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第65話 母校アイルクリート第一魔法大学

65話目です。アンシーたち女性陣からクレードたち男性陣のシナリオへと切り替わります。


(※今回の登場人物たちについては、前回「○65話の主な登場人物の紹介+おまけ有り」の回をご参照ください)

ケルビニアン暦2050K年8月19日。

(魔法武装組織メタルクロノスの宣戦布告まで、あと13日)


アンシーやシェルージェたちがメタルクロノスの幹部の一匹24の怪魚こと「ルビジウムの魚」を倒しセイヌ・パリスを出発した頃、ルスカンティア王国ではチャドラン王子やルリコたちを乗せた船がワトニカ将国へ向けて出航した頃、ワトニカ将国ヤマトエドではくノ一アサヒが月帝家つきみかどけの屋敷を訪れた頃、アイルクリート共和国ではクレードたちが…


ここはティータール山(※1)、山頂の町、アイルマリノ町(※1)。

銀迩郎「いやーん!素敵な眺め!」

 「山を登ってきた甲斐があったわ!」

鵺洸丸「左様でございまするな…」

 「ふもとの街並みや緑豊かな景色が素晴らしき…」

沖津灘「ハッハッハッ!実に絶景たい!」

 「ワトニカではまず見れんばい!」


銀迩郎「ねえ、この街には塔もあるみたいよぉ。中に入れるのなら入ってみましょうよ!」

オリンス「そうだね…もっと良い眺めが見えるかもね…」

ナハグニ(銀迩郎に振り回されげっそりしている)「うぐっ…」


クレード「今日はこの街で一泊するしな。少し見て回るか…」


千巌坊「ならば私は街の聖堂や修道院に行きたい…」

 「歴史ある建物で礼拝をしたいとこ…」



次の日20日。


ティータール山を下りたクレードたちは、麓の村、アイルベロベッロ村(※2)に来ていた。

銀迩郎「いやーん!素敵!」

 「まるで妖精さんの住んでいる村みたいじゃなーい!」

オリンス「とんがり屋根に白い家々…」

 「確かにメルヘンチックな街並みだね…」

鵺洸丸「それがしが調べたところ、この石灰岩造りの独特の家は「トゥルッロ」と呼ばれておる…」

 「トゥルッロは村中にあり、「アイルベロベッロのトゥルッリ(※2)」として文化的にも大変貴重であるらしい…」


千巌坊「独自のとんがり屋根か…」

 「どことなくシラカワ藩の街並みを思い出すな…」

沖津灘「シラカワ藩といえば横綱、飛騨雷渓関の出身地たい」

 「横綱の故郷も合掌造りの家屋が多く立ち並ぶ山村らしいたい」


この日の夜、村の宿でクレードたちは…


タオツェイ「このメルヘンな村の先に、アイルローマ市(※3)があるわけか…」

オリンス「うん。俺たちが目指すアイルクリート第一魔法大学へは23日昼頃の到着を予定しているよ」


クレード(心の中で)「(アイルクリート第一魔法大学…回り回ったが、いよいよヴェルトン博士の母校にたどり着くわけか…)」


ナハグニ(心の中で)「(女子おなごがあ…大学に行けば女子大生たちがあ…)」



次の日21日。

クレードたちはアイルローマ市にたどり着いた。


ここは市内のアイルヴァチカーノ地区(※4)。

クレードたちはこの国で有名なシスティーナナ(※4)礼拝堂に立ち寄り祈りを捧げていた。


クレード(お祈り中)「(ヴェルトン博士…母校の大学であんたの研究がうまくいくことを願っているぞ…)」


オリンス(お祈り中)「(シェルージェちゃん、たとえ嫌われても、君の無事を祈っているよ…)」


ナハグニ(お祈り中)「(女子おなごを…どうか拙者の目の前に美しい女子おなごたちを…)」 ぶつぶつ…


良くも悪くも祈りは人それぞれであった。



次の日22日。

市内のアイル・マリナ・グランシーデ地区(※5)の教会に立ち寄り、ムーンリアスで有名な壁画「終月しゅうげつ晩餐ばんさん」(※5)を眺めていた。


オリンス「終月の晩餐…この目で見れるなんて思ってなかったよ…」

千巌坊「私もだ…」

 「聖職者の一人として実に喜ばしく思う…」

沖津灘「三女神様たち同様、オイも崇めたいとこたい…」


タオツェイ「この神聖なる壁画を本などではなく、生で見たい思う貴族も多いだろうな…」

クレード「それくらいこの壁画は有名なのか?」

鵺洸丸「ムーンリアス全土ではよく知られておる…」

 「神の子とされるエキリスタ様が処刑させる前に食べた最後の食事の場面を描いたとされ、エキリスタ様を囲む12人の弟子の中に裏切り者がいるとされておるのだ…」

クレード「確かによく見れば周りの人間たちは慌てているような感じだな」


鵺洸丸「絵に描かれている弟子たちはそれぞれ誰なのか?弟子たちの座る位置に意味はあるのか?エキリスタ様の横にいる弟子との間にV字の空間があるが、これが何を意味するのか?また通例では子羊の肉を食べるはずなのになぜか絵では魚が描かれているなど、この壁画は今でも謎が多く、学者たちはいろいろと研究しているようでございまする…」


