第52話(後編) 女子たちのベレスピアーヌ共和国旅行(後編)
(※52話の後半部分です)
次の日11日。
アンシーやシェルージェたちは、ベレスピアーヌ共和国の首都セイヌ・パリス市にやって来た。
アンシー「ここがこの国の首都、セイヌ・パリス市ね」
ウェンディ「押忍!大きな川が街ん中を流れてるッス!」
ススキ「セイヌ川(※12)ね、セイヌ・パリス市はこのセイヌ川の川沿いを中心に発展した町だと寺小屋で習ったわ」
ホヅミ「ホヅミもぉそれ覚えてるですぅ」
「セイヌ川はぁこの国や首都をぉ象徴する川なんですぅ」
リンカ「だばって(※11)よぐ見るとあんまりきれいな川でねぇだ…なんかゴミも浮いでらだよ…」
カルパーラ(ワッフルを食べながら)「都市部の川ですからねぇ、生活排水による汚染などもあるのでしょうね」
ウェンディ「押忍!セイヌ・パリスは「花の都」とも呼ばれてるのになんか残念ッス!」
ビオランテ「確かに今は「花の都」として、華やかなイメージの強いセイヌ・パリスですが、昔はトイレや下水がろくに整備されておらず、町中汚物だらけで臭いも強烈だったとか…」
ホヅミ「そういえばぁ、ハイヒールってぇ、元々はぁ街路のうんちをぉ避けるためにぃ作られたとかってぇ説もぉありますよねぇ」
シェルージェ「ビオランテちゃん、ホヅミちゃん!」
「女の子がそんな汚い話をしちゃ、ダメダメ!」
ビオランテ「すいません、シェルージェ様…」
シェルージェ「こんな所にいないで早く中心街へ進もうよ!」
「シェルージェ、首相さんに会って、川をちゃんときれいにするよう言っちゃうんだから!」
カルパーラ「ですがシェルージェ様、この町は街路が多くて、地図があっても迷ってしまいそうですわ」
リンカ「地図を見ると確かに複雑に見えるだ…」
ススキ「有名な凱旋門を中心に、大きな街路が放射状に伸びているのは分かるけど…」
アンシー「とにかく明日には宮殿に着くようにしたいから、街を案内してくれる人がいると助かるわね」
ビオランテ「それでしたら、街中にある小砦へ行ってみましょう」
「騎士団の方に案内を頼みましょう」
シェルージェ「きれいなお姉さん兵士が案内してくれると嬉しいなあ」
首都セイヌ・パリス市内を進むアンシーやシェルージェたち。
道中でパンを配るシスターたちを目にし…
シェルージェ「わあ、香ばしくていい匂い!」
「お外でパンを売ってるのかなあ?」
ビオランテ「シェルージェ様、見た感じパン屋さんが屋台を出しているというわけではなさそうですよ」
アンシー「お金に困っている人たちのためにシスターさんたちがパンを配ってる感じね」
ウェンディ「押忍。華やかな街でも苦労している人たちはいるんッスね」
「世の中大変ッス」
カルパーラ(チョコクロワッサンを食べながら)「シェルージェ様、パンをお召し上がりたいのでしたら、あちらではなくどこかお店を見つけて…」
リンカ「あれ?シェルージェちゃん、そばにいねぇだよ」
シェルージェはいつの間にかパンを貰いに並んでいた。そして…
シェルージェ「美味しそうなパンだねぇ」
「ねぇ、シェルージェにも頂戴」
シスターのサンナ「ごめんなさい、あなたにここのパンはちょっと…」
シェルージェ「えー、シェルージェにはダメなのお?」
サンナ(困り笑いしながら)「パンはね、お腹を空かせた子供たちやお金に困っている人たちに配っているの」
「だから元気そうなあなたには…」
シェルージェ「うう…」
シェルージェは「欲しい欲しい」とうるうるした目でサンナを見つめている。シスターのサンナもその表情に負けてしまい…
サンナ「わ、分かったわ!」
「余った小麦で作った小っちゃいパンあげるから!」
シェルージェ「わーい!やったー!」
シェルージェはその場で小さいパンを食べた。すると…
シェルージェ「うまっ!このパン、超美味いじゃん!」
「ジャムやバターがなくても全然いけるよ!」
「こんなに美味しいパン、王宮でも中々食べられなかったよぉ!」
サンナ「お、王宮!?」
「一体どちら様なのですか!?」
シェルージェに気づいたビオランテたちが駆けつけ、
ビオランテ「シェルージェ様!私たちがこちらのパンを貰うのは良くありません!」
サンナ「皆さんはこの女の子のお連れさんですか!?」
先輩シスター①「何か事情のある方々のようですね」
「よろしければ、私たちにもお聞かせ願いますか」
シスターたちは今日の分のパンを配り終え、そしてシェルージェたちと話をすることに。
先輩シスター①「そうでしたか、あのクランペリノ家の方でいらっしゃいましたか」
シェルージェ「うん、これからソフィアーヌ首相に会いに行くんだよ」
