第7話(前編) 旅立ち(前編)
(※今回の話は前編と後編に分かれています)
<主な登場人物の紹介>
◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)
・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。
魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。
自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。
ルスモーン島(※1)という島に流れ着き、そこでヴェルトン博士というアイルクリート第一魔法大学の元名誉教授の世話になった。
今は臨時団員としてルスカンティア王国騎士団に協力している。
◎オリンス・バルブランタ(男・28歳)
・緑色の髪をしているルスカンティア王国騎士団に所属する正団員である騎士。
馬にまたがり騎兵として戦う。使う武器は槍など。愛馬の名はベリル号。
魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。
この物語における重要人物の一人。
○ラドランク・カドルック(男・54歳)
・ルスカンティア王国西側に常駐している兵士たちを束ねる騎士団の副団長(三人いる副騎士団長の一人)。騎士団長ラグラードの弟。
○ナハグニ・按司里(男・31歳)
・オリンスの友人で、ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。
準団員としてルスカンティア王国騎士団に所属している。
日本の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(文化遺産 2000年登録)からイメージしたキャラ。沖縄県出身のイメージ。
○鵺洸丸(男・30歳)
・オリンスの友人で、ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。
鵺洸丸は忍びとしての名前で、彼の本名は、「タケル・南嵐」。
準団員としてルスカンティア王国騎士団に所属している。
日本の世界遺産「小笠原諸島」(自然遺産 2011年登録)からイメージしたキャラ。東京都小笠原村出身のイメージ。
○ウェンディ・京藤院(女・20歳)
・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身で、公家の娘。柔道家で五段の腕前。
語頭に「押忍」、語尾に「~ッス」と付けて話すことが多い。
ホヅミやススキたちと出会い、三人でルスカンティア王国までやって来た。
日本の世界遺産「古都京都の文化財」(文化遺産 1994年登録)からイメージしたキャラ。京都府出身のイメージ。
○ホヅミ・鶴野浦(女・22歳)
・ワトニカ将国サド藩出身の女性棋士で女流二段の腕前。
日本の暫定リスト掲載物件「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」からイメージしたキャラ。
○ススキ(女・22歳)
・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。
ススキはくノ一としての名前で、彼女の本名は、「モエ・豊中島」。
○ルスディーノ29世(男・53歳)
・ルスカンティア王国の現国王で、国の代表者。第57代国家元主。
○ラグラード・カドルック(男・57歳)
・ラドランク副騎士団長の兄で、ルスカンティア王国騎士団団長。国王29世や大臣のリガーデンたちから厚く信頼されている。
○チャドラン・ルスディーノ(男・23歳)
・国王29世と王妃パリンサの息子で、ルスカンティア王国の王子。
大草原セレンゲティア(※2)での戦いなどを通じ、サツマダイ藩の大名家の娘、ルリコ・奄美大野のことが好きになった。
○ルリコ・奄美大野(女・22歳)
・ワトニカ将国サツマダイ藩出身の女侍で、大名家の娘。瑠璃姫とも呼ばれる。
社会人留学によりルスカンティアにやって来た。
大草原セレンゲティアでの戦いなどを通じ、チャドラン王子の愛を受け止めた。
日本の世界遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(自然遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。鹿児島県出身のイメージ。
○パリンサ・ルスディーノ(女・51歳)
・国王29世の妻でルスカンティア王国の王妃。
息子であるチャドラン王子を何かと心配している。
