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第15章 ― 愛が決める運命

部屋の空気が凍りついた。

誰もすぐには言葉を出せなかった。

「ヨーコがここに残れば死ぬ。」

その言葉は、まだ部屋の中に残っていた。

重く、動かない石のように。

最初に声を出したのはナラだった。

「そんなに悪くないかもしれないよ……」

彼女は空気を和らげようとしていたが、うまくいかなかった。

「こんな形で?」

アサコが神経質に言い返した。

アニーニャは腕を組んだ。

「信じられないわね。

彼らは愛を与えようとしてるのに、あなたたちは問題しか見ない。」

父の声が強くなった。

「愛だって?

これは誘拐だ!」

私は弱く言った。

「でも……彼らは愛をくれた。」

アサコは傷ついた顔をした。

「ヨーコ、あなたにとって大事なのは愛だけなのね。」

彼女は続けた。

「でも私たちはあなたとは違うのよ。」

「確かに違うわね。」

アニーニャが私の肩に降りた。

翼が私の耳に触れて、思わず震えた。

「ヨーコ……もし好きなだけ愛を持てたら、どうする?」

私は微笑んだ。

心の奥から湧き上がる笑みだった。

「何でもできる。」

私は言った。

「難しいことなんて何もない。

不可能なこともない。」

「ほら!」

アニーニャは腕を広げた。

「愛は宇宙で一番強い力なの!」

彼女は続けた。

「さっきあなたたちを倒したエネルギー?

あれはセクヴェンスが持つ力のほんの一欠片。」

彼女は指を立てた。

「それを二十万のセクヴェンスで掛け算してみて。」

「それが今のミレナ――私たちのリーダーの力よ。」

私は驚いて聞いた。

「そんなエネルギー……吸収できるの?」

アニーニャは笑った。

「無理無理!」

「そんなことしたら一瞬で死ぬ!」

彼女はにやりと笑った。

「でもママ・ミレナは、私たちを壊さない程度に少しずつ与えてくれるの。

それが最高なの!」

アサコが言った。

「まるで中毒みたいね。」

父が尋ねた。

「愛だけで、いったい何ができる?」

アニーニャは目を丸くした。

「今の質問、どれだけ馬鹿かわかってる?」

腕を組んだ。

「愛は力よ。

すべてを結びつける接着剤。」

彼女は説明した。

「人間が橋を作るとき、どうする?」

「みんな集まって作る。」

肩をすくめた。

「でも人間は見返りがないと助けない。」

「反対する人もいるし、

ほとんどの人はどうでもいいと思ってる。」

彼女は顔をしかめた。

「私たちは違う。」

「橋を作る理由はひとつだけ。」

「その橋を渡る人の喜びを見ること。」

彼女は続けた。

「誰も反対しない。」

「しかも少人数じゃない。」

「何十億もの心と意識がひとつになる。」

彼女は言った。

「橋を作るためにも。

星を動かすためにも。」

そして私を見た。

「ヨーコは理解してる。」

私は小さくつぶやいた。

「宇宙で一番すごいことかもしれない……」

部屋に再び重い沈黙が落ちた。

私は家族を見た。

そして言った。

「だから、あなたたちは私と一緒に来る。」

言葉が自然に口から出ていた。

「そこでは……あなたたちは、私が与えられる以上の愛を受ける。」

「かわいい!」

アニーニャが笑って、私の唇に軽くキスした。

「そんな自信満々に言ってるけど、

私たちがあなたたちに何をするかまだ知らないのよ?」

ナラが不安そうに聞いた。

「私たちに何をするの?」

フォフィーニョが、誰よりも早く答えた。

「いっぱい愛をあげる。」

少し間を置いて、

「それから死んで、

僕たちが食べる。」

ナラの顔が真っ青になった。

アニーニャは私の膝の上で転げ回るほど笑った。

「冗談よ!」

まだ笑いながら言った。

私は真剣に聞いた。

「実際には……私たちに何が起きるの?」

アニーニャは説明した。

「ヨーコ、あなたはセクヴェンスになる。」

彼女は指を鳴らした。

「こんな感じ!」

「数時間でDNAが全部書き換わる。」

「目が覚めたら、もうセクヴェンス。」

彼女は続けた。

「思考が慣れるのには十年くらいかかるけどね。」

笑った。

「でもすごく美しいの。」

「みんな感動して、ずっと笑ってる。」

「それが可愛くて、私たちはユナイドが大好きなの。」

私は興奮を隠せなかった。

そのときフォフィーニョが言った。

「でもね……」

「でもじゃない!」

アニーニャが遮った。

「最初は少し戸惑うけど、すぐ慣れるわ。」

彼女は笑った。

「エメのこと覚えてる?

