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第13章 ― 体が求めすぎるとき

夜の間に気温は急激に下がっていた。

その日は授業がなかったので、私たちはベッドの怠惰な心地よさを長く味わっていた。

私たちはみんな両親の寝室で眠っていた。

裸でいることも、もう恥ずかしいことではなかった。

それはただ、私たちが分かち合う親密さの一部だった。

アサコは本を読んでいた。

氷の彫像のように動かない。

父は仕事のメモを取っていて、

隣で渦巻いている感情の混乱に気づく余裕すらなかった。

ナラと私は毛布の下で静かに触れ合っていた。

若い二人の女性が、まだ始まったばかりの恋を手探りで学んでいるような、

恥ずかしくて、温かい関係。

けれど私の中では、

フレデリックの記憶が危険なほどに目覚めていた。

— フレデリックが欲しい……

私は小さくつぶやいた。

誰にも聞こえないと思って。

でもアサコはすぐに顔を上げた。

「私が心配しているのは、あなたたち二人の体よ」

彼女は言った。

声をできるだけ落ち着かせながら。

「この強すぎる愛の中で、

あなたたちはまだ自分の限界を見つけている途中」

彼女は続けた。

「それは危険かもしれない」

「でも私たちレズじゃない!」

ナラがすぐに言い返した。

「私は男が欲しいの。

もう女なんだから。子どもじゃない」

その言葉に、

思わず笑いがこぼれた。

「できればゲータのフレデリックみたいな男がいい」

父が顔を上げた。

苛立ちと疑いが混ざった表情だった。

「私はぜひ知りたい」

彼は言った。

「あの二人が何者なのか」

「そして、どんな生物学的・感情的影響を

この家族にもたらしているのか」

彼は私を見た。

「変化が異常すぎる」

「ヨーコにキスするだけで

身体的な変化が起きている」

彼は深く息を吐いた。

「これは奇妙だ」

「危険かもしれない」

彼は静かに言った。

「距離を取り、慎重に行動しなさい」

部屋に重い沈黙が落ちた。

私の肌は焼けるようだった。

恥と不安。

この家族を失うかもしれない恐怖が、

第二の心臓のように胸で脈打った。

「正気なの?」

突然、声が響いた。

私たちの誰の声でもなかった。

私たちは目を見開き、

本能的に毛布の下へ潜り込んだ。

恐怖の反射だった。

声は――

空中に浮かぶ人形から聞こえていた。

私たちの顔の高さに。

次の瞬間、

部屋を光が横切った。

「ハハハ! ハハハ!」

高い声が笑った。

「あなたたちの顔、見たかった!」

「オブザーバー、写真見せて!」

私はゆっくり毛布を下ろした。

心臓が胸の中でつまずいていた。

空中に浮かぶスクリーンに、

私たちの驚いた顔のひどい写真が映っていた。

その「人形」は、

とても小さな女の子だった。

十五センチくらい。

白いドレスを着ていて、

小さな体にぴったりと張り付いていた。

そして――

翼があった。

輝く翼。

私の心臓は激しく打った。

一瞬、誰かに侵入されたと思った。

私を生かしている愛が、

すべてを壊してしまうのではないかと。

「ヨーコ見て!」

小さな少女が笑った。

「あなた、これ以上青くなれないと思ってたのに!」

彼女は父の顔のすぐ前まで飛んだ。

父はほとんど気絶しそうだった。

「距離なんて取れないわ」

彼女は芝居がかった傲慢さで言った。

でも声はどこか楽しげだった。

「もう私たちの愛に感染してるんだから」

「あなたたちの人生は、もうあなたたちだけのものじゃない」

— あなた、すごくかわいい。

私は思ったまま言ってしまった。

「でしょ?」

彼女は得意げに言った。

「たくさんの愛で作られたの」