○リガーデン・クルーヌ(男・74歳)
・ルスカンティア王国の大臣で、政治や軍事などの面で国王たちを支えている。
△セルタノ・リクゼストン(男・33歳)
・オリンスの友人。今回は名前のみの登場。
ケルビニアン暦2050K年4月21日。
大草原セレンゲティアからクレーター地帯のルスデフォート・ドーム(※3)へ、そしてルスデフォート・ドームから王都のジルスゴール城(※4)へとたどり着いたラドランク副騎士団長率いる騎士団の部隊。
ラドランクは城の兵たちに帰還したことを伝え、また兵士たちから別の話を聞いた。
そしてラドランクは部隊にいるクレードとオリンスに話をして、
ラドランク「クレード、オリンス、今宵勝利の宴を開くとのことだ」
ラドランク「宴までまだ時間がある。ひとまず休むといいだろう」
クレード「悪いな副騎士団長。俺まで宴に呼んでもらって」
ラドランク「言っただろう。臨時団員とはいえ今は君もルスカンティア王国騎士団の一員だと」
「セレンゲティアやルスデフォート・ドームなどの戦いに参加した団員の一人である以上、宴で労うつもりだ」
クレード「宴もいいが、報酬である金はいつくれるんだ?」
ラドランク「それについては明日渡すことにする」
「特別な事情のある君のことを話せば、国王様や騎士団長の兄もまず君に会いたいと思うだろうからな」
続いて、
ラドランク「クレード、すまないが私に博士が書いたというレポートを貸してくれないか?」
クレード「レポートをあんたにか?」
ラドランク「そうだ。そのレポートにグラン・ジェムストーンやメタルクロノスのことなどが書かれているというのなら、事前に国王様に確認していただきたいからな」
「内容をある程度伝えておいたほうが後の話もスムーズにいくことだろう」
クレード「相手が国王であればさすがに拒むわけにもいかないか…」
ラドランク「大学に渡す論文まではいい。レポートのほうだけを頼む」
クレードは自分宛てに書いてもらったヴェルトン博士のレポートをラドランクに手渡した。
ラドランク「ヴェルトン博士のレポート、確かに預かったぞ」
クレード「それじゃあ今日はもう宴を楽しむことだけを考えるか」
ラドランク「宴では食べ物だけではなく酒やジュースなどの飲み物も十分に用意する」
「だがクレード、君は年齢が分からない以上酒は絶対に飲むなよ」
クレード「酒の話ならヴェルトン博士から聞いている。酒は二十歳以上になってからだろ?」
ラドランク「まあ見た目的に君は二十歳を越えていると思うがな」
ラドランク「だが酒を飲むことは絶対に許さんぞ」
クレード「分かった、分かった」
オリンス「あ、あの、すいません」
二人の話を聞いていたオリンスが口を開き、
オリンス「侍のナハグニと忍者の鵺洸丸はまだ城へ戻ってないんですか?あの二人はルスンゴロ自然保護区(※5)へ向かったと聞いているんですが…」
ラドランク「ルスンゴロに向かった部隊はまだ帰還していないそうだ」
オリンス「そうですよね。ルスンゴロは周囲を山々に囲まれていることですし簡単に移動は…」
ラドランク「だがそれでも今日の夜までには帰還するだろう」
「宴についてはルスンゴロの部隊が帰り次第だな」
オリンス「ナハグニや鵺洸丸、部隊のみんなが無事だといいけど…」
ラドランク「今は帰還を信じてひとまず待つしかなかろう」
クレード「そういうことだオリンス。とりあえず俺たちは宴まで休むぞ」
ラドランク「オリンス、君がクレードと共に旅立つかどうかの返事も明日でいい」
「明日兄である騎士団長に話をしてくれ」
オリンス「分かりました。でも俺の気持ちはもう決まっています」
ラドランク「それでいい。しっかりとした気持ちを持ってくれ」
「君も明日は兄だけではなく、国王様とも話をすると思えるからな」
「クレードと同様君もマスクとスーツ姿の戦士になったということで、国王様もその件を直接確認したいことだろう」
オリンス「承知しました…副騎士団長…」
オリンス(心の中で)「(国王様か…直接お会いして話をすると思うとすごく緊張するな…)」
「(でも俺はクリスタークの戦士になったんだ…王様でさえもお気に留めるようなことをやったんだ…)」
ラドランク「では私はこれで一旦失礼する」
「先に城に到着した王子や兄たちが私を待っていることだしな」
オリンス「いろいろとすいません…ラドランク副騎士団長…」
ラドランク「話は変わるが、今城には三人のワトニカ人女性が来ているようだ」
オリンス「えっ、ワトニカの人たちが他にも来ているんですか?」
ラドランク「宴の場で会って話してみるといいだろう」
「では失礼する」
クレード(心の中で)「(ワトニカ人か…オリンスの友人だという侍や忍者の男たちといい、妙に縁があるな…)」
