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りはびりてーしょん

身体の節々が軋む。気力も削がれてしまって、動けやしない。

重い瞼が開き、光が入り込む。涙が零れる。肺が空気で満ちる。肋骨が軋む。

必死になって、立ち上がり、覚束無い足取りで歩き始めれば、右足が左足に引っ掛かり躓く。

だめだ。そうじゃない。慎重になれ。みぎあし、ひだりあし、交互に、そうだ。

窓を開き、空を見た。何も感じない。美しくない。

ゴミ箱を開けた。美しくない。

食事をした。もそもそと味気ないそれを咀嚼する。美味しくない。

皿を落とした。割れた。美しくない。

怒られても楽しくはなかった。

僕はそんな味気無い生き方をしてきたのだろうか、そんな事で良いのか。





息苦しい制服を着て、顔を下げ、歩く。

電車に乗らなければ、ならない。

そこには友人が居て、きっとそのまま学校に着いて、こんなにつまらないのにつまらない演技をして、さぞかし面白いかのようにみせて、それで一日が終わって帰って、寝て、それで明日が来て……。

つまらない。

楽しくない。

こんな物か。全部塵芥だ。

そんなつまらない事を考えていると、電車が来る。ドアが開く。当たり前でつまらない。

いつもの場所に友達がいる。彼はいつも優先席にいる。どんなに他の席が空いていても何故か優先席に座る。僕は気が小さくて優先席に座る事が出来ないので、彼の正面に立つ。優先の意味を履き違えているのではないか。そんな事を言った。つまらないのに笑った。そんなつまらない記憶を思い出した。今はそんな事すら言えない。気力がない。つまらない。つまらなすぎて行を変える事もままならない。それどころかこの文章すらつまらなく感じる。つまらないつまらないと連呼してそれで何らかの心情描写効果があるというのだろうか。ああ、この口調もめんどくせえ、なんだ、気取りやがって僕はこういうのが一番嫌いなんだ。自己中心的な、投げやりなこんなやり方がつまらない。つまらないと思う事がつまらない。何も考えたくない。辛い苦しい辛いもうだめだ

ううんと唸って頭を振る、夏目金之助の事を考えろ。牛になれ、牛になれ、文士を押すのでは無く人間を押せ。

立ち直る。

僕は自慰が大好きだ!

だから全く問題ないつまらないだるいひもじいひだるい。

立ち直れ。

芥川さんはあんなに痩せてしまった。死は甘美だが自殺は駄目だ。馬には成らない。痩せたソクラテスなんかクソ食らえ、太った豚になろう、狼は死ね。

ともかく僕はリハビリをしている。本当にリハビリをしている。

友人は眠りこけている。いつもそうだ。僕が来る事など気にも留めていないのだ。気付いたとしても此方が話かけなければ、言葉を発する事もない。決して拒絶もしない。それのなんと心地よい事か。

この彼の正面に立つという事が、彼が許しているという事が、どれだけ僕の支えになっている事か。

しかし、リハビリをしなくてはならない。

会話を試みる。

「君、起きているか」

「うん」

「今日はそのなんだ、寒いな」

「うん」

「ああ、君はいつにも増して眠そうだな。どうしたね」

「テレビを見ていたがら」

「そうか」

僕は満足した。





なんだか空は幾分明るくなったし、彼の淡白な受け答えが嬉しくてたまらなかったので、もういいや。


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