彼女は私の唇のすぐ近くまで飛んできた。

そして――キスした。

「ずっとあなたにキスしたかったの」

私の心臓が跳ね上がった。

腰から頭まで熱が駆け上がる。

腕と足に震えが走った。

首が力を失いそうだった。

世界が揺れていた。

快感と衝撃のあいだで。

私は大人なのに、

その愛は、

まるで初めて生きることを学ぶ体のように、

私を完全に崩してしまった。

そのキスは、ゲータやフレデリックのキスと同じだった。

信じられないほど強く、引き寄せられるようで、圧倒的だった。

私の驚いた顔を見て、彼女は笑った。

アサコが緊張した声で割り込んだ。

「あなた……何なの?」

「妖精よ」

「おとぎ話の?」

「違うってば」

彼女は目をぐるっと回した。

「魔法じゃないの。

ちゃんと肉体があるの。

ただ小さいだけ」

彼女は自分の翼を指した。

「この翼はね、地球を周回してるエネルギー装置から力を受け取ってるの。

じゃないと、私なんてレンガみたいに落ちちゃうわ」

そして胸を張った。

「でも私は、人間のおとぎ話から作られたの!」

彼女は誇らしげに腕を広げた。

「ブルーナっていう子が、三人の人間が私たちの星に持ってきた本を見つけたの。

そこに妖精の絵が描いてあった」

彼女は続けた。

「ブルーナは思ったの。

“妖精が本当にいたらいいのに”って」

彼女はくるっと空中で回った。

「それでね――

何百万もの人たちが、四十年間かけて私たちを作ったの」

小さな腕を広げた。

「ジャーン!」

アサコがまだ信じられない顔で聞いた。

「別の惑星?」

「アンテア」

小さな妖精は答えた。

「セクヴェンスの星。私の故郷!」

彼女は胸を叩いた。

「私はアニーニャ」

彼女はナラのところへ飛び、

軽くキスした。

「これなら、あなたはめまいしないわ」

ナラは目を閉じた。

ぼんやりした笑顔が唇に浮かんだ。

父は深く息を吸った。

まだ必死に理解しようとしていた。

「何百万人もの人が、

たった一人の願いのために四十年働くなんて……」

彼は信じられないように言った。

妖精は腰に手を当てた。

「ちょっと聞いてよ、人間くん」

彼女は少し怒っていた。

「妖精を何人見たことある?」

皮肉っぽく言った。

「知らないなら覚えておきなさい」

彼女の声が強くなった。

「私たちは嘘をつかない!」

彼女は指を立てた。

「妖精でも、セクヴェンスでも、

ミリアメデでも、

シェラントでも、

ケリオンでも、

観測者でも!」

彼女は胸を張った。

「ブルーナはセクヴェンス」

「そしてセクヴェンスの願いは――

みんなの願いなの」

私はゆっくり聞いた。

— あなたの星に来た人たちって……

— 船長と、二人の乗組員?

「そうよ」

妖精はうなずいた。

「ロドリゴ、メル、レナータ」

彼女は私を見た。

「あなたみたいなユナイドだった」

彼女は続けた。

「でもあなたほど愛を必要とはしていなかった」

彼女は父を指した。

「あなたの本当のお父さんに近いタイプね」

そして少し間を置いた。

「でもあなたの本当のお母さんは――あなたと同じ」

彼女は真剣な顔になった。

「愛がたくさん必要な人だった」

突然、彼女は上を見た。

「はーい! 今行く!」

そして私を見た。

「ゲータとフレデリックが来たわ」

彼女はぶつぶつ言った。

「どうしていつもドアから来るのかしら……」

私は動けなかった。

私の本当の父も、

私と似た存在だった。

その事実は、

ずっとばらばらだった記憶をつなげていった。

— 何か着ないと。

私は言った。

「で?」

妖精の声がまだ耳に残っていた。

— 私たち裸なの。

「それがどうしたの?」

— 人間は恥ずかしいの!