その日の夜ルスンゴロに向かった部隊も皆無事に帰還し、クレードとオリンスは部隊にいたナハグニと鵺洸丸に顔を合わせ、
鵺洸丸「オリンス殿。無事で何より」
オリンス「鵺洸丸、ナハグニ、二人とも無事で本当に良かったよ…」
ナハグニ「拙者や鵺洸丸殿はルスデフォート・ドームに向かったオリンス殿を友として追いかけようと思ったでござるが、少し考えて拙者らはルスンゴロに向かうことにしたでござるよ」
鵺洸丸「それはそれがしにしてもナハグニ殿にしてもオリンス殿を信用したがゆえ…」
「緑の戦士に変身したときのオリンス殿は凄まじいほどの妖力(※ワトニカでは魔力のことを「妖力」という)を放っておった…」
「経緯はともかく、あれだけの強大な力を得たのならオリンス殿にドームの魔獣退治を任せて良いと思ったのだ…」
ナハグニ「急にすごい力を得たとしても、オリンス殿の正義の心は変わらない…」
「拙者と鵺洸丸殿はオリンス殿の心を信じたのでござるよ」
オリンス(少し嬉しそうに)「鵺洸丸、ナハグニ…そこまで俺のことを信じてくれるなんて…」
ナハグニ「遠い異国の地からやって来た拙者や鵺洸丸殿の面倒を見てくれたのは他ならぬオリンス殿やセルタノ殿…」
「そのご恩は長き信頼に値するでござるよ」
話をしているオリンスたち三人。そこにクレードも加わり、
クレード「なるほどな。お前らがオリンスの友人たちだということは確かなようだ」
鵺洸丸「お主があの青き戦士の者か?」
クレード「クレード・ロインスタイトだ」
「過去の記憶をなくた俺はヴェルトン博士に助けられ、そしてこのルスカンティアまでやって来た」
ナハグニ(心の中で)「(くーっ!セレンゲティアではマスク姿だったからよく分からなかったでござるが、素顔は中々の美男子でござるなあ!)」
「(悔しいが拙者の負けでござる!)」
クレードはナハグニと鵺洸丸に自分のこれまでの経緯を話した。
そして夜になり城では勝利を祝う宴が開かれた。
まずは宴のあいさつとして国王ルスディーノ29世が、
ルスディーノ29世「皆の者、この度の戦い大変ご苦労であった。王としてそなたたち騎士団に心より礼を言おう」
次にラグラード騎士団長が、
ラグラード「それでは我らの勝利を祝い宴といこう」
「どれだけ食べても飲んでも構わん。各自好きにしてくれ」
そして最後にチャドラン王子も、
チャドラン「騎士団の皆様、そして協力していただいた全ての方々に心より感謝いたします…」
「この度は本当にありがとうございました!」
「どうぞ宴を楽しんでください」
チャドラン王子はそう言って深々と頭を下げた。
兵士たち「オーッ!」
宴の始まりに兵士たちは歓声を上げた。
一方チャドラン王子の横にいるルリコは王子を見つめ、
ルリコ(心の中で)「(チャドラン王子、ご丁寧で何よりです…)」
「(あなたがもし横柄な王子様だったら、私はきっとあなたを好きになっていなかった…)」
また宴の場に来ていたクレードたち四人は、ウェンディ・ホヅミ・ススキたち女性三人と出会い、彼女たちはクレードたちに自己紹介をした。
まずはウェンディから、
ウェンディ「押忍!ウェンディ・京藤院ッス!」
「キョウノミヤ藩出身の柔道家ッス!五段の腕前ッス!」
ホヅミ「ホヅミ・鶴野浦ですぅ」
「サド藩出身の女性棋士ですぅ。女流二段ですぅ」
ススキ「ス、ススキです…」
「よ、よろしくお願いします…」
ウェンディ「押忍!こんな遠い異国の地でワトニカ人と何人も出会うなんて思ってもみなかったッス!」
クレードたちはご馳走を囲み話を続けた。
オリンス「それじゃあウェンディは修行のために遥々ルスカンティアまでやって来たんだね」
ウェンディ「押忍!短大を卒業したら様々な国へ行って修行しようと思ってたッス!」
ナハグニ(心の中で)「(男が押忍押忍言ってもむさ苦しいだけでござるが、女子が言うとこんなにも愛くるしく聞こえるとは…)」
「(ああ…ウェンディ殿…♡)」
クレード「それで袴とメガネのあんたは将棋のプロというわけか」
ホヅミ「そうですぅ。小さい時からぁずっと将棋をやってきましたぁ」
ナハグニ(心の中で)「(喋り方は何か独特でござるが、なんとも愛くるしいメガネ女子でござろうか…)」
「(ああ…ホヅミ殿…♡)」
鵺洸丸「ススキ殿、そなたはくノ一大学を卒業した新人ということか」
ススキ「は、はい…」
「旅先でウェンディさんとホヅミさんと出会ってそのまま私も一緒に…」
ナハグニ(心の中で)「(小柄で内気な女子…なんと可憐でござろうか…)」
「(ああ…ススキ殿…♡)」
ウェンディたち三人を見て一人気持ち悪いくらいときめているナハグニ。
そして近くの席にいた女性兵士たちがウェンディたちのことを話した。
女性兵士①(騎士)「ウェンディさんたちにはいろいろと助けていただきました」
