トマトガール
どーでもいいけどさ。
高いなぁ、
私はフェンスを乗り越え、下を見下ろしながら呟いた。
落ちたら、絶対死ぬだろう。
私は高い所は苦手なんだ。
あれ?じゃあ、なんでこんな所に居るのかな?
分からないけど、多分私が一番最後だ。
だって、みんなもう飛び降りたから。
先生も、センパイも、嫌いなあいつも、彼氏も、あの子も。
「先に行くね」
「うん」
なんで、あの時止めなかったのかな。
嗚呼、一人は寂しいのに。
別に、良いのだけれど。
私はほんの少し前まで、飛び降り無ければいけないという熱い使命感に駆られていたような気がする。
でも、今ではこんなに冷めてしまった。
ただ、血の赤で地面を彩るだけで、下らなく思えた。
何の気なしに、ポケットに手を突っ込むと、トマトが数個入っていた。
手を振り上げて、ぽい。
ばらばら、あちこちに散らばりながら落ちていく。
「ばーか」
私は何かに向けて、言う。
「ばーか、ばーか。お前らなんてみんなみんなばかやろうだ」
その時、私は血が滲む程強く握っていたフェンスから手を離した。勿論落下。
「ばーか」
私は真っ逆様に、迷う事無く落ちていく。
トマトケチャップ、弾けて綺麗。
まー、別にどうでもいいけど。