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第54話(後編) ヴェルセイユ宮殿会談(後編)

(※第56話の後半部分です)

サンナはミレイヤに向かって、

サンナ「ミレイヤ様、確かに虐待や暴力により幼い子供や若い女性たちが命を落としてしまう事件をお耳にするのはとてもお辛いことでしょう…」

 「亡くなってしまった子供や女性たちのことを思うと大変可哀想でなりません…」

 「私だってミレイヤ様のように命を奪った人たちを憎む気持ちは少なからずございます…」

ミレイヤ「ならばこれからは神に代わり、このわたくしを崇めるのが良いでしょう」

 「わたくしのもとでなら、あなたも遠慮なく本音を口にできますよ」


ミレイヤ「虐待や暴力、殺人を犯した者たちをわたくしと共に次々と処刑していこうではありませんか」

 「わたくしたちの手で亡くなった幼い子供や若い女性たちの仇を討つのです」


サンナ「ミレイヤ様、誠に申し訳ないのですが、今の私にミレイヤ様を崇めたいという気持ちはございません」

ミレイヤ「なるほど、「崇める」ではさすがに言いすぎだったかもしれませんね」

 「ならば崇めるのではなく、わたくしの考えなどを支持しなさい」

 「それが世の中の子供や女性たちにとってプラスになるはずですから」


サンナ「そちらもできかねます」

 「なぜなら今のミレイヤ様は優しさや愛情ではなく、「憎しみ」で動いているようなお方だからです」

ミレイヤ「憎しみですか。それは否定しませんよ」

 「命を奪うまで幼い子供を虐待したり、若い女性を刃物で刺したりする者たちには「憎しみ」や「憎悪」などしか生まれませんので」


サンナ「それでしたら一度その憎しみや憎悪を捨ててみるのはいかがでしょうか?」

ミレイヤ「それはつまり残虐な行いで子供や女性の命を奪った者たちを許せということですか?」

サンナ「そうではございません」

 「そのような者たちは初めからいないものだと思ってください」

 「いないのですから、そこに許す、許さないもないのです」

ミレイヤ「あなた、一体何を言って…」


サンナ「おそらくミレイヤ様は、命を奪った者たちに重い刑が下ればそれでご満足なさってしまうお方なのでございましょう」

 「ですが命を奪った者たちに対して憎しみを抱くよりも、亡くなった子供や女性たちに対して「優しさ」や「悲しみ」の目をお持ちになってください」

 「それこそが今のミレイヤ様には必要なのです」

ミレイヤ「!!」


サンナ「命を奪った者たちはミレイヤ様にとって今は考える必要のない人たちなのです」

 「それよりも亡くなった幼い子供や若い女性たちのことを悲しんでいただきたいのです…」

ミレイヤ「!!!?」

ブロイス「ミ、ミレイヤ!?」


ミレイヤは心の中で思った。

ミレイヤ「(そうだ…)」

 「(わたくしは亡くなった幼い子供や若い女性たちよりも、その向こうにいる罪人たちのことばかり考えていた…)」

 「(だけどもしその罪人たちを頭の中から消すことができれば、わたくしはきっと目の前の子供や女性たちともっと向き合うことができるはず…)」

 「…」


ここでアンシーが、

アンシー「ミレイヤ様、確かに私だって幼い子供や若い女性たちの命を奪った者たちを許したいなんて思いません!」

 「そこにどんな事情があったとしてもです!」

ミレイヤ「アンシーさん…」

アンシー「私もサンナさんもミレイヤ様が加害者たちにお優しい人間になってほしいと言っているわけじゃないんです!憎しみよりも優しいお気持ちを大切にしてほしいんです!」

