セイレーンの歌声
はるか ひろい うみ のなか
ひびく ことば おと きかせ
あたま りずむ すい おなじだから
揺れる波、踊る夢、心は弾み
せわしなく、零す音、君へ運ぶ
「たすけて
とおく たかい そら をこえ
つつむ せかい こえ とどき
からだ こどう もえ くすりだから
揺れる風、踊る現、体は弾む
せわしなく、零す声、僕は失う
「ごめんね
セイレーンの歌声
セイレーンの歌声
悲鳴にも似た歌声
歌声は響き渡る
「さよなら
さ
ささ
さ さ さ
*彼女が私に呉れたペンダントは貝殻で出来ていて、自然物とはとても思えない程、魅惑的な輝きを放っていた。それだけではない。驚くべき事に、其れは彼女の歌声と共振するのだ。音が高く成れば赤く光り、低く成れば青く光る。私の元、1日たりとも光を絶やす事は無かった。其の光が、今、消えた。つまり、これは、彼女の唄が止まった事を意味し、それは、セイレーンである彼女の死を意味する。セイレーンの心臓の鼓動は唄により、動いているからだ。だからと言えども、どうした事だと言うのか。私と彼女の間に何の繋がりがあったと言うのか。確かに私は彼女からペンダントを貰った。しかし、それは決して深い繋がりを証明する事は無い。ましてや、愛など。そのように、判断した私は何故だか流れている涙を拭い、何時も通りの生活に戻った。




