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第6話(後編) No.2 クリスターク・グリーン(後編)

(※第6話の後半部分です)

ラグラード騎士団長は兵たちを呼び指令を出した。

ラグラード「聞け!皆の者!」

 「我々討伐隊はこれより部隊を三つに分ける」


ラグラード「まずはルスンゴロに行ってもらう部隊だ」

 「増援で来た魔獣たちは周辺のルスンゴロ自然保護区から来た可能性が高い」

 「ならばルスンゴロに行き確かめる必要がある」

 「保護区内に魔獣が残っているかどうかをな」


ルスカンティア兵㉚(若い兵士)(心の中で)「(ルスンゴロか…確か「巨大な穴」、「世界の動物園」などとも呼ばれている場所か)」

 「(保護区は火山活動によりできた巨大なカルデラのクレーターで、そのクレーター内にはサバンナや森、湿地などの豊かな自然が広がり、ゾウ・ライオン・シマウマ・キリン・スイギュウなどが生息していたな…)」

 「(それに最近だと保護区内のオルスドヴァイ渓谷(※3)で人類の化石も発見されたと聞くな…)」

 「(だけどカルデラ地形のためか周囲には山々が広がっているため簡単に行くことはできない…)」

 「(だが魔獣どもの体力なら山々さえも軽く越えてしまうかもしれないな…)」


ラグラード(兄)「知っている者も多いとは思うが、周囲が高い山々に囲まれたルスンゴロの保護区に行くのは容易ではない」

 「保護区内への到着は明日になるだろう」


続いて、

ラグラード「次はセレンゲティアに残る部隊だ」

 「ここに残る者たちは引き続き魔獣たちに警戒してくれ」


その時チャドラン王子が、

チャドラン「お待ちください、騎士団長!」

 「魔獣たちの増援は確かに倒しました!それでもまだこのセレンゲティアに残るのですか!?」

 「もうこの辺りから魔獣たちの気配は感じません!」

親衛隊①「王子!「2000匹に対して500匹の増援」というのはあくまで目安にすぎません!」

 「100匹でも200匹でもこの後魔獣の増援がまた来る可能性もあり得るのです!」


ラドランク(弟)「その者の言う通りですぞ、王子」

 「今夜周辺の町や村からセレンゲティアの見張りをする部隊が到着する予定です」

 「彼らが来るまで我々討伐隊はこのセレンゲティアから離れるわけにはいかないのです」


チャドラン「そうでしたね…戦うことに夢中で引き継ぎの者たちが来る事もつい忘れてしまいました…」

 「すいません…冷静な判断もできず…」

ルリコ「そういうことも全部経験ですよ、チャドラン王子」

ルリコはチャドラン王子に優しく話した。


そしてラグラードも、

ラグラード(兄)「ですが、王子」

 「確かに増援が来る可能性もありますが、王子のおっしゃる通りひとまず今は魔獣たちの気配がないのも事実。だから今余裕があるうちに他の行動もする必要があるのです」


ラグラードは話を戻し、

ラグラード「話を戻す。最後の部隊はルスデフォート・ドームに行く部隊だ」

 「先程討伐隊の中から援軍としてドームに向かった者たちもいるが、さらに援軍を送ることにした。向こうではまだ戦いが続いていると思えるからな」


その時ブルー(クレード)が口を開いた。

ブルー(クレード)「ならば俺はそのドームとやらに行くか」

 「そこで戦いがまだ続いているというのなら俺はそこに行く」

ルスカンティア兵⑤(騎兵)「おい、青いの!まだ騎士団長の話は全部終わってないぞ!」

ブルー「話をしている暇があるなら先陣を切ってやるよ。俺は翼で空を飛べるしな」


続いてブルーは、

ブルー「騎士団長、ドームの方向はどっちだ?」

ラグラード「このセレンゲティアから見て南南西だが…」

ブルー「南南西、南側の少し西か…」

 「ならばそちらの方向で飛ぶか」

 「サファイア・アビリティ…ジェイブルーウイング…」


ブルーの背中から先程消えていた翼が生え、ブルーは翼で空を飛ぼうとした。

だがそこでオリンスはブルーを見て、

