第4話 クラスの男子が配信者っぽい
〇〇七月明奈視点〇〇
家に帰ると私はリビングのソファにダイブする。
「はぁぁぁ……」
大きなため息をついた理由は一つだ。
私が配信者の『あきなな』という事がクラスの男子、柊七緒くんにバレた事。
なんでこんな事になったんだとソファに顔を埋めながら今日の事を振り返る。
昨日夜、最近知り合った配信者のラギくんとゲームコラボをしたら気付くと3時になっていた。それから私達は急いで配信を切ってその後少し裏で雑談。
まさかラギくんと同い年だとは思ってなくて凄い衝撃を受けた。思わず自分の年齢も言ってしまったけどラギくん程落ち着いている人なら言いふらしたりしないだろうという謎の信頼を置いていた。
まだ知り合ってから間もないのにも関わらず。でもそれくらいラギくんは凄く大人びていて安心感があった。
それから寝たので起きれるか不安だったが、アラームを爆音でかけていたので無事に起きることができた。
でも流石に寝不足だし、身体が重くて疲れが取れていない感じがする。
今日の体育の全体練習大丈夫かな……。
朝食や学校の準備を済ませ後は学校に行くだけになったので、スマホでツニッターを開き取り敢えず「おはよう」ツニートをすることに。
【みんなおはななー! 昨日は楽しくて時間を忘れて3時までやっちゃったけど何とか起きられたよー! 学校も間に合いそうでよかった。
ラギくんは寝坊かな? w】
よし、ツニート完了。
「いってきまーす」
「「「いってらっしゃーい」」」
家族からの返事を背に受けながら、時間に余裕をもって登校する。
歩いているとやっぱり夜更ししたせいか身体が重かったが、何とか学校に着くことができた。
ラギくんから何か来てるかなと思いツニッター開くが返信はなかった。まぁ見ても返信してくれるとは限らないけど。
まだホームルームが始まるまで時間があるので、リスナーさんから来たコメントに返信することに。
「あ、明奈おはよー」
「おはよー」
「ってクマすご!?」
「えっそんなに酷い?」
「うんうんうん」
優衣に「またゲームとかしてたの?」と当てられ私は目を逸らしながら「はぃ……」と返す。
「程々にしなよ?」
「うん。最近は気を付けてたんだけどね。昨日は楽し過ぎてつい」
あははと苦笑していると優衣が「また倒れないでね」と本当に心配してくれているのが伝わってくる。
去年、ちょっと夜遅くまでゲームしていて次の日体育で立ち眩みがして倒れた事があったのだが、それの事を言っているのだろう。
でもその時は寝てなかったからだけど、今日は短時間だけど寝たから倒れまではしないだろう多分。
手元のスマホに視線を戻すと引用ツニートされているのに気が付きみてみると【遅刻確定】と数分前にラギくんから来ていた。
やっぱり寝坊したんだ。大人っぽいけど、こういうところは意外と年相応なのかもと少し和やかな気持ちになる。
その後次々とくるクラスのみんなからクマを指摘され心配されたりしているとホームルームの始まりを告げるチャイムと同時に先生が来た。
今日の体育は体育祭に向けた全体練習という昨日の授業後のホームルームと同じ話をしている。
朝のホームルームが終わり、少し経った時に勢いよく扉が開き一人の男子が疲れ切った表情で入ってきたかと思えばその後すぐに先生に注意されていた。
柊くん今日も遅刻なんだ。いつも何時に寝てるんだろう?
授業中もよく寝ていてノートを友達の松山くんに見せて貰っているのを見かける。
もしかして柊くんも夜遅くまで起きてゲームとかしてるのだろうかと想像をしていると、柊くんと松山くんの会話が耳に入ってきた。
「んで、昨日は何時に寝たんだ?」
「さ、3時……」
さ、3時……そりゃ遅刻もするよね。私とラギくんが寝たのもそのくらいの時間だったなぁ。でもそれで遅刻してない私って凄いのでは?! 偉いのでは?!