女性兵士②(魔法使い)「ジュルス自然保護区(※6)に現れた魔獣たちを速やかに退治できたのもウェンディさんたちのおかげです」
クレード「なるほど。お前ら女三人もしっかり戦えるというわけか」
ウェンディ「押忍!ウチの柔道の技をもってすれば余裕ッス!」
ホヅミ「ホヅミはぁ将棋の駒をぉ、戦うお人形さんや幻獣さんの姿に変えることができるんですぅ」
ススキ「わ、私は「オショロコマの水手裏剣」という武器が使えます…」
「この水手裏剣を使えば陸の上からでも水中の敵と戦えます…」
鵺洸丸「ほぅ、水手裏剣を扱えるとは…それは忍びとしては中々…」
ウェンディ「押忍!それにしても自然保護区内の河口には見たこともない鳥がたくさんいたッスね!」
ホヅミ「はいぃ。ホヅミ初めてオオフラミンゴやモモイロペリカンっていう鳥さんたちを見たですぅ!」
「サド藩のトキとは全然違う鳥さんたちでしたぁ!」
ススキ「河口にはアフリカマナティーっていうワトニカのジュゴンに似た動物もいました」
「私の水手裏剣でマナティーさんたちを守れて良かったです…」
オリンス(心の中で)「(三人ともすごいな…ナハグニや鵺洸丸のように技や特殊な武器で戦えるなんて…)」
「(クリスターク・グリーンに変身できるとはいえ、俺にはまだこれといった技がないからな…)」
「(でも落ち込んでばかりじゃいられないな…これから技をいろいろ編み出していかないと…)」
ウェンディたちを見てもっと強くなろうと思ったオリンス。
一方のナハグニはずっとウェンディたち女性三人を見て、
ナハグニ(心の中で)「(ああ…ウェンディ殿…ホヅミ殿…ススキ殿…♡)」
そんなナハグニに女性三人はかなり呆れて、
ウェンディ(小声)「(さっきから何ッスか?あの気持ち悪い侍は?)」
ホヅミ(小声)「(ずっと一人でにやけててぇ、すごく気持ち悪いですぅ)」
ススキ(小声)「(ち、近寄りたくない…)」
気持ち悪いナハグニを鵺洸丸はフォローしようとするが、
鵺洸丸(小声・慌てながら)「(まあまあ、ウェンディ殿!ホヅミ殿!ススキ殿!)」
「(あの者がスケベで女子にだらしないのはそれがしもよーく存じておりまする!)」
「(ですがここは我らが祖国ワトニカから遠く離れた異国の地!)」
「(遠い異国の地で出会ったワトニカの同胞ゆえ、どうか多少のことは大目に…)」
ウェンディ(小声・冷静に)「(いや、それは全く関係ねぇと思うッスけど)」
ホヅミ(小声)「(そうですよぉ、どこだろうとぉ誰だろうとぉ気持ち悪い人は気持ち悪いんですよぉ)」
ススキ(小声)「(わ、私、あの人はちょっと無理…)」
鵺洸丸(小声)「(うっ、うーむ…)」
(心の中で)「(瑠璃姫様と同じようなことを言われてしまうとは…)」
「(どうもそれがしは女子の心を読むのが苦手なようだ…)」
続いてウェンディたちは話題を変え、
ウェンディ「それにしてもこの国にサツマダイ藩のお姫様が来ているなんて驚きッス!」
ホヅミ「本当ですぅ!ホヅミもびっくりしたですよぉ!」
ススキ「私たち昨日瑠璃姫様にお会いしたんです…」
ウェンディ「押忍!なんでも瑠璃姫、王子様や騎士団長たちと共にセレンゲティアっていう大草原で戦ったらしいッスね!」
ホヅミ「社会人留学でこの国にいらっしゃったのにぃ、戦いに参加したみたいなんですよねぇ」
オリンス(心の中で)「(確かルリコやチャドラン王子、ラグラード騎士団長たちの部隊はセレンゲティアに残って様子を見ることにしたんだよな)」
「(更なる魔獣たちの増援が来るかもしれないから、それに備えて)」
ススキ「瑠璃姫様とは初対面でしたが、清楚で心優しいお方だと分かりました…」
「私と同じ年なのに瑠璃姫様のほうが大人の女性って感じで…」
ウェンディ「押忍!城に来たばかりのウチらに親切に対応してくれたッス!」
ホヅミ「高貴なお姫様なのにぃ、庶民的で気さくなところも良いですぅ」
ナハグニ「そうでござろう!ルリコ殿は素晴らしいお方でござるよ!」
「でもルリコ殿は拙者よりもチャドラン王子のことがずっと…」
クレード「落ち込むな。今日初めて話をした俺が言うのもなんだが、お前は多分初めから姫に相手されてないだろう」
鵺洸丸「しかし瑠璃姫様とチャドラン王子、お互い嬉しそうな顔をしておる」
宴の前の席にいるルリコとチャドラン王子を見て鵺洸丸は言った。
ホヅミ「あれはもう相思相愛ですよぉ!ラブラブじゃないですかぁ!」
ウェンディ「押忍!ウチもお二人を祝福したいッス!」
宴が進んだところでクレードは、自分のことをウェンディたち女性三人にも話した。
ウェンディ「押忍!クレードは過去の記憶をなくしてしまったんッスね!?」
クレード「そういうことだ。だから俺がどこの国の人間なのか、そして今何歳なのかも分からない…」