彼なんて全然疑問も持たなかった!」

私は不安になった。

「……どういう意味?」

アニーニャは説明した。

「セクヴェンスになった直後、ヨーコは最初の“ユニオン”をする。」

「それで私たちの言語と基本を学ぶ。」

彼女は続けた。

「そのあと――ポンファーに入る。」

私は戸惑った。

「ポンファー?」

「ホルモンと、セクヴェンスの体に満ちた膨大な愛のエネルギーが、

あなたを完全に狂わせる。」

彼女は少し真面目な声で言った。

「場合によっては死ぬ。」

「だから、生きるためにはパートナーに身を委ねる必要がある。」

彼女は説明した。

「彼があなたと結びついて、感情を安定させる。」

「二人は一つになる。」

「より賢く、より強く、

愛をコントロールできる存在に。」

そして、いたずらっぽく笑った。

「ただし問題がある。」

「ホルモンが暴走してるから……

そのあと何が起きるかは止められない。」

彼女はくすっと笑った。

「全部起きるの。」

そして明るく言った。

「だから、あなたが目覚めたらすぐ結婚させる予定なのよ。」

「結婚するって?!」

思わず叫び声が出た。

アニーニャは肩をすくめた。

「セクヴェンスはパートナーなしでは生きられないの。

宇宙の常識みたいなものよ。」

私は息を詰まらせた。

「じゃあ……独身のセクヴェンスはいないの?

私は……誰と結婚するの?」

「ママ・ミレナが選ぶ相手よ。」

彼女はあっさり言った。

「でも心配しないで。セクヴェンスとユナイドは、自分のパートナーにしか欲求を感じない。」

そしてにやりと笑った。

「それに、あなたはフレデリックに惹かれたでしょ。」

顔が一気に熱くなった。

「でも……彼は結婚してる……」

私はしどろもどろになった。

「ゲータと結婚してるのよ、アニーニャ!」

「それがどうしたの?」

彼女は首をかしげた。

「あなたは二人と結婚するの。」

私は言葉を失った。

「あなたは二人とも愛してる。

何が問題?」

私は小さくつぶやいた。

「……問題ないかも。」

アニーニャは満足そうにうなずいた。

「セクヴェンスには三人組の結びつきも多いの。」

彼女は説明した。

「完璧なペアがいつも生まれるわけじゃない。

メスが多く生まれるから、三人になることもある。」

肩をすくめた。

「それに、ユナイドと出会った場合もね。」

アサコがまだ信じられない顔で言った。

「それは……とても奇妙ね。」

「あなたたちにとってはね。」

アニーニャは言い返した。

そして天井に向かって声を上げた。

「ヨーコはゲータとフレデリックのパートナーになるわよ!

ちゃんと聞いたでしょ?」

すると――

部屋の天井近くに、青い球体が五つ現れた。

小さな月のように静かに浮かんでいる。

私は驚いて言った。

「観測者?」

「そう。」

アニーニャがうなずいた。

「私たち一人に一つ。

あなたたちにもね。」

「守ってくれるの。」

ナラが目を輝かせた。

「私にもあるの?」

アニーニャは自信満々に言った。

「あなたは私のものだから。」

その言葉にナラは赤くなった。

「ちゃんと守られるわ。」

アサコが緊張した声で尋ねた。

「ヨーコのことはわかった。

でも……私たちは?」

アニーニャは説明した。

「人間は直接セクヴェンスにはなれない。」

「知能が足りなくて、このエネルギーを制御できないから。」

彼女は真面目に続けた。

「狂って死ぬわ。」

「でもユナイドにはなれる。」

彼女は言った。

「そして時間が経って、

心がユナイドとして成長すれば……」

「そのとき初めてセクヴェンスになれる。」

ナラの目が輝いた。

「じゃあ……私も不死になるの?」

アニーニャはナラの顔の前まで飛んだ。

「そこまで簡単じゃないわ、お嬢さん。」

彼女は説明した。

「私たちの種族はみんな“ユニオン”ができる。」

「セクヴェンスも妖精も、

手と手、肌と肌、目と目でつながる。」

彼女の声は静かだった。

「相手の思考、感情、存在……すべて共有される。」

彼女は微笑んだ。

「プライバシー?」

首を振った。

「そんなもの、もう存在しない。」

「あなたの記憶も感情も、他の誰かの中に保存される。」

彼女は続けた。

「もし死んでも、

DNAから新しい体を作って記憶を戻す。」

「でも――」

少し声を落とした。

「家族全員が死んだら終わり。」

「ミリアメデのネットワークに残る記録には愛がない。」

「命は戻らない。

ただのロボットになるだけ。」

私は静かに尋ねた。

「セクヴェンスの家族って何人くらい?」

アニーニャは笑った。

「家族は一つしかないわ。」

「セクヴェンスは全員、同じ家族。」

彼女は言った。

「今は二十万ちょっと。」

父はソファに沈み込んだ。

息が荒い。

現実の重さがようやく肩にのしかかってきたみたいだった。

アニーニャがからかった。

「もう疲れた?」

「まだ何も話してないのに、もう頭がパンクしてるじゃない。」

私は立ち上がった。

「ありがとう、アニーニャ。」

私は言った。

「少し息をさせてあげよう。」

そして微笑んだ。

「公園に行かない?」

「やった!」

アニーニャが歓声を上げた。

ナラもすぐに言った。

「私も行く!」

私はドアを開けた。

そのとき、アニーニャが何気なく言った。

「愛したい?」

彼女は笑った。

「アンテアでは、みんなあなたに身を委ねるわよ。」

「一日に何百回もキスされる。」

私は恥ずかしくて笑った。

冗談みたいに言っていたけれど――

私たちは知っていた。

それが本当だということを。


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