第56話 セイヌ・パリス、乙女たちの戦い
56話目です。
花の都セイヌ・パリスを舞台に乙女たちの熱き戦いが始まります。
(※今回の登場人物たちについては、前々回「○第54話-62話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)
セイヌ・パリス市内(※1)のあちこちに怪魚型魔獣たちが現れた。
ウェンディ・ホヅミ・ススキ・リンカ・ビオランテ・カルパーラたちはどう戦うのか?
ここは、グランプ・ブリュッセ地区(※2)。
地区役場庁舎、パン職人・ビール醸造業者・家具職人たちなどのギルドハウスが立ち並ぶ、この地区の大広場で、柔道家のウェンディやベレスピアーヌの兵士たちは怪魚型魔獣たちと戦っていた。
ベレスピアーヌ兵①(柔道家)「一本背負投!」
ベレスピアーヌ兵②(柔道家)「大外刈!」
怪魚型魔獣たち(断末魔)「ギャ…ベ…」
柔道家たちは次々と技を繰り出し、陸を歩く怪魚型魔獣たちを倒していった。
その様子を見ていたウェンディは、
ウェンディ「押忍!さすがは柔道が盛んなベレスピアーヌッス!」
「兵士さんたちの中には強い柔道家がいっぱいいるッス!」
怪魚型魔獣たち「ギッギッ!」
ウェンディ「押忍!ウチも同じ柔道家として負けてられないッス!」
「よろしくお願いしますッス」
向かってくる魔獣たちにウェンディはまず立礼した。
怪魚型魔獣たち「ギガーガッ!」
ウェンディ「桟敷!山麓背負落!」
ウェンディは魔獣たちの体を掴んで両膝をつき、どんどん投げつけた。
怪魚型魔獣たち(断末魔)「ギブ…ゲ…」
ウェンディ「押忍!ありがとうございましたッス!」
魔獣たちを倒し、ウェンディは立礼した。
ベレスピアーヌ兵③(女性柔道家)「キレのある見事な投技だったわ!きっとたくさん修行して身につけたのね!」
柔道五段のウェンディ、柔道の本場ワトニカで培った彼女の実力は異国でも認められたようだ。
ここは、トゥルーネルダム大聖堂(※3)前。
5つの塔がそびえるこの大聖堂にある親子が避難しようとするが…
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「大聖堂までもう少しです!急いでください!」
娘のペリーヌ(6歳)「ハァ、アア…」
母親「頑張って、ペリーヌ!もう少しよ!」
兵士に導かれペリーヌと母親は大聖堂まで急ぐが…
ペリーヌ「あうっ!」 どてっ!!
母親に手を繋がれていたが、ペリーヌは転んでしまった。
母親「ペリーヌちゃん!?」
そこに怪魚型が現れ襲いかかろうと…
怪魚型魔獣「ギギン!」
ペリーヌ「いやーっ!!」
母親「ああっ!!」
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「くっ!!」
兵士はサーベルで魔獣を斬ろうとしたが、その時…
???「銀!銀!銀!」
ザンッ!! (斬る音)
怪魚型魔獣(断末魔)「ギ…ギド…」
兵士よりも先に何かが魔獣を斬り裂いた。
ペリーヌ「えっ?」
母親「ペリーヌちゃん、良かった、良かった…」
母親はすぐにペリーヌに駆け寄り抱きしめた。
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「い、一体何が…」
ホヅミ「ホヅミ&駒人形さん、登場ですぅ!」
駒人形(銀将)「銀!銀!銀!」
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「あ、あなたは確か…」
別の兵士が、
ベレスピアーヌ兵⑤(フランクナイト)「彼女はワトニカのホヅミ殿だ」
「本日、首相との会談にご参加したお一人だ」
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「伝令隊より話は聞いていましたので、まさかとは思いましたが…」
ベレスピアーヌ兵⑤(フランクナイト)「驚いている暇はない。急いでそちらの親子を大聖堂へお連れするのだ」
ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「分かった。すぐお連れする」
ペリーヌと母親は分かれの際ホヅミに…
母親「本当にありがとうございます…」
「ホヅミ様は娘の命の恩人です…」
ペリーヌ「助けてくれてありがとう、お姉ちゃん!」
ホヅミ「魔獣がぁまたぁ、現れるかもぉしれないですぅ」
「急ぐですぅ」
母親「はい!」
ペリーヌと母親は兵士と共に大聖堂へと向かった。
ホヅミ「銀将さぁん、物の怪がぁ、どこからぁ現れるかぁ、分からないですぅ」
「しっかりぃ、用心するですぅ」
駒人形(銀将)「銀!銀!銀!」
ペリーヌと母親は、恩人であるホヅミの名を一生忘れないだろう。
ここは、アルビアーヌ地区(※4)。
怪魚型魔獣「ギギ!ギベベ!」
司教「我が地区を邪悪なる怪魚の好きにはさせません」
「太陽光のドーム!シャインプリズムドーム!」
怪魚型魔獣「ギブブッ!?」
バリア小魔法「シャインプリズムドーム」に守られ、魔獣は攻撃を弾かれた。
司祭「兵士の皆様、回復魔法をおかけいたします」
ベレスピアーヌ兵⑥(フランクナイト)「司祭様、恩に着ます」
ススキ(心の中で)「(神殿や聖堂から駆けつけてくれた司教様たちも戦いに協力してくれてるわ…)」
「(だったら私もカムイを信仰する者として頑張らないと…)」
怪魚型魔獣たち「ギギルガーギー!」
ススキ「アンモ(※5)たち、コロポックルの忍刀でお相手するわ」
ススキ「光よ、雷よ、私に力を…」
ススキは忍刀に魔力を込めた。そして忍刀は雷光を纏った。
ススキ「コロポックルの忍刀・イメル斬り(※6)!」
ザン!バチバチ… (斬られる音と雷の音)
怪魚型魔獣たち(断末魔)「ギ…ビビ…」
ススキ「あなたたちに神殿や聖堂を荒らさせはしない」
「カムイとカムイを信仰する人々のために、私は戦うわ」
赤レンガの建物が多いこのアルビアーヌ地区で、ススキはしっかり戦うことを誓う。
ここは、サンデル・トロフィア地区(※7)。
ベレスピアーヌがまだアイルクリートの領土だった頃(※8)に造られた、円形闘技場・古代劇場・地下回廊・公衆浴場・城壁などの遺跡が今も残るこの地区にリンカが来ていた。
怪魚型魔獣たち「ギデドーン!」
ベレスピアーヌ兵⑦(フランクナイト)「円形闘技場には市民たちが避難している!」
「魔獣どもを侵入させてはならん!」
リンカ「オラ、人の命も貴重な古代の遺跡も守ってみせるだ!」
リンカは津軽三味線を弾き始めた。
リンカ「ステージⅡ。定住の発展」
「田小屋野貝塚節」
津軽三味線から大きな貝輪型の光弾がいくつも飛び出した。
怪魚型魔獣たち「ギフィ!?」
貝輪型(リング型)の光弾に触れた魔獣たちは爆発し、次々と退治された。
リンカ(心の中で)「(この地区はオラだぢで守るだ)」
「(アンシー、シェルージェちゃん、24の怪魚のごどは任せただ)」
友を信じ、数々の遺跡の前でリンカは津軽三味線を奏でる。
ここは、ルアヴェール・ペレン地区(※9)
魔法大陸ムーンリアスでは、新時代の建築技術とされる「鉄筋コンクリート」により造られた教会などが立ち並ぶこの地区でビオランテが戦っていた。
怪魚型魔獣たち(断末魔)「ギグ…テ…」
ビオランテ「化け魚め、貴様らなど私の敵ではない」
ベレスピアーヌ兵⑧(フランクナイト)「魔力の高い剣を使いこなすとは!あれがサフクラント公国親衛隊員の実力か!?」
怪魚型魔獣たち「ギッ!ギッ!ガッ!」
ビオランテ「まだ歯向うのですか!」
怪魚型魔獣たち「ギッ!ギッ!」
ビオランテ「いいでしょう、真紅に輝く我が「カーバンクルのエストック」でお相手しましょう」
ビオランテは再び剣を構えた。
ビオランテ「この地区はかつて魔獣たちにより破壊され、そこから再建した町だと聞いております」
「ならば再び破壊などさせません。新時代の建築技術も守ってみせます」
幻獣「カーバンクル」を模したその剣で、ビオランテは戦う。町を二度と壊させないために。
ここは、ロワルールの丘(※10)。
ベレスピアーヌがまだ王国だった時代に造られた古城などが多く残るこの丘にカルパーラが来ていた。