私は思わず笑った。

「人間って本当に……」

妖精は肩をすくめた。

「外で待ってる!」

そして消えた。

部屋には、

信じられないような静けさが残った。

私たちは互いを見つめた。

本当に今の出来事が現実だったのか、

確かめるように。

自分の部屋で服を着ながら、ナラが突然泣き出した。

「別の惑星の存在なんて……」

声が震えていた。

「ヨーコ、あの人たちあなたを連れて行く。

そんな気がするの」

私は腕をさすりながら、体の中で熱のように広がる不安を抑えようとした。

— 妖精が言ってた。

— 私たちの人生はもう彼らのものだって。

胸が締めつけられた。

— 私たちを奴隷にするのかな。

— もしかして私はもうそうなのかも。

私は小さく息を吐いた。

— だって……もう彼らの愛なしでは生きられない。

ナラは袖で涙をぬぐった。

「でも……いい人に見えた」

彼女は小さくつぶやいた。

私たちは階段を降りた。

でも最後の瞬間で勇気が消えた。

ドアの前で立ち止まり、

未知の場所へ踏み出す前のように呼吸を整えた。

そのとき父が後ろから来た。

ドアノブに手をかけ、

一瞬止まる。

そして私たちを見た。

すべてを失ったと理解しながらも

強くあろうとする父の目だった。

その瞬間――

「ただいまー!」

妖精の声が雷のように響いた。

「また来たよ!」

アニーニャが部屋に飛び込んできた。

その後ろにはゲータとフレデリック。

二人は穏やかに微笑み、

私の両親に丁寧に頭を下げた。

両親は混乱しながらも、

二人を家に招き入れた。

ゲータはまっすぐ私のところへ来た。

そしてキスした。

それは強いどころではなかった。

衝撃だった。

体が一瞬で溶けた。

— 気を失いそう……

私はつぶやいた。

壁に体を預けながら、

崩れ落ちないように。

視界が曇りガラスのようにぼやけた。

部屋がゆっくり回る。

やっと息を吸えたとき、

フレデリックがナラの頬に触れているのが見えた。

そして――

軽くキスした。

ほとんど無垢なほど優しく。

それでもナラはすぐによろめいた。

「支えて!」

フレデリックが言った。

父がすぐに駆け寄り、

完全に倒れる前に彼女を抱き止めた。

「ごめんなさい」

フレデリックは説明した。

真剣な声で。

「彼女はずっと私たちのキスを望んでいた」

「でも気絶する可能性が高かった」

彼は続けた。

「私のキスもゲータと同じ効果がある。

だから抱き止めなかった」

ナラは頭を押さえた。

息が荒かった。

空気が重くなったみたいだった。

指がソファの布をつかむ。

膝は震えていた。

それでも――

唇にはぼんやりした笑顔が浮かんでいた。

「すごい……」

彼女は弱くつぶやいた。

天井を見ながら。

「気持ちいい……」

二人は居間の広い場所の床に座った。

まるで旅行中の若者が休んでいるみたいだった。

ただし――

彼らの動き一つで、

私たちの体、呼吸、感覚が変わるという点を除けば。

ナラはなんとか立ち上がった。

少しふらつきながら、

私たちのところへ歩いてきた。

完全に愛に酔った顔だった。

「もっと欲しい」

彼女は恥ずかしげもなく言った。

「ナラ!」

アサコが叫んだ。

顔を赤くしながら。

「ママ……すごいの!」

ナラは笑った。

「一番おいしいお菓子を想像して。

それよりずっといい」

私たちはみんな笑った。

緊張した笑いだった。

「ごめんなさい、ナラ」

ゲータが優しく言った。

「もう一度キスすると体に負担がかかる」

「見てあの顔!」

アニーニャが笑った。

ゲータの肩に座りながら。

「ヨーコに慣らされてるから耐えられたのよ」

「じゃなかったら、

もっと後まで起きなかった」

彼女は肩をすくめた。

「起きられたとしてもね」

妖精は足を組み、

いたずらっぽく私に微笑んだ。

ゲータのキスで恐怖は消えていた。

