あなたへの愛
読んでくれたら、幸いです
「部活終わったの?待ってたよ」
「うん……」
僕には付き合って三か月の彼女がいる。長い髪を結っており、白い肌に、綺麗な瞳。すっとした鼻。赤みが差した唇。おまけに頭までいい。僕って、幸せだ……と思っていたのも、一か月目までだった。
「携帯見せて?」
「うん。どうぞ」
彼女、野上美月さんは、すぐに嫉妬や束縛をしたがる。少しなら可愛い。僕も最初は可愛いと思っていた。だが、尋常じゃないのだ。携帯チェックは当たり前。メールも電話もほぼ毎日したがる。女子と話そうものなら、すぐに駆けつけてくる。最近では、男子とさえ話せなくなっている。……正直、ウンザリしている。
「ありがと。着信履歴、私以外いなかった。裕樹くん、これからも私以外の娘は見ないでね?」
ああ、やっぱり笑顔はきれいだ。いつも、こうだ。嫌だとか思っても、顔を見たら、許してしまう。
「うん、当たり前だよ。美月さん以外興味は無いよ」
僕もにっこり笑顔で答える。僕って、弱いんだなぁ……。
そんな僕が、自由になれる日は、火曜日と金曜日だ。塾があるらしい。そして今日は金曜日だ。美月さんは名残惜しそうに学校から離れていった。いつもああならいいのに……。そう心中で思いながら、サッカーの練習に集中した。
「ふぅ……」
部員もすっかりいなくなり、そろそろ帰ろうかと言うとき、
「裕樹?まだ残ってんだ?」
「あ、阪井……」
阪井はサッカー部のマネージャーだ。美月さんと付き合う前は、結構話したりしたが、束縛をされるので、最近話してなかった。
「ねぇ、裕樹の彼女……きれいだよね」
「美月さん?うん、きれいだよ」
阪井は少しだけため息をつき、意を決したように、話しかけてきた。
「裕樹、私二番手でもいい。だから……付き合ってくれない?」
突然の告白。二番手?どうしたらいいんだろうか……。
「やっぱり、ダメかなぁ……?」
「いや、いいよ。付き合っても」
口が頭より先に動いた。
「え、ホントに!?」
「うん。だけど、少ししか会えないぞ」
「いいよ、そんなの!」
阪井は嬉しそうに笑った。そう最初はほんの出来心だった。まさか、あんなことになるとは今の僕には想像も出来なかった。
それからは美月さんの塾がある日は阪井と過ごした。阪井は普通の子だし、サッカーのことをよく知っている。今は美月さんより阪井の方が好きかもしれない。
だが、気がかりなことが一つ。もう学校中に僕と、阪井の噂が広まっているのだ。それに、ここ最近美月さんが学校へ来ていないのだ。すごく心配で、今日にもお見舞いに行く予定なのだ。阪井に相談したら、「行った方がいい」と言った。勝手な話だが、僕はもう美月さんのことは好きじゃないらしい。だから、今日行ってその話をするのだ。怒られても構わない。僕は決心を固め、前に教えてもらった美月さんの家に向かった。
美月さんの家は大きく、いかにも令嬢って感じだ。「家に普段は自分しかいてない」って言ってたから、出てくるはずだ。
ピンポーン。
少しして、ドアが開く。目の前には、前より少し痩せたと思われる美月さんがいた。
「裕樹くん……?」
「美月さん、久しぶり。ちょっと話があるんだけど……」
「うん、分かったわ。入ってちょうだい」
部屋はさらに美しく、僕は目を瞠るばかりだった。
「あの、美月さん――」
「ちょっと待っててね」
そういうと、部屋から出て行ってしまった。はぁ……チャンスを取り逃がしてしまった。まぁ、仕方ない。部屋に入ってくれば言えばいいだけの話だ。
あっ、入ってきた――、と思った瞬間、
「えっ」
言葉を失った。手にはカッターが握られていた。
「あの、美月さん」
「私以外、興味がないんじゃなかったの?好きってことも嘘?」
僕に近づき、チ、チ、チ、チ、とカッターの刃を出してくる。
「ちょ、ちょっと、美月さん!?」
「もういいわ。今度こそ、私以外の女に目をふれさせないわ」
その瞬間、僕の目の前にカッターが見え、僕の意識はそこで無くなった。
「おはよう、裕樹くん」
ベッドには、裕樹くんが眠っている。もう永遠に目を覚まさないけどね。血だらけで、傷だらけで、すっごい素敵。
「裕樹くんのせいだからね?ほかの子に気を許してなかったら、助かったのかもしれないのに……」
クスクス笑う、美月の寝室には、幾人もの男の死体があった。
「さて、次はどうしようかな……」
美月はもうとっくの昔に死んでいて、生きている頃出来なかった恋愛をするために生き返ってきたのだ。そう、殺人鬼となって……。
僕には付き合って三か月目の彼女がいます。だけど、最近彼女が……。
どうでしたか?あんまり自信ないですが……、気に入っていただければ嬉しいです