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黒髪の寵姫  獅子伯年代記Ⅰ    作者: vientoverde
第二章 黒髪の姫君

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眠れぬ夜と姫君が謎 

 

 (あいつ。シャールがあんなことを言うから――)


 昨夜、イアルはほとんど眠れなかった。


 日頃は寝不足とは縁がない生活を送っている。

 物心ついてこの方、快眠人生だ。眠れぬ夜を数えたことなどない。子供の頃には、空腹でいつまでも目が冴える時期もあったと思う。だが成長してからはよく動きよく食べ、よく寝ている。


『どこまで脳筋なの? アンタ、ちゃんと頭使ってる?』


 イヴにはよく呆れられる。

 失礼な。俺にだって悩みくらいはあるよ。だが、騎士団の仕事は体力勝負だ。

鍛錬もある。だから普段は横になるなり爆睡してしまう。夢も見ない。二十年余りのこれまでの生涯で、悶々と思い悩む夜を過ごしたのは、たぶん二回だけである。


 どちらも比較的最近。ここ数年のことだった。

 どうやら失恋というのを経験したらしいあの日、苦い感傷を噛み締めながらふて寝した。寝つきは悪かったけれど、気が付いたら朝だった。寝落ちしたのだ。

 それと、正騎士昇格は果たしたものの、同時に第四隊配属が決まったあの夜。

 最初の時より後の方がキツかった。イアル的には後者の方が堪えたはずである。

依然イアルは第四隊にいる。まず感じた安堵の気持ちは徐々に薄れて、忸怩たる思いだけが残った。そしてそれは今も現在進行形で続いているのだ。


(なんで。あんなこと教えるんだよ……)


 昨夜は、ホントに眠れなかった。


 しかもモヤモヤは消えていない。昨夜からの煩悶はどちらの時とも違っていた。

せっかくもう飢えないですむ境遇になれたというのに、まさかまたも自分に眠れぬ夜が訪れようとは。


 


 (面接とかだったら――)


 たいてい、日帰りなのでは?


 けど、姫君は当面この家でお過ごしになる予定なのだ。

なんで? どうして? ここに――もしかして、そうなのか?


 ゼフィネさんの家は、今でも定期的に辺境伯家館と往き来がある。

実用的な物資の補給便も来るし、イアルみたく騎士見習いの少年達も時々に手伝いに来る。

 そして肝要なのが、不定期に寄越される妙齢の女性達。これが問題なのだ。

若い娘が何の用でこの家に来るのか。それくらいイアルだって知っていた。


 ゼフィネさんによる最終面接のためだ。


 これさえ通過したら、お館様付の侍女になる。つまりは、側女の候補に。


『お館様の、オンナ』


 シャールは確かにそう言った。

 あれでなかなかに底意地が悪いところがあるシャールは、故意に事実でないことを告げてイアルを惑わすことがある。

 けど。だけど。いくらなんでも、お館様をネタにしてまで性悪を言うだろうか。


(全然、そんな風には見えない――)


 黒髪の姫君。これからイアルがお守りするお姫様。

どちらかと言えば清楚可憐で、絶対にまだ十代だと思う。


(どんな顔して接したらいいんだろう……)


 体を張って守る相手を、色眼鏡で見たくない。

雑念だらけの護衛騎士なんて、役に立つはずがない。それにこれから、一つ屋根の下で短くない時間を共有するのだ。


 イアルの煩悶は堂々巡りで、とても出口が見付かりそうになかった。



 午後になって、姫君の決して多くはない荷が届いた。

それでイアルは、昨夜はほぼ身一つで到着されたのだとあらためて思い至った。


(いったい、どうなってるんだ⁇)


 当面、イアルの疑問は解消しそうになかった。



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