第45話 親衛隊、ビオランテとカルパーラ
45話目です。
新キャラとなる女性二人のことをよろしくお願いします。
(今回の登場人物たちについては、「○第42話-46話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)
旅に同行することになる二人の親衛隊員がシェルージェにあいさつをした。
ビオランテ「私、親衛隊のビオランテ・シャルビアスと申します!」
「シェルージェ様!以後お見知りおきくださいませ!」
カルパーラ「同じく親衛隊のカルパーラ・ポルクリンガーでございます」
「道中の護衛役としてシェルージェ様のことをしかと守りいたします」
「ビオランテ同様、よろしくお願いいたします」
シェルージェ「ビオランテちゃんにカルパーラちゃんね」
「シェルージェちゃんのためについてきてくれるんだね」
ビオランテ「ハッ!私とカルパーラ、これよりシェルージェ様の手足となり動いてまいります!」
シェルージェ「シェルージェ相手にそんな硬くならなくてもいいよぉ」
「もっと気楽にいこうよぉ」
ビオランテ「シェルージェ様、私やカルパーラもマデレウス騎士団長よりメタルクロノスや24の怪魚について聞いております」
「かの者たちがいつ現れるか分からぬというのなら、常に警戒し…」
シェルージェ「それも正しいと思うけどさあ、旅は旅で楽しくやろうよぉ」
「いつもピリピリしていたら、ビオランテちゃんたちだって、疲れちゃうよぉ」
ビオランテ「シェ、シェルージェ様、しかし…」
マデレウス「ハッハッハッ!ビオランテ、すまぬが、ここはシェルージェ様のお気持ちを優先してくれ!」
「シェルージェ様のお気持ちにお応えするのもまた務め!」
ビオランテ「き、騎士団長まで、そんな…」
カルパーラ「ひとまず、いいではありませんか」
「のんびりするときはのんびりいたしましょう」
「私も旅先でいろいろなお菓子を食べたいとこですし」
ビオランテ「カルパーラ、あなたは親衛隊としてもっと自覚を…」
カルパーラ「それよりもこれから共に旅をする皆様にもごあいさついたしましょう」
ビオランテとカルパーラはクレードたちにもあいさつした。
クレード「共に魔獣やメタルクロノスたちと戦ってくれるというのなら歓迎する」
アンシー「二人だけに任せず、あたしたちもシェルージェ様をお守りするわ」
「力を合わせていきましょう」
鵺洸丸「忍びのそれがしも陰よりお守りいたしましょう…」
ススキ「私もくの一として鵺洸丸さんと同じ気持ちです」
リンカ「オラ、気の弱ぇ女子だべが、一緒に頑張りたいベ…」
沖津灘「ハッハッハッ!異国のお二人に大関経験者の力をお見せするたい!」
タオツェイ「俺もこのサフクラントでは準団員として従事していた」
「それを縁だと感じてくれるのなら、よろしく頼む」
千巌坊「道中の回復役は私が務める…」
「疲れを感じたら遠慮なく言ってくれ…」
ホヅミ「いろいろ、よろしくですぅ」
カルパーラ「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ウェンディ「押忍!親衛隊のお力、期待させてもらうッス!」
オリンス「ビオランテさん!カルパーラさん!」
「お二人が親衛隊であっても、俺がシェルージェちゃんを一番守ってみせます!」
ビオランテ「シェルージェ様を「ちゃん」呼びだとぉ!」
「貴様、シェルージェ様に対して厚かましいとは思わないのか!」
カルパーラ「ビオランテさん、シェルージェ様の前ですよ」
「少し落ち着きましょう」
クレード(心の中で)「(ビオランテは怒りっぽいところがあって、カルパーラはゆったり落ち着いた雰囲気だな…)」
ここでナハグニが、
ナハグニ「ビオランテ殿、カルパーラ殿…」
「もし道中、せい…」
ウェンディ「押忍!だから、それは言わせねぇッス!」
ナハグニはウェンディに体を掴まれた。
ナハグニ(心の中ですごく喜んでいる)「(ああっ…またもウェンディ殿のお体に触れ…♡)」