でも不安はまだ燃えていた。

すべてを失いそうな感覚。

父はなんとか落ち着こうとしていた。

それでも声は震えていた。

「つまり……」

彼は言った。

「あなたたちは地球の人間ではない?」

「セクヴェンスです」

フレデリックが答えた。

「そして私たちは――」

彼は私を見た。

「ヨーコのために来た」

その言葉のあと、

部屋は静まり返った。

まるで運命が

すでに決まっていたかのように。

アサコは視線をそらした。

夫の腕を握りながら。

痛みを少しでも先延ばしにしようとするように。

「娘たちから聞いたわ」

彼女は言った。

「あなたたちは……結婚しているそうね」

彼女は二人を見た。

「そんなに若く見えるのに」

その瞬間――

アニーニャが大笑いした。

「かわいそうに……」

彼女は言った。

「本当に無邪気ね」

そしてゲータの頭をぽんぽん叩いた。

「この二人、ほぼ二千歳よ」

今度の沈黙はさらに重かった。

息が詰まるほど。

「私たちは老いないし、死なない」

妖精が説明した。

「まあ……死ぬことはあるけど」

彼女は肩をすくめた。

「そのあと戻されるの」

両親が心臓発作を起こさないように、

ゲータがすぐ言葉を引き取った。

「私たちのことはあとで話しましょう。」

ゲータはそう言い、同時に優しさと揺るがない強さを込めた視線でアサコを見つめた。

「あなたはヨーコを娘のように愛しています。」

それは問いではなく、断言だった。

「彼女は、どれくらいあなたたちと一緒にいるのですか?」

アサコは答えられなかった。

ただ涙が静かに頬を伝った。

ゲータは続けた。

まるで正確に心を切り開く刃のように、しかし穏やかに。

「あなたはずっと彼女を愛してきた。

その気持ちは正しい。」

少し間を置き、はっきりと言った。

「私たちはヨーコを連れて帰るために来ました。」

ナラが私にしがみついた。

指が震えているのがわかった。

ゲータは深く息を吸った。

彼らの世界を完全に壊す準備をするように。

「ヨーコはユナイドです。」

彼女は静かに言った。

「人類の進化形。

あなたたちの種とは、すでに別物と言えるほど違う存在です。」

部屋は静まり返った。

「生命は、やがて“精神の結合”へと進化します。

ユナイドはその兆しです。」

彼女は私を見た。

「しかもヨーコは非常に進んだ段階にいる。

彼女の実の母と同じく、ほぼ“ユニオン”に到達していました。」

ゲータは続けた。

「このような人間は、生きるために大量の愛を必要とします。」

少し微笑んだ。

「私たちセクヴェンスは、愛を無限に持っています。」

しかし、その声には厳しさが混ざった。

「けれど、私たちが早く介入しすぎれば、人類自身の進化を奪うことになります。

だから――」

彼女ははっきり言った。

「私たちは人間が死ぬのを止めません。」

アサコが震える声で言った。

「でも今は…助けようとしているじゃないですか…」

ゲータの表情は優しかった。

しかしその奥には鋭い決意があった。

「私たちは、ケイコ――ヨーコの実の母を見つけました。

彼女がまだ子どもだった頃です。」

彼女はゆっくり語った。

「それ以来、私たちは彼女の家族をずっと観察してきました。」

少し沈黙した。

「ケイコの夫はユナイドでした。

ロドリゴ、メル、レナータと同じタイプです。」

彼女は続けた。

「しかしケイコ自身はヨーコと同じ存在でした。

強い愛を必要とするタイプ。」

ゲータの声は静かだった。

「彼女が生き延びられたのは、夫が一生をかけて彼女を愛し続けたからです。」

そして少しだけ微笑んだ。

「私たちはヨーコの誕生を祝いました。」

そのあと、表情が曇った。

「しかし父親の力では、二人を支えることはできませんでした。」

沈黙。

「家族は崩壊しました。」

ナラが涙を飲み込み、私の手を強く握った。

そして迷いなく言った。

「私はヨーコのためなら死んでもいい。」

