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第10話 裏での個通 

 

「はぁぁぁぁ疲れた」


「お疲れ七緒」


 俺とは対照的に涼しそうな顔をしながら光が労いの言葉をかけてくる。


 そして中村はというと、地面に大の字でくたばっていた。


 俺よりも体力少ない人っているんだ……と少し嬉しく思っているとそんな感情を読み取ったかのように光が「1回徒競走しただけなのに何でそんな疲れてるんだよ」と毒を吐いてきた。


「昨日夜遅くまでアニメ見らずに早く寝ればよかった……」


「お前も夜更しするタイプかよ。こうなんでヲタクってやつは……」


 理解できないという風に頭を抱える光だが、逆に俺から言わせればなんでそんな夜更しせずにいられるんだろうかと疑問に思う。


「分かるよ、俺も明日予定あるから早く寝ないとなって思うけど色々やっちゃうよね。それで次の日後悔すんのよな」


「そう! 柊君なら分かってくれると思ってたよ」


 勢いよく起き上がり手を差し伸べてきたので俺はその手を取り中村と握手を交わす。


「ただの馬鹿じゃん」


 それを言われたら何も言い返せない。


「いやだってさ? 学校終わってから宿題とか終わらせたら好きな事するじゃん? そして気付いたら12時とか過ぎてんだよ?」


「わかる、1日短すぎるよな」


「そう! 1日が24時間なのが悪い、俺達は悪くない!」


 うんうんと頷いていると光は「ダメだこいつら」という表情を向けてきた。


 それを見て中村は「柊君とは仲良くなれそうだ」と呆れ笑いを向けてくる。


「ごめん、なんかお前に柊君って呼ばれるの凄い気持ち悪いから下の名前で呼び捨てでお願いします」


「あぁそれ俺も思ってた」


「なんでぇ?!」


「何でだろう、まじで何でか分からんけど鳥肌立つ」


「じゃ、じゃあ遠慮なく呼び捨てで呼ばせて貰うね。七緒、光! これからよろしく! 俺の事も海って呼び捨てで呼んで!」


 それを聞いて俺と光は目を合わせると「「よろしく、海」」と同時に告げ振り返り全力で校舎に向かてって走り出した。


「えっちょまた置いてかないでよ!」


 背中にそんな言葉を受けつつ俺達は意地の悪い笑みを浮かべながら先に帰っていった。


 新たに友達ができて嬉しい気持ちが湧くが本人には絶対言わない。言ったら100パーセントからかってくるだろうしね。


 まさか七月さんのお陰で面白い友達が増えるとは思ってもいなかった。





 昼休みになり、俺はご飯を食べながらさっき時間が無くて見れなかったあきななのshotsを開いてみるとなんと6.2万回再生され高評価も800を超えていた。リアルタイムでまだまだ伸びそうな感じがする。

 1個前のお兄ちゃんボイスの動画もまだ伸びていてそっちは16万再生もされていた。ツニッターの方はインプレッションが100万を超えていてフォロワー数も、もうすぐで5000人に行きそうな感じだった。


 ヤバすぎんだろ……。


 ここまでくると少し現実味がない。そして俺の方のshotsもまだ伸びていて、あきななに比べるとまだまだだが着実に登録者もフォロワーも増えていっていた。


 まぁ俺のshotsが伸びたのもあきななのお陰なんだけども。 あきななの投稿したshotsの概要欄、そしてコメント欄にも俺のshotsの動画URLが貼られていてそこから飛んできてくれる人が多い。


 そして伸びて普通にshotsを見てて流れてきてたまたま見る人も増えていってって感じだろう。


 嬉しいけど、ここまで伸びると少し怖い気もしたが七月さんはどう思っているんだろう。

 微かに震える手を抑えながらツニッターの通知欄を見てみるとヴァル界隈でそこそこ有名な人が俺の動画を引用リツニートしていた。


【たまたま流れてきたこのclip理論値過ぎて見てて気持ちいいw】


 そして俺の事をフォローまでしてくれていた。俺は急いでフォロバしてその投稿にいいねとリツニートする。


 嬉しくて引用リツニートで何か呟こうと思ったが何も思いつかなかったので諦めた。


「なんかいい事でもあったのか?」


 俺がスマホに夢中になっていると後ろから声がして俺は反射的にスマホの画面を隠す。


 前もあったなこんな事。


「あ、もしかして七月さん関連? よかったなぁ」


 俺がまだ何も言ってないのに光が勝手に決めつけて隣の席に座って飯を食い始めた。


「ええぇなになに、七月さんと何かあったの聞かせてよ?!」


「おい、馬鹿。声がでかい!」


 ただでさえ最近周りから変な目で見られている事が多いのに、そんな大きな声で変な誤解が生まれそうな事を言わないで欲しいと反射的に叱責する。


 海の言っている事はあながち間違いではないが、ここは否定しておこう。


「違うよ、ゲーム関連でね」


「なんだ七月さん関連じゃないのかー」


 否定すると残念そうに、でも少し嬉しそうに唇を尖らせながら前の席でパンを頬張り始めた。



 ナチュラルに一緒にご飯を食べ始めたぞこいつ。凄いな、今日友達になったばっかりなのに海って実はコミュ力バカ高いのでは……?



