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09)モス

ギシリ。

軋みを上げて、男が乗ったベットが揺れたわ。


…いきなり何かって?


あらヤだ、忘れたの?貴方はリアンの逃避代にと、盗賊ギルドに売られたんじゃない。

おめでとうノエル。初仕事よぉ〜♪


「新顔の相手は俺がすることになってンだ」


彼はモスと名乗ったわ。ギルドの長、つまりマフィアのボスなのよv


「い、いやっ…!」


まぁ、当然貴方は逃げ出すわね。

でも良く見て。

細く鋭い瞳と、キリッと引き締まったあご。

鍛えられた体のなかなか良いオジサマじゃなぁい?


「範囲外!王子様の方がマシっ」


確かに、若々しいけれどモスは四十代前半くらいに見えるわね。


「アンタ、王子の婚約者らしいね。キズ物にして返したらどんな顔をするか見物だゼ」


逃げる貴方を、モスは慌てる風でもなく追いかけていくわ。


「言っとくが、俺はかなり上手いゼェ?」


まぁ、下品だこと。誰も聞いてないわよ。

…っと。逃げ続けた貴方は遂に、背を壁に当てて逃げ場を失ったわ。


さて、どうするのかしらね?


モスは貴方の頬に手を伸ばしたわ。キスでもするつもりかしらね、ワクワク♪

と、思っていたら、貴方の目の前でモスは手のひらを開いたわ。


「新人には、必ず運だめしのチャンスをくれてやる事になってンだ」


モスの長い指先には金色の美しいコインがあるわ。花嫁の姿と、ブーケのイラスト。

なかなか巧みな逸品ね。


「表が出ればアンタの勝ちだ。このまま手をつけずに潔癖のまま外に出してやる」


「本当に!?」


「だかな、裏が出たら晴れてギルドの一員。一生犬のようにこき使ってやる」


「…それはイヤ」


「洗礼を受ける受けないは自由に決めると良い。受けなければ、代金分の稼ぎをして貰うことになる」


あらあら、大変な選択を迫られてるわね。

ノエルちゃんはどうするの?


(…ユーリ、一握りの幸運を)


あらあら!いいの?アタシに力を乞うのよ?分かってる?


(良いから力を貸しなさいってば)


そう。分かったわん。


「…その洗礼受けます」


「そうかい。いくぜ!」


モスは楽しげにコインを空中に投げたわ。

アタシは貴方の望み通りに、コインにちょっと細工をしたの。

細工されたコインはモスの手に落ちる寸前でくるりと一回転したわ。

るりと一回転したわ。

そろりとモスは手のひらを持ち上げる。

果たしてコインは―――。


「表だ。大した幸運の持ち主だなアンタ」


良かったわねぇ。

でも、ホッとするには少し早いわ。

モスは貴方に手を伸ばしたわ。

コインの代わりに、眠り薬たっぷりのハンカチよ。


「ま、せいぜいあの森から無事に帰れることを祈るんだな」


謎めいた言葉を残し、口にハンカチを押しつけられた貴方は、あっさりと闇の中へと意識を沈めていくわ。


さてさて、貴方はこれから何処に連れてかれるのかしらね?



それに、アタシに借りを作ったことを忘れては駄目よ?

一握りの幸運の代償に、貴方は両手いっぱいの不幸を手に入れたのだから。

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