オリンス(心の中で)「(あ、青い彼が行ってします…俺はどうしたら!?このまま彼一人で行かせていいのか!?)」

ブルー「じゃあな…」

オリンス(心の中で)「(いや、ダメだ!ちゃんと話をしなきゃ!!)」


オリンス「ま、待って!!」

愛馬ベリル号にまたがりながらオリンスはブルーを大声で呼び止めた。


ブルー「なんだ、さっき助けたお前か」

オリンス「さっきは俺を助けてくれて本当にありがとう!」

 「もし君が俺を守ってくれなかったら、俺はさっき死んでいたかもしれない…」

ブルー「礼が言いたかっただけか。ならもういいだろ。俺は行くぞ」


オリンス(心の中で)「(お、お礼を言うだけで良かったのか!?)」

 「(いや、違う…俺は騎士なんだ…お礼を言っただけで終わらせちゃダメなんだ…)」

 「(それに彼のことだけじゃない。ドームには親友のセルタノも向かったんだ…セ、セルタノを助けに行かなきゃ!)」


少し戸惑ったオリンスではあったが、意を決してブルーに言った。

オリンス(大声で)「ルスデフォート・ドームに行くのなら俺も一緒に連れて行って!」

ブルー「なんだと…」

オリンス「俺は大して強くないから君と一緒に行動しても足を引っ張るだけかもしれない…」

 「でもダメな俺でも親友を助けに行きたいんだ!」


その時ブルーがリュックに入れていたグラン・ジェムストーンの一つが強く光り、ブルーはその光るジェムストーンを手に取った。


オリンス「えっ!?その強く光る石は!?」


ブルー(心の中で)「(強く光るジェムストーン…俺がクリスターク・ブルーに変身したときと同じだ…)」

 「(つまりこの騎士の男はジェムストーンに選ばれたというわけか…この俺と同じように…)」


ブルー(心の中で)「(だがどうする?この男にこのまま渡していいものか?)」

 「(俺宛てに書いてくれたヴェルトン博士のレポートによると、「ジェムストーンは共に行動してくれる者、共に旅ができる者などに渡すのが良い」と書かれていた…)」

 「(ジェムストーンをこの男に渡したところで、こいつが今後も俺についてくるという保証はない…)」


ブルー(心の中で)「(だがまあいい。選んだというのならジェムストーンのその意思を素直に尊重してやろう…)」


ブルー「おい、お前」

 「このグラン・ジェムストーンはお前を選んだ」

オリンス「俺を選んだって!?どういうことなの!?」


ブルー「お前に俺と同様の力を得るチャンスがあるということだ」

 「どうする?この石を手にして力を望むか?」

オリンス「えっ!?」


ブルー「心配するな。博士からのレポートによれば、このクリスタークの力を得たからといって体が病気になるわけでもないらしいからな」

オリンス「……!!」


オリンスは少しためらったが再び意を決して、

オリンス「分かったよ。力を得るチャンスがあるというのなら俺はそれを受け入れる」

 「その力でセルタノを助けられるのなら…」


オリンスがそう言うとブルーはグラン・ジェムストーンを手渡し、

ブルー「ならば色と宝石を選べ」

オリンス「えっ!?色と宝石を!?」

ブルー「そうだ」

 「レポートによれば、お前も俺と同じ青い色とサファイアの戦士になることも可能らしいが、博士は15人全員それぞれ別の色と宝石にしたほうが良いとアドバイスしている」

 「だから青とサファイア以外で色と宝石を選べ」


オリンス「だったら俺は緑色と緑の宝石であるエメラルドを選ぶよ!」

 「友や人々を守る緑の戦士に、希望の戦士になるんだ!」


ブルー「分かった。その石を持ち、「カラーチェンジ&クリスタルオン」と言え」

 「そして強くイメージしろ、緑の戦士になりたいと」


オリンス「ならいくよ!カラーチェンジ&クリスタルオン!」

 (心の中で)「(俺はなるんだ!緑の戦士に!希望の戦士に!)」

愛馬ベリル号「ヒッ!ヒッー!」


そう言うとオリンスとベリル号の体が強く光り輝き、オリンスは緑色のマスクとスーツ姿の戦士に変身し、ベリル号も宝石のエメラルドで作られたような緑色に輝く馬へと変わった。