「でもシェルージェやみんなも、この街に来るのは初めてだからさあ、首相さんのいる宮殿にちゃんと辿り着けるか、ちょっと心配なのお」
「だから街を案内してくれる人を探しているんだ」
ビオランテ「そのためにこれから兵士たちのいる小砦へ向かうところでして…」
先輩シスター①「案内のできる人ですか。それでしたらサンナさん、お願いできますか?」
サンナ「はい、私でよければ…」
先輩シスター②「旅人さんや高貴なお方を含め、お困りになっている人々のお力になってこそ聖職者ですわ」
サンナ「分かりました。クランペリノ家のシェルージェ様や皆さんのために行動いたします」
シェルージェ「シェルージェもサンナちゃんみたいな可愛い女の子と一緒にいられるなら大満足だよぉ!」
サンナ(照れながら)「か、可愛い…」
「わ、私が…」
シェルージェ「街のこといろいろ教えてね!」
アンシー「よろしくね、サンナさん」
サンナ「こちらこそ、よろしくお願いします」
シェルージェ「それじゃあ、早速出発しようよ」
サンナ「ごめんなさい、近くの教会に私の荷物を置いてるから、ちょっとだけ待っててくださいね」
サンナは自分の荷物を取りに教会へと向かった。
シェルージェはその間に…
シェルージェ「シスターさんたち、美味しいパンありがとね」
「これパンのお礼にあげるよぉ」
シェルージェは鞄から札束を取り出し、シスターの一人に渡した。
先輩シスター①「1万カラン札の束!?」
先輩シスター②「シェルージェ様!このような大金、とても頂けません!」
シェルージェ「いいんだよぉ、美味しいパンを食べさせてくれたお礼だよぉ」
「ちゃんと受け取ってよぉ」
先輩シスター①「ほ、本当によろしいのですか…で、では…」
シェルージェ「その代わり、子供たちに美味しいパンをたくさん作ってあげてね」
先輩シスター②(深く頭を下げながら)「ありがとうございます…本当にありがとうございます…」
シェルージェたちは先輩シスターたちと別れ、そしてサンナと合流し、彼女と共に街を歩いていた。
ウェンディ「押忍!この大通りは河岸から離れてるッス!」
サンナ「このシャンゼリン通り(※16)はセイヌ・パリスの中でも特に有名な通りだと思います」
ホヅミ「そうですねぇ、ホヅミもぉ知ってますぅ」
サンナ「そろそろみんなでお昼ご飯にしませんか?」
「この大通りには飲食店も多いですし」
カルパーラ(ホワイトチョコレートを食べながら)「賛成です。この通りではどんなお料理が食べられるか、楽しみです」
サンナ「それではワトニカの人たちもいるので、和食はどうでしょうか?」
リンカ「和食!?この国で食べられるんだべか!?」
サンナ「あんまり知られてないでしょうけど、シャンゼリンではワトニカのカニカマが人気なんですよ」
「カニカマの人気もあって、和食を提供するお店も何件かあるんです」
ウェンディ「押忍!海外で和食が食べれるんなんて最高に嬉しいッス!」
ホヅミ「ルスカンティアにぃ来た後はぁ、全然和食をぉ食べてないですしねぇ」
ススキ「そうね。ちょうど祖国の味が恋しくなってきたわよね…」
リンカ「早速行ってみるべ!」
「オラ、お味噌汁が飲みたくてしょうがねぇだ!」
アンシー「和食ってムーンリアス全土でも大人気よね」
シェルージェ「シェルージェも天ぷらやとんかつ、天丼やかつ丼が大好きなんだ」
「王宮の料理人さんたちがたまに作ってくれたもん」
久しぶりに和食を食べたウェンディ、ホヅミ、ススキ、リンカたちはとても満足し、ワトニカ人ではないアンシー、シェルージェ、ビオランテ、カルパーラ、サンナたちも和食を美味しく食べていた。
大通りを歩き、有名な凱旋門を抜けた先の宿でサンナから話を聞き…
アンシー「話を確認すると、明後日13日にソフィアーヌ首相とラープ帝国のブロイス皇子、ミレイヤ第3皇女が会談をするってわけね」
サンナ「はい。ベレスピアーヌから離れたラープ帝国の皇子様や皇女様との会談ということで、町の人たちも注目してるんですよ」
ススキ「明後日13日に会談をするってことは私たちとの面会はそれ以降になっちゃうかもしれないわね…」
カルパーラ「そうなるかもしれないですね。首相にとってはブロイス様やミレイヤ様との会談のほうが重要でしょう」
シェルージェ「ちぇ、シェルージェちゃんだって一応お姫様のような立場なのに」
ビオランテ「仕方ありませんわ」
「急に訪れる私たちと違い、前々から会談の話をしていたでしょうし」
シェルージェ「でも2と4の怪魚について聞くくらいだから、明日のうちに話が済むと思うけどなあ?」
カルパーラ「まあ、宮殿についたら首相に聞くだけ聞いてみましょうね」
サンナ「とにかく宮殿までは責任を持ってご案内しますね」