カルパーラ「ここまでお馬をお貸しいただきありがとうございました」
ベレスピアーヌ兵⑨(フランクナイト)「とんでもありません」
「このような場所にまでお越しいただき感謝しております」
ベレスピアーヌ兵⑩(フランクナイト)「近くの川から怪魚型が飛び出してきます」
「市民や古城を守るため、なんとしても駆除せねば…」
その時カルパーラや兵士たちの前に怪魚型魔獣が何匹も現れた。
怪魚型魔獣たち「ギギッ!バッ!」
ベレスピアーヌ兵⑩(フランクナイト)「くっ!早速現れたか!」
カルパーラ「ポルトの弓で戦います」
「ここはお下がりください」
カルパーラは弓を構えた。
ベレスピアーヌ兵⑩(フランクナイト)「強い魔力を感じます…そのお力でしたら、きっと…」
怪魚型魔獣たち「ギョン!デデ!」
カルパーラ「必殺!イベリアンウルフシュート!」
カルパーラが弓を射ると矢はイベリアオオカミの形をしたオーラを纏った。
(矢から聞こえる鳴き声)「ウワォォー!」
怪魚型魔獣たち(驚いている)「ギキッ!?」
矢は魔獣たちに命中し、矢を食らった魔獣たちは倒れた。
怪魚型魔獣たち(断末魔)「ギ…デファ…」
カルパーラ「ここであなたたちに負けてしまったら、シェルージェ様に申し訳ありませんわ」
「ポルトの弓」はまだまだ力を秘めている。カルパーラは今後更なる技を見せてくれるだろう。
ウェンディやカルパーラたちだけではなく、ミレイヤ第3皇女にお供していたラープ帝国親衛隊のクリスフォーンとダニエラもセイヌ・パリス市内で戦っていた。
二人はミレイヤから、自分の護衛ではなく、市内に現れた怪魚型たちを駆除するよう言われたようだ。
ここは、フォンテブローヌ城(※11)前。
ベレスピアーヌが王国だった時代、国王や女王たちの居城であったが、現在は市民たちに開放され、中を見学できるようになっている。
怪魚型魔獣たち「ギギルーッ!」
ベレスピアーヌ兵⑪(隊長格・銃士)「城内に避難している市民たちのためにもこれ以上の接近を許すな!」
ラープ帝国兵①(隊長格・銃士)「共和国騎士団と協力し、魔獣たちを仕留めるのだ!」
ベレスピアーヌ兵⑫(隊長格・銃士)「撃ち方始め!」
クリスフォーン(マスケット銃を構えながら)「ミレイヤ様、私の銃の腕、信じてくださいね…」
襲いかかろうとする怪魚型魔獣たち「ギギギーン!」
魔獣たちに無数の銃弾が放たれた。
バン!バン!バン! (銃声)
怪魚型魔獣たち「ギフェッ!?」
ベレスピアーヌ兵⑫(隊長格・銃士)「いいぞ!魔獣たちに銃が効いてる!」
しかしその時…
クリスフォーン「きゃーっ!」 どてっ!!
銃を撃った反動に耐えられず、クリスフォーンは転んでしまった。
ラープ帝国兵②(銃士)「何をやっている、クリスフォーン!」
ラープ帝国兵③(銃士)「そなたはそれでもミレイヤ様をお守りする親衛隊員の一員かっ!?」
クリスフォーン「す、すいません…」 いてて…
ドジっ娘クリスフォーンは親衛隊員としてまだまだ未熟だが、きっとこの先成長していけるはず…主であるミレイヤへの想いがあるのなら…
ここは、プロヴァンヌ地区(※12)。
市内の中では緑が豊かで、薔薇の栽培が盛んに行われている。
しかしこののどかな地区にも魔獣たちが現れ…
翼の牙犬型魔獣たち「ガズズーッ!」
ベレスピアーヌ兵⑬(フランクナイト)「なんてことだ!翼の牙犬型まで現れるとはっ!」
ベレスピアーヌ兵⑭(フランクナイト)「怪魚型の血の匂いに釣られて、集まってきたのか!?」
ダニエラ「大丈夫。ダニエラ、いる」
「高いこと、登って、倒す」
そう言ってダニエラは近くにあるセザールンの塔(※12)の外壁にしがみつき、そのままよじ登った。
ベレスピアーヌ兵⑮(フランクナイト)「塔をよじ登るとは!魔力で可能にしているのか!?」
ラープ帝国兵④(女性騎士)「あの娘は元野生児なんです」
「魔力を使わなくても塔の壁をよじ登ってしまうくらい身体能力がすごいんです」
ベレスピアーヌ兵⑮(フランクナイト)「元野生児ですと!?」
ダニエラは塔の天辺までよじ登って、
