもなくば……)


「悪夢……だな」


半ば現実感の喪失した心境で、アストナージはそう自然に呟いていた。




☆☆☆




史実でもナチスドイツの急降下爆撃機【Ju87(スツーカ)】が、爆撃直前に"ジェリコのラッパ"と異名されるサイレンを掻き鳴らし、敵の恐怖心を煽り士気を崩壊させたという逸話が残っているが……


おそらくそれと同様の効果を狙った。

少なくともターシャは、音響機器と拡声器の戦車への詰め込みをそう上には説明するだろう。


そして【敵を撹乱する】という意味においては、現状においては明らかに成功していた。


そう、タチアナ・ロジェストヴェンスカヤはカロル・アストナージという装甲将校を混乱の深淵に叩き込み、彼の偵察中隊をノーダメージで壊滅させる事に成功したのだから……


悪夢はまだ終わらない。








次回へと続く






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


皆様、ターシャとマリューシャは如何だったでしょうか?


ああ、ついにコヤツラが出てきてしまった(汗)……というのが、作者の偽らざる本音だったりします(;^_^A


なんせ、【突撃お嬢】屈指の実力者、ある意味"もう一つの主人公チーム"ですから(笑)


実は今回のエピソードは伏線の塊、【ターシャのT-34】すら暫定的なそれだったりします。


というか謎だらけの彼女達に加え、史実ではこの時点で死んでる人とか出てきてるし(^_^;)


そもそもターシャ達が本当に赤軍かも怪しいですが、それも徐々に明らかになるって事で♪




それでは、また次回にて皆様にお会いできる事を祈りつつ(__)





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