銀迩郎「あらぁ、鵺洸丸ちゃんはいろいろとご存じねぇ」

 「壁画自体は有名なんだけど、あたしそこまでは知らないもの」

鵺洸丸「博識でなければ忍びは勤まりませぬからな…」


ナハグニ「女子おなごが…明日には女子大生たちに出会える…」 ぶつぶつ…

有名な壁画の前だというのにナハグニは全く別の事を考えていた。



次の日23日の昼。

ここは市内のアイルナポリの歴史地区(※6)。

地区内には帝国時代皇族たちが住んでいたヌオーヴォスト城(※6)などが現存している。

クレードたちはヴェルトン博士の母校である地区内のアイルクリート第一魔法大学にやって来た。


クレード「博士、俺はついにやって来たぞ」

 「あんたの母校まで」


大学は8月の冬休み中(※7)で、学生たちはあまりいないが、それでもキャンパス内には女子大生たちが数人いた。

女子大生①「雷魔法を使いこなすのは難しいわね…」

女子大生②「そう?私は炎魔法の習得に苦戦しているわ」

女子大生③「それよりも氷魔法をしっかり勉強しましょうよ」

 「食べ物の保存に役立つから就職に有利よ」

女子大生④「でも食糧倉庫のお仕事って夜勤があるとこも多いんでしょ?私は遠慮したいわあ」


ナハグニ「おおっ!女子おなごがぁ!」

 「冬休み中だから数は少ないでござるが、女子おなごがぁ!女子大生たちが数人おるぅ!」

銀迩郎「ちょっとぉ、ナハグニちゃん」

 「あたしたち、女の子を見にきたわけじゃないのよぉ」

千巌坊「その通りだ…早く総務課へ行き、確認するぞ…」

オリンス「ルスカンティアの国王様もこの大学にまで手紙を書いてくれたんだ…」

 「俺たちのこともちゃんと伝わっていればいいけど…」


ナハグニ「もう目的地に着いたんでござるし、そんなに急がんでも!」

沖津灘「ナハグニ殿、オイが足代わりになるから、大人しくするたい」

沖津灘はナハグニの体を持ち上げた。

ナハグニ「放すでござる!拙者はきゃぴきゃぴの女子大生たちとーっ!」

鵺洸丸「まったく…それでも三十の大人でございまするか…」

一行は嫌がるナハグニを無理やり連れて行った。


大学内の総務課へ行き、クレードたちは事務員に確認を取り、

クレード「クレード・ロインスタイトだ」

 「ルスカンティアの国王からの手紙で俺たちのことは伝わっているはずだが」

女性事務員「少々お待ちください」


女性事務員は他の事務員たちに確認を取り、そして戻ってきて、

女性事務員「お待たせいたしました。クレード・ロインスタイト様、オリンス・バルブランタ様たちでいらっしゃいますね?」

オリンス「はい。俺たちは南のルスカンティアからこの大学まで参りました」


女性事務員「国王ルスディーノ29世様からのお手紙、確かに頂いております。お手紙にはお二人のことが書かれておりました」

 「国王様がお伝えしたお客様たちということで、こちらもご対応させていただきます」

クレード「俺たちのことを知っているのなら、話は早いはずだ」

 「すぐに対応できる奴を呼んできてくれ」

女性事務員「応接室までご案内いたしますので、そちらで少々お待ちください」


