第3話 身バレしたけど、相手も配信者だった
『え、ちょっと待って3時じゃん?!』
【そうだよ】
【いつまでやるの……】
【明日も仕事なのに……ついつい見てしまう……】
あきななに言われ俺も時間を確認すると日付を超えて、真夜中の3時を回ろうとしていた。
リスナーの中には流石に限界を迎えている人もいた。
「え、ほんとじゃん。流石に寝ないとまずい」
『それな?! 明日授業大丈夫かなぁぁ……』
「やばいね、終わろうか」
ゲームもキリがいいので終わることになり締めの挨拶に入る。
『みんな今日も見に来てくれて、コメント沢山してくれてありがとう! 概要欄に今日一緒にやったラギくんのULRとか色々貼ってるからよかったらフォローしてあげてね! それじゃ、おつなな!』
俺は特に見てくれている人もいないので「おつかれしたー」と適当に配信を閉じる。
『よし、配信閉じたよ~』
「俺も閉じたよ」
お互いふぅとため息を吐き、落ち着く。さっきまでの騒がしい配信の後の静寂の時間。この落ち着いた時間が何気好きだったりする。
『今日はありがとねー』
「こちらこそ、誘ってくれてありがと」
ゲームを閉じたり配信アプリを閉じたりと作業をしているとあきななが思い出したかのような声を上げて前のめりに質問を投げかけてきた。
『そういえばさ、聞いていいか分からないけどラギくんっていくつなの?!」
「ん? まぁ16だね」
公表していないが、仲がいい配信者とかには聞かれたら答えるようにしていたので躊躇いもなく答える。
こういう配信活動とかしているのは若者が多いと言っても、やっぱり俺よりも年上の人が多いので大抵年齢を言うと「若っ?!」と驚かれる。
『はっ!? 噓でしょっ?! わっっか!』
案の定あきななも同じ反応を示していた。
『因みに私も16なんだけど! 私たち同い年だったんだね!?』
「え、まじ? それは知らなった。凄いね」
あきななは学生とは公言しているものの年齢は知らなかったのでまさかのカミングアウトで俺も驚きを隠せない。
『てか、16でそんなに落ち着いた雰囲気纏ってるのえぐ。普通に20とか超えてる大人だと思ってた』
「あはは、よく言われるよ」
『ってか寝ないとだ! 明日も学校あるのに、授業中寝そうぅぅ!』
「それな。まじやばい、寝よう」
時間を忘れるくらい楽しかったのだが、これは明日に響く。授業どうこうより、普通に起きれるかすら怪しい時間ではある。
ただでさえゲームは楽しくて時間を忘れるのに、あきななという面白い存在が掛け合わさることでさらに時間を忘れさせられた。
まじで次からちゃんとこまめに時間確認しようと心に決めた。
『今日はありがとね、やっぱりラギくん誘ってよかった。ラギくんが褒めてくれたり励ましてくれたりしなかったらもっとイラついてたと思うし凄く落ち込んでたと思う。けどラギくんのお陰で楽しめた! だからありがと。またやろ! それじゃ先に落ちるね!』
あきななは俺に喋る隙を与えずにお礼を述べると直ぐに通話から抜けていった。
「抜けるのはやっ!?」
まぁこの時間だから気持ちはわかる。
俺もpcを落とすと、しっかり1分置きに目覚ましが鳴るように設定してからベッドにダイブし目を閉じる。だが、ゲームとか配信の興奮ですぐには寝付けそうになかった。
――ピピピピッピピピピッ
「......んぁ」
鉛のように重い瞼と身体を捻らせて、枕元で鳴ってるスマホのアラームを消す。
昨日寝るのが遅かったから流石に起きないと遅刻する。
目を片方だけ開け時間を確認すると時刻は既に8時を回っていた。
「……あ、終わった」
今から準備しても間に合わない。けどかといって休むことはできない。何故なら今日から体育祭へ向けての練習が始まるからだ。
開会式とかの時の並ぶ順番とか場所とか色々指示があるだろうから、今日休んだら後々面倒臭いことになるのは目に見えてわかる。
なので俺は足を胸に近づけた反動を使い起き上がると急いで準備を始めた。
果たしてあきななは起きられたのだろうか。
急がないといけないのにふと頭にあきななの事がよぎる。
あきななもどうか寝坊してますように。
と仲間がいてくれたら少し気が楽になると思いツニッターを覗いてみる。
【みんなおはななー! 昨日は楽しくて時間を忘れて3時までやっちゃったけど何とか起きられたよー! 学校も間に合いそうでよかった。
ラギくんは寝坊かな? w】
くっそ、寝坊したのは俺だけかよ。しかも寝坊してるの当てられてるし。
こうなったら何とか遅刻だけは避けてやるという変な意地が湧いてきた。
猛ダッシュで準備をして家を飛び出す。朝ごはんなんか食べている暇はない。
食べて走った場合絶対吐く気がするし。
時間を確認するとまだ7分、頑張って走り続ければギリギリ間に合うかどうかといったところだ。
よし、何とかなりそうだ。
そう思ったのも束の間、信号に引っかかてしまった。
「ッはぁはぁはぁ……」
俺はしょうがないと乱れた息を整える。睡眠不足からか、起きてから急激に走ったからか分からないが頭がクラクラする。
少し息が整ってきたところで信号が青になったので、信号待ちの時間を取り戻すかのようにさっきよりも少し早めに走る。
休んだ分、さっきよりも走れるかと思ったが蓄積した疲れはそんなすぐに取れるわけもなく、ヘトヘトに。
でもあと少し……!