「思い出したのは俺の名前や持っていた剣と盾くらいだ…」
ホヅミ「それでぇルスモーン島という小島に流れ着いてぇ、ヴェルトンさぁんっていう博士に助けられたぁわけですねぇ?」
クレード「ああ。博士は俺にとって大切な恩人だ」
「助けてくれただけでなく、俺に言葉や知識とかをいろいろ教えてくれたしな」
クレード「それに博士の持っていたグラン・ジェムストーンのおかげで俺はクリスターク・ブルーに変身できるようになった」
「クリスターク・ブルーになり、空を飛んだり高速で泳げなかったら、俺はまだ博士と一緒にルスモーン島にいたことだろう…」
オリンス「その件については博士やクレードに対して申し訳ないと思うよ…」
「王国本土にいた魔獣たちの駆除を優先するあまり、王様や騎士団はルスモーン島のことを蔑ろにしていたんだから…」
「ご老人が島に流れ着いたというのなら、本来はすぐに保護させるべきなのに…」
クレード「俺は別に島に騎士団員が誰もいなかったことを怒っているわけじゃない」
「この後博士を保護するために動いてくれればそれで十分だ」
「ヴェルトン博士の保護については、ラグラード騎士団長と会ったときに話してみるつもりだったが、明日国王と話ができるというのなら、俺は直接王に頼んでみる」
鵺洸丸「クレード殿、話は戻りまするが、つまりクリスターク・ブルーに変身できたのは博士が作ったグラン・ジェムストーンという特別な石のおかげということか?」
クレード「そうだ。グラン・ジェムストーンは全部で18個あるが、うち3個は未完成の状態だ」
ナハグニ「そしてその3個の未完成品を大学に届けるわけでござるな。ちゃんとした完成品にするためにも」
クレード「ああ。そのために俺はアイルクリート共和国のアイルローマ市(※7)まで行くつもりだ」
「そこに博士の母校であるアイルクリート第一魔法大学があるからな」
オリンス「アイルローマ市は国の内陸部、そして記憶魔法の使い手がいるであろうアイルベニス市(※8)は国の沿岸部…」
「同じアイルクリートでもこの二つの都市は離れているから、このルスカンティアから行くとなるとまずは南側のアイルローマ市が先だね」
クレード「俺の記憶を取り戻すのは大学に行った後でいいと思っている」
ススキ「でも結局は旅をしなければならないってことですよね?」
クレード「ああ、明日国王や騎士団長との話が終わったらすぐに出発するつもりだ」
オリンス「クレード、君と同じクリスタークの力を手に入れた俺の心はもう決まっているよ」
クレード「その返事は明日改めて聞く」
鵺洸丸「なるほど。ではそれがしは宴が終わったら旅立つための荷造りといこう」
オリンス「鵺洸丸、いいの?」
鵺洸丸「オリンス殿のお力になることが恩返しでございまする」
続いてナハグニも、
ナハグニ「忍びだけではござらんぞ。侍も恩義を忘れず大切にするもの…」
「うちなー侍、ナハグニ・按司里!お供いたそう!」
オリンス(少し嬉しそうに)「ナハグニまで…」
ウェンディ「押忍!ウチらも忘れてもらっちゃ困るッス!」
ホヅミ「私旅をしてぇいろいろな人にぃ将棋の面白さを伝えたいですぅ」
「よろしくお願いしますぅ」
オリンス(少し嬉しそうに)「ウェンディ…ホヅミ…」
鵺洸丸「ではそうなるとあとはススキ殿だけでござるな」
「ススキ殿、いかようにいたす?」
鵺洸丸はススキに話しかけたが、彼女は、
ススキ「わ、私は…」
「ご、ごめんなさい…明日まで考えさせてください…」
クレード「無理して俺たちと行動する必要はない。思った通りにしろ」
鵺洸丸「左様。それがしたちと旅をすることがススキ殿にとって必ずしもプラスになるとは限りませんぬ」
オリンス「確かにススキがついてきてくれれば戦力アップにはなるけど、無理はしなくていいと思うんだ」
ナハグニ「うーむ…拙者としてはぜひススキ殿もご一緒に…」
ホヅミ「ナハグニさんはぁ、ちょっとぉ黙っててくださいよぉ」
ウェンディ「押忍!ススキさん!しっかり考えて答えを出すッスよ!」
ススキ「すいません…皆さん…」
(心の中で)「(でも私一人じゃ決断できそうにもないな…)」
決断力のないススキではあったが、彼女はあることを思った。
ススキ(心の中で)「(そうだ、この後瑠璃姫様にも相談してみよう…)」
「(あの方ならきっと力になってくれると思うから…)」
そして宴が終わり、クレードたちは城で一泊した。
次の日(22日)の朝、セレンゲティアやルスデフォート・ドームでの戦いで戦死した兵士たちの葬儀が行われた。
葬儀の場では国王ルスディーノ29世自ら兵士たちへの弔辞を読み、
ルスディーノ29世「勇敢なるルスカンティアの兵たちよ、この度戦い本当にご苦労であった…今は休むといいだろう…」
「身も心もゆっくりと休め、そなたらの魂が再びガイノアースへと還ってくることを私は心より願う」
