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三者三様


 進むたびに、音がはっきりしていく。


 風を叩く、重たい羽音。

 キーキーと甲高く喚く鳴き声が、複数重なって空洞に反響する。


 数が、いる。


「……何か、様子がおかしい」


 そう言ったのはロニオだった。


 何がどうおかしいのか、私には分からない。

 ただ、その声色が、今までと違うことだけは伝わってくる。


 松明に照らされた天井に、大きな影がひとつ浮かんだ。


 影は私たちの頭上を追い抜き、羽音を残して闇へと消える。


 ――あれが、ジャイアントバット。


 輪郭はぼやけているのに、大きいことだけははっきり分かった。


 私は駆け足気味に、二人の後ろを追う。


 そのまま――


 止まったロニオの背中に、ぶつかった。


「んぶ……!」


 短く息が詰まる。

 慌てて身を引き、彼の背中越しに前を見る。


 杖を握り直した。


 忙しなく動く翼。

 複数のジャイアントバットが、円を描くように空間を取り囲んでいる。


 私の目にも分かる。

 明らかに、興奮している。


 ――そして。


 その中心に、影があった。


 丸く、うずくまった……人影のようなもの。


 ジャイアントバット以外の、別の音が混じる。


 パキ。

 ゴリ。

 グチャ。


 骨を砕き、肉を潰す音。

 噛み砕き、咀嚼する、生々しい響き。


 喉の奥が、ひゅっと縮む。


 あれは――


 人じゃない。


「……オークだ」


 バルクが低く言う。


「もっと奥にいると思ってたがな。

 食事の真っ最中らしい」


 影が、ゆらりと動いた。


 巨漢のような体が起き上がる。

 その手には、腸がむき出しになったジャイアントバットがぶら下がっていた。


 私は、ゆっくりと杖を構える。


 胸の奥が、ざわつく。


「ロニオ、どうする」


 バルクが視線を切らさずに問う。


「ジャイアントバットとオークを同時は無理だぞ」


「一旦引く」


 即座にロニオが答えた。


「オークを引きつけて、ジャイアントバットから引き離す。それから、オークを先に倒す」


「ああ、わかった」


 二人の判断は、迷いがない。


 私は、遅れて状況を整理する。


 残っている依頼。

 ジャイアントバットの討伐。

 オークの素材。


 そして――金貨。


 杖の値段。

 昨日、掴めなかった…。


 ――倒さなきゃ。


 私の中で、その言葉だけが残った。


 考える前に、声が出た。


「――ウインドブラスト!」


 短い詠唱。


 迷いはなかった。


 それは、オークに向かって放たれた。

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