時間をチラッと確認するとあと2分で予鈴だった。
予鈴が鳴る前に校門を超えれたら、もう確定で間に合う。
お、間に合うじゃん。
そう思って少し足を緩めた瞬間、目の前の信号が点滅し始める。
やっべ、間に合えぇぇぇ!
心の中で叫ぶも虚しく、あと一歩のところで赤に変わってしまった。
しかもここは交通量が多く、青に変わるまで結構時間がかかる。
あぁ終わった……もうこれ間に合わん……。
「はぁはあはぁ……」
膝に手を当て乱れた呼吸を整える。ふくらはぎも少し張った感じがする。
「はぁ……」
もう少しで間に合ったのにな……。
少し離れたところから小さく予鈴の音が響いてくる。
どうせ遅刻するならちょっと休憩していこっと。
俺は信号が青になってもまだ疲れていたので少し座って休憩することにした。
もう遅刻は遅刻だし、1時間目に間に合えばそれでいいという思考になりスマホを取り出し、かいた汗をタオルで拭きながらツニッターを覗く。
【遅刻確定】
とあきななのツニートに引用で一言呟いてスマホを閉じると信号が青になったのでゆっくりと重い腰を上げて歩き出す。
あきななの言った通りになってしまって悔しい気持ちはあるが、今は疲れてそれどころではなかった。
この後の体育祭の練習大丈夫かなと不安になりつつも俺はようやく学校に着くことができた。
靴を履き替え教室に向かい先生に注意されながら、席に着く。
まだ授業は始まっておらずホームルーム遅刻しただけで済んでよかったと安心すると再び疲れが押し寄せてきた。
「はよ七緒」と光が肩を叩いて元気そうな声音で挨拶をしてきた。
なんとも朝から爽やかだこと。どうやったら朝からそんな爽やかな笑顔を振りまけるの?
光とは対称的に疲れている俺は元気に返す気力がなく、「お゛はよ゛ぉ゛」と今にも野垂れ死にそうな声が出る。
「今にも死にそうな声じゃん。顔も滅茶苦茶疲れてる顔してるし」
「まだギリ生きてます……」
疲れて普通に座るのもきつくて、俺は机にだらぁっとスライムのように溶けながら家から持ってきた飲料ゼリーを飲む。
「んで、昨日は何時に寝たんだ?」
「さ、3時……」
昨日俺の事を心配してくれていたから余計に気まずくて目を逸らすと光は、ため息すらつかずなんの言葉も返ってこなかった。
俺は怖くなり、チラッと横目で光の表情を伺ってみることに。
「ぷはっ、何その顔。フレーメン反応した猫みたいになってるよ。くっ……ははは、あはははは。いでぇっ?!」
光の驚き口が開いて困惑してる感じの表情を爆笑していると頭を叩かれた。
「お前マジで馬鹿なんじゃねぇの?! 今日体育祭の練習もあるから睡眠不足はまじで危ないって、倒れるぞ?」
「いやぁはは、まぁ何とかなるでしょ。それに無理そうならちゃんと休むから大丈夫大丈夫」
「はぁ、まじで言ったからな? 自分の体調はしっかり自分で管理しろよ?」
「うん」
1時間目の始まりを告げるチャイムが鳴ったので光は親の言うような事を口にすると席に戻っていった。
俺はツニッターを開き今の面白かったフレーメン反応の事をツニートした。
【友達に3時に寝たって言ったらフレーメン反応した猫みたいな表情になってめっちゃ笑ったwww】
すぐに先生が来たのでスマホを閉じ、焦って授業の準備をした。
寝不足と朝から猛ダッシュで来たからか1時間目から眠気がマックスに到達する。幸い、体育祭の出場種目についての話し合いで俺の出る種目は早々に決まったので安心して眠る事が出来た。
「おい、七緒起きろ。おい起きろー!」
「んぇぅっ?!」
光の呼ぶ声で俺は目を覚ます。時計を見ると1時間目が終わっていた。
あぁ結局寝ちゃったのか。全身が重く感じ、朝の猛ダッシュの疲れは取れるどころか増しているような気がした。
