第6話 あきななのボイスがバズった
今日はまだ0時を回ったばっかりなので少し編集して寝ることにした。また体育祭の練習があるし、それにちゃんと寝ないと光に怒られるからほんとにちょっとだけだが。
編集していると、チャンネル登録しているあきななの新着アップロードの通知が届く。
七月さんもまだ起きてたのか。
編集を切りの良い所で終えアップロードされたショート動画を見るとこの前二人で一緒にヴァルをやった時の動画だった。
『がんばれがんばれおにぃちゃんっ♡』
しょっぱなから甘いロリボイスで耳が破壊されそうになるが耐えながら続きを見る。その後はどんな流れでこうなったのか分かるように前の映像が流れ俺のキッツイ『がんばれがんばれ♡』ボイスが聞こえてきて死にそうになった。
自分の声キモ過ぎだろ……もっとイケボになりたいなと少し落ち込んでいると再びあきななのロリ声が聞こえてきて無事死亡した。
即高評価をしてあきななのツニッターを確認。するとニューチューブでさっき投稿した動画がツニッターにも投稿してあったのでいいねを押して、リツニートする。
これだけじゃ物足りなかったので、口から血を出している絵文字とグッドマークの絵文字を打って引用リツニートした。
この可愛さは拡散されるべき。そしてみんな幸せな気持ちになるべきだ。うんうん、それくらい可愛い。
てかあきななってグッズないんかな。買いたくなってきたな。
気が付けば俺はあきななのファンになっていた。
次の日、俺はまた遅刻しそうになり急いで学校に行く。
教室に着くと七月さんが笑うのを我慢して口をニマニマさせながら「おはよー」と挨拶してくる。
昨日の今日でもう話しかけにきたのか。
俺はなんか面白い事でもあったのかなと不思議に思いながらも「おはよう」と返すと間髪入れずに七月さんが「ねねね、これ見てやばい!」と笑顔を爆発させながらスマホの画面を見せてきた。
俺は自分の席に着き鞄を置きながら目の前に差し出されたスマホを見る。
そこに表示されていたのは昨日寝る前に見たあきななのお兄ちゃんボイスのショート動画だった。
高評価の部分に目をやると高評価マークのグッドボタンの上に2000という数字。
2000ッ!?
その数に目玉が溢れ落ちそうになるくらいに目を見開く。驚き過ぎて声も出なかった。そして再生回数を確認してみるとなんと8万再生。
「や、やば……」
あまりの凄さに圧巻されているとあきななも嬉しくて興奮しているのか「ね、ね。まじやばいよね!」と語彙力を失っていた。
いや、いつもこんな感じかもしれん。
昨日見たとき、あきななのチャンネル登録者数は800人くらいだったのでその倍以上の高評価がついていた。それにチャンネル登録者が2000人いたからといって動画に2000いいねもつくかと言われればそうではない。なのでこれがどれだけ凄い事なのか直ぐに理解できた。
「登録者は? 増えた?」
「うんめっちゃ増えた」
配信者をしていることがバレないように小声で言うと七月さんもそれに合わせて声を小さくして頷く。
登録者数の画面も見せてくれ、登録者数は200人以上増えて1000人を突破していた。
「てかさっきからツニッターの通知もやばくない?」
「そうなんだよね! そっちもやばいんだよね!」
びっくりした。
俺が小声で聞いたのに興奮しているのか声が大きい七月さんに驚き肩を跳ねさせる。
七月さんはそれに気付き口元を手で隠し「あ、ごめん」とえへへと謝ってきた。憎めない笑顔でそれにつられ俺も頬が緩む。
ツニッターにもニューチューブに上げていたお兄ちゃんボイスの動画を投稿していたので多分そっちも伸びてるんだと思う。
「えっぐ」
「あ、あはは……」
七月さんはツニッターを開くと、通知の多さを目の当たりにし笑顔を引きつらせていた。
「や、やばいねこれ。今も伸びてるよ」
「まだこれから伸びるかもね?」
「にへへ」
笑い方よ……と思ったが口に出すのはやめておいた。それほど嬉しいんだろう。俺の事じゃないのに、俺も自分の事のように嬉しい。
まぁ少しだけ俺も出てるしね。ちょっとおこぼれ貰えたりして?
そんなことを思いながらチャイムが鳴ったので七月さんは「それじゃ」といってルンルンで席に戻っていった。
ふと周辺を見渡してみると「七月さんとお前って仲良かったっけ?」とか「七月さんといつの間に仲良くなったんだ?」とか言いたそうな不思議なものを見る目を数人から向けられていて居心地が悪い。
光は昨日廊下で俺と七月さんが話しているのを見かけていたからか、不思議そうにはしてなくて何故かニヤニヤと目を細めている。
今まで七月さんと話してなかったからこんな風になってるだけで、これは時間が解決してくれるだろう。
七月さんの方を見ると近くの女子に何か言われていた。多分「柊くんと仲良かったっけ?」とか言われてるんだろうな。




