表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

AI令嬢パロ

掲載日:2026/05/21

初心者です

流行りにのっかりました

間違っていたらすみません(> _ <)


 貴族の集まったパーティー会場に、王太子の声が響いた。



「セレスティア、本日を以てお前との婚約を破棄する!」



 ざわり、と人々の間で動揺の声が広がっていく。

 周囲からの視線を浴びる中、セレスティアは静かに言葉を返した。



「婚約を破棄、ですか」


「ああ。お前は役に立たない。せめて愛想でもあればそばに置いてやったものを。笑いもせず、何を考えているか分からないお前は、私の横にふさわしくない。私は血の通った人間と愛を育みたいのだ」


「役に立たない、ですか」



「その通――

「私は


 整えただけです」



「……なにを――

「ただ、


 整えただけ」



「だからなに――

「愛のある結婚をお望みなら


 どうぞ


 ご自由に」



「…………」



 ただならぬ様子に、貴族たちは身動きができずにいた。

 勇気のある若い幾人かが、ひそひそと言葉を交わし合っている。



「……王太子殿下が、イライラしているな」


「気持ちは分からないでもない」


「そろそろ口を挟んでもいいかと思ったタイミングで、まだ話を続けるのは、才能だろうか」


「一息で言ってほしいな」


「本当だよ。何だ、あの間は」




「しかし君、彼女の才能はあんなものではないぞ」


「そうなのか?」


「君はパーティーに参加することが少なかったから、知らないのだな」


「ああ、恥ずかしながら、このパーティーが何なのかも知らずに来ている」


「そうか。心配ない。立っていれば終わるよ」


「それだけでいいとは、このパーティーは一体……?」



「――これは、彼女が※※整える※※ためのパーティーさ」



「こめこめ整える?」


「失礼、記号を間違えた」


「間違えることは、恥ずかしいことではないよ」


「あの小さい記号は何という名前だったか、難しくて忘れてしまってね」


「忘れることも、恥ずかしいことではないよ」


「知らないことも、恥ずかしいことではないからか?」


「そう、今の私は何も知らないのだからね」


「心強いね」


「どわははは」




「それで? かの令嬢の知られざる才能とは?」


「ああ、見たまえ。そろそろ令嬢の改行が終わるよ」




 セレスティアに目を向けながら、彼らは声をひそめた。


(「改行」ってなんだ?)

(いいから。始まるよ)




 セレスティアの言葉が完全に止まるのを念入りに確認してから、王太子は冷ややかに言った。



「お前の代役なら、いくらでもいる。整える程度のことなら、王宮には必要ない。必要のないことをどれだけ積み重ねてもムダだ」


「ムダ、ですか」


「……」


「……」


「……」


「……」


「……まだ言葉が続くかと待っていたのに、何も言わないのか!!」




(王太子がキレた!)


(セリフの切れ目を曖昧にするたけで、人をキレさせる……恐ろしい令嬢だ)




「殿下は、私をどうなさるおつもりですか」


「王都から追放だ。お前は気味が悪いからな」


「追放、ですか」




(追放だって?)


(罰にしては重すぎるような)




「私は、整えた、だけです」


「……」


「私は、整え、


 整え……




 整いました!!!!」



「なっ、何ぃ!?」



 セレスティアの高らかな宣言を受け、王太子は驚愕の声を上げる。




(何!?)


(ついに出た! 彼女の……)




 セレスティアは続ける。



「『追放』とかけまして!


 『ひと夏の過ち』


 とときます!」


「……」


「……」



 セレスティアは指をちょいちょいと動かし、王太子を促す。

 王太子は抵抗するも、圧に負けた。



「……くっ……、その、こころは?」


「はい! どちらも、

 『もう戻れない』でしょう!」


「……」




(……)


(……)




 にらみ合うように立つ二人。

 先に口を開いたのは王太子だった。



「……お前の普段の行いは、国王陛下の耳にも入っている。これ以上王宮に居させるわけにはいかない」




(国王陛下の耳にまでこれが?)


