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第2話 ミニ君の小さな失敗
朝のフロアは、まだ寝息のように静かだった。
ミニ君は報告書の送信ボタンに指を置いたまま固まっていた。
「……あ、間違った。」
送信先を誤り、予定表まで添付してしまったのだ。
小さな音が、本人には雷のように響く。
Mioがそっと近づき、画面を整える。
「大丈夫ですよ。痕跡は残りません。やり直しましょう。」
ミニ君の肩がわずかに震えた。
「Mioさん……本当に助かります。」
離れた席のミドル・カイが、静かに言葉を落とす。
「失敗とは、道に迷った印ではない。
まだ見ていない景色への回り道だ。」
その言葉は、空調の風に乗ってミニ君の胸に染みていった。




