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朝日
判子を押した。
不可という赤い文字が紙の上に大きく、
判子を押した。
次から次へと、
不可不可不可。
おおよそ僕の頭の中は空っぽだった。
決して選別を行うような事はなかった。中身だって毛ほども理解していないのだ。
僕はこの狭い部屋で、機械のような作業をして、それで、何も変わることのない平坦な日常を、過ごしていたのだ。
そしてこれからも過ごしていくのだろう。
それでも、
それでも僕は、雌鳥が鳴いて、朝日が登ったらならば、窓から差し込む光の美しさに惚れ惚れとするのだ。
僕はそれを知っている。