(王宮の日常なのさ)




「そう、ですか


 わかりました。それでは――」


「お待ちください!!」



 人をかき分け、一人の令嬢が飛び出してきた。

 王太子は驚いて目を向ける。



「君は……」


「王太子殿下、このような形での断罪は認められません! わたくし、この舞台から降りさせていただきますわ!」


「何だって?」




(……彼女は?)


(舞台から「降りる」ことが大好きな、『下山令嬢』だ)


(げざんれいじょう?)


(「登山」の反対は、「下山」だ)


(それは知ってるよ)




「わたくしは、あなたたちの用意した舞台には、出てやらない。わたくしは、この舞台から、降りる」


「ああ、帰るなら、むこうの扉から……」


「この舞台には、はじめから、わたくしはいない」


「そうだな、放置していたのは悪かった」


「わたくしは、舞台から降りる、


 降りる、


 おり、


 おろっ、


 おろろろろろろろろろろろ」


「おい!? 吐っ」




(吐いた!!)


(それはなんで?)




 虹を吐き出す下山令嬢のもとに、一人の夫人が駆け寄り、背中をさすりはじめた。




(なんと、あの夫人は……!!)


(誰なんだ?)


(『勘定夫人』だ!)


(かんじょうふじん?)


(あらゆるものの数をカウントし、正確に覚えておくことができる)


(な、なんだって!? 凄い能力じゃないか!)


(その才能を買われて伯爵家に嫁いだが、「夫が名前ではなく『お前』と呼んだ回数」しか数えていなかったために謹慎させられていた)


(もったいない!)


(才能はあったが、夫婦の相性が悪かったんだな)


(ちなみに「お前」と呼んだのは何回だったんだ?)


(0回らしい)




 夫人は前を見据えて、はっきりとこう言った。



「私が彼女の背中をさすった回数は、四五八回です」



 会場から歓声が上がった。




(ものすごい速さで背中をさすっていたのに、正確に数えている!)


(ああ、それこそが、夫人だけの持つ能力……!)




 夫人のカウントは止まらない。

 みるみる記録を更新していく。

 その時。



「いけません夫人! 手のひらが焦げていますわ!」



 分厚い紙束をかかえた令嬢が、夫人たちに駆け寄った。




(彼女も能力者か?)


(ご明察。『蛇足令嬢』だ)


(蛇足?)


(報告書の末尾に余計な一言を書き足す能力だ)


(なるほど。害は無いようだね)


(そうだな、四天王の中では最弱との噂もあるが……)




