求めよ
「君の事が好きだから、一つ願い事を叶えてあげよう」
私は一つ二つ、目の前の色白な少年について考えてみたが、どうして彼が現れたのか、経緯がまるで解らないので、止めた。
代わりに、願いが有るか、考えてみる事にした。
「何が良い?僕は神様だから、大抵の願いは叶えてあげられるよ。富?名誉?素敵な王子様?」
「王子様を望んだとして、それであなたは良いの?」
「構わないよ、僕は神様だから、直ぐ用意出来る」
「そうじゃなくて、いや、それもそうなんだけど」
私は彼の眼から、彼の思惑を探ることが出来るなら、と目線を合わせたが、彼が微笑むと、直ぐに視線を下ろした。
「それは、違って。あなたは私の事、好きなんでしょ」
「そうだよ、大好きだ」
そんな事、真っ直ぐ言われたら普通恥ずかしいのだけれど、彼に対しては何故だか恐れ多い、という思いばかりで。
「だけどね、僕には、独占欲なんて無いんだ。只、君が幸せになってくれたら、そう、思っていてね」
「そう、なの」
私は本当に、困惑してしまって、大変な事が幾つも続いていたから、手で、頭を。
「それで、どうなんだい?王子様を用意すれば良いのかな」
「いや、それは違うの」
「じゃあ、改めて、聞くよ。何が欲しい?」
私は一度、瞼を閉じて、浮かぶ言葉を。
「力、を」
「力か。力で良いんだね」
「そう、力を、頂戴」
私がそう言って、瞼を開けると、彼の痕跡なんて何処にも無くて、ただ、手元には力が有った。
それ以来私は神様に成った。