 「憎しみよりも優しさのほうが強ければ、ミレイヤ様の心は今よりもきれいになっていくと思うんです!」

ミレイヤ「わ、わたくしの心…」


リンカ(心の中で)「(さすがはアンシーだ)」

 「(皇女様相手によく言えただ)」

ホヅミ(心の中で)「(相手がぁ誰でもぉ、はっきり口にぃできるのがぁアンシーさんのぉ強みですぅ)」

ウェンディ(心の中で)「(押忍。きっと皇女様の心に響いたはずッス)」


続いてシェルージェも、

シェルージェ「憎しみの心でいっぱいになっちゃったら、お顔も怖くなっちゃうよぉ」

 「ミレイヤさん美人なんだし、それはもったいないよぉ」

ミレイヤ「わ、わたくしの心が顔にも出ていると…」

シェルージェ「そうだよぉ、優しい気持ちとかで心がいっぱいになったら、もっと素敵な笑顔ができるはずだよぉ」

ミレイヤ「え、笑顔…」

 「わ、わたくしの…」


カルパーラ(心の中で)「(さすがですわ、シェルージェ様)」

 「(お優しい説得で何よりです)」

ビオランテ(心の中で)「(シェルージェ様の純粋な優しさがミレイヤ様に届くと願いたいです)」

ススキ(心の中で)「(私たちの分まで口にしてくれてありがとね、シェルージェちゃん)」


サンナ「ミレイヤ様のご要望に対し何もかもお応えできるわけではございません」

 「ですがお力になれることでしたら、私は喜んで手をお貸しいたします」

ミレイヤ「サンナさん…」


アドレンデ(心の中で)「(もし年配の司教などがミレイヤ様とお話するとしたら、自身の宗教観などをただ押し付けていただけかもしれません…)」

ソフィアーヌ(心の中で)「(宗教に対し否定的なお方だからこそ、サンナさんはご自身の言葉でミレイヤ様にお話しした)」

 「(お若いシスターだからこそ、こういう判断ができたのですね)」

 「(さすがですわ、サンナさん)」


ミレイヤ(心の中で)「(アンシーさん、シェルージェさん、サンナさん…)」

 「(全てではないけど、こちらのお三方にはわたくしを受け入れてくれようとするお気持ちがある…)」

 「(もし同じ道を進むことができるのなら、わたくしは彼女たちと共に…)」


ブロイス(心の中で)「(ミレイヤの心がこんなにまで揺れ動くとは!?)」

 「(何だ、あの三人のむすめたちは!?)」


ミレイヤ「アンシーさん、シェルージェさん、サンナさん…わ、わたくしはあなたたちと……」


ブロイス(心の中で)「(ミレイヤの心が惹かれている!?あの三人の娘たちにか!?)」

 「(ダメだ!それだけは絶対にダメだ!)」

 「(ミレイヤ、お前はそっちに行ってはならない!)」

 「(お前はいつまでも私のそばにいなければならないのだ!)」


アンシーたちに何かを言おうとしたミレイヤだが、兄のブロイスが口を挟んだ。

ミレイヤ「ミレイヤ…私は疲れた…」

 「席を外したい…一緒に来てほしい…」

アンシー「お、お兄様!?」


ソフィアーヌ「ブロイス様、ご体調が優れないのでしたら、お席を外していただいても構いません」

 「ですが会談の時間は夕方までございます」

 「ミレイヤ様までお席を外さるとなると、さすがに…」

シェルージェ「そうだね、お部屋の魔法時計見ても、まだお昼の3時だもんねぇ」


その時、兵士たちが部屋をノックして入ってきた。

ベレスピアーヌ兵①(フランクナイト)「会談中のところ誠に申し訳ございません!」

ベレスピアーヌ兵②(フランクナイト)「ですが至急お伝えしなければならぬことがございます!」

アドレンデ「どうした、一体何があったのだ?」


ベレスピアーヌ兵①(フランクナイト)「ハッ!ルーヴェス美術館(※1)周辺など、セイヌ川沿いに大量の怪魚型魔獣が出現しました!」

ベレスピアーヌ兵②(フランクナイト)「怪魚はかなりの数です!」

 「川から次々と飛び出してきます!」

ソフィアーヌ「なんですって!?セイヌ川から魔獣たちが!?」


シェルージェ「アンシーちゃん!」

アンシー「そうね。怪魚型なら間違いないわ」


ブロイス(激しく震えながら)「バ、バカな!ま、魔獣たちがこの町に…」


ミレイヤ「クリスフォーン、ダニエラ」

 「これはわたくしたちも向かわなければなりませんね」

クリスフォーン(部屋にいる親衛隊の一人)「は、はい!」

 「お、お供いたします!」

ダニエラ(同じく部屋にいる親衛隊の一人)「ミレイヤ様、言う!」

 「ダニエラ、戦う!」



その頃セイヌ川のそばでは、

怪魚型魔獣たち「ギッ!ギッ!」

ベレスピアーヌ兵③(フランクナイト)「次から次へと川の中から!」

 「なんなんだ、こいつらは!?」

ベレスピアーヌ兵④(フランクナイト)「とにかく止めるのだ!」

 「市民たちに被害が出てはならん!」



濁った川の中から巨大な怪魚と謎の怪物が兵士たちを覗いていた。

