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今でも、まだ、私の脳に焼き付いて離れないのだ。
君は、微かに笑う。
この世界の向こう側、真っ白い病院の壁。
それを君は雪山だと言う。
僕は、それを否定できない。
違うよ、と言う事が出来ない。
君のその笑顔で、僕は。
君はその笑顔で、僕を。
だから僕は、そうだね、と。
彼女の見る景色を信じる事にした。
だって、君には見えているのだろ。
僕には見えないけれど、
君には見えているのだろ。
なら、僕はそれを信じよう。
君の心臓が、
止まった。
「誕生日おめでとう」
僕は鋏でそれをズタズタに刻んだ。
僕は私になった。
2008年6月15日、4時31分。
君は死んだ。