またチャドラン王子も王に続き弔辞を読み、
チャドラン王子「平和な世界を実現するため、余もできることをやって参ります…」
「生まれ変わった皆様が平和に暮らせる世界を作るために…」
葬儀も終わり、クレードとオリンスは、国王のルスディーノ29世・王妃のパリンサ・大臣のリガーデンたちのいる王座の間へと呼ばれ、
ルスディーノ29世(国王)「クレード・ロインスタイト…そなたのことはラドランクから大体聞いておる」
クレード(跪きながら)「ハッ!」
ルスディーノ29世「そなたが持っていたヴェルトン博士からのレポートを私も読ませてもらった」
「クリスタークの戦士のこと、グラン・ジェムストーンのこと、メタルクロノスのことなど、一通り見させてもらったよ…」
クレード「目を通していただき光栄にございます」
ルスディーノ29世「では確認ということで、そなたらの変身した姿が見たい」
「クレード、オリンス、私の前で変身してはくれぬか?」
クレード「ハッ!お任せください、国王様」
オリンス(跪きながら、心の中で)「(クレードも国王様の前では礼儀正しいな…)」
「(さすがに相手が王様だと身の程をわきまえるんだな…)」
「(まあ俺よりもクレードのほうが王様たちと話すことになるだろうけど…)」
オリンス(心の中で)「(それにしても緊張するなあ…やっぱり王様たちの前だしな…)」
「(でも今は変身した姿をお見せしないと…)」
クレードとオリンスは立ち上がり、
クレード「いくぞ、オリンス。変身だ」
オリンス「うん」
クレードはグラン・サファイア(青い丸い玉)を、オリンスはグラン・エメラルド(緑の丸い玉)をそれぞれ取り出し、
クレード&オリンス「カラーチェンジ&クリスタルオン!」
クレードとオリンスの体が光り輝き、
ブルー(クレード)「栄光のサファイア!クリスターク・ブルー!」
グリーン(オリンス)「希望のエメラルド!クリスターク・グリーン!」
二人はそれぞれ変身した。
そして変身したその姿に国王たちは驚き、
リガーデン(大臣)「な、なんという姿か…」
パリンサ(王妃)「見慣れないマスクとスーツ姿…ムーンリアスというより異文明の地サンクレッセル連邦国で描かれた戦士のようにも思えます…」
ルスディーノ29世「確かに我々ムーンリアスの人間から見れば極めて妙な姿だ…だが一つはっきりしていることがある」
リガーデン「その魔力にございますか?」
ルスディーノ29世「うむ。姿こそ妙ではあるが、変身した二人からおびただしいほどの強大な魔力を感じる…」
パリンサ「そうなのですか?私は魔力が低いのでどうも感じにくくて…」
ルスディーノ29世「そなたらのことは分かった。もう変身を解いてよいぞ」
ブルー(クレード)「ハッ」
ブルー&グリーン(オリンス)「カラー&クリスタルオフ」
クレードとオリンスは変身を解き元の姿に戻った。
ルスディーノ29世「なるほど…変身能力が事実である以上、このレポートに書かれているグラン・ジェムストーンや魔法武装組織メタルクロノスについても決して嘘ではなかろう」
ここでクレードは国王に、
クレード「国王様、それでお願いがあるのですが…」
ルスディーノ29世「ラドランクから話は聞いている。ルスモーン島にいるヴェルトン博士の保護を願いたいのであろう」
クレード「ハッ!その通りにございます」
クレード「ヴェルトン博士は未完成品の17個のうち14個のグラン・ジェムストーンを完成させました」
「しかしその代償は大きく、自身の魔力を使い果たした博士はそのまま深い眠りについてしまいました」
「博士はレポートに、もし自分が深く眠ってしまったら目を覚ますまで1年半から2年くらいかかるかもしれないと前もって書いておりました」
リガーデン「そう考えればヴェルトン博士は今も島のロッジで眠っていると思えるな」
クレード「おそらくは」
ルスディーノ29世「まあとにかく我々としてはヴェルトン博士の保護のために急ぎ部隊を編成するつもりだ」
クレード「ありがとうございます。心より感謝いたします…」
オリンス「私からもお礼を言わせてください」
「本当にありがとうございます…」
ルスディーノ29世「遠く離れていようと我が国の領土を20年も放置してしまったのは事実」
「これは国としても王としても恥ずべき行いだ」
リガーデン「この20年間大陸にあるルスカンティアの本土を守ることばかりを考え、結果として我が国は一部の領土を蔑ろにしてしまいましたな…」
パリンサ「いくら人々が住んでいない島々とはいえ、この20年我々は無関心すぎたのかもしれません…」
ルスディーノ29世「クレード、もしそなたがこの国に来なければ我々は今もルスモーン島やこの島を含めたパルクレッタ諸島に対して無関心であったことだろう」
