第5話 お互い配信者と知ってから
〇〇柊七緒視点○○
昨日早く寝たからか、今日はしっかりとアラームの音で起きられた。それでもやっぱり朝が苦手でのそのそと行動していたらギリギリの時間になっていた。
俺は慌てて家を飛び出し学校に向かう。
なんとか間に合い、席に座りスマホでツニッターを見てみるとどうやらあきななは昨日も配信していたらしい。
なんと体力の多い事か……。
あきななのツニートを見ると自然と七月さんの方に視線が向かった。七月さんはクラスの女子と楽しそうに話をしているようだった。
改めて昨日の放課後のことが脳裏に浮かんでくる。
まさかあきななが七月さんだったなんてなぁ……。まだ実感が湧かない。
眺め過ぎたのか、俺の視線に気が付いた七月さんは目をパチパチさせ少し首を傾げながらニコッと笑いかけてきた。
皆から見れば可愛らしいその笑顔は俺から見れば「誰にも言ってないよな。言ったらどうなるか分かってんだろうな」的な言葉を孕んでいそうで思わず目を逸らす。
その後授業が始まり、珍しく起きている俺に光が驚きつつもうんうんと感慨深そうに頷いていたのだが、さっき目を逸らしたのがダメだったのか時折七月さんも俺の方をチラチラと伺ってきていた。
休み時間になり俺に話しかけに来ようとした七月さんだったが、友達に話しかけられ止められてしまう。
俺はいつまで何を言われるんだろうとビクビクしとかなければいけないのだろうか。
言いたいことがあるなら早く言ってくれぇぇぇ。
あれ? 七月さんの連絡先は知らないけどあきななのなら知ってるじゃん。
ゲームでよく使うチャットも通話もできるアプリで繋がっているし、もしなくてもツニッターのDMがある。
チャットに【何か俺に用でもあるの?】と試しに送信してみると通知に気付いた七月さんはスマホ見て何か打つ。
その数秒後にメッセージが飛んでくる。
あぁやっぱり七月さんがあきなななんだなとここでも改めて感じさせられた。
あきなな:【誰にも言ってないよね?!】
Ragi:【もちろん】
あきなな:【松山くんにも?】
Ragi:【言ってない】
あきなな:【そうなんだ。それならよかった】
Ragi:【それだけ?】
あきなな:【うん】
なんやねんそんだけかい。俺の事信用してなさすぎだろ。でもまぁ活動とか学校の友人関係にも影響しかねない事柄だから多少慎重になる気持ちも理解できた。
てか、こうやって同じクラスでいつでも話せるのに皆にバレないようにチャットで連絡し合うのなんだかイケない関係みたいでドキドキして少し楽しいかもしれない。
こんな事を考えてるのを七月さんに知られたら嫌われそうなので勿論言わないが。
昼休み、トイレから戻ってくる途中七月さんが目に入った。こっちに歩いてきて七月さんも俺の姿を認識すると「あっ」と何か思い出したかのように駆け足で近寄ってくる。
「ねぇねぇ柊くん今日夜暇? 暇だよね?」
「勝手に決めつけんな。暇だけど」
「やっぱそうだよねー! ね、今日夜ネットの人とヴァルやるんだけど、あと一人でフルパなんだよね。柊くんやんない?」
「あぁ全然いいよ。何時から?」
「21時!」
「おっけー」
「んじゃまたねー!」
ニコッと満面の笑みを向けて顔の横で手を振り去っていく七月さんにドキッとしつつ忘れないようにスマホカレンダーに予定を書き込む。
「あれ? 七緒って七月さんと仲良かったっけ?」
「どわ、びっくりした」
突然後ろからひょっこりと現れた光に驚きながら咄嗟にスマホの画面を隠す。
「あぁ実は七月さんもゲーム好きらしくてそれでちょっと話すようになっただけだよ」
ここで変に否定したら怪しいので正直に答えると「へーそうなんだ」と直ぐに納得してくれた。
「ところでなんで画面隠したん?」
「別にいいだろ」
「見られたくないものでも見てたのかなぁ? 七緒くんよ」
「いや見てないが? 普通に他人にスマホ見られるの嫌だろ」
「俺は別にそんなの気にしないタイプだけどな」
「お前はだろ」
「まぁいっか」
そう言うと光は手をひらひらさせながらトイレに向かっていった。
なんとか今日の夜に七月さんとコラボすることは隠すことができ、安堵のため息をつく。
光から見ても仲良さそうに見えたなら他の人からもそう思われてるってことだろう。これは……他の男子から嫉妬を買いそうだ。
七月さんは全然話そうと思えば話せるし、誰にでも等しく接してるイメージがあるのだが女子と話すのは苦手な男子達もいるわけで、嫉妬されるのは主にそっちの人たちからだろう。
なんか陰湿な嫌がらせとかされないよな……。いやこれフラグか……?
