どうか知らん
と、言った。
扇風機の羽は壊れ、異様な金属音を鳴らしていた。そして、異様と言うなら、12月にもなって、未だ扇風機を回しているという現実もまた、おかしいのである。
彼女はTシャツ、半ズボンといった姿で、胡座をかいていた。明らかにサイズが間違っておりブカブカだ。それもそのはず、その服は僕の物だった。
白く薄い生地がやたら眩しくて、けれど四畳半の部屋であるから、眼を背ける事も出来やしない。
「や、兄貴殿、今日も僕は人間やらせていただいてます」
彼女が言葉も発すると、僕もまた応えなくてはならない、と思ってしまう。
「はい、それは素晴らしいのでは」
「そうですね。夏も作ってます。そろそろですか」
「はい、そろそろ」
僕はキッチンに向かう。
肉を取る。
切る、焼く。
炊けた白米の上に乗せる。
「丼です」
戻ってくると、彼女は床にへばり付き、油性マジックペンで夏夏夏夏夏夏夏夏―――。
と、文字。数多く。
よく見ると、カオスではなく、相似形のフラクタルを形作っている。
「毎日、こんな事ばかりですか」
彼女は手を止め、振り返る。
「ええ」
「不健康ですね」
「兄貴殿に言われたくありません」
「分かりますか」
「分かってしまいます」
僕は彼女の丼を、夏達の上に置いた。
「む、何のお肉ですか」
「さあ、分かりません貰いました」
「はし、はどこですか?」
「有りません。昨日折れたのが最後です」
「困りました」
「手で食べなさい」
二人して手で肉を掴む、夕。
彼女は、ぼろぼろと米を夏の上へ落とす。
「それで、兄貴殿は、漫画、まだ描いていますか」
「最近。最近、描いて、いません」
「そうですか。ところで、肉は生焼けではありませんか」
彼女が摘んだ肉を見ようと近付くと、確かに赤いように見える。僕は眼を背ける。
「棄てても良いです」
皿を出す。
「兄貴殿」
彼女が身体を起こすと、サイズの合わないTシャツは肩からずり落ちていく。
用意した皿ではなく、夏の上、彼女は肉を落とす。ぼとり。
「兄貴殿?」
「はい」
彼女は肌けたまま、僕に迫る。どうしても、その白く眩しい身体が、見えてしまう。
「兄貴殿、駄目ですか」
彼女は僕の背中に腕を這わせ、抱きつき、押し倒す。
「僕の事、好きに、成れませんか?」
そして、僕は




