表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

第4章 ― 愛とともに生きること

ナラと過ごした夜は静かだった。

沈黙の中で温かく、私は不思議なほど安定していた。

少なくとも、自分の体がまだ私の言うことを聞いているふりをするくらいには。

私はすでに着替えを終え、彼女を待っていた。

一緒に大学へ行くために。

でも――

彼女が部屋に入ってくる姿を見ることはなかった。

床が、突然私から遠ざかった。

まるで電源を切られたように、私はそのまま崩れ落ちた。

私の状態はひどかった。

何日も眠っていない。

愛情も抱擁も触れ合いもない。

私の体を動かしていたものが、何もなかった。

その代償は残酷だった。

これまでも何度か経験したことはある。

でも今回は違った。

もう、私を生かし続けてくれる両親はいない。

やがて、かすかな意識が戻ってきた。

まぶたは石のように重かった。

周囲は完全な暗闇だった。

それでも、誰かがそばにいる気配を感じた。

静かで、安定した呼吸。

— ここは……どこ……?

私はかすれた声でつぶやいた。

「病院よ、かわいい子」

女性の声だった。

知らない声。

でも柔らかい強さを持っていた。

どこか外国のような響き。

音節を優しくなでるようなアクセント。

私はその声に集中しようとした。

でも頭がぐらぐらと揺れていた。

まるで世界が傾いているみたいだった。

— 目が……開けられない……

私は弱々しく言った。

「開けてほしくないの」

— 誰かを……抱きしめないと……

— 私……回復できない……

「あなたはとても弱っているわ」

彼女は静かに言った。

「リラックスして。アサコがあなたを抱きしめて眠っている」

少し間を置いて続けた。

「何日もこのベッドを離れようとしなかったのよ」

「感じない?」

私は混乱しすぎていて、何も感じられなかった。

でも、アサコがそばにいることだけは分かった。

胸の奥が、ほんの少し温かくなった。

笑おうとした。

でも顔は動かなかった。

— 今日は……何日……?

私はかすかに聞いた。

「五千六十五年、第五月、十六日」

五日。

五日間、意識がなかった。

その間ずっと――

アサコは私のそばにいた。

残された私の命を、

自分の愛で支え続けながら。

でも、それでも足りない。

どれほど彼女が努力しても、

この病気はいつも、

人が与えられる以上のものを求める。

私はもう一度、目を開けようとした。

そして失敗した。

— アサコ……ありがとう……

— 愛してる……

声が震えた。

— お願い……

— 私を……両親のところへ行かせて……

涙があふれた。

— 誰にも……私を救えない……

— 私は幸せだった……

— こんなにも私を愛してくれる人たちに出会えたから……

私は泣いた。

「彼女には聞こえていないわ、かわいい子」

女性は言った。

声が少し震えていた。

「深く眠っているの」

— じゃあ……伝えて……

— 私がどれだけ彼女を愛しているか……

「だめ」

— お願い……

「あなた自身が言うのよ」

彼女はやさしく言った。

「あなたを愛している私たちの愛が、

あなたを生かすには足りないと思う?」

私は苦しそうに息をした。

— あなたは……分かっていない……

「もし私が手伝ったら?」

彼女の手が、私の顔に触れた。

その瞬間――

熱が体を走った。

まるで誰かが、

私の魂を体に戻したみたいだった。

体のすべてが、ゆっくりとほどけていく。

抗えないほどの安らぎ。

一瞬、私は思った。

これは――

死なのかもしれないと。

意識が遠ざかる中で、

彼女の声が聞こえた。

遠くから。

まるで魂のすぐそばから。

「あなたを愛している人はたくさんいるのよ、ヨーコ」

__________

私は目を覚ました。

完全に。

生きたいという飢えに満たされて。

アサコの温かい腕の中に包まれていた。

彼女は私の上で、ぐっすり眠っていた。

私はそっと彼女の頬にキスをした。

彼女はゆっくり目を覚ました。

— お腹すいた。

— 家に帰りたい。

彼女は息を詰まらせた。

「信じられない……」

彼女の泣き声は、私の胸を締めつけた。

私はただ、彼女の疲れた肌を撫でた。

やつれた顔を。

私のせいで、

彼女がどれほど苦しんだのか。

それは見ないふりのできるものではなかった。

夜が、静かに病室を包んでいた。

私たちは二人きりだった。

そして私は――

いつものように輝いていた。

でもアサコは弱っていた。

私は笑っていた。

そして彼女は、

少しずつ光を失っていた。

まるで――

愛しすぎることには、

代償があるかのように。

「あなたは、まるで私を深く愛しているみたいな目で見るわね」

アサコは静かにつぶやいた。

— 愛してる。

私はためらわずに答えた。

彼女は少し微笑んだ。

「あなたは、幼いころのナラを思い出させるわ。

あの子が私に向かって、まるで私が世界の中心みたいに笑っていた頃を」

彼女は遠くを見るように言った。

「こんな瞬間が、終わらなければいいのにって思っていた」

— どうして終わる必要があるの?