変身したオリンス「お、俺が君と同じようなマスクとスーツの姿に!?」 

 「それもベリル号も!?」

変身したベリル号「ヒッー!」


ブルー「今からお前はクリスターク・グリーン、馬はエメラルド・ベリル号、魔法の宝石となったグラン・ジェムストーン(原石)はグラン・エメラルドと名付けさせてもらう」

オリンス改め、クリスターク・グリーン「クリスターク・グリーン!?エメラルド・ベリル号!?グラン・エメラルド!?」


ブルー「宝石のグラン・エメラルドは今がお前着ているマスクとスーツに変わっている」

 「変身を解けば、丸い緑の玉に戻る」


続いて、

ブルー「丸い緑の玉であるグラン・エメラルドはお前の変身アイテムだ」

 「以後変身する場合も必要になるから、なくすなよ」

グリーン(オリンス)「そ、そうなの?」


ブルー「まあお前はひとまず変身した。だからもう行くぞ」

グリーン「ま、待ってよ!ルスデフォート・ドームに行くのなら俺が案内するから!」

ブルーは空を飛び、馬(エメラルド・ベリル号)に乗ったグリーンは駆け出し、セレンゲティアを後にした。


青いマスクにスーツ姿という騎士団から見て異様な姿をしているクリスターク・ブルー、そして騎士団の一人がその異様な姿の戦士に変身したという現状に、他の者たちはただ呆気に取られていた。


