04)グレイッシュ(下)
さて、この本の山の中に貴方とグレイッシュだけが残されたわ。
「座れ」
小さな体で、グレイッシュは偉そうに命令を下したわ。
フォイーユに言われたこともあり、貴方は仕方なく従いグレイッシュの前の席に着いたの。
「まず、読み書きはどのくらい出来る?」
取り出されたのは、小さなお子様用の文字盤。すべての基本的な文字が並んでるやつよ。
「その位、ふつうに読めるわ」
貴方は悪魔を呼び出せるほどの魔術師だもの、読み書きは出来て当然よね。
結局は失敗してアタシに憑かれてるけどねぇ♪
「敬語を使えといってるだろう、ノエル」
「…出来ます」
「よろしい。では、数学や歴史は?」
今度はプリントが出されたわ。
はじめは幼稚だけれど、後半になるとレベルが高くなっていく手の込んだものだわね。
しかも手作りぽいわよ?
グレイッシュって子、口先だけじゃないみたい。
貴方は出されたプリントをさらさらと書き上げたわ。
なんたって魔術師だものね、計算や歴史を知らない訳ないのよ。
「ふむ」
入門試験みたいなのを採点しながらグレイッシュは満足そうに頷いたわ。
「満点だ。庶民の割には優秀じゃないか」
何を思ったか、グレイッシュはぴょんと椅子を飛び降りたわ。
あらあら、背を誤魔化すために、わざわざ足の長い椅子に座ってたのね。微笑ましいわ〜。
グレイッシュは貴方の隣に立つと頭を下げるよう、仕草で催促したわよ。
不思議そうに貴方は頭を下げるわ。
「頭のいい生徒は好きたぞ」
なんて言いながら、貴方の髪を撫でたわ。
背の足りない分は、精一杯かかとを上げたわね。
「か、可愛いかも…」
「午前はこの位にしておこう。思ったよりも出来るしな。午後からは、ダンスの稽古だ。…昼食まで時間があるな…どうだ?城を案内してやらない事もない」
あらまぁ。素直じゃないわね。どうやらグレイッシュは貴方を気に入ってくれたみたいよ。
小さな手を差し出してエスコートするわ。
やることは一人前よ ね。
「きゅん。どうしよう、可愛すぎ…グレイッシュ君、お姉さんと良いことしない?」
…小さい子相手にときめくのはちょっと犯罪ぽいわよ?