怪魚のほうは、時鋼の魔獣団メタルクロノスの幹部、「第24刻徒ルビジウムの魚」であった。


ルビジウムの魚「愚カナ人間ドモメ…」

 「我ラメタルクロノスノ前ニ跪クガイイ…」

謎の怪物「ケケケ、ジェジェ」



その頃海底にあるメタルクロノスの城では、

キャプテン・キャンサー(水銀入りの酒を飲みながら)「しかしあんたも鬼だなあ、一応宣戦布告前なんだぜ」

ゼロクロス大帝「これも余興の範囲だよ、宣戦布告前のね…」


キャプテン・キャンサー「ルビジウムの魚たちから花の都を守れるかどうか、お手並み拝見ってとこか?」

ゼロクロス大帝「エンフェルズ塔(※1)が崩れようが、ルーヴェス美術館の絵画や彫刻がどれだけ壊れようと私は何の責任も取らないよ」

 「宣戦布告をすればこんなレベルじゃ済まないからねぇ」

キャプテン・キャンサー「…」

花の都セイヌ・パリスをメタルクロノスの好きにさせてはならない。

アンシー(クリスターク・ホワイト)・シェルージェ(クリスターク・イエロー)・サンナ(ピンクの髪)・ミレイヤ(藍色の髪)たちはどう動く?

次回へ続く。


※1…市・川の由来はフランスの世界遺産「パリのセーヌ河岸」(文化遺産 1991年登録)、地区・美術館・塔の名前の由来は同河岸の「ブルボン宮殿」・「ルーヴル美術館」・「エッフェル塔」より

☆※2…鐘楼群の元ネタは、ベルギーとフランスの世界遺産「ベルギーとフランスの鐘楼群」(文化遺産 1999年登録 2005年拡張)より

※3…宮殿の名前の由来は、フランスの世界遺産「ヴェルサイユの宮殿と庭園」(文化遺産 1979年登録)より

※4…島の名前の由来は、フランスの世界遺産「ニューカレドニアの礁湖ラグーン:サンゴ礁の多様性と関連する生態系」(自然遺産 2008年登録)より

※5…国の名前の由来は、オーストリアの世界遺産「ウィーン歴史地区」(文化遺産 2001年登録)と、ドイツの世界遺産「バンベルク市街」(文化遺産 1993年登録)より

☆※6…大聖堂の名前の由来は、フランスの世界遺産「アミアン大聖堂」(文化遺産 1981年登録)より

☆※7…大聖堂の名前の由来は、フランスの世界遺産「ランスのノートルダム大聖堂、サン=レミ旧大修道院、トー宮殿」(文化遺産 1991年登録)より

※8…ベレスピアーヌを含め、ムーンリアス各国の首相たちの任期は1期につき5年。

無論支持率などによっては任期内に辞職することもある。

※9…3年に一度開かれるムーンリアス全20カ国による国際会議。

各国の代表(国王・皇帝・将軍・大公・首相)が一堂に集まる。

最近では一昨年2048K年に開催された。開催国は20カ国の中から選ばれ、2048K年の会議は、北の月(北側の大陸)のエーゲポリス王国で開催された。

※10…港町の名前の由来は、フランスの世界遺産「月の港ボルドー」(文化遺産 2007年登録)と、同港を流れる「ガロンヌ川」より

☆※11…灯台の名前の由来は、フランスの世界遺産「コルドゥアン灯台」(文化遺産 2021年登録)より

※12…ベレスピアーヌ共和国は南半球の国であるため、今の8月の時期は冬なのである。

☆※13…市の名前の由来は、フランスの世界遺産「リヴィエラの冬季行楽都市ニース」(文化遺産 2021年登録)より

☆※14…村の名前の由来は、フランスの世界遺産「コースとセヴェンヌの地中海性農牧地の文化的景観」(文化遺産 2011年登録)より

☆※15…町の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「ワロン地方の主要な鉱山遺跡群」(文化遺産 2012年登録)より

☆※16…村の名前の由来は、フランスの世界遺産「ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ」(文化遺産 2015年登録)と「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」(文化遺産 2015年登録)より

☆※17…町の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」(文化遺産 2005年登録)より

☆※18…邸宅の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群ブリュッセル」(文化遺産 2000年登録)より

☆※19…元ネタは、フランスの世界遺産「モン・サン・ミシェルとその湾」(文化遺産 1979年登録 2007年拡張)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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