「おい、急いで着替えろ。次全体練習だぞ」
「あ、やば」
周りを見たら女子の姿はもうなく、教室にいる男子達はもう着替え終わろうとしていた。
急いで着替えると、他の人は俺を置いて既にグラウンドに出ていたのだが、光だけは待っていてくれた。
「はぁ、早くいくぞ」
「ごめん、ありがと」
こいつはなんで俺にこんなに優しいのかよくわからないが今はそれがありがたかった。その優しさに何度救われたことか。起こしてもらわなかったらまた怒られていただろうし、ノートも写させてくれるし感謝しかない。
グラウンドに出るともう既に他の学年の人も集まっていた。今日は全体練習とかで開会式とかの並ぶ順番とか位置とか流れを練習するらしい。
正直言って面倒くさいし楽しくもなんともないのだが、これやらないと後からもっと面倒くさくなるからな。
開会式の並びで、あらかたの流れが一回終わり、その場に座って休憩する時間が来た。
結構暑いし、ずっとその場で立っとくのってやっぱりきついな。小、中でも同じような事はあったが、やっぱり慣れない。
『休憩終わります。起立!』
マイクを使った先生の声の指示通りにみんな一斉に立ち上がる。
俺も周りに遅れないように腰を上げたのだが、頭がぐわんとした瞬間視界が真っ暗になり身体に力が入らなくなる。
そして次の瞬間、身体に衝撃が走る。
何が起きたのか分からず、真っ暗な視界でキョロキョロと目を動かしていたら少しずつだが視界が戻ってきた。
見渡すとこちらを心配そうに見ている人たちや先生がいて俺はどうやら光の腕の中にいた。
どうやら地面に完全に倒れる前に光が支えてくれたみたいだ。
「……か?! ……ぶか?」
耳が曇っていてあんまり声が聞こえない。耳の中に水が入った時みたいだ。
「か? ……な…………七緒大丈夫か?」
「あ、あぁうん。大丈夫」
やっと聴力も戻ったことで返事もできた。
「ありがと」
身体を支えてくれた事にお礼を言って立ち上がろうとすると先生に「念のため保健室で休んできなさい」と言われ、先生に肩を貸してもらいながら保健室に行くことになった。
正直、もう普通に歩けるから少し周りからの視線が恥ずかしかった。
保健室のベッドに行くと速攻で眠りにつき、起きたのは午後の授業が終わる頃だった。
やっぱり睡眠不足ってよくないな。それにプラスして朝走り過ぎた事も原因だと思う。ちょっとちゃんと寝るようにしないと本当にまずいかもしれない。
【睡眠不足で立ち眩みしてぶっ倒れたんだけど、気付いたら放課後になってた件】
てきとうにツニートして教室に戻るともう教室には誰もいなかった。と思ったら光がいた。
「あ、七緒大丈夫か? 荷物まとめといたぞ。あと、これ今日の授業のノートコピーしといたやつな。まじでちゃんと寝ろよ。今日も夜更ししたら明日はノート写させてやんないからな?」
「は、はい……」
「じゃな」
光はそう捲し立てると今日もバイトがあるのか急ぎ足で帰っていった。
そこまでして俺に優しくする理由がまじでわからんけど凄くありがたい。
光に言われて改めて今日はちゃんと早く寝ようと思ったが、保健室で寝ていたから寝れるか微妙かもしれない事に気付いてしまった。
まぁ光の事だし何だかんだ見せてくれる気はするんだけど。
夕日が差し込み始めた誰もいない何だか寂しい教室をのんびりと見渡しながら、机の上の荷物を手に取り帰ろうとした瞬間。
扉の方から人の気配を感じ首を後ろに回す。
「あ、柊くんだ。体調大丈夫?」
「あぁうん。なんとか」
声を掛けてきたのは同じクラスの七月明奈さんだった。特別親しい訳ではないが、陽キャで明るい性格の彼女からたまに話しかけられる事があるその程度の仲。
何か忘れ物でも取りに来たのだろうか?
