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第39話 一週間のテスト

 俺は少し勉強したら帰るつもりだったのだが、この雰囲気の中「俺そろそろ帰ります」と言い出すのはかなりの勇気が必要で、意図せずかなりの時間勉強することになった。


 俺と七月さんと渡辺さんの三人は既に課題が終わっていたので手が空いている時、桃沢さんと小野さんに教える時があったのだが皆それなりに出来ていたので少し驚いた。


 勝手なイメージだが、小野さんはちょっと馬鹿だと思っていたから。偏見はよくないね……。



 学校が閉まる時間になり放送で帰るように促されると皆で帰ろうと七月さんに誘われたが、流石にまだ全然親しくない女子とこれ以上同じ空間にいるのは結構精神が擦り減って疲れるので断った。


 渡辺さんとは前にサイデで少し話したけど、仲良くなったとは言い難いし。親しくない人が一人だったらまだ大丈夫だったのだが、流石に三人となるとキツイ。


 俺でこんなだから、もし海がこの場にいたら泡を吹いて倒れてたかもしれないな。




 思いのほかしっかりと勉強をして頭を使って疲れていたのでその日は珍しく0時前に寝た。





 図書室で勉強した日以降、人も多かったし図書室に行く気にはならず家で勉強をしたのだがやはりあまり捗らなかった。


 そして迎えたテスト当日。これから一週間ほどかけてテストが行われていく。2時間だったり3時間だったりと午前中だけで終わるのはありがたい。一日5時間とかあってたら集中力がとてもじゃないけど続かない。


 小学生の頃は普通にそれやってたのを思い出すと衰えを感じる。


 帰ってから休憩してゲームするのもいいし、友達と遊ぶのもいいし、勉強することだってできる。

 なんなら全部出来るくらいの時間はある。



「おはよー」


「おはよ」


「いやーもう暑くなってきたねー」


「んね、まだ梅雨明けてないらしいけど」


「嘘みたいに晴れてるよね……」


 暑いからか、スカートがいつもより短い七月さんの脚に目が奪われそうになりながら俺は今日テストがある教科の追い込み勉強をするために机に視線を落とす。


「勝負に関係ない教科も勉強してるなんて偉いですなー」


「よいしょ」と椅子に座り横から覗き込んでくる七月さんに集中を削がれながら返答する。


「だって流石に勉強しないと赤点取りそうでやばいからね」


「そっかそっかー」


 聞いておきながら興味なさげな相槌を打つと七月さんは手でパタパタと顔を仰いでいた。


 随分と余裕そうだなと恨めしい目で見ていると、今度はシャツの胸元を摘まみ風を送り始めた。


 風を送る度に隣から花のような柔軟剤か分からないが良い匂いが漂ってくる。


 七月さんは俺の視線に気付き仰ぐのを止めると、目を細め片方の口角を上げ「えっち」と呟いた。


「いや、なにが?」


「見てたのバレバレだよ?」


「見てないって」


「ふーん?」


「なに?」


「まぁそういう事にしとてあげるねー」


 そりゃ俺も健全な男子高校生な訳ですし……見える範囲でそういう事する方が悪いと思います。

 見られたくなかったら男子がいないところでしてください!!




 その後のテストの結果は微妙というほかない。

 結構解くことはできたのだが、時折今朝の七月さんの艶やかな表情と「えっち」という言葉が脳裏をよぎって大変だった。


 今日国語のテストが無かったのが救いだった。もし今日だったらずっと悶々としていつものような結果はきっと出せなかっただろうから。


 でもまだ油断できない。今日のようなことを国語のテストの日にしてこないとは限らない。

 七月さんは基本的に元気で明るい感じなのに、ふざけて全然違うような喋り方とかキャラ変で惑わせてきたりするから厄介だ。



「今日のテストどうだった?」


「んーまぁまぁかな、七月さんは?」


「私? んー……私もまぁまぁかなー」


「まぁまぁとか言っときながら普通に良い点取るやつね?」


「あはは、だといいけどねっ!」


 俺の言うまぁまぁと七月さんの言うまぁまぁは絶対に違う。七月さんのまぁまぁは俺にとってはきっと良いだろうな。


「明日数学あるけど自信の方は?」


「んー、あんまり無いけど柊くんとの勝負に勝つ自信はあるよ!」


「おい俺の事舐めすぎだろ! 見てろよぎゃふんと言わせるから」


「えへへ、期待してるよー」






 数学のテストがある日、七月さんはテストの直前まで勉強していた。


 話しかけても一言二言しか返ってくることは無く真剣だった。それほどまでに俺に負けたくないらしい。


 それとも何か俺にお願いをしたいことがあるとか……? いや、それは考えすぎか。ただ七月さんは自分のモチベアップにも繋がるし、勉強が嫌いな俺にもやる気を出させるようにこの勝負を提案してくれたんだろう。



 俺はその七月さんの優しさを汲み取り、勉強の邪魔をなるべくしないようにした。



 そして迎えた数学のテスト。俺も勉強したお陰で前よりもスラスラと解く事ができ、時間が足らずに最後の問題まで行きつかないなんてことは起こらずに済んだ。


「いやぁぁ終わったねー。あと私は結果を待つだけだなー?」


 まだテストは全教科終わった訳ではないのに七月さんは解放されたように清々しい表情で背伸びをしながら煽って来た。


「数学のテストどうだったの?」


「んー? そりゃもういいですとも。あとは柊くんの国語だね。頑張れ頑張れー?」


「ちょっとプレッシャー掛けるの止めて」


「満点取る気で行かないと負けちゃうよー? 頑張れー?」


 ニヤニヤといたずらっ子のように笑いながら煽ってくるのを軽くあしらいながら俺は次の科目の勉強に励む。


「おいー無視するなー?」


「……」


「頑張れ頑張れ柊くんっ♡」


「ちょっとうるさい」


「酷いっ?!」





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