ルスカンティア兵⑤(騎兵)「い、一体何が起きてるんだ…」

ルスカンティア兵⑥(騎兵)「わ、我々騎士団の仲間があの青い戦士と同じような姿に…」

ラグラード「団長である私でさえ驚きを隠せんよ…」

チャドラン「いっ、一体何なんですか!?何がなんだか全く分かりませんよ!」

鵺洸丸(心の中で心配そうに)「(オリンス殿…)」



空を飛ぶブルー(クレード)、草原や森を馬で駆けるグリーン(オリンス)。

二人は話しながら移動していた。


ブルー「そういえばお前自身の名前をまだ聞いてなかったな」

グリーン(オリンス)「俺の名前は、オリンス・バルブランタ」

 「ルスカンティア王国騎士団の正団員だよ」


ブルー「正団員か、そうなるとお前も2年の研修期間を経て正団員になったってことか」

グリーン「そういう雇用形態の話はラドランク副騎士団長から聞いたの?」

ブルー「ああ、ロベルス村(※6)で正団員見習いとか準団員とかの話をな」


ブルー「俺も騎士団に協力する臨時団員ということでトムソンガゼルの紋章を受け取ったよ」

 「まあその紋章も今はスーツの下に隠れて見えないけどな」

グリーン「俺は正団員だからライオンの紋章を身に付けているよ」

 「ライオンはその強さや凛々しい姿から「百獣の王」って呼ばれて…」


グリーンは話を続けたが、ブルーは心の中で、

ブルー(心の中で)「(正団員、つまり安定した雇用環境の下で働いているわけか)」

 「(そういう人間に「共に旅をしてくれ」なんて言ったところで素直についてくるだろうか?)」

 「(だが遅かれ早かれ聞かなければならないことだ。だったら今…)」


グリーン「それにしてもエメラル・ドベリル号の速さはすごいな。チーター以上かもしれない」

ブルー「おい、グリーン…」


ブルーはグリーンに話しかけようとしたが、その時目の前に魔獣たちが現れ、

魔獣たち「ブッガーッ!」

グリーン「魔獣たち!こんな所で!」

ブルー「驚くなグリーン」

 「今のお前にはクリスタークの特別な力がある。この俺と同じようにな」

 「ならばそんな魔獣どもなど簡単に倒せるはずだ」

グリーン「そうだね。今なら感じるよ。体中から溢れ出る炎のような魔力の渦を…」


グリーンは槍を前に構えた。

グリーン「このまま止まらずに突撃する!いくぞ、魔獣ども!」

 「ハァァッ!」

槍を突き出した突撃攻撃により、グリーンは何匹もの魔獣の体を貫き倒した。

グリーン「見たか、魔獣ども!これが希望の戦士クリスターク・グリーンの力だ!」


ブルー「どうだ、クリスタークの力は?」

グリーン「すごいよ!これならセルタノの力になれる!」

 「よし!急ごう!」

ブルー「大した勢いだよ…」



ここはルスデフォート・ドーム。

増援部隊として来たセルタノたちも魔獣たちと戦っているようだが、どうも苦戦しているようだ。


タコ型の大型魔獣①「シュッ!シュッ!」

ルスカンティア兵㉒(弓騎兵)「何だ!?このタコみたいなでかい魔獣は!?」

ルスカンティア兵㉓(騎兵)「牙犬型とか他の魔獣どもは倒したっていうのに、こんなのが新たに二体も現れるなんて…」


セルタノ「ここルスデフォート・ドームはルスンゴロと同じクレーター地帯だが、カルデラではなく宇宙から落下した隕石の衝突でできたと聞いている」

 「宇宙…サンクレッセル連邦国と比べ文明が大きく劣るムーンリアスの民にとって憧れの場所なんだがな…」


タコ型の大型魔獣②「シュッ!」

セルタノ「隕石の跡地にいるってことはお前ら宇宙からやって来た宇宙人かい?」

ルスカンティア兵㉒(弓騎兵)「セルタノ!そんなことを言っている余裕はないぞ!」


ルスカンティア兵㉔(騎兵)「状況が状況だ。再度セレンゲティアに伝令隊を送り、再び援軍の…」


その時ブルー(クレード)とグリーン(オリンス)がドームに駆けつけた。

グリーン(オリンス)「セルタノォー!!」

セルタノ「そ、その声!?お前まさかオリンスなのか!?」

グリーン「うん!今は訳あってマスクとスーツの姿になっているけど、俺だよ!オリンスだよ!」


ブルー「こいつも俺と同じくグラン・ジェムストーンに選ばれた」

 「だから俺と同じようなスーツ姿になっている。まあ俺とは色が異なるがな」

セルタノ「マスクとスーツ…そうか青色のお前は今朝ラドランク副騎士団長が話していたクレードって奴か!?」

ブルー(クレード)「ああ。空を飛んでルスジンバブエやルスカミの遺跡からセレンゲティアにやって来た」


ルスカンティア兵㉓(騎兵)「し、しかしなんとも異様な姿だ!ムーンリアスの人間が描いた戦士の姿とは思えん!」


タコ型の大型魔獣①&②「シュッ!シュッ!」

ルスカンティア兵㉒(弓騎兵)「まずい!接近してきたぞ!」

