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婚約破棄ですか? ミリアリアお嬢様は3年前からダンジョンに潜ってますけど、御伝言で『ご自由に』との事です。え、私ですか? 雑用で雇われた奴隷です。ミリアリアお嬢様の持ち物としてここに居ます。

「婚約破棄ですか? ミリアリアお嬢様は3年前からダンジョンに潜ってますけど、御伝言で『ご自由に』との事です。え、私ですか? 雑用で雇われた奴隷です。ミリアリアお嬢様の持ち物としてここに居ます」


 ある男の人からすごい勢いで、


「ミリアリアはどこだ? 婚約破棄をしたい!」


 と言われたから、素直にダンジョンに潜っている事と伝言を伝えた。

 私は、レーヌという名前の奴隷。

 ミリアリア・ティル・ライトニング侯爵令嬢様であるお嬢様の奴隷を勤めている。


「なんだその口のきき方は!」


 男の人から叱られた。


 そうだよね、ミリアリアお嬢様と婚約破棄したいと言うからには、この国の王子様だよね。

 知ってた。やけに目に痛いキラキラ配色な人だしね。


 でも、あえて粗雑な口調で話しているんだ。


 私はミリアリアお嬢様の持ち物である奴隷だし。

 ミリアリアお嬢様からは、『王子は嫌いだから扱いは雑で!』って言われてるし、お嬢様のご両親からも『婚姻を強要しといて態度悪いから王子を馬鹿にした態度で!』って言われてるんだよね。


「お前みたいな平民が俺にそんな口をきいていいと思っているのか! 平伏しろ! 這いつくばれ!」

「ミリアリアお嬢様からもご紹介していただきましたが、一応、私は神聖ソルナーレ王国の第8王女です」


 まあ、政権争いで弾かれて奴隷になって、前から交流があったライトニング侯爵家に受け入れてもらったんだけど、遠い国で侯爵令嬢の持ち物なら安心安心。


 一応奴隷として働かないと奴隷契約が解除されないから、ライトニング侯爵家には何もメリットはないのに本当にご厚意で侯爵令嬢の持ち物(人権がない)として働かせてもらっているんだよね。

 基本、食べては寝て勉強させてもらって、後はお茶会や夜会でミリアリアお嬢様の代理として座ってたり立ってたりして、貴族の持ち物として窓口になるだけ。


 無事奴隷契約の魔法が、奴隷として働いた後に解除されたらミリアリアお嬢様の侍女にしてくれるって言うし、ありがたいことです。

 侍女になるのを楽しみにしてるんだ。


「このっ奴隷がっ!」

「危ないですね」


 人の話を聞いていない王子様が殴りかかってきたのが、ドーム状の防御魔法に弾かれる。

 ミリアリアお嬢様がダンジョンで拾ってきた防御の魔道具の働きだ。


 基本危ないことは何もない。


 それに……。


「殿下! 今、ライトニング侯爵令嬢の持ち物に不当に暴力を振るいましたね!」

「ちょっとこちらでお話を!」


 この国の王子様は、すごい勢いで騎士達に会場から連れ出されていった。


 さらばだー、王子様。


 きっとこの王子もせっかく第一王子だったのに、決められた婚約を破棄しようとして貴族の持ち物を不当に害しようとしたからには、その下の第二王子とかに継承権が回されちゃうかもね。


 知ってたけど、第二王子はやけにギラギラした目で第一王子の見てたし、ミリアリアお嬢様を狙って婚約者も作ってないともっぱらの噂だし。(代理で立っている私には、様々な貴族令嬢や使用人たちが話を聞かせてくる)


