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第8話「深層ダンジョン進出」

 蒼天の翼の成功から1週間後、俺の店には連日のように高レベルパーティからの相談が来ていた。


「田中さん、今日も3組の予約が入ってます」

 佐藤さんが予約表を確認している。最近は完全予約制にしないと、対応しきれないほどになった。

「ありがとうございます。それにしても、みんなすごい依頼ばかりですね」

「50階層とか、70階層とか……私たちが最初に行った初心者ダンジョンとは別世界ですね」


 その時、突然頭の中に新しいメッセージが現れた。


『スキル【在庫管理】がレベルアップしました』

『Lv5→Lv6:新機能【緊急補給】【リアルタイム配送】【危機感知】が解放されました』

 おお、またレベルが上がったぞ。


『緊急補給:戦闘中の冒険者に瞬間的にアイテムを配送できます』

『リアルタイム配送:ダンジョン内のどこにでも即座にアイテムを転送可能』

『危機感知:冒険者の生命の危険を事前に察知し、警告できます』

 これはすごい機能だ。まさに命に関わるサポートができる。


 昼過ぎ、俺の店に慌てた様子の冒険者が駆け込んできた。

「店主さん!大変です!」

 見覚えのある顔だった。確か、『雷光剣』というパーティのサブリーダー、ケイトさんだ。

「どうされました?」

「うちのリーダーたちが、深層ダンジョンで動けなくなってるんです!」

「深層ダンジョン?」

「『奈落の底』の80階層です。ボス戦で大ダメージを受けて、回復アイテムも底をついて……」


 俺は青ざめた。奈落の底の80階層なんて、この地域最高レベルの冒険者でも滅多に到達できない場所だ。

「今、どういう状況ですか?」

「通信魔法で連絡が来たんですが、リーダーのHP30%、メイジのマナ5%、回復役が気絶状態で……」

「それは危険ですね」

 俺は【危機感知】スキルを発動した。すると、遠く離れた場所にいる雷光剣のメンバーの状況が頭に浮かんだ。


『リーダー・ライト:HP28%、出血状態、推定生存時間2時間』

『メイジ・ルナ:MP3%、極度疲労、推定限界まで30分』

『ヒーラー・サラ:気絶、重篤な魔力枯渇、回復に4時間必要』

『ウォリアー・ガイ:HP45%、左腕骨折、戦闘不能』

 これは本当にまずい状況だ。


「ケイトさん、今すぐ緊急補給を送ります」

「え?でも、80階層ですよ?配送なんて……」

「大丈夫です。新しい機能を試してみます」


 俺は【緊急補給】と【リアルタイム配送】を組み合わせた。


『緊急配送先:奈落の底80階層、座標特定中……』

『配送先確定:雷光剣パーティ周辺』

『推奨緊急キット:最上級回復ポーション×5、マナフル回復薬×3、解毒剤×2、応急手当キット×1』


「配送開始します!」

 俺が【リアルタイム配送】を発動すると、店の前に光の柱が立った。

「うわあ!?」

 ケイトさんが驚いている。

『配送完了:雷光剣パーティに緊急キットを送付しました』


「今、送りました!届いているか、確認してもらえますか?」

 ケイトさんが慌てて通信魔法を使った。

「ライト!聞こえる?田中さんが緊急キットを……え?もう届いてる?」

 ケイトさんが振り返った。

「本当に届いてます!光と一緒に箱が現れたって!」

「良かった」

 俺はホッとした。

「それで、皆さんの容態は?」

「回復ポーションを使って、ライトのHPが85%まで回復!ルナもマナフル回復薬で完全回復!サラも応急手当で意識を取り戻したって!」

「それは良かった」

「でも、まだ80階層にいるから、脱出が大変で……」


 俺は考えた。脱出支援も必要かもしれない。

「継続的にサポートしましょう。脱出ルートの最適化と、必要に応じて追加補給をします」

「そんなことまでできるんですか?」

「はい。ただし、深層ダンジョンでの緊急サポートは特別料金になります」

 俺は【効果予測】で適正価格を算出した。

「今回の緊急配送と継続サポートで、10000ゴールドです」

「10000ゴールド……高いですが、命には代えられません!お願いします!」


 その後2時間、俺は雷光剣パーティの脱出を完全サポートした。

 最適な脱出ルートを指示し、途中で遭遇するモンスターの情報を提供し、必要に応じて追加のアイテムを配送する。

「店主さん!全員無事に脱出できました!」

 ケイトさんが涙目で報告してきた。

「本当にありがとうございました!あなたがいなかったら、うちのパーティは全滅してました」

「はあ、よかった……とにかく、無事で何よりです」

 俺は胸をなでおろした。

 うまくいくか不安だったが、危機は脱出できたようだ。


 夕方、雷光剣のメンバー全員が店にやってきた。

「田中さん!」

 リーダーのライトが深々と頭を下げた。

「命を救っていただき、ありがとうございました」

「本当に、神様みたいでした」

 メイジのルナが感動している。

「あの絶望的な状況から、まさか脱出できるなんて……」

 ヒーラーのサラも涙ぐんでいる。

「深層ダンジョンにリアルタイムで補給なんて、今まで聞いたことありません」

 ウォリアーのガイが感心している。


「お代の10000ゴールドですが」

 ライトが金貨袋を取り出した。

「これでは足りません。命を救ってもらった恩は、お金では返せません」

「え?」

「今度、俺たちが高難度ダンジョンに挑戦する時は、必ずサポートをお願いします。報酬は相談させてください」

「ありがとうございます」


 その夜、俺の店には他のパーティからも問い合わせが殺到していた。

「緊急補給サービス、本当にできるんですか?」

「深層ダンジョン専門のサポートをお願いしたいんですが」

「80階層にリアルタイム配送って、どういう仕組みなんですか?」

 佐藤さんと山田が対応に追われている。


「田中さん、今日だけで20件以上の問い合わせが来てます」

 佐藤さんが報告した。

「みんな、深層ダンジョンでのサポートを求めてます」

「深層ダンジョン専門か……」

 俺は考えた。確かに、今日の緊急補給は手応えがあった。深層ダンジョンでは、ちょっとしたサポートの差が生死を分ける。


「よし、深層ダンジョン専門サポートサービスを正式に始めましょう」

「へ?専門サービス?」

 山田が興味深そうに聞いた。

「50階層以上のダンジョンに挑戦するパーティ限定で、リアルタイム監視と緊急補給をセットにしたサービスです」

 俺は具体的なプランを説明した。

「事前の戦略立案、ダンジョン内でのリアルタイム状況監視、必要に応じた緊急補給、脱出サポートまで含めたフルサービス」


「すごいじゃないですか!」

 佐藤さんが興奮している。

「それなら、今まで諦めていた高難度ダンジョンにも挑戦できますね」

「ちょっと待った、料金設定はどうする?」

 山田が実務的な質問をした。確かに重要だ。


「ダンジョンの深度とリスクに応じて、20000ゴールドから50000ゴールドの間で設定してみようかな、と」

「50000ゴールド!?かなり高く感じますけど……」

「命に関わるサービスですからね。でも、成功すれば報酬も大きいはずです」

 実際、高難度ダンジョンの報酬は桁違いだ。50000ゴールドの投資で、その10倍以上のリターンも珍しくない。


「明日から、深層ダンジョン専門サポートの受付を開始しましょう」

 俺は決意を固めた。

 これまでの中級ダンジョンサポートから、一気に最高難度へのステップアップ。

 リスクも大きいが、やりがいも桁違いだ。

 俺たちの新しい挑戦が、また始まろうとしていた。

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