「私はそれで失礼しますので」
シェルージェ「ねえサンナちゃん、良かったらソフィアーヌ首相に会ってみなよ」
「シェルージェたちと一緒にいればサンナちゃんも同席できると思うよ」
サンナ「シェ、シェルージェ様、そんな!」
「わ、私なんてただの一般市民ですよ!」
「首相のようなお方と宮殿でお会いするなんて、とても!」
アンシー「サンナさん、遠慮しなくてもいいわよ」
「私たちがそばにいることだし、市民の一人として首相と直接話をしてみるのもありだと思うわ」
サンナ「ア、アンシーさんまで!」
カルパーラ「私もそれでいいと思いますわよ」
「王様・皇帝・首相・大公問わず、一般市民の方々と積極的に話をしようとする国のトップも理想的に思えますわ」
ビオランテ「ご時世的にも、政治家と市民が対等である社会を求めている人たちは多いはずですよ」
ウェンディ「押忍!ウチも政治家たちには市民の声をもっと届けるべきだと思うッス!」
サンナ「で、でも私なんて…」
ホヅミ「ここでぇサンナさんとぉ出会ったのもぉきっとぉ何かの縁ですぅ」
「だからぁサンナさんもぉ、可能な限りぃホヅミたちとぉ行動してぇほしいですぅ」
サンナ「何かの縁ですかあ…」
「そうですね、ここでアンシーさんやシェルージェ様たちと出会ったのも神様のお導きなのかもしれませんね…」
ススキ「カムイが与えてくれたご縁であれば、私も大切にしたいわ」
リンカ「少なぐともこの街にいる間はサンナさんもオラだぢの仲間だべ」
サンナ「皆さん…ありがとうございます…」
アンシーやシェルージェたち8人の優しさや心遣いにサンナは深く感謝した。
サンナ「それにしても24の怪魚ですか…」
「考えるとすごく不気味ですね…」
シェルージェ「大丈夫だよ、サンナちゃん」
「セイヌ・パリスに現れたってシェルージェたちがやっつけちゃうんだから!」
アンシーやシェルージェたちは「24の怪魚」の他に、クレードたち男性陣と今は別れて行動していることや自分たちがクリスタークの戦士に変身できることなどもサンナに話したようだが、その背後にいると思えるメタルクロノスについてはあまり話さなかった。
ベレスピアーヌ共和国の代表、ソフィアーヌ首相に会うため、女子たちはセイヌパリスの町を行く。
次回へ続く。
☆※1…町の名前の由来は、フランスの世界遺産「ポン・デュ・ガール(ローマ時代の水道橋)」(文化遺産 1985年登録 2007年拡張(緩衝地域を設定))より
※2…地区の名前の由来は、スペインの世界遺産「セゴビア旧市街とローマ水道橋」(文化遺産 1985年登録)より
☆※3…市の名前の由来は、フランスの世界遺産「ナンシーのスタニスラス広場、カリエール広場、アリアンス広場」(文化遺産 1983年登録)より
☆※4…町の名前の由来は、フランスの世界遺産「サラン=レ=バンの大製塩所からアル=ケ=スナンの王立製塩所までの煎熬塩の生産」(文化遺産 1982年登録 2009年拡張)より
☆※5…町の名前の由来は、フランスの世界遺産「ミディ運河」(文化遺産 1996年登録)より
☆※6…市の名前の由来は、フランスの世界遺産「オランジュのローマ劇場とその周辺及び「凱旋門」」(文化遺産 1981年登録 2007年拡張(緩衝地域を設定))より
☆※7…邸宅の名前の由来は、ベルギーの世界遺産「ストックレー邸」(文化遺産 2009年登録)より
☆※8…町の名前の由来は、フランスの世界遺産「歴史的城塞都市カルカッソンヌ」(文化遺産 1997年登録)より
※9…ベルギーの伝統菓子。中にシロップが入ったグミのようなお菓子。
キュベルドンは「鼻」の意味で、その名の通り鼻のような円錐形をしいている。
☆※10…丘の名前の由来は、フランスの世界遺産「ヴェズレーの教会と丘」(文化遺産 1979年登録)より
※11…元ネタは津軽弁。『わんつか』は「少し、ちょっと」、『だばって』は「だけど、でも、しかし」などの意味。
※12…市、川の由来はフランスの世界遺産「パリのセーヌ河岸」(文化遺産 1991年登録)より
☆※13…市の名前の由来は、ルクセンブルクの世界遺産「ルクセンブルク市:その古い街並みと要塞群」(文化遺産 1994年登録)より
※14…島の名前の由来は、フランスの世界遺産「ニューカレドニアの礁湖:サンゴ礁の多様性と関連する生態系」(自然遺産 2008年登録)より
☆※15…宮殿の名前の由来は、フランスの世界遺産「ヴェルサイユの宮殿と庭園」(文化遺産 1979年登録 2007年拡張(緩衝地域を設定))より
※16…元ネタはパリ北西部の大通り「シャンゼリゼ通り」より
(☆:物語初登場の世界遺産)