ビオランテ(顔が赤くなって)「き、貴様!」
「シェルージェ様にそのような無礼な発言はしていないだろうな!」
ナハグニ「いや、さすがに10代の女子にそれを言うのは…」
ビオランテ「20代の女になら許されると思ったか!」
「ええい!貴様のような女の敵はここで始末してくれる!」
ナハグニ「おおっ!女子が男児に肉弾戦を挑むということは、つまり体を自由に触ってもよいということ!」
ビオランテ「はあっ!?」
ナハグニ「ならばこのナハグニ・按司里、存分にお触りいたす!」
ビオランテ(驚いて)「ひっ!」
「い、嫌…」
ウェンディ(怒りながら)「ナハグニ!骨の髄まで粉々にしてやるッス!」
千巌坊「ウェンディ、ここは我々に任せてくれ…」
「今こそ特大の喝を入れよう…」
沖津灘「ナハグニ殿の体はオイがしっかり抑えるたい!」
シェルージェ「シェルージェも応援するよぉ!変態なんてやっつけちゃえ!」
マデレウス「ハッハッハッ!この調子なら楽しい旅になりそうですな!」
女性親衛隊「騎士団長、観点がズレているような…」
マデレウスから別れのあいさつとして、
マデレウス「それでは、シェルージェ様のご無事を祈っておりますぞ」
シェルージェ「マデレウスさん!シェルージェ、きっとこの国に帰ってくるから!」
マデレウス「それでしたら、お戻りになるその日を楽しみにいたしましょう」
クレード「イビサーレ島(※1)から王宮まで、いろいろ世話になったな、騎士団長」
アンシー「クリスタルナンバーズの仲間としてシェルージェ様を支えていきますので」
ビオランテ(敬礼しながら)「親衛隊の責務、しっかり果たしてみせます!」
カルパーラ(敬礼しながら)「この命に代えても、シェルージェ様をお守りいたしますわ」
オリンス「大丈夫です!騎士団長!」
「なにより、この俺が!クリスターク・グリーンがそばにいるのですから!」
マデレウス「ハッハッハッ!ならばシェルージェ様と旅をなされる者全員に期待しようではないか!」
シェルージェやクレードたちは騎士団長マデレウスと別れた。
それから出発日までの間、公都周辺に魔獣たちが出現しなかったこともあり、クレードたちはクランフェルジスの王宮(※2)や公都内で自由に過ごしていた。
クレード・ウェンディ・沖津灘・タオツェイは公都内の砦へ行き、兵士たちを相手に稽古したり、闘牛ショーを観戦したりしていた。
アンシーとリンカは、シェルージェたちクランペリノ家が管理するクランターニャ音楽堂(※3)などでコンサートを楽しみ、この国の伝統芸能であるフラメンコのショーを鑑賞していた。
鵺洸丸とススキは、高い所に登る忍びの修行ということで、王宮の屋根に登り掃除をしていた。
ホヅミは王宮内で執事やメイドたちとチェスを嗜みながら、将棋の魅力を話していた。
ナハグニは刀の修行もしていたが、遊廓のような店に自腹で通っていた。
千巌坊は公都内の教会や聖堂を巡り礼拝していた。
その中でもゴルドーバ歴史地区(※4)の大聖堂に深い感銘を受けていた。
千巌坊(心の中で)「(二つの宗教の建築技術の融合、円柱の森、屋根を支える赤と白の二重アーチ…)」
「(素晴らしき大聖堂であった…)」
シェルージェは、紋章の中の肖像画を描き直すため、一流画家に絵を描いてもらっていた。
また実家のクランペリノ家が管理しているエルーチャの椰子園(※5)にも顔を出し、オリンス・ビオランテ・カルパーラたちも、シェルージェに付き添っていた。
シェルージェ「変わらないなあ、椰子園も…」
シェルージェ「シェルージェね、小さい時は日が暮れるまでこの椰子園内を駆け回ってたんだ」
オリンス「シェルージェちゃんにとっては思い出の場所なんだね!」
「だったら椰子園を守るためにもメタルクロノスと戦おうよ!」
シェルージェ「そうだね!一本だって椰子を折らせないんだから!」
ビオランテ(小声で)「(シェルージェ様も一応はオリンスを信用しているようだな…)」
「(だがあの男にばかり任せて良いわけでは…)」