ブルー「ならば迎え撃つまでだ」


ブルー「グリーン、俺とお前で一体ずつ倒すぞ」

グリーン「任せてブルー!今の俺なら負ける気がしない」


タコ型の大型魔獣①「シュガ!」

ブルー「いくぞ、魔蒼剣。あの大タコを斬る」


ブルーは魔力のオーラを纏った剣でタコ型の大型魔獣を斬るが、一撃では倒れない。

タコ型の大型魔獣①「ジュ!?」

ブルー「一撃では倒れないか。ならば何度も斬るまでだ」

ブルーは再び剣で攻撃した。


一方グリーンもタコ型の大型魔獣と戦い、

タコ型の大型魔獣②「シュッ!シュッ!」

タコ型は足を叩きつけグリーンを攻撃した。

グリーン「おっと!」

エメラルド・ベリル号(愛馬)「ヒッ!」

しかしグリーンはその馬術でタコ型からの攻撃をかわす。


グリーン「このっ!」

グリーンは槍を前に突き出し突進した。しかしまだタコ型は倒れない。


タコ型の大型魔獣②「ジュ!?ジュ!?」

グリーン「くっ!やっぱり体が大きいから、そう簡単にはいかないのか!?」


そしてタコ型は反撃してきた。

タコ型の大型魔獣②「シュッ!」


攻撃をかわしながらグリーンは考え、

グリーン「体が大きい相手ならこっちも何かを大きくしたいな。象のような大きさになれたら…」

エメラルド・ベリル号(愛馬)「ヒッ!ヒン!」

グリーン「どうしたの、ベリル号?もしかして俺に力を貸してくれるの?」

エメラルド・ベリル号(愛馬)「ヒン!」

グリーン「分かったよ。エメラルド・ベリル号」

 「今なら俺を助けてくれようとする君の意志を確かに感じるよ!」


エメラルド・ベリル号の体が光り輝き、エメラルド・ベリル号は緑色の象に姿が変わった。


ルスカンティア兵㉒(弓騎兵)「な、何だ!?馬が象に変わったぞ!?」


ブルー(心の中で)「(これは「ジュエル・アビリティ」…クリスタークの戦士一人一人が持てる固有の能力スキル…)」

 「(こいつ…初めての変身や戦いで俺と同じことをやってのけるとはな…)」


象の姿になったベリル号「パオーッ!」

グリーン「いいぞ、ベリル号!」

 「よし、象の姿の君は、エレファント・ベリル号だ!」

エレファント・ベリル号「パァオ!」


タコ型の魔獣もベリル号が象に変わったことに驚いた。

タコ型の大型魔獣②「ジュ!?」


そしてグリーンはタコ型の魔獣を倒そうと、

グリーン「エレファント・ベリル号、あのタコ型魔獣を倒すぞ!」

 「突進だ!」

エレファント・ベリル号「バオ!バオー!」

タコ型の大型魔獣②「!?」


エレファント・ベリル号はタコ型の魔獣に体をぶつけた。

タコ型の大型魔獣②「ジュ!?グッ!?」


グリーンは槍を構え、

グリーン「今ならできる!槍に魔力を込める!」

そう言うとグリーンの槍が魔力のオーラを纏った。


そしてセルタノが、

セルタノ「槍に魔力のオーラ!?あんな芸当前のオリンスではできなかった!」

 「オリンス…お前は緑の戦士に変身したことで確かに強くなったんだな…」


グリーン「ウォォーッ!」

グリーンはオーラの槍を突き刺しタコ型の魔獣を倒した。

タコ型の大型魔獣②(断末魔)「ジュー!」


グリーンのもとにタコ型の大型魔獣①を倒したブルーもやって来て、

ブルー「大したもんだぞ、グリーン」

グリーン「ブ、ブルー…」


だがその時タコ型の魔獣がもう一体現れ、

タコ型の大型魔獣③「シュッ!」

ルスカンティア兵㉛(剣士)「タコ型の魔獣!?まだ他にもいたのか!?」


ブルー「心配するな。速攻で片付けてやる…」

 「いくぞ…グリーン」

グリーン「任せて、ブルー!二人であいつを倒そう」

ブルーとグリーンがタコ型の魔獣に向かっていった。


タコ型の大型魔獣③「ジュ!?」

ブルーは空を飛びオーラの魔法剣で、グリーンはエレファント・ベリル号で突進しオーラを纏った槍を突き刺し、現れたばかりのタコ型の大型魔獣をあっという間に片付けた。


ブルーとグリーン、二人の強さにセルタノや兵士たちも驚いた。

ルスカンティア兵㉓(騎兵)「すごいな…あの二人…」

ルスカンティア兵㉛(剣士)「ああ…一人だけでも十分強いというのに…」

ルスカンティア兵㉜(魔法使い)「二人で手を組めばもう敵なしかもな…」

セルタノ「オリンス…お前は…」


ブルーはグリーン(オリンス)に話しかけ、

ブルー「馬が象に変わる…それがお前のジュエル・アビリティだ」

グリーン「ジュ、ジュエル・アビリティって?」

ブルー「クリスタークの戦士がそれぞれ持てる固有の能力スキルだ」


ブルー「俺が翼で空を飛べるのもジュエル・アビリティのおかげだ」

グリーン「そうなんだ。変身した俺には君のような翼がなかったから少し気になっていたけど…」


