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187、話し合いの結果

「灰王神は、やはり二人いるのか。キミカさんのメッセージと同じですね」


「そうね。ウサギくんが預かっていた野口くん宛の伝言にも、同じ言葉があったわね。それに、野口総監の選択は、間違える可能性が高いとも言っていたわね」


 僕の指摘に、ユキナさんは大きく頷いた。去年、亡くなったキミカさんが託した言葉は、野口総監が邪神の器だと言っていたのか。キミカさんは、夢見人という能力があるから、夢でその光景を見たのかもしれない。



「灰王神は二人いるのかもしれへんって言うとったけど、二人やとは断言してへんやろ。気分屋なだけかもしれんで。異世界の神なんて、ピンキリやからな」


 ユウジさんは、キミカさんの言葉を正確に把握しようとしているみたいだ。いや、『レイザーズ』のリーダーの言葉を信用することを危険視しているのか。


「でも、神の光を持つときと、邪気の影に包まれているときがある、と言ってたじゃない? 気分はコロコロ変わっても、放つオーラは変わらないわよ」


「まぁ、せやな。オーラは隠すことはできても、全く別の性質のオーラを纏うことはないけどな。でも、二人おるんやったら、何で同じ名前やねん? 双子か?」


「双子なら名前は別なはずだわ。親子かもしれないわね。同じ名前を使っていることは、よくあることだもの」


「そもそも、神って子を作るんか?」


「私がいた異世界では、神という名のつく多くの個体には、子も孫もさらにその子孫も居たわよ」


「神さんだらけになりそうやな。基本的に、実体化してる神も不死やろ」


「あら? 神にも死はあるわよ?」


(何の議論だ?)


 ユウジさんがいた異世界と、ユキナさんがいた異世界では、いろいろな違いがあるみたいだな。


 二人はしばらく睨み合いをしていたが、僕に意見を求めるように、同時にこちらを向いた。



「ケントさんは、どう思う? 原始の星に行っていたアナタの価値観が、おそらく正しいわ」


 ユキナさんの言い方は、少し引っかかる。原始の星が絶対に正しい、とは思ってないんだな。


「僕がいた異世界では、実体化した神様は居なかったというか、遭遇した記憶はないです。魔王達が統べる星なので」


「そう。こんなことを議論していても仕方ないわね」


 ユキナさんは、少し気まずそうにしている。意味のない議論をしたという反省だろうか。彼女は、常に自分が正しい自信があるみたいだから、たまに、変なことでムキになるんだよな。



「まぁ、どっちでもええってことや。そんなことより、これからどう動くかの作戦を考えてくれや」


 ユウジさんは、さりげなくユキナさんをフォローしている。こういうところは、見習うべきだ。


「そうね……」


 ユキナさんは、雲をポフポフ叩いたり撫でたりしている。無意識なのだろう。これがそんなに気になるんだろうか。まぁ、触り始めると癖になるのかもしれないな。


 ユウジさんは、あくびをして、ユキナさんの考えがまとまるのを待っているようだ。


 やはり、この二人は、相性が良さそうだな。




「まずは、危険なエリアで発生した台風を、何とかしないといけないわ。比叡山迷宮が引き寄せるでしょうけど、上陸したら甚大な被害が出るもの」


(あっ、台風か……)


 銀次さん達のことより、確かに優先すべきだ。


「ほな、前みたいに迷宮特区が奪えばええやんけ」


「いや、ユウジさん、それは無理です。ラランがいないと、僕では、台風の熱風を処理できません」


「そういえば、幼女魔王の能力やったな。また来てくれるんちゃうんか?」


「ラランは、すぐに来ると言っていたけど、簡単には離れられないんだと思います。原始の魔王のひとりが、今、眠っているので」


「そうかぁ……台風のエネルギーを取り込まれへんなら、蹴散らすしかないな。ダンジョンから出てもええなら、方法はありそうやけどな」


「台風接近中に、迷宮の主人が離れるわけにはいかないわ。チェーンブリッジができたら別だけど」


(だよな)



「あ? おかしくないけ? 迷宮特区の結界は、去年の台風直撃でも耐えたんやんな? 今年はヤバイって騒いどるけど、ただ煽ってるだけかもしれんで」


「ユウジさん、台風は毎年強くなってるのよ。去年の、比叡山に大きな被害が出た台風では、迷宮特区の結界バリアも、いくつも破壊されたらしいわ。職員を総動員して、多重結界を張り続けたみたいね」


「ふぅん、それで、今年はもう無理って言うとるんか」


「そういうことよ。ただ、数日後に来る台風は、そこまでではないと思うけど」


「ほんなら、台風より、シルバ対策やな」


 ユウジさんが、上手く誘導している。ユキナさんはまた、雲をポフポフし始めた。



 あの『レイザーズ』のリーダーの大内さんは、野口くんと同じ異世界からの帰還者で、シルバー連合の一員なんだよな? ということは、表と裏の両方に顔がきくのか。赤髪の魔王と同じく、二重スパイの可能性もある。


 大内さんはユキナさんに、高熱化の原因は邪神によるエリア封鎖だと言ったんだっけ。灰王神は二人いて、その一方が邪神だとも。


 シルバー連合の長である銀次さんが、そう言わせているのだろうか。だが野口総監が、邪神の器のひとつなら、同じ異世界に行っていた大内さんにも、その可能性はある。


 もし、そうだとすると、灰王神の狙いは何だ?


 赤髪の魔王を使って、僕の考え方を探りにきた。ユキナさんやユウジさんには、管理局の監視が強いと思う。管理局にも、灰王神の器となる人はいるのだろう。


(ごちゃごちゃしてきたな)




「ケントさん、貴方は階層を増やすことに注力してくれるかしら。ユウジさんと私は、転移魔法陣が設置できるように方法を探りましょう。やはり、チェーンブリッジを急ぐべきだわ」


 ユキナさんの作戦が決まったみたいだ。


「その橋を作るための膨大なエネルギーは、台風を使うんか? 幼女魔王を召喚せなあかんで」


(確かに使える!)


「ええ、ラランさんが来てくれるまでに、他の条件を揃えましょう。7月までには完成させないと。それと、銀次さんの件は、ケントさんは親密に、ユウジさんは従来通り、そして私は、シルバー連合と接触してみるわ。ケントさんの迷宮への注目を利用させてもらうわね」


「へ? あぁ、はい?」



「ケントは、まだ知らんふりをしといてくれ。ユキナは、表を統一しようとしとるんや。誰が敵かわからん状態を作っとるんは、たぶん邪神やからな」


「表を統一?」


「あぁ、せや。裏と同じように、絶対的な強者がおれば、まとまるやろ。女王様の出番や」


(この件か)


 二人で何かを話し合っているように感じたけど、まさか、ユキナさんが統一しようとしているとは、驚きだ。


「僕も、誰が敵かわからない状態は、疑心暗鬼になるからマズイと思っていました。僕は、知らないふりでいいんですか?」


「あぁ、その方がユキナは動きやすいみたいや。表向きは、『青い輝き』の拡大計画やからな」


「は? 『青き輝き』よ!」


 ユキナさんに睨まれて、ユウジさんはニヤニヤしてる。ほんと、仲良しだよねー。



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