翼の牙犬型魔獣たち「ガブブゥ!」
ダニエラ「こい、翼犬」
「ダニエラ、相手になる」
翼の牙犬型魔獣たち「グガーッ!」
魔獣たちがダニエラに噛みつこうとするが…
ダニエラ(大声)「ウガガーッ!」
翼の牙犬型魔獣たち(驚いて)「グゲッ!?」
ダニエラは魔獣たちよりも大きい叫び声を上げ、手に付けている「ヴァラディスの爪」で次々と切り裂いた。
翼の牙犬型魔獣たち(断末魔)「ブゲ…」
ダニエラ「ミレイヤ様、ダニエラ、負けない!」
ミレイヤへの想いと「ヴァラディスの爪」の力でダニエラは戦う。主ミレイヤから太鼓判を押されたそのパワーで。
ここは、セイヌ川(※1)にかかるポント・ヌルフ橋(※1)。
橋の上では、川から飛び出してくる怪魚型魔獣を相手に兵士たちが戦っていた。
兵士たちの中にはサンナの双子の妹である柔道家のフレイもいた。
怪魚型「ギッギッ!」
フレイ「倒しても倒しても切りがないわ」
「一体川の中にどれだけいるっていうのよ!」
ベレスピアーヌ兵⑯(フランクナイト)「この怪魚型を産んでる親玉が川のどこかにいるってのか?」
ベレスピアーヌ兵⑰(フランクナイト)「そんな奴がいたとしても、この濁った川でどう見つければ…」
ベレスピアーヌ兵⑱(女性・フランクナイト)「日も暮れてきたわ…」
「暗くなると私たちが不利だわ…」
苦戦している兵士たちのもとに、アンシー・シェルージェ・サンナたちが駆けつけた。
アンシー「騎士団の皆さん!」
「私たちは本日ソフィアーヌ首相と会談を行った旅の者たちとその協力者です!」
「私たちも魔獣退治の手伝いをさせてください!」
ベレスピアーヌ兵⑲(女性部隊長)「この方々の実力は確かです!」
「道中に現れた怪魚型を何匹も倒していただきました!」
フレイはアンシーたちと一緒にいる双子の姉のサンナに気づき…
フレイ「サ、サンナ!?」
「あなたも一緒なの!?」
サンナ「フレイ!?ここにいたのね!」
再会したサンナとフレイの双子姉妹。
次回へ続く。
※1…市・川の由来はフランスの世界遺産「パリのセーヌ河岸」(文化遺産 1991年登録)、橋の名前の由来は同河岸の「ポン・ヌフ」より
☆※2…地区の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「ブリュッセルのグラン=プラス」(文化遺産 1998年登録)より
☆※3…大聖堂の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「トゥルネーのノートル・ダム大聖堂」(文化遺産 2000年登録)より
☆※4…地区の名前の由来は、フランスの世界遺産「アルビの司教都市」(文化遺産 2010年登録)より
※5…元ネタはアイヌ語。『アンモ』は「鬼・妖怪・化け物」などの意味。エゾ藩の人間は魔獣を物の怪やアンモとも呼ぶ。
※6…元ネタはアイヌ語。『イメル』は「光・稲妻・雷」などの意味。
☆※7…地区の名前の由来は、フランスの世界遺産「アルルのローマ遺跡とロマネスク様式建造物群」(文化遺産 1981年登録)、同建造物の「サン・トロフィーム教会」より
※8…ベレスピアーヌは当時帝国だったアイルクリートからケルビニアン暦500K年頃に独立した国。ベレスピアーヌは現在共和国だが、建国当初は王国、君主制だった。
☆※9…地区の名前の由来は、フランスの世界遺産「オーギュスト・ペレによって再建された都市ル・アーヴル」(文化遺産 2005年登録)より
☆※10…丘の名前の由来は、フランスの世界遺産「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」(文化遺産 2000年登録)より
☆※11…城の名前の由来は、フランスの世界遺産「フォンテーヌブローの宮殿と庭園」(文化遺産 1981年登録)より
☆※12…地区の名前の由来は、フランスの世界遺産「中世市場都市プロヴァン」(文化遺産 2001年登録)、塔の名前の由来は同都市の「セザールの塔」より
(☆:物語初登場の世界遺産)