ブルー「空を飛べたり高速で泳げたりする俺のジュエル・アビリティはサファイア・アビリティと名付けられた」

 「そうなると馬が象に変わるお前のジュエル・アビリティは「エメラルド・アビリティ」ということだな。エメラルドの戦士ということで」

グリーン(オリンス)「エメラ…アビリ…」


グリーンは初変身や戦い、固有の能力スキルを発動させたことなどで疲れたのか元のオリンスの姿に戻り気を失ってしまった。

また愛馬のベリル号も象から元の馬の姿に戻り、主のオリンスと同じように気を失った。


そしてセルタノや兵士たちがオリンスに、

セルタノ「お、おい!オリンス!」

ルスカンティア兵㉜(魔法使い)「馬車へ運び、急ぎ手当てしてやろう」

ブルー「やはり気を失ったか…俺も最初に変身したときはこうだったよ…」

ルスカンティア兵㉒(弓騎兵)「なんだと!?」


ブルーは変身を解き、元のクレードの姿へと戻った。


元の姿に戻ったクレードはオリンスの友人であるセルタノと話をして、お互いのことを知った。


一方オリンスは馬車に運ばれ、聖侶から回復魔法をかけてもらった。

また馬のベリル号も外で回復魔法をかけてもらっていた。


その後ルスデフォート・ドームにラドランク副騎士団長率いる増援部隊が駆けつけたが、タコ型の魔獣を倒した後ドームに魔獣たちの増援は現れず、ドームの部隊は戦いを終え撤収した。



戦いを終えた、クレード(ブルー)・オリンス(グリーン)・ラドランク・セルタノ・他ドームにいた部隊は、王都を目指し移動していた。


そしてセレンゲティアやルスデフォート・ドームでの戦いから二日後の朝、ずっと眠っていたオリンスがようやく目を覚ました。


横になっているオリンスがいる馬車にクレード・ラドランク・セルタノたちがやって来て…


オリンス「すいません、昨日は丸一日眠っていたみたいで…」

ラドランク「気にするな、目を覚まして何よりだ」

クレード「そういうことだ。俺だって初変身や初戦闘後はお前のように一日以上眠っていたからな」


セルタノ「回復魔法をかけたベリル号も少し前に目を覚まし、今は外を歩いているぞ」

オリンス「それは良かった。俺もベリル号もひとまず無事で…」


オリンスの声を聞いてラドランク副騎士団長が彼に話しかけた。

ラドランク「さてオリンス君」

 「起きたばかりですまないが、私たちと話をする体力はあるか?」

オリンス「大丈夫です。ラドランク副騎士団長」

ラドランク「ではクレード、彼と話をしてくれ」

クレードはオリンスに話しかけた。


クレード「オリンス、これが俺の素顔だ」

オリンス「青い髪…マスク姿だったからはっきり分からなかったけど、君はそんな顔をしていたんだね…」


クレード「オリンス・バルブランタ。それがお前の名前だったな?」

オリンス「うん…」

クレード「ならばオリンスよ、お前に一つ聞く」

 

クレード「俺はこれから旅に出るつもりだがお前はどうする?俺と一緒に来るか?」

オリンス「旅か…そうだね、確か君は過去の記憶をいろいろなくしてしまったんだよね…」

クレード「それは知っているのか?」

オリンス「うん。セレンゲティアに来たラドランク副騎士団長が一昨日の朝礼で軽く君のことを話していたよ」

 「記憶をなくした青い戦士がこのセレンゲティアに現れるかもしれないってね」


クレード「ヴェルトン博士の話では、失った記憶を取り戻すことができる記憶魔法の使い手はアイルクリートにいると聞いた」

 「だから記憶魔法が使える魔法使いに会うために首都であるアイルベニス市(※7)へこれから向かうつもりだ」

オリンス「アイルベニス市か…だったらルスカンティア王都の港町から直通便が出てるよ」

 「お金は結構かかると思うけど、船に乗ればなんとか…」


クレード「いや、アイルベニス市だけではなく、アイルローマ市(※8)にも向かう必要がある」

オリンス「アイルローマ市?アイルクリート南部の歴史ある町だね」

 「でも海沿いのアイルベニス市とは結構離れているよ」

 「ルスカンティアからアイルローマに行くとしたら、歩きや馬車でしか…」


クレード「アイルローマ市が首都のアイルベニス市から離れているのは博士からのレポートで俺も確認した」

 「だがその町に博士の母校であるアイルクリート第一魔法大学がある以上、俺はそこにも行かなければならない」

オリンス「博士?そのヴェルトン博士って人の出身校なの?そして君もそこの大学へ行く必要があるの?」

クレード「ああ、その件なんだが…」


クレードは博士の大学に3個ある未完成のグラン・ジェムストーンとそれに関する研究論文を渡す必要があること、そして戦争を企てる組織、メタルクロノスなどについてオリンスたちに話した。


