08)リアン(下)
牢屋の向こうから男が手を伸ばすわ。
惹かれるように、貴方も手を取ってしまったの。
瞬間、無理矢理に引き寄せられ、首に腕を回わされて、気づいた時には貴方は羽交い締めにされていたわ。
「な、何するのっ」
…まぁ、アタシはこうなるんじゃないかって思ってたわ。
乗せられて、ホイホイ手の届く所に行った貴方が悪いのよぅ?
「悪魔!」
だから、アタシは悪魔なのよv
「俺はリアンだ。しばらく俺につき合ってもらうぜ!」
「…!邪術師リアンっ」
あらまぁ。あのリアンだったのねぇ。どうりで、心地いい臭いがするわけよ。
リアンて前に強力な悪魔を呼び出して一国を滅ぼしかけたのよね。
その悪魔ってあんまり術者の言うことを聞かない奴なのよ。
でも、リアンさ悔しいくらい呪文も魔法陣にミスがないのよ。
完ぺきすぎて、ノエルみたいに憑いて不幸にしてやることも出来ないの。
しかも、悪魔使いの荒い奴で、呼び出されたくない魔法使いダントツでNO.1よ。
だから、アタシは鞄の中深くに隠れさせてもらうわね〜。
「離して!」
「嫌だね。どうやら素人に毛の生えた程度の魔法使いみたいだが、魔力だけは相当持ってるだろ?バカな悪魔が餌(魔力)に釣られそうだな」
…ほっといて。
「その魔力、利用させてもらう!」
貴方の首に片手を回したまま、リアンは呪文を唱えたわ。
「死の雨。漆黒の雲。我に力を…!」
リアンの呪文で発生した黒い霧が、酸の雨を降らせたわ。
おかげで、鉄格子が見る見る溶けていくの。
やがて人の通れるスペースが空いたわ。
「もういいでしょ!?」
「まだ本調子ではないんでね」
魔法使いのくせに力はあるのね。
貴方は、労から出たリアンにお姫様抱っこされたわ。
さすが男の子よねぇ、軽々持ち上げたんだもの。
「しばらく同行してもらう」
「嘘つきぃ〜!!」
「魔法使いなんてのは、一種の詐欺師みたいなもんだろ?悪魔と同じもうなものだ」
あらあら。でも、リアンは嘘をついてはいないと思うわよ?
外に連れ出す=貴方に帰り道を案内する。
脱獄する=人にアタシ達の秘密を話してる暇はない。
ほらね?
「ね?じゃなぁ〜いっ」
ふふふ。面白くなってきたわねぇ。