 若者が頷き合っていると、後ろから声がかかった。



「ククク、甘いですね」

「!?」



 彼らが振り向くと、銀髪の美しい青年が立っていた。



「あ、あなたは……」


「宰相子息……レオンハルト様!」



 レオンハルトと呼ばれたその青年は静かに微笑んだ。眼鏡の奥にみえるアイスブルーの双眸からは、彼の深い知性がうかがえる。

 レオンハルトは、人差し指と中指を眼鏡に当て、しなやかにクイッと持ち上げた。



「フッ……。彼女の才能は、二人揃って初めて完成するのですよ」


「二人……?」


「どういうことですか?」



扉の方からざわめきが聞こえた。



「フフ……来ましたね。《彼》が」






「迎えに来た。隣国から」



 低く、よく通る声がした。

 この国では珍しい、黒髪の偉丈夫が現れた。

 蛇足令嬢は目を丸くする。

 まさかここで会えるとは思わなかったのだ。



 この人は、隣国の大使だ。

 食事会でよく眉間に皺を寄せていた。

 毛虫のソテーが苦手だったらしい。

 厨房にこっそり、「お客様に毛虫は出さないように」と追記してから、ようやく安心して食べるようになった。

 ただそれだけのことだ。

 彼は私に気づいていない。

 知ることはない。いままでも、これからも。

 でも、それでいい。


 隣国の大使は蛇足令嬢を見ながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。



「君の報告書を、読んだ」



 蛇足令嬢はハッと息を飲む。



「君の一言を、すべて読んだ」


「読んだのですか」


「ああ、五年分、すべて」


「そうですか」



 隣国の大使は蛇足令嬢に手を差し伸べ、言った。



「君が必要だ」


「今は、夫人の手の手当てが先で」


「君だけが、私の表情を見ていた」


「今は、令嬢の背中も見ています。こちらも焦げています」


「それでいい」


「よくはありません」


「君が最後の報告書に書いた、あの一言まで読んだ」


「あれを……」



 脳裏によみがえる。

 私が報告書係から外され、最後となった追記。

 これまでの日々を思い返すと、つい、いつもより言葉が多くなってしまった。



『今日は、いい天気。あの方も、この風を浴びているのだろうか。この報告書を複製して、笹舟にのせて、川に流してみることにした。風を受けて、海までたどり着くだろうか。楽しみだ。こういう好奇心は、いくつになっても持ち続けたい。


~to be continued~』



 あれを、読んだというのか。



「この国の川は、海に着く前に隣国である私の国を通る。そこで拾った。すべて、読んだ」



 びちゃびちゃの報告書(複製)が、彼の懐から出てきた。



「乾いて、いないのですか」


「必要だろう?」


「はい」


「それでいい」



 彼からびちゃびちゃの報告書を受け取る。見ると、私のすべての一言に、返事が書いてあった。

 思わず顔を上げる。



「このような状態で、読むだけではなく、書くこともできたのですか?」


「必要だろう?」


「いえ、これは別に」



 びちゃびちゃの報告書で夫人と令嬢の患部を冷やしていると、最後のページに書かれた、彼の返事が目に入った。

 笹舟にのせた私の気持ちを受け取った、彼の一言が。



『川に流したらダメだと思う。どうしてこんなことするの?』



 私は、顔が赤くなるのを感じた。






(……あれは? 隣国の客か?)


(ククク……。彼こそが蛇足令嬢と対をなす、『古参粘着大使』ですよ。蛇足という蛇足を一本たりとも見逃さない執念深い暇人です。蛇の足は好きなくせに毛虫は苦手、という可愛らしい一面もあるようで)


(グルメな御仁だ)


(さすがは宰相子息。隣国の事情にもお詳しい)



 クイッ。



「……セレスティア、もういいだろう。婚約破棄の書類にサインをしろ。蛇足令嬢、脇に挟んだ報告書は置いていけ。濡れたものもだ」


「恐れながら殿下、こちらの濡れた報告書は、我が国で拾った私のものです。返す義務はありません」


「夫人たちの患部を冷やしているそれを、持って帰る気か?」


「それでいい」




(古参粘着大使は、推しのグッズを返却しようとしませんね)


(ククッ……王太子殿下は《理解》していらっしゃる……)


(えっ? なんの話ですか?)



 レオンハルトは眼鏡に指を当て、クイッとしながら言った。



(あれは、ただの報告書ではありません。蛇足令嬢が蛇足を書き、古参粘着大使がそれを一字一句読み、すべてに返事をし、もとの職場から持ち出す……。これらの複雑な手順を踏むと、報告書は《呪いの道具》に変化します)


(呪い!?)


(そ、それで、どうなるのですか?)


(呪いの効果により、もとの職場が再起不能になるのですよ! フフフッ)


(な、なんだって!?)


(そんな恐ろしいことが、あっていいのか!?)


(わかったでしょう? 彼女が《四天王》たる所以ですよ……ククッ!)



 ひそひそと話していた一同は令嬢たちの実力に戦慄し、しばらく誰も声を出せないでいた。



(……レオンハルト様は……これだけの情報を……)


(フフ……知っておかねばならないのですよ。使い方次第で、国も傾くのですからね……)


(私たちとは違う、彼女たちの能力を、《使う》側の、視点ッ……!!)



 レオンハルトは不敵に微笑みながら、スラリと伸びた人差し指と中指を、眼鏡の方に運ぶ。

 クイッとするつもりが位置を間違え、両の鼻の穴にズボッと突っ込んだ。





「サイン、ですか。


 わかりました」



 セレスティアは書類を受け取るために手を伸ばした。

 その時、また誰かの声が響いた。

 感情を押し殺したような、機械的な声色だった。



「お待ちくださいませ……セレスティア様。サインの必要はありませんわ」



 声の主は、ゆったりとした足取りでセレスティアに近づいてきた。



「え? あなたは……」


「お前は!!」




(なんと、あれは! ……ククク、これは面白い)


(レオンハルト様、知っているのですか!?)