オリンス「メ、メタルクロノス!?」

 「そんな組織がこの世界を狙っているなんて…」


セルタノ「王都の騎士団に所属する俺でもそんな組織の話なんて聞いたことがねぇぞ」


ラドランク「最初にその名を聞いたときは私もすぐに受け入れられなかったさ…」

 「だがあのクリスタークの戦士のことなどから考えると、ヴェルトン博士が嘘を言うような人間には思えん」

 「おそらくクレードの言う通りメタルクロノスなる組織は今も世界のどこかで暗躍していることだろう…」


セルタノ「ハッ!冗談じゃねぇよ!」

 「ムーンリアス全土じゃ魔獣どもの対処のみならず、異文明国家サンクレッセル連邦国に対する不安だってあるっていうのに…」


ラドランク「魔獣どもに科学大陸のサンクレッセル連邦国…そんな状況でメタルクロノスが宣戦布告をすれば世界は更なる混乱に陥るだろうな…」


オリンス(心の中で)「(ならクリスタークの戦士の一人となった俺がこれからやるべきことは…)」


クレード「オリンス、セルタノ、王都にいるお前たちでもメタルクロノスのことを知らないのか?」

セルタノ「ルスカンティアの王都にはムーンリアス各国の情勢をまとめた新聞なんかが月一くらいで届くが、そこにメタルクロノスなんて組織の名前は出てきちゃいねぇよ…」

ラドランク「公の場に現れて宣戦布告する…まだそんな真似はしていないだろう」


クレード「いずれにせよそのメタルクロノス、そして世の中の魔獣たちを叩き潰すために博士は18個のグラン・ジェムストーンを開発した」

セルタノ「そして18個のうち15個が完成し、残りの3個は未完成ってことか」

クレード「そういうことだ」

 「だがその完成品15個の中から俺とオリンスは選ばれた」


続いてクレードはオリンスに、

クレード「どうするオリンス?お前も俺と共に魔獣やメタルクロノスと戦うか?」


セルタノ「しかしそうなるともうルスカンティアだけの問題じゃねぇな」

クレード「その通りだ。オリンス、お前も俺と共に来るというのならこのルスカンティアから旅立ってもらうことになるが」

オリンス「俺はルスカンティア王国騎士団の一員だよ。ただの一介の兵士さ」

 「でも君と同じクリスタークの戦士となったのなら俺は…!」


オリンスはクレードに返答しようとしたが、ラドランク副騎士団長が一旦止めた。

ラドランク「待てオリンス。その答えはジルスゴール城(※9)に戻ってから正式に聞こう」

オリンス「副騎士団長…?」


ラドランク「騎士団長の兄は君がクリスタークの力を手に入れ変身するところを見たのだ。兄にとって想定外の事をやってしまったのだ」

 「ならば君も兄に会いその事を話す必要があると思うのだが…」

オリンス「そうですね。もし騎士団長とお会いできるのなら、やはりその話もそこで…」


ラドランク「それにクレード、君も旅立つための資金が欲しいのだろ」

 「城に着いたら君の報酬も用意する。だから今は待ってくれないか?」

クレード「まあオリンスがこの後騎士団長と話をするつもりなら、そのときは俺も隣にいたほうがいいか」

 「それに騎士団長と話せる機会があるのなら、ヴェルトン博士の保護を頼みたいとこだしな」

オリンス「クレード…」


話を聞いていたセルタノが立ち上がり、

セルタノ(心の中で)「(オリンス、お前の考えはもうよく分かった…)」

 「(だったら俺は…)」


セルタノは馬車の外に出ようとしたが、ラドランク副騎士団長がセルタノに、

ラドランク「セルタノ、どこへ行く?」

セルタノ「いえ、ちょっと故郷のセドルース村まで戻ろうと思いまして」

ラドランク「なぜ今戻る必要がある?」

セルタノ「オリンスとクレードに渡したい物が実家にありましてね。それを先に用意しておきたいもので…」

オリンス「俺とクレードに…?」


クレード(心の中で)「(セルタノはオリンスの決意を感じたようだな…そのうえで俺ではなくオリンスに何かを渡したいのだろう…)」


セルタノ「セドルース村も王都の騎士団の管轄内ですし、どうか出張ということで対応していただければ…」

 「オリンスとクレードに物を渡したらすぐ王都に戻りますので、今回は何卒…」

ラドランク「まあいいだろう。何か事情があるようだしな」

セルタノ「申し訳ありません…」


ラドランク「だが今後は個人的な用件をあまり重視しないでくれ」

