その時、愛は在ったか?
思い返せば、彼と会ってから四年になる。それだけ、長い付き合いであるから、彼について間違える事は少なくなった。しかし、間違える事は無くとも、そもそも次を読めない事はまだある。ここまで、僕が読めない(と、僕自身が思う)というのも、珍しいのではないだろうか。
最初に会った時、彼は髪が長く、ゆるりとした、いかにも根暗な印象だった。だから、僕は裏切って捨てた、もう一人の彼の代わりに丁度良いと考えた。外道である。
あの頃の僕はそんな程度だったのに、今では心いっぱいに彼を詰めているのだから、凄まじい変貌ぶりだ。
最初は彼が発する言の葉一つ一つがとても小さくて、まるで僕は聞き取れなかった。
今では大分聞き取れる、これは僕の違いなのか。彼の違いなのか。
勘違いしないで欲しいのは、僕が彼に抱いている愛は性的な物ではなく、僕が敬って止まない彼への信仰に近い、という事だ。いや、もしかすると、違うのか、やはり、そういった物なのか。兎も角、けだし、あれはしゃぼんのような、中身の無い、空虚な、一方通行の、事故的な、云々唸っても、僕には分からない。
そもそも、それはいつ発生したのか、あの時は在ったか。
僕に分かるのは、今の僕の中は彼でいっぱいであるという事だけである。