カルパーラ(デーツを食べながら)「まあまあビオランテさん、今はデーツでも食べて落ち着きましょうよ」
そして出発前日の19日。
王宮内でクレードたちは、オルブラングたちに呼ばれ、「青羽の兜」というサークレット状の兜を見せてもらった。
シェルージェ「うわっ!すごい魔力の兜!」
「そんな兜がシェルージェん家にあるなんて知らなかったよぉ!」
オルブラング(車椅子に乗った)「シェルージェにもこの兜のことは話したことないからな…」
マーシャ「遠いご先祖様が青天の空をイメージして、凄腕の鍛冶屋さんたちに作らせた兜らしいんだけど、私たちもそれくらいのことしか知らないのよ」
ラプシェイア「信頼する騎士団員に与えようとしたのかもしれないけど、作られた理由もはっきり分からなくてね」
オルブラング「だが、この兜がいかにすごいかは、よく分かるよ…」
クレード「そうですね、かなりの魔力を放っていますから」
オルブラング「その魔力の強さから、被れる者がいなかったらしい…」
オルブラング「そこでだ、クレード君…」
「君がこの青羽の兜を被ることができたら、兜を君に譲ろうではないか…」
クレード「この兜を俺にですか?」
オルブラング「君はこれから始まるであろうメタルクロノスとの戦いにおいて、要となる青き戦士なのだろ」
「ならばこの兜を手にし、役立ててくれ…」
クレード「分かりました。それでは試させていただきます…」
オリンス「この状況、俺がセルタノの屋敷で翠電槍を手にしたときと似ている!」
「クレード、お祖父様のためにも兜を手に入れるんだ!」
クレード「心配するな、オリンス」
「俺はお前よりもうまくやってみせるさ」
執事により魔力のないケースが開けられ、クレードは青羽の兜を手にしようとしたが、魔力による刺激や痛みを全く感じることもなく兜を手にし、そして被った。
マーシャ「す、すごいわ…」
「長い間誰も被れなかった青羽の兜をあっさり被ってしまうなんて…」
ラプシェイア「まるで兜のほうがクレードさんを受け入れてくれた感じだったわ」
オルブラング「君の強い魔力は出会った時から感じていたよ…」
「さすがだな…」
クレードの様子を見ていたビオランテとカルパーラも、
ビオランテ「あれだけの魔力をものともしないなんて…」
カルパーラ「大した殿方ですね」
「これからご一緒するのが楽しみですわ」
青羽の兜を被ったクレードを見て、アンシーは、
アンシー(顔が赤くなりながら心の中で)「(に、似合ってるじゃないの…)」 ドキドキ…
そんなアンシーを見たリンカたちは、
リンカ(小声)「(アンシー、クレードさんに見惚れてるだよ…)」
ホヅミ(小声)「(彼氏のぉ晴れ姿にぃ、ノックアウトなんですねぇ)」 にやにや
クレード「この兜、被っていると分かるのですが、どうやら強い魔力を放っているのは、青と白の羽根飾りの部分ですね」
オルブラング「羽根飾りか…」
「青羽の兜という名前から考えれば、兜の本体は金色のサークレット部分ではなく、その一本の羽根飾りの部分なのだろうな…」
クレード「この羽根は何かの鳥の羽根なんですかね?」
オルブラング「いや、おそらくその羽根は細工だろう…」
「鳥の羽根に似せて作ったと思える…」
クレードは兜を脱ぎ、羽根の部分を触り、
クレード「そうですね、柔らかそうな見た目ですが、触ると硬めです」
「強度もありますし、しっかりと作られているようで…」
オルブラング「まあいずれにせよ、その兜を君にあげよう…」
「兜の力で今よりも強くなってくれ…そしてシェルージェを守ってほしい…」
シェルージェ「お祖父ちゃん…」
クレード「ありがとうございます、前大公」
「この兜、大切にいたしましょう」
クレードは「青羽の兜」を手に入れた。
オリンス「お祖父様!クレードだけではなく、僕にも何かございませんか!」
「強い武器や防具もあるのなら、どうかお譲りください!」
オルブラング「いや…もうこの王宮にそういう強力な武器や防具はないが…」
クレードに負けじと無茶を言うオリンスであった。