クレードたちは女性事務員に連れられて大学の応接室へ。


女性職員「どうぞお召し上がりください」

部屋に入ってきた別の女性職員はクレードたちにお茶とお菓子を差し出した。


女性職員「ご対応いたします教員たちが参りますので、もう少々お待ちください」

女性職員は応接室を出た。


タオツェイ「しかしいい部屋だな…」

 「まるで貴族の屋敷の中にいるようだ…」

クレード「さすがは3千年の歴史を誇る由緒ある大学というわけか…」

オリンス「何か緊張してきたよ…」


その時、部屋をノックする音が、

ウォルク教授「失礼いたします」

3人の教員が部屋に入ってきた。


ウォルク教授「当大学まで足をお運びいただき、誠にありがとうございます」

 「私は教授のウォルク・バルムスバーデ。魔法道具学を専門としております」

クレード(心の中で)「(魔法道具学、ヴェルトン博士と同じ分野か…)」


ウォルク「国王様のお手紙よりお名前は伺っております」

 「クレードさんとオリンスさん、そしてお連れの方々でいらっしゃいますね?」

オリンス「はい。ルスカンティアからここまで参りました」


ここで部屋に入った3人のうちの一人、紫の髪をした助手のティムが、

ティム「ルスカンティアですか、それにしては時間がかかりましたね。どこか寄り道でもしていたんですか?」

 「僕は遅くても7月の初め頃にはあなたたちが大学に着くと考えていたのですが…」

クレード「悪いがこれでも早く着いたほうなんだ」

 「本来なら俺たち男性陣もベレスピアーヌへ行き、その後この大学へ来る予定だったからな」

ティム(威圧するように)「ほお、あなたたちは余程寄り道がお好きなようですね…」

ウォルク「ティム君、お客様方には失礼のないように頼むよ」

パトルジア「ウォルク先生の言う通りよ」

 「あまりにも態度が悪かったら、退室してもらうわよ」

ティム「これは失礼しました」

 「僕は必要なときに喋らせていただきますので」


ナハグニ(心の中で)「(おーっ、熟女ではあるが、美人が来てくださるとは!)」


ウォルク「皆さん、失礼しました。彼は助手のティムです」

 「研究熱心で、こちらの大学にいたヴェルトン名誉教授のことなどもよく調べてくれたのですが、なにぶん態度のいい職員とは言えません」

 「ティムに代わって私が詫びますので、無礼をお許しください」

クレード「別に構わないさ、俺だって大体の人間にはこんな態度や口の利き方だしな」


クレード「それよりもヴェルトン博士について知っていることがあるなら、俺たちにも話してくれ」

ティム「分かりました。それではまずそこからお話しいたしましょう」

ウォルク「クレードさんがお求めだというのなら、調べてきたことを語りたまえ」


ティムは改めて、

ティム「僕はティム・ソルンズ。この大学で助手をしております」

 「僕はクレードさんやオリンスさんたちの大学訪問の話を聞き、助手としてグラン・ジェムストーンなる魔法アイテムを開発したヴェルトン名誉教授について調べさせていただきました」