「てか海もゲーム始めてみれば? そしたら七月さんとも仲良くなれるんじゃないか?」


「ほぅ、いい案だな光よ。よし、俺もゲーム始めてみるぞ!」


 光の提案に海が目を輝かせ息まいていたので俺は一応聞いてみることに。


「因みにゲーミングPCとかデスクトップPC持ってるの? じゃないと一緒にできないけど」


「よし、諦めます」


「早いな!? なんで!?」


 海の諦め宣言があまりにも早すぎたのでいつもクールな光が思わず大きな声でツッコミを入れていた。


 その光景を笑っているとギロリと光に睨まれたので直ぐに真顔に戻る。


 怖い……。笑ってスミマセン。


「高くてバイトしてない俺には無理なのだよ……」


「なに? そのゲーミングPC? っとかデスクトップPCってそんなに高いの?」


「まぁ、良いやつは100万とかするけど、10万もあればゲームするには十分なの買えたりするよ」


「たっか……」


 どうやら海は理解しているが、こっち側の世界に疎い光は何の事か分かっていなかったらしい。

 値段にも衝撃を受けていた。


 光のこんな表情をあまり見た事が無いので新鮮で少し面白い。


 まぁ、普通に生活してたらノートパソコンくらいしか知らないだろうしな。



「いやそれプラスモニター、マウス、キーボードとかヘッドホンとか必要じゃん!?」


「あーそうだね忘れてた。マウスパッドとかね。あ、机とか椅子も無かったら買わないとだね。勉強机があるならそれでもいいかも。俺も最初勉強机とそれについてた椅子でやってたから」


 海に指摘されて思い出した。

 確かに、デスクトップPCだけ買ってもゲームは出来ない。モニターを買わないと画面が映らないし操作するマウスやキーボードも必要で更にお金がかかる。


 その点、モニターも別に買わなくてよくて、キーボードとかもいらないスペックの高いゲーミングノートPCを買えばいいんじゃない? と提案してみると海が不満そうな顔を向けてきた。


「うるせぇ死ね金持ちが」


「バイト頑張っただけでなんでこんな言われなあかんのや」


「へ~結構金かかるんだな……。凄いな、七緒と七月さんは。……海はバイトしないのか?」


「むり! キツイ! しぬ! 人と喋るのやだ」



 海の事はまだよくわからないが、癖のある性格だなと俺と光は肩を竦め苦笑いした。





 放課後、新しい友達が出来たがいつもと変わらず俺は家に帰る。特別何か友達になった記念に遊びに行ったりご飯を食べに行ったりはしない。


 そんなの一々してる方がおかしいが。


 そんなこんなで家でスマホを開き再びニューチューブを開き、あきななのshotsのコメントを覗きに行くことにした。



【上手くて気遣いもできてイケメン過ぎだろ】


 はっ、これ俺の事言ってるの? 嬉しい……。


【レオナの顔真っ赤で草】


 めっちゃ怒ってただろうなぁ。


【敵もスコアではラギに負けてるんの草】


 対戦MVPは俺だったんだっけ。


【圧倒的有利な所で1vs4されて負けてる時点でダサいのに、さらに初心者のあきななの事煽るとかダサいにもほどがあるだろwww】


 おぉう……自分がこんな事言われたらちょっとやだな。


【めっちゃスカッとした】


 それならよかった。あきななの動画の魅せ方上手いよね。リスナーになるべくストレスを感じさせないようにテンポよく、コミカル編集してて凄いなほんと。


【0:27のあきなな即落ち2コマやんwww】


 あの時はまじで面白かった。


【これは惚れる】


 お世辞でも嬉しいな。




 見ていくとあきななのshotsなのにも関わらず、俺の事についても結構書かれていてびっくりした。しかも否定的な意見は殆ど無く、褒めてくれるコメントばっかりで俺は自然と笑顔になっていた。因みにツニッターのコメントも同じような感じだった。