 「君もこれからは王族をお守りする親衛隊の一員になるのだからな」

オリンス(驚いて)「えっ!?セルタノが親衛隊にですか!?」


セルタノ「共に戦った兵士たちから推薦を受けてな」

 「オリンス、お前が眠っている時に返答させてもらったんだよ」


ラドランク「親衛隊の任命には兄である騎士団長や親衛隊隊長からも承認を得る必要がある」

 「だから彼の件も含め、私はこれから王都のジルスゴール城へと向かうのだ」

セルタノ「本当にすいませんね…ラドランク副騎士団長の勤務地は国の西側なのに…」


ラドランク「私が城へ行く理由は、君のことよりもチャドラン王子の件があるからだ」

 「何であれセレンゲティアでの戦いでは王のお言葉に背きチャドラン王子を戦わせてしまったのだ。私も国王様や王妃様たちに直接お会いし王子の件を謝罪しなければなるまい…」

セルタノ「いろいろ大変ですな…副騎士団長というのも…」

ラドランク「戦った件は王子が自分一人で責任を取ると言ってはいたが、やはりそういうわけにもいかんだろう」


そしてラドランクは話題を変え、

ラドランク「セルタノ…魔法武装組織メタルクロノスについて知っているのは私やクレードに関わった一部の兵士たちだけだ」

 「国王様はもちろんのこと、騎士団長の兄にもまだ話していない」

 「だから一介の兵士である君がメタルクロノスについて口にしないでくれ。立場的にもな」

セルタノ「他の者たちにはまだ黙っておくわけですね」

ラドランク「国王様たちには私から報告する」

 「そのうえでメタルクロノスについて公表するかどうかも判断していただく」


二人の話を聞いていたクレードもその意見に賛同した。

クレード「今はそれでいいと思う。奴らがまだ表立った活動をしていないと思える以上、公表しても信用する人間は多くないだろう」


セルタノはラドランクとの話も終わり馬車を出た。

セルタノ「じゃあな、オリンス」

 「後日セドルース村の実家で会おうぜ」

オリンス「セルタノ、必ず行くからね…」


故郷のセドルース村に向かうためセルタノはグレビー号に乗り出発した。


そして、クレード・オリンス・ラドランク副騎士団長たちは王都のジルスゴール城へとたどり着いた。

城にたどり着いたクレードとオリンス。二人はこの後どうなるのか?

次回へ続く。


※1…大草原の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「セレンゲティ国立公園」(自然遺産 1981年登録)より

※2…遺跡の名前の由来は、ジンバブエの世界遺産「国史跡グレート・ジンバブエ遺跡」(文化遺産 1986年登録)と、同じくジンバブエの世界遺産「国史跡カミ遺跡群」(文化遺産 1986年登録)より

☆※3…自然保護区の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「ンゴロンゴロ保全地域」(複合遺産 1979年登録 2010年拡張)、渓谷の名前の由来は、ンゴロンゴロの「オルドヴァイ渓谷」より

☆※4…ドームの名前の由来は、南アフリカの世界遺産「フレデフォート・ドーム」(自然遺産 2005年登録)より

☆※5…村の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「セルース猟獣保護区」(自然遺産 1982年登録)より

※6…村の名前の由来は、南アフリカの世界遺産「ロベン島」(文化遺産 1999年登録)より

※7…市の名前の由来は、イタリアの世界遺産「ヴェネツィアとその潟」(文化遺産 1987年登録)があるヴェネツィアの別名「ベニス」より

☆※8…市の名前の由来は、イタリアとバチカンの世界遺産「ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂」(文化遺産 1980年登録 1990年拡張)より

※9…城の名前の由来は、エチオピアの世界遺産「歴史的城塞都市ハラール・ジュゴル」(文化遺産 2006年登録)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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