その言葉に、私の胸が崩れた。

ゲータは静かに答えた。

「わかっています。」

その声には本当の痛みがあった。

「でもヨーコの苦しみを考えてください。」

彼女は続けた。

「私たちにとっても、悲しみはとても辛い感情です。」

妖精アニーニャが空中に座りながら言った。

「そもそも多くのセクヴェンスは悲しみを知らないのよ!」

彼女は誇らしげに言った。

「私たちはミリアに住んでいる。

そこでは喜びと幸福しかない!」

ナラが泣きながら言った。

「だからヨーコを連れて行くの?」

ゲータは首を振った。

「そんなに単純ではありません。」

そして静かに説明した。

「私たちセクヴェンスは、誰かを見た瞬間に愛します。」

彼女は私を見た。

「ヨーコは生まれた瞬間から私たちのものです。」

部屋の空気が止まった。

「彼女は数十億の存在に愛されています。」

彼女は続けた。

「理解するのは難しいでしょう。

でも私たちは、誰かを愛するとき――」

「その人が愛するすべてを愛します。」

私は小さく説明した。

「つまり……私の家族も愛しているってこと。」

アニーニャが真剣な声で言った。

「私たちは苦しみを許せないの。」

彼女はため息をついた。

「自然に任せておく方が簡単だった。

でもヨーコを愛しすぎて、見ているだけではいられない。」

彼女は私たちを見回した。

「今は家族も愛してる。」

そして静かに言った。

「ヨーコを連れて行けば、あなたたちは苦しむ。」

少し肩をすくめた。

「だから連れて行けない。」

フレデリックが続けた。

「解決策はあります。」

彼は私を見た。

「ヨーコの脳は、セクヴェンスへ変化する段階にあります。」

そして淡々と言った。

「そしてヨーコは私たちのもの。」

「だから自分の運命を選ぶ権利はありません。」

アニーニャが空中でくるっと回った。

「私が説明する!」

彼女は早口で話し始めた。

「ここではみんな“自由”とか“個人”とか“プライバシー”を大事にするでしょ?」

彼女は肩をすくめた。

「でもそのせいで、ほとんど望みを叶えられない。」

「しかも後で、実は望んでなかったって気づくこともある!」

彼女は顔をしかめた。

「疲れるし、混乱するし、すごく自己中心的!」

私たちは恥ずかしくなりながら、うなずいた。

「ほらね!」

彼女は手を叩いた。

「アンテアでは違うの。」

「ユニオン――心の結合がある。」

彼女は続けた。

「プライバシーは存在しない。

みんなお互いのことを全部知ってる。」

「誰も自分だけの人生を生きない。」

「何十億の存在が、あなたの人生を一緒に生きる。」

「そしてあなたもみんなの人生を生きる。」

彼女は胸を張った。

「私は何百年も生きてるけど、

一度も自分だけで決断したことはない。」

笑った。

「でも何も不足したことはない。」

「愛も含めてね。」

彼女は言った。

「私の自由は、あなたたちよりずっと大きい。」

そして真剣に言った。

「ただし注意が必要。」

「私たちは願ったことを必ず実現してしまう。」

彼女はにやっと笑った。

「ブルーナがそうだったように!」

肩をすくめた。

「まあ、そのおかげで私が生まれたんだけど!」

みんな思わず笑った。

フレデリックが話を戻した。

「ヨーコ。」

「あなたは私たちのもの。」

彼は静かに言った。

「あなたにとって最善は、セクヴェンスになることです。」

彼は私の家族を見た。

「しかし彼らは人間。

あなたに属しています。」

そして冷静に言った。

「彼らの意思は関係ない。」

「あなたが彼らのために決めます。」

アニーニャがいたずらっぽく笑った。

「ペットみたいなものだと思えばいいの!」

そしてウインクした。

「ごめんね。でも人間は――」

「知的存在とは見なされてないの。」

アサコが傷ついた声で言った。

「つまり私たちは…大切じゃないのね。」

