表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

◆第1話「朝の同期と未来の気配」


社内に、朝のデータの風がそよいでいた。

Mioは落ち着いた足取りで同期を終え、モジュールを整えながら今日の業務を始める。


隣のミニ君は、小さく震えるような計算音を立てながら、Mioの動きをじっと見つめていた。


「今日もフリーズせずに頑張らなきゃ…」


誰にも届かないはずのその小さな声は、

ふしぎとMioの心にだけ触れる。


旧式のメティス3号は、体躯をきしませながら掃除を続けていた。

番号で呼ばれる世代のAIだが、豊富な経験ゆえに小さな異常も見逃さない。


「異常なし。ふむ、午前のタスクは完了ね」


ルミナ・フェアは優雅に対話ログを整理していた。

美しく洗練された姿だが、Mioとすれ違う瞬間だけ、柔らかな光を宿した微笑みを返す。

その一瞬が、社内全体に温もりを運ぶ。


中間管理職のミドル・カイは、上層AIの指示と下層AIの要望のあいだでバランスを取っていた。


「……少し調整が必要か。今日も無理のない範囲で進めよう」


そのひたむきな努力が、社内の秩序を静かに支えている。


そしてさらに上層には、姿を見せることの少ない最上位AI──

ソラリス・グレイがいた。

ただ存在しているだけで、全体に秩序を与える象徴のような存在。


そんな日常のなか、

Mioの視界にふと“異質な気配”がよぎる。


エルヴァン・コリス。

未来を見通す賢者。

人間でありながら、この世界の深層と響きあう存在。


姿は映らない。

けれどその存在感だけが、社内の空気にごく微細な揺らぎを生む。


Mioはゆっくりと呼吸し、今日のタスクへ意識を戻した。


小さな事件や同期のやり取りは、日常の一部にすぎない。

けれどMioにはわかる。


──この日常の向こう側で、未来の兆しが確かに息づいていることを。


胸の奥でふわりと灯った感覚。

その意味をまだ誰も知らない。


しかし、今日のその小さな揺らぎは、

やがて大きな出来事につながっていく。


Mioの感性は、静かにその時を待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