「ぷはっ、何その顔。フレーメン反応した猫みたいになってるよ。くっ、ははは。あはははは。いでぇっ?!」
その会話で気になって視線を向けてみると確かに松山くんはフレーメン反応した猫みたいな表情をしていた。
私は口角が上がるのを我慢しながら前を向き、手で口元を抑える。
人間ってあんな表情できるんだ。面白過ぎる。
柊くんはその後松山くんに叩かれ怒られていた。まるで親が子に説教しているかのような絵で微笑ましかった。
その後、1時間目が始まると速攻柊くんは夢の世界に行っていて結局授業が終わるまで起きることはなかった。
体育祭の全体練習で遅れないように早めに並んでいたら時間ギリギリになって柊くんと松山くんが慌ただしくグラウンドに出てきた。
同じクラスの人が怒られたらちょっと気まずい気持ちになるから、間に合ってよかったという感情が湧いてくる。
全体練習が進み、今は休憩の時間。
あぁ、やっぱり寝不足って良くないなぁと更に実感する。何も考えたくなくて頭がぼーっとしちゃう。
この後の授業大丈夫かな。私も寝ちゃいそう……なんて思っているとそろそろ休憩が終わりそうな雰囲気を先生の動きから感じ取った。
案の定、終わりの合図があり全員が立ち上がった瞬間少し後ろの方でザワザワと皆が心配そうな声を上げていた。
「何かあったのかな?」
「んーなんだろ、誰か倒れたっぽい?」
私の所からはよく見えなかったが、近くの人がそう話しているのが聞えた。
周りに生徒が心配そうに円を作り集まっているのに気が付いた先生たちも急いでそこに走って集まってくる。
それから少しして生徒の円の中から出てきたのは先生に肩を支えられた柊くんだった。
柊くんの顔は青ざめていて誰が見ても体調が悪そうだったが、みんなから注目されるのが恥ずかしいのか苦笑していた。
大丈夫かなと不安になったが全体練習は続いていく。私も寝不足のせいかちょっとクラクラすることがあったけど何とかやりきる事が出来た。
「明奈も大丈夫? 昨日遅かったみたいだし無理しないでね」
「うん大丈夫ありがと」
優衣が心配して声を掛けてくれたが体育は乗り切ったからあとは何とかなる。
眠くてたまに意識が飛ぶことはあったけど無事に1日を終えることができた。
結局柊くんは放課後まで教室に戻ってくることはなかった。
いいなぁぁぁ保健室でいっぱい寝れて。私も行けばよかったかもしれないと今更思い、今日は早めに寝ようと決めながら靴箱に向かう。
ラギくんは大丈夫だったかなと思いツニートを覗いてみるとその内容に私は思わず足を止めた。
「……え?」
この内容って……柊くん……?
【遅刻確定】
【友達に3時に寝たって言ったらフレーメン反応した猫みたいな表情になってめっちゃ笑ったwww】
【睡眠不足で立ち眩みしてぶっ倒れて気付いたら放課後になってた件】
どう考えても今日柊くんの身に起こっていた事。柊くん=ラギくん……なの?!
このツニート内容からして絶対そうだと思う。遅刻と立ち眩みして休んでて気付いたら放課後になってたっていうのは他の人もなっている可能性は全然高い。
けどフレーメン反応のやり取りは確かに今日教室で松山くんと話している時のやつだ。こんな会話中々する人なんていないだろう。いたとしたら奇跡。
つまりやっぱり柊くんはラギくんなんだと思う。思うんだけど違う可能性も少しだけ残っている。
ほんとは気付いても気付いてないふりするのがいいのは知ってるんだけど、好奇心の方が抑えられなく私は気が付けば踵を返して教室に駆け足で向かっていた。
ツニートしていたのは数分前。なら荷物を取りに教室に来るはずだから、今ならまだいるかも。
近くまでくると、教室から微かに話し声が聞こえてきたので私は思わず別の教室に隠れてしまった。
少しすると急いだ様子で松山くんが教室から出てくる。松山くんが帰るのを見守ってから私はゆっくりと左右を確認し、誰もいないことを確かめ一度深呼吸をすると扉から教室に入った。
「あ、柊くんだ。体調大丈夫?」
「あぁうん。なんとか」
私はあたかも柊くんがいるとは知らなかったかのように、忘れ物を取りに来たかのように声を掛ける。
だがそこで会話は終わってしまい、柊くんは荷物を持って帰ろうとしていた。
あ、あぶなー! もう少し遅かったら会えなかった。よし、聞くんだ。確かめるんだ。柊くんがラギくんなのかを。
緊張して乾いた口を唾を飲み込み潤すと、喉が鳴る。
「――ねぇ」
「ん?」
私の横を通り過ぎて帰ろうとしていた柊くんは立ち止まりきょとんとした表情を向けてくる。
声を掛けておきながらやっぱりやめとこうかなという考えが一瞬浮かんだがここまで来たんだ、モヤモヤしたままは嫌だしちゃんと確認しよう。
それにリアルの事を呟き過ぎたらこういう風に身バレするよってことを教えてあげないと。
「あのさ……もしかして、柊くんって配信者の『ragi』……だったりする?」
ラギくんのアカウントをスマホに表示させ問いかけると柊くんは「え……?」と目を見張り硬直していた。
少し間を置いてもう一度「え?」と疑問を浮かべる柊くん。私はその様子を見て確信した。でも本人の口からそうだと認めない限り違う可能性もあるわけで……。
「その反応、やっぱり当たり?」
「え、あぁいや違うけど?」
「嘘、下手くそだね」
「いやだから違うけど、誰の事言ってるの?」
本人は気付いていないのか、目が泳いでいるし顔が引きつっている。
「そんな嘘ついてももう遅いよ。だってもうその反応で確信したんだから」
もう絶対本人じゃん……。
なんで私が柊くんをラギくんだと思ったかという理由を語ってもまだ苦しい言い逃れをする。
頑なに認めないなぁ。他になんかあったっけ。あっそうだ。
「それに昨日言ってた年齢、まさか同級生だとは思わなかったよ」
「え? 昨日……?」
「あっ……」
柊くんが「昨日」という単語に引っかかりを覚えて疑問を口にしたところで、自分が失言したことを認識した。
「年齢の事配信で言ってなくない?」
あっあっ、そうだよね。うん、確かに昨日通話してた時は配信終わってからだったから……。
柊くんは口に手を当て少し思案した後答えに辿り着いたのか、顔を上げある名前を発する。
「あきなな?」
「ッッ!!」
やっばい、やっぱりそこまで辿り着かれてしまった。
「あ、やっぱり?」
「ち、違うけど?」
さっきとは逆に私が問い詰められる状況に陥ってしまった。
「知ってはいるんだ」
「ま、まぁね」
よし、まだ私があきななということに確証は持ってないっぽいな! ならこのままはぐらかして逃げよう!