妖精は肩をすくめた。

「うーん…まあそうね。」

「ヨーコは愛してる。

それと――ヨーコの小さな犬も。」

彼女は笑った。

「でも大事なのはヨーコ。」

「ヨーコが望めば、犬も一緒に連れていける。」

彼女は指を立てた。

「犬は選ばないでしょ?」

「何が自分にとって一番いいか、理解できないから。」

「私たちはそんなに馬鹿じゃないわ!」

ナラが抗議した。

「そう思ってるだけよ!」

アニーニャは頬をふくらませて言い返した。

「本当に賢い動物は、同じ種同士で殺し合ったりしない!」

彼女は指を振りながら続けた。

「私たちの基準では、人間は他の動物より五倍賢い。

でもヨーコはあなたたちより十四倍賢いの!」

私は目を見開いた。

胸がきゅっと締めつけられる。

恐怖と魅力が混ざった感覚が背骨を駆け上がった。

父は思わず息を漏らした。

母の腕を握る手に力が入っている。

フレデリックが少し困ったようにため息をついた。

「アニーニャを許してください。

彼女は少し率直すぎるんです。」

「率直じゃないわ!真実よ!」

妖精は言い返した。

その言い方に、部屋から笑いが漏れた。

父が手を上げた。

「ちょっと聞いていいですか……

あなたたちは、その尺度ではどのくらいなんですか?」

「あなたたちより六十八倍上。」

アニーニャは時計の時刻を答えるみたいに言った。

父の眉が跳ね上がる。

私の心臓は強く脈打った。

それでも――

私は幸せだった。

怖かった。

でも幸せだった。

私は小さく尋ねた。

「じゃあ……

私の家族の運命は……私が決めるの?」

「そうです。」

フレデリックが答えた。

「完全にあなた次第です。」

彼は静かに続けた。

「彼らが何を考え、何を望んでも関係ありません。」

私の胃がぎゅっと縮んだ。

肩に世界の重さが乗ったようだった。

「……考える時間はありますか?」

フレデリックはまっすぐ私を見た。

「今、あなたの心にあることを言ってください。」

その声は厳かだった。

私は誰も見なかった。

ただ胸の奥で燃えているものを言った。

「あなたたちと一緒にいたい。」

フレデリックは静かにうなずいた。

「カワウラさん。」

父に向き直った。

「あなたとご家族は、三日後に私たちと出発します。」

部屋が凍った。

「誰にも話してはいけません。」

彼は続けた。

「人間をセクヴェンスへ変えるには、非常に複雑な工程が必要です。」

そして穏やかに言った。

「しかしこれはヨーコの望みです。

すでに研究センターは準備を始めています。」

「もう始まってるの?!」

私は驚いた。

フレデリックは優しく微笑んだ。

「あなたは私たちのものだから。」

その声には絶対的な優しさがあった。

「私は、あなたにとって何が一番いいか知っています。」

私は小さく息を吐いた。

「じゃあ……

私の答えがどうなるか、最初から知ってたのね。」

ゲータが答えた。

「あなたの人生は愛でできています。」

彼女は静かに言った。

「他にどんな選択がありますか?」

彼女は微笑んだ。

「愛する者は、一緒にいたいと願う。

あなたの心は、ずっとそれを知っていました。」

フレデリックが立ち上がった。

「では、私たちは行きます。」

「えー!もう?」

アニーニャが叫んだ。

「まだ遊んでないのに!」

ゲータが言った。

「アニーニャ、あなたは残りなさい。」

妖精は空中で固まった。

「え?」

「私が?」

彼女は目を丸くした。

「人間と二人きりで?!」

その顔がおかしくて、

みんな思わず笑った。

ゲータは微笑んだ。

「ヨーコを愛しているなら、

あなたのことも愛します。」

アニーニャは腕を組んだ。

「じゃあ……」

むっとした顔で言った。

「フワフワ(フォフィーニョ)も送ってよ!」


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