 まぁ中には【言い返すのはちょっとダサい】とか【女の前だからかっこつけたかっただけだろ】とかいうコメントもあったがあんまり気にならなかった。俺の1vs4clutchの動画の方にも【たまたまだろ】とか【運がよかっただけで草】【敵が油断してたからでしょ。こんくらい誰でも出来る】とかそういう変なコメントも来ていたが、これだけ色んな人に見てもらえていたら変な人も湧いてくるだろうと割り切る事にした。


 と言ってもまぁ、若干は傷つくわけで嫌な気分にはなる。



 というか、バズった後に配信してないから配信するのがちょっと怖い。だってそんなにしょっちゅういいプレイをしている訳でもないし、ずっと面白い訳でもない。

 みんなの期待に応えなきゃならないというプレッシャーも感じる。


 あきななに比べたら全然伸びていない俺ですらこんななのに、一体七月さんはどんな気持ちでいるんだろう。きっと俺が想像もできないくらいなんだろうな。


 流石に明るくて元気な七月さんでも、こんな事は初めてだろうしやっぱり配信するのが怖かったりするのか気になった。



 今日も配信の予定はないみたいだし、ちょっと裏で一緒にゲームでもしながら話してみようと思い、俺はあきななに連絡する。



 ragi:【今日配信する予定ないなら裏でちょっとゲームしない?】


 そんな直ぐに返信は来ないだろうと思ってチャットを閉じようとしたら返信が来た。


 あきなな:【え! いいよ! やろやろ! ヴァルやろ!】


 ragi:【おっけ、じゃあ21時30くらいで大丈夫?】


 あきなな:【おけおけ~!】



 フッ軽だなぁ。



 陽キャの波動をメッセージ越しにも感じ、俺とは全然違うなと一人勝手にダメージを負った。





 予定の時間数分前にpcを立ち上げ、いつでもゲームができる状態にしているとあきななからチャットが飛んできた。

 あきなな:【準備出来たら言って~】


 Ragi:【準備できたよ】


 あきなな:【じゃ通話かけるよ?】


 なんだろう、いつもはサーバーのボイスチャンネルでだからだろうか。今日は裏で完全に二人きりの通話。異性のしかも実は同じクラスの人と個通という文字が頭をよぎり少し緊張する。


 喉を鳴らして【うん】と返信すると、一泊置いて通話がかかって来た。


『もしもーし』


「もしもし」


『あ、よかった聞こえてた』


「うん」


『なんかちょっと緊張するね』


「あきななも緊張とかするんだね」


『するわい! 私をなんだと思ってるんだ?!』



「あはは」とお互い笑い少し緊張が解けた気がする。それにしてもあきななも緊張しているってことは少し意識しているってことなのか?



『てかてか、あきなな呼びなんだ』


「え? まぁうん、ここで七月さん呼びに慣れてたら配信でも七月さんって言っちゃうかもしれないから」


『あーなるほどね! じゃ、私もここではラギくんって呼ぶね!』



 学校とネットでの区別はしっかりとつけとかないとね。


 七月さんに身バレしてからあんまり特定されそうな事は呟かないようにも気を付けている。


『私、クラスの男子と個通するの何気初めてなんだよ!』


「え?マジ意外だな。あー……そういえば彼氏もできた事ないって言ってたっけ」


 それを聞いたときはあきなながまさか七月さんとは思っていなかったから普通にそんなこともあるよねと思っていたのだが、それを知ってからは少し不思議に思う。


 七月さんともあろうモテている人に彼氏がいたことないなんて果たして本当にあり得るのだろうか。


『うんそうなんだよね』


「因みに好きな人とかは?」


『できた事ないね!』


「えぇ意外」


 俺ですらできた事あるのに、七月さんが恋愛を経験してないのは少し勿体ない気もした。まぁ俺はもう恋愛なんて懲り懲りだけど。


「てか今日いつもより声低い?」


『あーうんそうかも、まぁオフですし? ラギくんもいつもより低いじゃん』


 言われてみれば確かに、無意識の内に声が低くなっていた。


「確かに」と返すとあきななは「でしょ?」と静かに優しく笑う。


 なんでだろう、気が知れた相手だからリラックスしてるのかな。


 いつも子供っぽいのに、今話しているあきななは少し大人っぽい雰囲気を纏っている。


『てかもーそんなことより取り敢えずヴァルしよ!』


「おっけー」


 あきななの雰囲気に釣られて俺も少し静かな雰囲気になる。




 その後俺達はのんびりとランク以外のモードで普段使わないようなキャラを使ったり、あきななが集中している時に後ろから敵に撃たれたかのように銃を打って驚かせたりして楽しんだ。




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