「ルスモーン島やパルクレッタ諸島のことを思い出させてくれた感謝としても、何があってもヴェルトン博士を保護すると約束しよう」
クレード「ハッ!ありがたきに!」
オリンス(心の中で)「(そういえばパルクレッタ諸島のルスアルダブラ環礁(※9)には固有種のアルダブラゾウガメなんかがいたな…)」
「(今回のルスモーン島の訪問をきっかけに、今後ゾウガメの調査なんかも行われてほしいな…)」
続いて国王は話題を変え、
ルスディーノ29世「それと魔法武装組織メタルクロノスについてだが、現時点では公表はせぬことにした」
クレード「私もそれで良いと思います。ラドランク副騎士団長にも申したことですが、あの者たちが表立って活動をしていないと思える以上今は…」
続いて大臣のリガーデンと王妃のパリンサは国王ルスディーノ29世に、
リガーデン「各国の貴族や議員たちからの手紙を読むことも多いのですが、メタルクロノスなる組織の話は一度も聞いたことがございませぬ」
パリンサ「ムーンリアス20カ国の情勢をまとめた新聞などにも目は通しておりますが、やはりそのような組織の名は…」
リガーテン「また港町地区の貿易商たちからもメタルクロノスという言葉は出ておりませぬ」
パリンサ「貿易のために各国を行き来する商人たちが知らぬようではやはり…」
ルスディーノ29世「まあ世間に知られていないと思える以上、今我々ルスカンティアが言うべきことではないだろう」
リガーデン「魔獣たちの台頭に科学大陸のサンクレッセル連邦国に対する不安…このような情勢の中ですからね…」
パリンサ「そうですね。慎重になる必要があると思います」
王や大臣たちの話を聞いていたオリンスがここで、
オリンス(緊張しながら)「国王様、もしメタルクロノスなる魔法武装組織が現れたとしても私は命懸けで戦います。それが特別な力を得た戦士の定めだと思っておりますので…」
クレード「私もオリンスと同じ意見です。相手が魔獣たちであろうとメタルクロノスであろうと倒すべき敵ならば戦うまででございます」
ルスディーノ29世「そうか。二人が頼もしく見えるよ」
続いて、
ルスディーノ29世「それとクレード」
クレード「ハッ!」
ルスディーノ29世「名簿などを使い約2億人いるルスカンティアの国民たちの名前を確認してみたが、そこに「クレード・ロインスタイト」という名前の国民はいなかった」
「記入漏れという可能性も0ではないが、そなたがこの国の人間であるという可能性は極めて低いだろう」
クレード「左様でございますか…」
(心の中で)「(結局俺はこの国とは無関係だったか…)」
リガーテン「クレード君、そなたと同じクレードという名の男性は現在我が国に5万人ほどいるが、ロインスタイトという姓の者は一人も確認できなかった」
パリンサ「ですがとある家臣に確認したところ、ロインスタイトという姓を知っている者がおりました」
「その家臣は侯爵家の出で、北側の大陸である「北の月」に住む貴族たちと交流をしているようですが、その者が言うには北の月にはロインスタイトという姓の貴族たちが何人もいるようです」
クレード「私と同じ姓の者たちが北の月に?」
パリンサ「はい。ラープ帝国やガーランゲルド王国(※10)などにはロインスタイト家という貴族の一族が住んでいるようです」
クレード「それでは私もその貴族の一族だと?」
パリンサ「その可能性もあり得るでしょう」
「ですがロインスタイトという姓は北の月で見かける姓の一つらしいです」
「全てのロインスタイト家が血の繋がりのある一族というわけではないようですね」
クレード「そうでしたか…」
ルスディーノ29世「だがその姓から考えるとそなたは南側の大陸である「南の月」の人間ではなく、北の月(北側の大陸)出身である可能性が高いだろう」
リガーテン「ワトニカ・バンリ・チョンミョームンは独特な姓や名前をしている者が多いので、その名を聞けば大体出身国が分かります」
パリンサ「そうなるとクレードさんの出身国は、リベルジャイル・ラープ・ブルスベイズ・エーゲポリス・ウインベルク・キンデルダム・セントロンドス・ガーランゲルドのいずれかである可能性が高いでしょうね」
リガーデン「そして北の月から我が国西のルスモーン島まで流れ着いたことを考えると、位置的に北の月の中でも西側の国かもしれませんな」
パリンサ「それでしたら、ラープ帝国の西側・ウインベルク・キンデルダム・セントロンドス・ガーランゲルド辺りでしょうね」
リガーデン「ガーランゲルドにはクレード君と同じロインスタイトという姓の貴族たちが暮らしているようですが、あの国の兵士や戦士の大半は角付きの兜を被ったヴァイキングたちです」