シェルージェ「うーん、確かにオリンスに渡せそうな武器とかはないけど、アンシーちゃんにならいいのがあるよ」
アンシー「プリンセス、私にですか?」
シェルージェ「うん。いいカスタネットがあるんだよ」
シェルージェはメイドたちに頼み、あるカスタネットを持ってきてもらった。
そしてアンシーたちに見せて、
シェルージェ「どうアンシーちゃん、お月様を2つ重ねたようなカスタネットだよ」
アンシー「すごい魔力を感じるわ…この小さな月のようなカスタネットって?」
ラプシェイア「そのカスタネットは「ダブルムーンカスタネット」といいます」
マーシャ「そちらも青羽の兜と同じく、遠いご先祖様の代からあるカスタネットなんですよ」
オルブラング「カスタネットは我がサフクラントでは伝統の楽器だからな…」
「公爵家らしく特別なカスタネットを持っていたいと思い、職人たちに作らせたのかもしれん…」
アンシー「このカスタネットについて詳しく分からないのですか?」
オルブラング「青羽の兜同様、大昔からクランペリノ家にあるということ以外は、よく分からないのだ…」
「魔力は高いようだが、それが何をもたらすのかも…」
マーシャ「その重々しい魔力もあってか、このカスタネットを上手く扱える音楽家さんもほとんどいなかったのよね…」
シェルージェ「でもホワイトに変身できるアンシーちゃんなら使いこなせるかもしれないよ、頑張って奏でてみてよ」
アンシー「私がこのカスタネットを…」
シェルージェ「お祖父ちゃん、このカスタネット、アンシーちゃんにあげちゃってもいいよね?」
オルブランク「そうだな…たとえ長年の家宝のような物でも、兜同様活用できるのならそれに越したことはない…」
マーシャ「ケースの中に入って埃を被っているだけじゃカスタネットも悲しんじゃうわ」
「ぜひ太陽やお月様の下で音を響かせてほしいわ」
ラプシェイア「アンシーさん、ダブルムーンカスタネットの力は未知ではありますが、どうかお受け取りください」
マーシャ「王宮にはカスタネットを奏でるための教本もあります」
「そちらもご活用ください」
アンシー「あ、ありがとうございます…」
アンシーは「ダブルムーンカスタネット」と「カスタネットの教本」を手に入れた。
アンシー「カスタネットかあ…私ほとんど触ったことないわ…」
リンカ「アンシー、ルゥルゥのオカリナと同ずだ」
「いっぱい練習して上手くなるだよ」
ホヅミ「そうですぅ、覚えるためのぉ教本だってぇ、あるんですからぁ」
クレード「オカリナの腕だって、少しずつ上達しているじゃないか」
「今の調子でカスタネットも頑張ってみろよ」
アンシー「ク、クレード!!」 ドキッ!
オリンス(心の中で)「(クレード!アンシーをこんなに振り向かせるなんて!)」
「(だったら俺もシェルージェちゃんにもっと振り向いてもらわないと!)」
無駄に対抗心を燃やすオリンスであった。
次回で第16話(後編)「クレビアンナイト(後編)」の回から始まったシェルージェに関する物語に一区切りつきます。
前大公の孫娘であり盗賊でもあるシェルージェをここまで見守っていただきありがとうございました。
貴族姫の物語、最後までお付き合いくださいませ。
※1…島の名前の由来は、スペインの世界遺産「イビサ島の生物多様性と文化」(複合遺産 1999年登録)より
※2…王宮の名前の由来は、スペインの世界遺産「アランフェスの文化的景観」(文化遺産 2001年登録)の「アランフェスの王宮」より
※3…音楽堂の名前の由来は、スペインの世界遺産「バルセロナのカタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院」(文化遺産 1997年登録)より
☆※4…歴史地区の名前の由来は、スペインの世界遺産「コルドバ歴史地区」(文化遺産 1984年登録 1994年拡張)より
※5…椰子園の名前の由来は、スペインの世界遺産「エルチェの椰子園」(文化遺産 2000年登録)より
(☆:物語初登場の世界遺産)