その日の夜、21時開始だったのだが俺は急激な腹痛に襲われトイレに閉じこもっていて時間を過ぎてしまった。
ようやく収まりトイレから出て急いで配信準備をして通話に入る。既に俺以外集合していた。
一応遅れる旨は連絡したのだが、やっぱり遅れて入るのは少し気まずいし罪悪感がある。
ピコンッ
「すみません、遅れました」
『あー! やっと来た! もう遅いよラギくん』
「ごめんって……」
一番最初に反応してくれたのはあきななだった。その声を聞いた瞬間、学校での七月さんの顔が思い浮かぶ。
あきなな=七月さんというのを知っているのは俺だけという背徳感を抱きながら、勝手に前よりも仲良くなった気分になる。
『お疲れ様ー全然大丈夫だよ』
『おつおつー』
『じゃあ早速やりますか』
みんな優しく歓迎してくれている。遅刻に関してはあんまり気にしていないっぽい。というか配信者とかって大体ズボラな人が多くて遅刻する人の方が多かったりする。普通にみんな仕事や学校とか行ってるからしょうがない部分も多少あったりするが。
その後フルパでヴァルをしてわいわいとランクなのにも関わらず騒がしくて楽しい時間が過ぎていった。
『よし、キリもいいしこの辺で終わっとこうかな!』
『おっけぇ』
『私も』
時間もいい時間なので今日は終わることに。
配信の最後の挨拶を聞き届け配信を切ったのを確認すると、お礼を述べたりまたやりましょうと社交辞令を交わして解散となった。
次々と抜けていき、あきななと俺の二人だけが残る。俺も抜けようとした瞬間、あきななが口を開く。
『今日は突然誘ったのに来てくれてありがとね』
「あぁいや全然大丈夫」
『あの……さ。学校でも話しかけていい?』
「ん? 全然いいよ」
『ほんと!? やった。女の子の友達でアニメとかゲーム好きな子少ないしさ? いたとしても有名なやつとかしか知らなかったりするから話し相手が欲しくて……』
「なるほどね、俺もそういう相手全然いなかったから寧ろ嬉しい」
あきななは今どんな表情をしているか分からないが、喜んでいるのは声音から伝わってくる。
こんな俺よりも詳しいやつはいそうで、本当に俺でよかったのか疑問だけど。
『それじゃ落ちるね。また明日学校で! おやすみー!』
「おやすみー」
俺の言葉を聞き届けた後あきななは通話から抜けたので俺も抜けるとさっきまでの喧騒はどこへやら、静寂が訪れ少し寂しい気持ちが湧いてくる。
俺たちは同じ学校の同じクラスの男女。それが夜に一緒にゲームして通話して「おやすみ」を言い合う仲。凄く青春しているように見える。配信者という点を除けばだが。
作者も同級生の女の子と夜通話とかゲームもっとしたかった。
哀れみのブクマ、評価、リアクション待ってます。




