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生暖かい魂

シャム双生児の姉妹がテーブルを挟んだ向こう側に座っている。

彼女達は真っ白な美しい魂を持っていて、何よりも高潔という言葉に相応しい。

二人の類似は外見だけではなく、精神性においても当てはまっていた。いたのに。

「なんて事は無いのです。月に一度開く魂の三十六個の扉における、二十四番目です。今はこうして居たい」

僕が愚にも付かぬような事を、唸り宣うと、彼女達は天使のような、僕の脳みそを蕩けさせる甘い囀りを零す。

「まあ、貴方ったら。時間は限られているのよ。逃してはダメ。地獄の扉は閉じてしまう」

ダメ、そう、駄目だった。

恐ろしいまでの完全な左右対称を前にして未だに、 僕が好きな人は片側だけだった。右の天使は首を傾げ、栗鼠のごとく円い眼で、至って僕は駄目なのだ。

地獄に堕ちるのも頷ける次第である。

何も変わりやしないのに。

「是れを持って、先で何も知らない子供を一人騙すの」

「解りました。でも、きっと先でまた」

「きっと、会えますから。さあ、行きなさい」

僕は銀のナイフを持って立ち上がった。





銀色の切先を指先で弄ぶ。

暗闇の荒野、自分の周りさえ、不確かな程の光量で、前に進んでいるのか、来た道を戻っているのか、誰にだって分かりやしない。

先に、黒い垣根が有って、向こうに少年が居る。

「告白します」

掠れた声で、しかし辺りに響き渡る透明な声だった。

「僕は選んでしまいました。

誰かを幸福にする事は、誰かを不幸にする事でした。

誰かを拾い上げる事は、誰かを放り捨てる事でした。」

泣いてる様だったし、笑っている様でもあった。

表情を見ようとしたが、彼の伏せた顔は影がかかっていた。

「僕は、これで、良かったのでしょうか。

誰かを好きになる代わり、誰かを嫌いになって、それで、良かったのでしょうか」

僕は今まで誰にも見せたことの無い優しさで、囁いた。

「駄目なもんか。きっと、大丈夫さ。君は、選らんだって良いんだ。大丈夫なんだ」

それで、彼が僕のナイフを受け取ってからやっと、




二人の相違と、僕らの類似を知りました。

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