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死体が語る進路


 歳を重ねた皺が、目立つ。

 革鎧は使い込まれ、継ぎ当ての跡が多い。剣も盾も、派手さとは無縁だ。


 ただ――足取りだけは無駄がなかった。



 同じダンジョンに、先行者がいる。

 しかも、これは……。


「こりゃ、ひでぇな……」



 足元に転がるのは、もはや()()と呼ぶには惨すぎるゴブリンの残骸だった。

 肉片は壁や床に貼りつき、血の匂いが濃く残っている。

 一撃、いや、過剰だ。明らかに。


 魔法。

 それも、制御はできているが、加減を知らない類の。


 しゃがみ込み、床に落ちていた小さな欠片を指先で摘む。

 淡く光る、宝石のような石――魔石だ。


「……勿体ねぇ」


 小さく呟き、小袋へ落とす。

 この程度の魔石でも、積もれば酒代になる。

 拾わない理由はない。


 探索、というよりも。

 これは、現場検証に近い。


 次。

 また次。

 ゴブリンは、例外なく正確に倒されている。

 急所を外さず、範囲も狙っている。だが……。


「音がでかすぎる」


 これだけ派手にやれば、周囲の魔物が気づかないはずがない。

 それでも、本人は気にしていないのだろう。

 ――いや、気づいていない。


 足跡は軽い。

 躊躇がなく、迷いがない。

 まるで、危険という概念が、頭の中に存在しないかのようだ。


 嫌な予感が、腹の底で重くなる。


 少し進んだ先。

 広めのフロアの手前で、立ち止まる。


 壁の擦れ。

 血の飛び散り方。

 魔力の残滓。


 囮だな。


「……若ぇ」


 逃げるゴブリンを追った。

 正面だけを見て、脇を見なかった。

 典型的な、初心者の判断ミス。


 それでも――。


 地面に伏す複数のゴブリンの亡骸を見て、男は目を細めた。


「……生きてるか」


 安堵とも、呆れともつかない息が漏れる。

 火力はある。判断は甘い。

 そして何より、運がいい。


 今のところは。


 男は、音を立てずに歩き出す。

 距離を保ち、気配を殺し、影のように。


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