 「広報課や大学図書館の司書たちが保存している当時の記録や日報などを読み漁って」


続いて、

ティム「この方は我が校の大学院博士課程を卒業し、30歳で助手となり、以後80歳まで我が校に勤めておりました」

鵺洸丸「教員や職員として50年、学生時代も合わせると60年くらいこの大学にいたようですな…」

ティム「ええ。48歳で教授となり、主に魔法道具学を教えていました」


ティム「名誉教授はムーンリアスでも数少ない合成魔法の使い手でしたからね」

 「合成魔法を使った独自の魔法アイテムの開発により、我が校の研究実績に貢献してくださったそうです」


ウォルク「貴重な合成魔法が使えることに加えて、魔法アイテムによる研究実績の数々…」

 「名誉教授の立場や実績などを考慮すれば、学長になってもおかしくない人ではあった…」

ティム「そうなのですが、この方はその考え方や態度などに問題があったようで…」

パトルジア「まるで今のあなたみたいね、ティム君」

ティム「僕は元からですが、名誉教授の場合は違ってましたよ」


ティム「名誉教授は温厚で優しい先生だったのですが、45歳になった頃から急に人柄が変わり始めたようで…」

クレード「それは博士自身も俺に言っていたな」

 「最愛の両親を亡くしたことで、あの当時はどうかしていたと」

ウォルク「確かルスカンティア王国領の離れ小島で名誉教授本人とお会いしたそうですな」

 「それも手紙で確認しております」


ティム「名誉教授は12年後の60歳の時、学長選に立候補したそうです」

 「しかし高圧的な態度などが問題視され、名誉教授は落選」

 

ティム「普通なら60歳で落選した時点でもう学長になろうとは考えないものですが、名誉教授は4年後の学長選に再び立候補したようです」

ウォルク「魔法大学や文系の大学などに限らず国立大学の教員・職員は65歳で定年ですからね」

 「仮に64歳で学長になったとしても1年しか勤めることができないのです」


パトルジア「定年後は非常勤講師として勤務することもできますが、無論立候補する権限などないですからね」

ナハグニ(心の中で)「(ああ、この美人の先生は一体誰なんでござろうか…)」


ティム「4年後には64歳、そんな現状であろうと、名誉教授は少しでも実績を作るため、ある人物を訪ねた」

 「その人物こそ、バーテッツ・アラストロ…アイルローマ周辺地域で名の知れた防具職人でした…」


クレード「バーテッツ・アラストロが凄腕の防具職人だったというのは、博士が俺にくれたレポートの中でも少し書いてあったが、具体的にどういう人物なのかは知らない…」


クレード「ティム、お前はそいつのことを何か知っているのか?」

ティム「名誉教授ご本人と直接お会いしたクレードさんでも、共同研究者のバーテッツ氏についてはあまりご存じないわけですか」

 「いいでしょう、その辺のことも調べさせていただきましたので、お話しいたしましょう」

ヴェルトン博士とバーテッツ。

助手のティムは何を話すのか?

次回へ続く。


☆※1…山と町の名前の由来は、サンマリノの世界遺産「サンマリノの歴史地区とティターノ山」(文化遺産 2008年登録)より

☆※2…村の名前の由来は、イタリアの世界遺産「アルベロベッロのトゥルッリ」(文化遺産 1996年登録)より。トゥルッリはトゥルッロの複数形。トゥルッロ(独特なとんがり屋根と白い壁の家)の集まりといった意味。

※3…市の名前の由来は、イタリアとバチカン市国の世界遺産「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂」(文化遺産 1980年登録 1990年拡張)より

☆※4…地区の名前の由来は、バチカン市国の世界遺産「バチカン市国」(文化遺産 1984年登録)、礼拝堂の名前の由来は同市国の「システィーナ礼拝堂」より

☆※5…地区と壁画の名前の由来は、イタリアの世界遺産「レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院」(文化遺産 1980年登録)より

☆※6…歴史地区の名前の由来は、イタリアの世界遺産「ナポリ歴史地区」(文化遺産 1995年登録)、城の名前の由来は同歴史地区の「ヌォーヴォ城」より

※7…アイルクリート共和国は南半球にある国なので、8月は夏ではなく、冬の時期なのである。アイルクリートを含む南半球の国々の学校では、7・8・9月の冬休みが長く、12・1月の夏休みが短い。

(☆:物語初登場の世界遺産)

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