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健全な男と女

作者: 柳原史弥

 目を覚ますと、俺の布団で真利子(まりこ)が眠っていた。

 時計を見ると夜中の二時。一緒に飲んでいたはずの幸雄(ゆきお)とさやかが見当たらない。

(仕事で朝早いって言ってたし、帰ったか?)

 玄関まで行ってみると靴がない。やはり二人は帰ってしまったようだ。

 部屋に戻って、床に腰掛けたところで俺は重大なことに気がついた。

(真利子と二人っきりだと!)

 おいおい、待ってくれ。真利子と二人っきり? 意識してしまうじゃないか! 鼓動がだんだんと早くなっていき、眠気なぞ吹き飛んでしまった。

 俺はゆっくりと視線を真利子の方へと持っていった。横向きになって静かな寝息を立てて眠っている。俺の目をまず最初に釘付けにしたのは、黒のタイトスカートから伸びる綺麗な足、とりわけふとももだ。ほどよい肉付きに肌触りの良さを創造させる肌のきめ細かさ。このふとももを見て顔を挟んでみたいと思うのは俺だけではないはずだ。

 さて、視線を少し左にそらすとお尻が目に飛び込んでくる。タイトスカートがぴっちりと張り付いて流麗なラインが(あらわ)となっている。そのまま視線を上にあげていくと、腰のラインがこれまた素晴らしく、白黒ストライプのシャツが実に良く映えている。腕と腕に挟まれて胸が強調され(真利子はEカップという立派なお胸さんを持っているのだ)、肩越しに見える顔は酒のためか少し上気しており、頬にかかる黒髪が艶かしい。

 いけない、と思いつつも俺の手は真利子のふとももに伸びた。俺はふとももが大好きなのだ。ついでに告白すると俺は真利子のことが大好きだ。大学時代から続く俺、幸雄、さやか、真利子の仲良し四人組の関係を壊したくなくて一度も表にだしたことの無いこの感情……それが今爆発しようとしている。

(はっ! お、俺は何をしているんだ?)

 眠っている女性によからぬことをしようとは男のすることではない。それに関係を壊してしまって良いのか? 大学4年間で築き上げてきた大事な居場所じゃないのか? 僅か数秒の間に思考が奔流となって駆け巡る。手は後数ミリでふとももに触れようとしている。

(ダメだ!)

 強靭な理性で俺は手を引っ込めた。

 だが、その時!

「ん、う~ん」

 と妙に色っぽい声を発して真利子が身動(みじろ)ぎした。両のふとももがくねくねと動き、俺はまるで催眠術にでもかけられたようにふとももへと吸い寄せられた。気づけば、俺の顔は鼻息がかかるほどの距離までふとももへと接近していた。というか興奮していた俺の鼻息は荒く、ふとももへ刺激を与えてしまった。

「あん」

「うわあ!」

 思わず大声を上げてしまい、慌てて口を押さえる。

 心臓が止まってしまうかと思ったが、真利子が起きる気配はなく俺は胸を撫で下ろした。

(ああ! 真利子! 真利子!)

 やばい。やばいぞ、俺。だんだんと理性がきかなくなってきた。悪いことにここ一週間ほど仕事が忙しく溜まっているのだ。もう一人の俺が「いつでもいけるぜ、兄弟」と囁いてくる。「いやいや、犯罪だって」と辛うじて残っている理性がたしなめる。でも気づけば、ぶつぶつとまるで呪文のように真利子の名をつぶやく俺がいた。

「だああ! 真利子、好きだぁぁぁ!」

 人間の理性とは儚いものである。俺は真利子の上に覆いかぶさろうとした。

「ストップ!」

「へ?」

 急に真利子が起きだし、悪戯な笑みを浮かべながら「め! だぞ」と言った。

 可愛い……じゃなくてどういうことだ?

「途中から起きてたんだよ、あたし」

「え? あ! うう! うううう!」

 俺は赤面し、硬直した。あの理性と欲望の戦いを真利子に見られた? というか思いっきり「好きだぁぁぁ!」と叫んでしまった。4年間築きあげてきた俺の大事な居場所が消えてなくなってしまう! ああ! 消えてなくなってしまいたい!

 そんな俺の心理を知ってか知らずか、相変わらずの悪戯な笑みを浮かべながら真利子が言った。

「ふふ、あたしのこと好きなんだあ?」

「そ、その……」

「あたしも、だよ」

 

 その後、健全な男と女である俺と真利子が、夜明けのコーヒを飲んだということは言うまでもない。


久しぶりの投稿です。

小説、というよりは自分の欲望を吐露しているだけのような気もします……が、生暖かい目(?)で読んでいただければ幸いです。


次回はもっと真面目な話を書きます。たぶん。

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