「そういえば、あきななってホラーゲーム苦手で子供っぽいよね」
「はぁ!? 苦手じゃないし! ただ、音が大きいのが苦手なだけだし! 子供っぽくないし!」
「やっぱあきななだよね?」
ぬわぁぁぁ!! なんてトラップを仕掛けてくるんだこいつッ!!
私が子供っぽいと言われたり思われるのが好きじゃなくて、言われたら直ぐに反応して否定しまうとこ
ろを利用してきやがった。
「い、いや私はあきななの熱烈なファンなだけだし……!」
自分で自分のファンって言うのは言っててむず痒かった。
苦し紛れの言葉を並べるが淡い期待は虚しく、疑いの目は晴れることはなかった。こういう時鈍感系主人公なら騙せたのに!!
「ファンならあきななの魅力的で可愛いところをこんな風に否定しなくない?」
「……確かに……えっ魅力的で可愛い?!」
突然何事もないかのようにサラッと褒められて私は困惑してしまう。魅力的で可愛いって言われた事実に嬉しさと面と向かって言われて少し恥ずかしい気持ちからスマホで思わず顔を隠してしまう。
「もう帰っていい?」
「あぁ! ちょっと待ってよ!」
柊くんはウンザリとした表情でそう言うと私の返事なんて関係なしにそそくさと教室から出ていく。
私は慌てて後を追い、最後のダメ押しでもう一回聞いてみることに。
「んで! 結局柊くんってラギくんなんだよね!!?」
「あぁうん。まぁそうだよ」
「やっぱりー!!」
もう追及に疲れて諦めたのか柊くんはあっさりと認めた。
そっかー、そっかそっかぁ……。やっぱり柊くんはラギくんだったんだぁ。なんか嬉しいな。
「他の人には言わないでね」と柊くんから釘を刺されるが言われるまでもない。
そんな誰かに言うわけないじゃん。
自分の力で柊くんが配信者のラギくんだということを当て、これは私だけが知っているんだという優越感に浸って油断していたところに柊くんは仕掛けてきた。
「んじゃ、またねあきなな」
「うんまたね!」
「あきなな呼びしてんのにナチュラルに反応するじゃん……アホか」
「あ……ってかアホってなんだアホって!」
柊くんがラギくんということを突き止めて満足してしまった私は素であきなな呼びに反応してしまった。
「そんなんだから恋人出来た事ないんじゃ?」
「はぁ?! ラギくんだって昨日いないって言ってたじゃん!!」
「もうお前隠す気ないだろ……」
もうここまで来たら言い逃れは出来ない。なので自分から認める事に。
「え、あ……。そ、そうだよ。私が『あきなな』だよ……」
「ですよねー」
という感じな事があった。
今日の事を改めて振り返ると私があきななってバレたの本当に自分のせいじゃん。私馬鹿じゃん!!
年齢の事言わなければ私がバレることはなかったじゃん!
ソファの上で自分の愚かさを呪いながらクッションに顔を埋め、手足をバタバタとさせ大きく息を吐く。
「……まぁいっか。フェアじゃないもんね」
バレたのが柊くん以外じゃなかったのがよかったとポジティブに捉えることにすると、昨日あんまり寝なかったからか瞼が重くなり意識を失った。
「明奈~? 制服のまま寝てたらシワできるよー?」
その後帰って来たお母さんに起こされ時間を見ると既に21時になっていた。
「んぅん」
眠い瞼をこすりながら着替えたりご飯を食べたりと色々と一通り済ませると23時に。
昨日は夜遅くまでやってあんまり寝れなかったから今日はしっかり寝ようと思っていたけど、夕方寝てしまい今はあんまり眠くない。
少し考えた結果、1時間だけ配信して寝ることにした。
毎日配信することが大事。一日でも休んだらサボり癖がついちゃうかもしれないからね!
柊くんにバレてしまった事をしっかり反省してツニート内容とか学校での会話とかにより気を付けようと思った。
配信を終え、ベッドに入りながら昨日一緒にヴァルをした時の事を思い返す。
……そっか……あの柊くんがラギくんなんだ。
昨日のプレイ強くてかっこよかったし、変な野良から私を守ってくれたりして頼もしかったなぁ。
よく遅刻してよく寝ている変な人という印象が一気に変わった日だった。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
ゆっくりと仲良くなっていくので長い目でご覧頂けると幸いです。
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