鞄を手に取り帰ろうと七月さんの隣を通った瞬間、「ねぇ」といつもの元気な明るい声とは違い、少し緊張したような声音で呼び止められた。
「ん?」
何だろうと七月さんの方に向き直ると目が泳いで何か言いたそうな、迷っている感じの様子。
こんな雰囲気になったことは今まで無くて、俺はどうしたらいいのかわからず困惑するしかなかった。
普通に帰るわけにもいかないし、めっちゃ気まずい。
首を傾げて眉を八の字にしていると何か覚悟が決まったのか、七月さんは一度頷いてスマホを持っている手に力を入れる。
「あのさ……もしかして、柊くんって配信者の『ragi』……だったりする?」
「え……?」
スマホを見せてくる七月さんの唐突な質問に俺は身を硬直させる。
聞き間違いかと思い、七月さんの顔からスマホの画面に恐る恐ると視線を移すとそこには『ragi』と書かれたツニッターのSNSアカウントが確かに表示されていた。
「……え?」
なんでバレた……?
突然の事に俺は戸惑い否定することを忘れていた。
「その反応、やっぱり当たり?」
少し不安げな表情だった七月さんはニヤッと口角を上げて、あざとく首を傾げ上目遣いでずいっと距離を詰めてくる。
「え、あぁいや違うけど?」
「嘘、下手くそだね」
「いやだから違うけど、誰の事言ってるの?」
何か証拠でもあるかのように自信満々な表情を浮かべる七月さんに俺は額に汗をかく。
「そんな嘘ついてももう遅いよ。だってもうその反応で確信したんだから」
七月さんはスマホで口元を隠し、目を細めて言葉を続ける。
「まずこの名前、柊七緒の『らぎ』の部分。そして次によく聞いたら声が似ていること。極めつけにはツニッターの今日の投稿、これさっきの事でしょ?」
「えぇ? た、たまたま同じような人がいたんじゃない? ほら、日本って広いからさ」
面倒くさがって安直な活動名にした過去の俺を呪いたい。
滅茶苦茶に俺とragiが同一人物という証拠を揃えてきていてもう言い逃れるのは無理かもしれなかったが、素直に認めるのも恥ずかしい。
「それに昨日言ってた年齢、まさか同級生だとは思わなかったよ」
「え? 昨日……?」
「あっ……」
七月さんは失言してしまったというようにあからさまな表情をして目を逸らす。
「俺年齢の事配信で言ってないぞ?」
もうここまで来たらどれだけ否定しても多分もうバレてるので俺は七月さんの失言を追求することにした。
ただで俺が認めると思うなよ。
年齢を知っているのは仲がいい配信者とかだけだ。女子だと若い方が伸びやすかったりするが、男はあまりメリットがないので俺は公言していない。裏で話すときに聞かれたら答えるくらいだ。まぁ普通に学生とは言っているが。
そう、つまり年齢の事を知っているということは七月さんも配信者ということ。そして耳を凝らして聞いてみるとどこか聞いたことのある声。
昨日、昨日……あっ……つい昨日長い時間聞いていた声。
「あきなな?」
「ッッ!?」
昨日長い時間一緒にゲームコラボをしていた活動者の名前を試しに呼んでみるとわかりやすく肩を跳ねさせた。
「あ、やっぱり?」
「ち、違うけど?」
さっきまでの悪戯っ子のような笑顔はどこへやら。引きつった表情になっていてバレバレだ。
うん、これ確定だ。七月さんはあきななだ。七月明奈、下の名前と苗字合わせてあきななか。俺と名前の付け方ほぼ同じじゃねぇか。
「知ってはいるんだ?」
「ま、まぁね」
それでもまだ認めず否定してくるので少しからかうことに。
「そういえば、あきななってホラーゲーム苦手で子供っぽいよね」
「はぁ!? 苦手じゃないし! ただ、音が大きいのが苦手なだけだし! 子供っぽくないし!」
「やっぱあきななだよね?」
簡単に引っかかった。こいつアホなのか?
