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蛇の女
「ミチルさんは私を助けてくれたんです」
蛇の刺青が入った肩を抱いて、 彼女は言った。
「私はとある娼婦の娘で、産まれる前から売られることが決まっていました。物心ついた時には鎖を付けられていて、器量が良ければ幸せに、悪ければ殺されると、教え込まれました。
実際に、私の周りにいた子供は製薬会社や、兵器工場なんかに買われて、何人か居なくなりました」
だから、
「だから、運が良かったのだと、そう言えばそれだけの事なんです。
でも、ミチルさんは私を選んだ
あの日、あのヒトと出会った日、私の目を見つめて、あのヒトは」
綺麗だね、と。
そうか、そうだったのか。
俺は合点した。
ただ、それだけの事だったのだ。
あいつが特別だったわけではない。
特別だったのは、その出会い。
俺はその事に気づくと、静かに目を閉じて、銀のナイフが首筋を引き裂くのを待った。




