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「今、此処、私」は思った。

空気が渇いていた。

唇はひび割れていたし、左腕の傷はドロドロと化膿していた。

カメラをしばしば持たされていたが、それは未来の話だ。

今はまだカメラに触れていなかった。いや、もしかしたら持たされた後だったか、記憶が曖昧で判然としない。今については、他の時から切り離されたかのように、頭にこびり付いている。膿のように。

そう言えば、膿という物は何から作られているのか。血液か、皮膚か、はたまた別の何か、呪いだとか、祝いだとか、感情だとか、そういう、超自然的な物か。

原材料がどのような物であったとしても、私は驚かないだろう。膿を生むに相応しい程、私の周りは何一つ残らず腐り果てている、ような気がする。

そうだ。気がする。気がするだけだ。万物、悉く、その通りである。腐っている物など無い。腐っていると思う物が有るだけだ。思われる物でもない、思う物だ。

今もまた然り、今は無い、今だと思う物が有るだけだ。だから、今であった、と私は語る。

兎に角、くしゃみ、いや、今の話だったか。

私は話していた。

今、語っているが、この通りでは無かった。今は、話していた。

友人と呼ぶべきか否か、甚だ疑問だが、話していた。

曰わく、求愛について。

私は、これは「セックスしても良いですか?」だと説くが、彼は「好きです」だと説く。

突き詰めてみれば同じだし、私として思っている事とはかなり差異が有ったが、彼に併せてみたら、妙な具合に成ってしまった。

と、取り敢えず彼の所為にしてみたが、より上手いやり方が有ったのでは、と思う。

彼はそれなりに、私を信用しているようだし、私も同じ程度に、彼を信用している、それなら、もう少し真面目に成れば良いのだが、私の愛は質量計算からは導き出せない物であるから。

まあ、いいや、と呟いた。

太陽光が照って、けれど私達に向かわなかった。

全て、今の事です。


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