「クレード君のような騎士の鎧を着た剣士はあの国には多くないはずです」
ルスディーノ29世「そう考えればクレードの出身地と思える国は、ラープ・ウインベルク・キンデルダム・セントロンドスのいずれかであろうな」
クレード(心の中で)「(ラープ…ウインベルク…キンデルダム…セントロンドス…)」
「(それらの国の中に俺の故郷が…)」
オリンス(心の中で)「(クレードは北の月の出身者である可能性が高いわけか…)」
「(でも俺はクレードの仲間としてどこまでもついていくつもりだ…)」
ルスディーノ29世「とにかくそなたは魔法により記憶を完全に取り戻したほうが良いはずだ」
「そしてそのためにこれから旅をするのであろう?」
クレード「ハッ」
リガーデン「クレード君、旅のルートは決まっているのかね?」
クレード「それについてはオリンスとも話をしました」
「まずルスカンティアから北西のダールファン王国へ向かいます」
「そしてダールファンから博士の母校であるアイルクリート第一魔法大学があるアイルローマ市へと向かいます」
リガーデン「記憶魔法の使い手がいるであろうアイルベニス市まではそこからどうやって行く気かね?」
クレード「西のルナウエスタン共和国を通りアイルベニス市へと向かいます」
パリンサ「ダールファンとルナウエスタン…この二つの国を経由して旅の目的地であるアイルクリート共和国のアイルベニス市へと向かうわけですね」
クレード「はい」
オリンス(緊張しながら)「アイルローマ市からアイルベニス市までは、アイルクリートの内陸部を通るルートもございますが、私たちとしてはルナウエスタン共和国にも行き、魔獣の被害に遭っている人々を助けたいと思いまして…」
クレード「もちろんルナウエスタンだけではございません」
「道中のダールファンやアイルクリートでも、必要であれば魔獣たちと戦うつもりです」
ルスディーノ29世「まあとにかくアイルクリートのアイルベニス市へ行くために、ダールファンとルナウエスタンを通るのだな」
オリンス「ハッ。そのようなルートを検討しました…」
ルスディーノ29世「ならばそなたらが訪れるであろうその三つの国の国家元首宛てに私からの紹介状を書こう」
オリンス「こ、国王様!?」
ルスディーノ29世「王である私の紹介状があれば他国の元首たちともスムーズに会えるであろう」
パリンサ「魔獣たちが蔓延る今の世の中です。ぜひ元首たちにお会いし力になってあげてください」
リガーデン「どの国も大なり小なり魔獣たちの被害に遭っているはず。そなたたちの力を役立てるがよい」
オリンス「あ、ありがとうございます…」
ルスディーノ29世「それとそなたらがこれから向かうアイルクリート第一魔法大学にも私から手紙を書いて送ろう」
「何も知らずにいきなり訪問されては大学側も対応に困るかもしれないからな」
パリンサ「それならば前もって伝えておいたほうが良いでしょう」
リガーデン「今から手紙を送ったとしても届くまで一ヶ月程度かかると思うが、それでもそなたらよりも手紙のほうが先に大学へ着くであろう」
クレード「お手数をおかけします。そこまでご対応していただいて」
ルスディーノ29世「クレード、手紙を出すついでに大学へ渡す論文も一緒に送っておくか?」
クレード「ご配慮いただきありがとうございます」
「ですがこの論文は私が直接大学までお届けいたします」
「ヴェルドン博士が書いていただいた大切な物ですから」
ルスディーノ29世「そうか。ならば自身でしっかりと持っておくがよい」
クレード(跪きながら)「ハッ!」
ルスディーノ29世「旅の状況によっては大学への到着が遅くなるかもしれないだろう。手紙にはその旨も書いておくぞ」
そして、
ルスディーノ29世「我々からは以上だ」
「クレード、そなたにレポートを返そう」
国王ルスディーノ29世はクレードにレポートを返した。
ルスディーノ29世「では私はこれから元首たちへの紹介状や大学への手紙を書こう」
「紹介状については書き終わり次第そなたらに手渡す」
「待っている間騎士団長のラグラードたちに会い、報酬などを確認するのがよかろう」
そして、
ルスディーノ29世「では私は一旦失礼する…」
国王は王座から立ちあがり、別の部屋へと向かっていった。
続いて大臣のリガーデンは王族を守る親衛隊たちに、
リガーデン「親衛隊の者たちよ、すまぬがラグラードたちがいるセヨンの間(執務室)まで二人を案内してやってくれ」
親衛隊①「ハッ!只今ご案内いたします!」
親衛隊②「クレード殿、オリンス殿、どうぞこちらへ…」
オリンス「では、王妃様、大臣様、我々はこれにて失礼いたします…」
クレード「ヴェルトン博士のことをよろしくお願いします」
リガーデン「うむ。そなたらも達者でな」
(※後編へ続きます)