あきななは子供っぽいと言われるのが嫌らしく、配信でもよく否定していた。
「い、いや私はあきななの熱烈なファンなだけだし!……」
「ファンならあきななの魅力的で可愛いところをこんな風に否定しなくない?」
「……確かに……えっ魅力的で可愛い?!」
褒めたらスマホで口元を隠しもじもじして嬉しさが滲み出ている。
もうアホを超えて少し可愛く見えてきた。
「もう帰っていい?」
「あぁ! ちょっと待ってよ!」
ふと帰ってから今日の授業の内容をノートに写さないといけないことを思い出したので、俺は教室から出ると直ぐ後を七月さんが追ってきた。
「んで! 結局柊くんってラギくんなんだよね!!?」
え、あれだけ共通点見つけて自信満々そうなのにまだ聞いてくるのか。
本人の口から「そうだよ」と言わないと一生聞いてきそうだ。それは中々に面倒くさいしみんながいる前で聞かれるのも想像したら嫌すぎたので認めることにした。
「あぁうん。まぁそうだよ」
「やっぱりー!!」
自分が失言したのはもう忘れたとでもいうかのような、予想が的中して喜ぶ七月さんを横目に俺は「他の人に言わないでね」と一応釘を刺す。
まぁ、『柊くんって配信者の「ragi」なんだよ!』と言ったところで皆『え、誰?』ってなるのが落ちだ。
でも興味本位で調べる人がいた場合、フォロワー少ないし底辺配信者だって罵られたり馬鹿にされる可能性があるので一応ね……。
俺はメンタル強い訳じゃないからそんな事言われたら学校いけなくなっちゃうかもしれない。
まぁ俺も昔は本気でやってたけど今は趣味だし、別にフォロワーが多くなくても楽しければいいというスタンスでやっているのでその頃と比べればダメージは少ないか。
用は済んだだろうと思い俺はこのくらいで切り上げることに。
「んじゃ、またねあきなな」
「うんまたね!」
「あきなな呼びしてんのにナチュラルに反応するじゃん……アホか」
「あ……ってかアホってなんだアホって!」
「そんなんだから恋人出来た事ないんじゃ?」
あきななもとい、七月さんはまじで無性にいじりたくなる性格してるので思わず煽ってしまった。反応が一々面白いし怒っているんだけど可愛いと感じてしまう。
「はぁ?! ラギくんだって昨日いないって言ってたじゃん!!」
ぷんすかと人差し指を俺に指して指摘してきたのだが、全く怖くない。
というか、
「もうお前隠す気ないだろ……」
「え、あ……。そ、そうだよ。私が『あきなな』だよ……」
「ですよねー」
もう隠すのは無理とようやく悟ったのか正体を明かしてきた。
やっぱそうだよねぇぇぇ。
まさか昨日一緒にゲームコラボした配信者のあきななが同じクラスの七月明奈だとは思わなかった。
こんな偶然あるんだなと改めて驚きの感情が押し寄せてくる。
「だ、誰にも言わないでね?」
「あぁうん。そりゃお互い様だしね」
「それじゃ、また」
「う、うん……。バイバイ」
小さく手を振ってくる七月さんに気恥ずかしかったが俺も手を振り返し別れを告げる。
七月さんとこんなに喋ったのは何気に初めてで、クラスで喋る相手と言えば光くらいしかいなかったので正直嬉しかった。
まさか身バレするとは思ってなかったし七月さんがあきななだとも思わなかったが。
それにしても七月さんは失言さえしなければ俺が気付くことはなかったと思う。
七月さんはしっかりアホでやっぱりあきななだなと苦笑いしながら俺は駆け足で家に帰った。
授業の内容をノートに写し終わってツニッターを開いてみると、朝の遅刻と放課後の倒れたことのツニートに結構な人が反応してくれていた。
中には昨日あきななの方のコメント欄にいたリスナーさんもいた。そしてフォローもしてくれていて嬉しい。
ツニートに対してのコメントに返事をしているとあきななからも来ている事に気付く。
【やっぱりちゃんと遅刻してたw しっかり寝なねー!】
遅刻してないあきななに煽られるが、俺の身をしっかりと心配してくれているので嫌な気はしない。
【うっさい。はいはい】
それにしてもよく七月さん遅刻してないの凄すぎん……? ショートスリーパーなのかな? だとしたら羨ましいな。