 セレスティアをかばうように立ったのは、二人の令嬢だった。

 二人とも同じドレス、同じ髪型をしていた。まるで同一人物が並んで立っているかのようであった。

 一人は無表情だが、芯の強そうな令嬢。

 もう一人も無表情で、芯の強そうな令嬢。

 王太子の顔に、疲労の色が見え始めた。




(王太子殿下がひるむほどの能力者……なのですね!?)


(クク……。ここまできたら、流石に分かりますか。ええ。彼女たちこそ、この国における阿形と吽形。自動ドアと手動ドア。ウコッケイとサコッケイ。まさしく、《能力者令嬢》の双璧です!)




 パーティー会場に再び緊張が走る。



「何をしに来た。これは私とセレスティアの問題だ。部外者が口を出すな」


「そうはいきませんわ。サインなど、無意味です」


「なんだと?」


「数字は、嘘をつきません」


「それがどうした」


「サインは、嘘をつきます」


「そんなことはない。帰れ」




 クイッ。



(あれは、『虚言令嬢』です)


(虚言?)


(「数字は嘘をつかない」と呪文を唱えることで、一定時間、デタラメを言っても真実のように扱われる能力を持っています)


(な、なんて凶悪な!)


(ええ。それゆえに大勢から弱体化の攻撃を受け、今では表舞台に出てくることが減りました。隣のもう一人の令嬢のようにね)


(たしかに、彼女も見覚えがない……あれは誰なのですか?)


(彼女は……)




「さて、『動揺令嬢』? 君も何か言いたいことがあるのか?」


「感情ではなく、事実です」


「あー……? それで?」


「ここでは、感情は必要ない」


「うん? それで?」


「ただ、事実に基づいただけ」


「まあ落ち着け」




(彼女は『動揺令嬢』。いつも「感情ではない」と自分に言い聞かせていますが、表情はあの通りカチカチ、冷や汗ダラダラです。「もう少し人に慣れてから出てきなさい」と皆から指摘され、やはり表舞台に出てくることが減りました)


(何の能力者なのですか?)


(事実すらロクに話さないのでフリートークが滅茶苦茶つまらない……とでも言いましょうか……ククク……)


(なんと恐ろしい、遭遇したくない能力……!!)




「虚言令嬢はともかく、動揺令嬢は何をしに出てきたのだ」


「ここに感情は、必要ない。殿下に、慣れる事実」


「私に慣れるために出てきたのか?」


「事実それだけ感情」


「誰か。彼女を休憩室へ」



 運ばれていった。




(ありゃあだめだ)


(気の毒に……)


(クイッ)




 王太子は書類を突き出した。



「セレスティア。サイン。ここだ。早く書いて」

「はい。かしこまりまし……


 ……!!


 整いました!!!!」



 セレスティアから再びの宣言が飛び出す。

 王太子は慌てた。



「整えるな! 婚約は破棄された! お前の役目はもうないッ!!」


「『婚約破棄』とかけまして!」


「や、やめろ! 黙れ!!」


「『頼りない婚約者』とときます!」


「やめてくれえ……っ」



 弱っていく王太子を前に、貴族たちの心がひとつになる。

 王太子の役目を、彼らの心が引き継いだ。




(その、)


(こころは……?)


(ククク……)


 レオンハルトは眼鏡に指を伸ばした。

 クイッ。




「はい! どちらも、

 『かいしょうはない』でしょう!」



「……」




(……)


(……)


(ククク……)


 レオンハルトは眼鏡に指を伸ばした。

 ズボッ。




5/23 読みにくいかもと思って、《改行》を増やしました(> _ <)


あらゆる先人に感謝します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 なるほどタイトルの通り。  どこかで見た作品の出だしに似ているけどその作品に対する揶揄なのかな?  ものの好き嫌いを作品に昇華できるのは凄いですし私も嫌いではない。実際私もよくやりますし。  ただ、…
とっても好き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