彼女は小さく息をついた。

「愛は変わるものよ。

いつも変わる」

私は首を振った。

— 私は変わらない。

— これからもずっと、同じ目であなたを見る。

彼女は、まるで危険な言葉を聞いたように私を見つめた。

「それって……つまり、

私はずっとあなたの目の中にこの愛を見つけることになるってこと?」

私はゆっくり微笑んだ。

彼女の体が、わずかに震えた。

「困るわ……」

彼女は正直に言った。

「どうしてこんなにあなたを愛してしまうのか、理解できないの。

こんなの、抵抗できない」

— 抵抗してほしくない。

彼女は小さく笑った。

「どうやってそんな必要を抱えて生きているの?」

彼女は私の顔を見つめた。

「こんな笑顔を見せられたら、誰だってあなたを愛してしまうわ。

まるで……催眠みたい」

— 分かってる。

私は答えた。

— 母も同じことを言っていた。

少し間を置いて続けた。

— でも、誰にでもそうなるわけじゃない。

— 私は、私を愛してくれる人にしかこうやって笑わない。

彼女は私の頬にキスをした。

「本当に怖かったのよ……」

彼女は震える声で言った。

「あなたを失うんじゃないかって思って」

彼女は私を見つめた。

「今、私が何を感じているか分かる?」

彼女は続けた。

「あなたは突然現れて……

そして今では、あなたへの愛が――」

彼女は言葉を選んだ。

「自分の娘への愛より強いんじゃないかって思うくらいなの」

私は静かに首を振った。

— 強いわけじゃない。

— ただ違うだけ。

私はやさしく言った。

— ナラなら理解する。

— 彼女も同じものを感じているから。

アサコは眉を寄せた。

「でもナラは嫉妬するわ」

彼女は続けた。

「そして、あなたも嫉妬するでしょう?」

私は少し恥ずかしくなって微笑んだ。

— 嫉妬は、

— 大切なものを失うのが怖いだけ。

彼女は小さくうなずいた。

「でもナラに恋人ができたら、

その人に時間を使うようになる」

彼女は真剣な顔で言った。

「あなたにとって、それは危険かもしれない」

私は少し考えてから答えた。

— 私は彼女をとても愛している。

— だから、それで私が死ぬとしても……

— きっと幸せ。

彼女は首を振った。

「嫉妬は?」

— 私は他人のものを欲しがらない。

— ただ、自分の愛を求めているだけ。

彼女は笑った。

「面倒な子ね」

私たちは一緒に笑った。

でもそのあと、彼女は真剣な顔になった。

「あなたは私を見るとき、

まるで私があなたのものみたいな目をする」

私は彼女の頬に触れた。

— あなたは私のものだよ。

私は静かに言った。

— あなたに触れると、あなたの感じていることが分かる。

— ときどき、あなたが考えていることも、少しだけ。

アサコは私の指を絡めた。

「あなたの知性には、時々怖くなるわ」

彼女は言った。

「でも同時に、

とても単純なことには信じられないくらい純粋」

彼女は優しく微笑んだ。

「あなたは、とても美しい謎ね」

私は軽く笑った。

— 今夜ここにいた女性に会いたい。

私は言った。

— 彼女は私をとても愛していた。

— でも私は目を開けられなかった。

アサコは首をかしげた。

「誰も来ていないわ」

— あなたは眠っていた。

— ついさっきのこと。

「たぶん看護師でしょう」

彼女は言った。

「あなたのこと、前の入院のときから覚えているのよ」

— ほぼ一年前……

私は体を起こし、

点滴をためらいなく外した。

「大丈夫なの?

あなた五日も昏睡していたのよ!」

— 完璧。

— ただ、すごくお腹が空いている。

私は笑った。

— 行こう?

