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気味の悪い男
ああ、酷い目にあった、
と君は呟いた。
彼女の葬式の帰りだった。
悲しくないのかい、
も問うと、彼は
悲しいものか、
僕が悲しいのは彼女が死んだ事で、
彼女の葬式が悲しいわけじゃあないのだから、
と言った。
僕は、
へぇ、そんなものか、
と返した。
空を見上げると、雲一つなく、不自然なぐらいに青かった。
もしも
もしも僕が、
彼女を殺したと言ったら、
彼は、どんな顔するだろうか。
実は、僕、
そこまで口に出してから
彼の顔を覗き込むと、
いつも通り、何でもないような顔をしていた。