 隙があると、すーぐ王族って継承権で争うんだから。

 私なんか一応愛妾の子とは言え、鑑定の魔法で第8王女だけど王の子として認定されたのに、王宮から弾かれて奴隷なんだから。

 まあ、王になるために必要な事はなーんにも学んでないんだけどね。

 王の子なのに奴隷とはこれ如何に、だよ。


 ーー


「……ただいま」

「おかえりなさいませ、ミリアリアお嬢様」


 次の日、狙いすましたかのように朝方にミリアリアお嬢様がご帰宅なさった。

 もちろん、自分の婚約者がすげ替わりそうだからだろう、そう思った。

 侯爵様から連絡もいったのだろう。


 ミリアリアお嬢様はライトニング侯爵家の一人娘で、本来ならライトニング侯爵家は婿をとってミリアリアお嬢様が跡を継ぐことになっていた。


 だから、魔道具やモンスター資源が豊富であるダンジョンに、ミリアリアお嬢様はライトニング侯爵家の為に潜っていた。

 ミリアリアお嬢様の魔力量がすさまじく、貴族だからだ。

 貴族や王族は、戦争がないときにはダンジョンに潜ったり、領地のモンスターを倒したりして領地に貢献する。


 それが、ミリアリアお嬢様の魔力量の高さに目をつけた王族が結婚を強要してきて、話が変わった。


 王族と結婚して、子を2人以上産み、自分の領地の跡取りと王族の跡取りを産まなくてはならなくなった。


 ミリアリアお嬢様は成人したら王宮に入らなくてはならなくなる。


 だから、ミリアリアお嬢様は焦って周りの反対を押し切って成人まで後三年という時に、完全にダンジョンに潜り出てこなくなった。


 ミリアリアお嬢様は転移機能付きのカバンを持っているから、領地の為に獲得したモンスターの素材や魔道具がダンジョンからどんどん送られてくる。

 こちらからは毎日の食事や連絡の手紙、武器や防具や日用品を送っている。


 その経緯は王家にも報告しているが、王家は継承権争いに忙しいのか、この度のような茶番が発生した。


 茶番に関しては、私も経験があるから分かる。

 馬鹿馬鹿しい。


「あなたに色々苦労をかけたわね」

「いえ…………」


 一番苦労しているミリアリアお嬢様にそう言われると心にくるものがある。


「ここだけの話だけれど、お父様から手紙で聞いたの」

「なんでしょう?」


 ミリアリアお嬢様が言いにくそうに話を切り出した。


「神聖ソルナーレ王国で継承権争いがあってあなたより上の人たちが殺し合って、あなたに継承権がまわってきそうなのよ」

「え……、でも私、奴隷ですし」

「そろそろ奴隷働きの実績が溜まって解除されるのもあって帰って…………」

「でも、私、侍女になるのを楽しみにしていたんです」


 高みの見物をしていたはずが、事態が嫌な雲行きになって、奴隷としてあり得ない事にお嬢様の言葉を遮った。


「大丈夫よ、ありったけの魔道具を持たせるから」

「ミリアリアお嬢様のように人望も実力もないのに王なんてできるわけが」

「大丈夫よ、ウチの国が完全にバックアップするし、護衛もつけるから」

「いや、侍女になりたい」


 私は不敬も覚悟で口答えをした。

 ミリアリアお嬢様がその美しい顔を曇らせて首を傾げる。


「私も王妃なんて嫌よ、でも身分が人を作るものだし、殺し合ってる方たちよりはあなたは王に向いてると……」

「そんなわけないと思います」

「じゃあ、お願い。私たち2人で2つの国を乗っ取って良いように操ると思って。お願い」


 ミリアリアお嬢様が、私が『お願い』に弱いと知って手を合わせてお願いのポーズをとる。


「私、ライトニング侯爵領を世界一豊かなところにしたいの。神聖ソルナーレ王国の協力があればもっとうまく行くと思う」

「でもぉ、王族で殺し合ってる国で……」

「お願い! 手紙とか映像記録魔法山ほど送るし、頻繁に会いに行くから」

「せっかくミリアリアお嬢様がダンジョンから帰ってきて一緒に居られると思ったのに」

「お互い王族になったなら、こっそりお互いの部屋に転移装置を設置しちゃいましょうよ」

「いや、外国の王宮に行き来できる転移装置を設置するのは……」


 転移装置はとても良くない事だとさすがに私でもわかる。


「私も寂しいわ。ダンジョンにはさすがに人を運ぶ転移装置は設置できなかったのだもの」

「じゃあ、毎日お嬢様に会えるなら」

「決まりね!」


 いや、決まりね! じゃなしに……。

 いいのだろうか?


「大丈夫よ、ウチの国の第一王子なんて大変なものだったでしょう?」

「まあ、確かに」


 目の前で見たけれど酷いものだったし、第二王子も野心むき出しで酷いものだった。

 あれを見ると、確かに王様できそうな気がしてくる。

 分からない事にはすぐにミリアリアお嬢様に聞こう。

 いや、あれ?


「私の扱い、酷くないですか?」


 侯爵令嬢の侍女になって悠々自適に過ごせると思ったのに。


「あら? だってまだ私の『物』ですもの……あ、そろそろ実績が溜まって奴隷契約が解除されるわね。おめでとう」

「いえ、私が王になってもミリアリアお嬢様の『物』でいさせてください」


 私は奴隷の方が良かったとつくづく思っていた。


 ーおわりー

私の個人的な感想ですけど、自分の創作とかで王様や王子様の言動を見ていると、異世界の王様って意外とできる気がしてくる(錯乱)


読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねやブクマをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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