「医者が退院を許可しないと……」

— 彼らは私の病気を理解していない。

— ただ私が死なないように水分を入れているだけ。

私は彼女を見た。

— ナラに会いたい。

彼女はついに折れた。

私たちは夜勤の看護師を探した。

でも誰も、この部屋に来ていなかったと言った。

もしかすると私は夢を見ていたのかもしれない。

――あるいは。

ナラと川浦さんは、涙を流しながら私を迎えた。

二人とも、ずっと私のそばにいたのだ。

昼間はアサコとナラ。

夜は、仕事のあとに父親が。

その瞬間、私は確信した。

私は家族を見つけたのだと。

それは本物だった。

そして、とても美しかった。

回復したあと、私は自然に彼らと一緒に暮らすようになった。

そして私は愛情なしでは生きられない。

だから当然、私はそれを彼らに求めた。

面白かったのは、

私が父親に抱きついているのを見たときの

アサコの驚いた表情と――

隠しきれない嫉妬だった。

私は物事を少しずつ進めるタイプではない。

最初から、彼のところへ行った。

彼は真っ赤になり、完全に困っていた。

特に、妻がそれを見たときは。

でも次の日、

彼のほうから私を抱きしめに来た。

一週間後には、

家のすべてが、私のリズムに合わせて動いていた。

ナラと私が大学から帰ると、

アサコがソファで私を抱きしめる。

そして父が帰ってくると、

彼女は私を彼に渡し、夕食の準備をする。

私はよく彼の胸の上で眠ってしまった。

その二時間は、

私にとって生きるために必要な時間だった。

私は知っていた。

彼らの生活を変えてしまったことを。

そして同時に、

誰もそれを後悔しないことも。

だって――

愛することほど大きな喜びはないのだから。

ある夜、ソファの上で。

アサコは、みんながいつもより多く食べていることに気づいた。

彼女は冗談めかして言った。

「ヨーコがみんなのエネルギーを吸い取っているのかも」

でも次の瞬間、

彼女は私を引き寄せてささやいた。

「でもね……

私、今までで一番幸せ」

すぐに父とナラが言った。

「僕も!」

「私も!」

私は、いつものように微笑んでお礼を言った。

そして、父の最後の言葉を思い出した。

「私は、この世で一番幸せな男としてこの世界を去る」

父は、母のことを言っていた。

そして――

私のことも。

アサコは、私の涙に気づいて頬にキスをした。

「私たちの愛が足りないんじゃないかって……怖いの」

彼女は小さく告白した。

「あなたは、もっと必要としている」

彼女は私を強く抱きしめた。

「そして、あなたを失うことを想像するだけで……」

母はよく言っていた。

若い頃は、人生で一番つらい時期だったと。

何度も死にかけた。

そして祖母が、二十四時間ずっと抱きしめ続けてくれて、ようやく生き延びたのだと。

私はその話を知っていた。

病院のあと、私は一度大きく太った。

それから、また痩せた。

でも彼らには何も言わなかった。

誰も怖がらせたくなかったから。

「もっと愛を与える方法があるわ」

ナラが言った。

「口にキスするの。

彼女には彼氏が必要よ」

私は赤くなった。

何か言おうとした――その瞬間、

アサコが私の唇に近づき、そして止まった。

「ごめんなさい……」

彼女は震えながら言った。

「それはできないわ。

分かるでしょう?」

— 分からない。

私は正直に答えた。

本当に理解できなかった。

心から私を愛していると分かっている人が、

私を生かしてくれる唯一のものを拒むなんて。

でもその瞬間――

アサコは少し迷った。

そして――

唇が、私の唇に触れた。

私は動けなかった。

そして、応えた。

同じように。

強く。

まっすぐに。

温かく。

恐れもなく。

ためらいもなく。

彼女も応えた。

長く。

必死に。

やがて唇が離れたとき、

私たちは二人とも息を切らしていた。

「主人でさえ、こんなふうにはキスしないわ……」

彼女は恥ずかしそうにつぶやいた。

— ごめんなさい……

「でも……気に入ったわ」

彼女は微笑んだ。

「あなたのキスは……

まるで、それをするために生まれてきたみたい」

彼女は深く息を吸った。

「あなたとお母さんも、こんなふうにキスしていたの?」

私はうなずいた。

— 母は、私の愛がなければ生きられなかった。

アサコの目が涙で満たされた。

「どうしてもっと早く言わなかったの?」

彼女は言った。

「どこからその魔法が来ているのか分からないけれど……

あなたに感じるこの愛は、理屈を超えている」

彼女は涙を流していた。

「あなたと一緒にいるのは、本当に素晴らしい」

そして静かに言った。

「きっと、あなたは私から生まれた子なのね」

彼女は泣きながら微笑んだ。

「あなたは、自分が私の娘だと思える?」

私の涙が、答えだった。

「本当の両親のことは?」

彼女は尋ねた。

「どんな気持ち?」

— 同じように愛してる。

私は言った。

— まるで、あなたたちもずっと昔から存在していたみたい。

少し微笑んで続けた。

— 私はあなたを一か月しか知らない。

— でも……ずっと前から知っていたみたい。

アサコは優しくうなずいた。

「なら、遠慮しなくていいわ」

彼女は言った。

「私たちはあなたの家族なんだから」

— でも……

私は少し戸惑った。

— 口にキスするのは、

— 多くの人にとって特別な意味がある。

「それも、こういうキスならなおさらね」

ナラが笑いながら言った。

「だって、私まだこんなキスされたことない!」

アサコも笑った。

「でも、それがあなたに必要な愛の形なら」

彼女は言った。

「それでいいの」

そして夫のほうを見た。

「ただし――」

彼女は真剣な顔で言った。

「まだ主人にはキスしないで。

私がその考えに慣れる時間が必要だから」

私は笑いながら彼女を抱きしめた。

そのとき、ナラが私たちの隣に膝をつき、

冗談っぽく言った。

「つまりさ――」

彼女はにやりと笑った。

「私がヨーコにキスしても、

レズにはならないってこと?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