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第43話 もしあなたが大公になったときは…

43話目です。

クレード(No.1)からミレイヤ(No.10)たち、魔法大陸ムーンリアス組10人の中で、シェルージェ(No.4)という盗賊ポジションのキャラを一人入れることにしたのですが、仲間に盗賊がいるのは某国民的RPGの影響です。


(今回の登場人物たちについては、前々回「○第42話-46話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)

クランフェルジスの王宮(※1)に戻ったシェルージェは、サフクランドス大公から盗賊行為の件を指摘され…


ラプシェイア「大公様!罰金などが必要でしたら何億でもお支払いいたします!」

 「ですからシェルージェのことはどうか大目に…」

オルブラング「大公、かねで何から何まで解決できないことは分かっている…」

 「だが、どうしてもシェルージェだけは…」

 

オルブラング「頼む、大公…」

シェルージェ「お母さん、お祖父ちゃん…」


サフクランドス大公「罰金ではなく賠償金を払っていただきますよ。大公の私にではなくナプトレーマ王国(※2)に」

ラプシェイア「えっ?」


サフクランドス大公「お手紙にはこうも書いてありました」

 「王国内のカダミリスの町(※3)ではシェルージェ様自ら素性を明かしてしまい、町民たちへの対応に手間がかかってしまいました。と」

シェルージェ「ああ、あの白い建物がいっぱいある町のことかあ」

 「シェルージェ、あの時はノリや勢いで、自分のことをつい喋っちゃったよぉ」


サフクランドス大公「お手紙によると、町人たちにシェルージェのことを内密にしてもらうために、町にいる家臣や貴族の方々、騎士団の兵士たちもいろいろと動いてくれたそうです」

 「家出をしたという汚点から公爵家の名誉を守るために、随分とお手間をおかけさせてしまいましたよ」


ピスパルカー侯爵「ですが、現地の貴族や兵の方々のおかげでとても助かりましたな」

 「シェルージェ様の汚点が他国の方々に知られては、サフクラントの貴族全員のイメージが悪くなってしまいますし」

スクレイザー「父上!シェルージェ様の前で、そこまで言わなくても!」


サフクランドス大公「スクレイザーさん、御父上は間違っていませんよ」

 「シェルージェが背負っているものはクランペリノ家の名誉だけではありません。公爵家クランペリノ家の名誉はサフクラントの貴族全員の名誉に匹敵するほど大きいのです」

 「ですからシェルージェが異国で問題を起こせば、クランペリノ家だけではなくサフクラント全体にまで響くのですよ」


シェルージェ「つまりシェルージェちゃんはクランペリノ家だけじゃなくてサフクラントの国そのものも背負ってるってこと?」

サフクランドス大公「そういうことです」

 「それだけの立場の人間だということを自覚してもらわなければ困りますよ」

シェルージェ(困った顔で)「ふぇー」


サフクランドス大公「シェルージェ、クランペリノ家本家の人間であるという立場上、あなたはこの国の大公に選ばれるかもしれない人間なのですよ」

シェルージェ「シェルージェちゃんが大公!?マジ!?」


サフクランドス大公「私は娘であるエルンビーナに大公の座を継いでほしいと思っていますが、エルンビーナではなくあなたが次の大公になるという可能性だってあるのです」

エルンビーナ「シェルージェ様は私より一回りほどお若いのです」

 「母の次に私が大公となり、私の次の大公がシェルージェ様ということもあり得ますから」

シェルージェ「シェルージェが大公…お国で一番偉い人かあ…」


サフクランドス大公「自分がすごい立場の人間だというプレッシャーがあなたの心を悩ませ、そして今回の家出の原因にまでなったのかもしれません…」

 「ですが24の怪魚と戦うと決意できるだけの心があるのなら、ご自分の立場についても強い心を持てるはずです」

シェルージェ「た、大公様…」

サフクランドス大公「大丈夫です。あなたが大公になったときは周りも全力で支えていきますから」


ここで話が戻って、

ラプシェイア「大公様、それではシェルージェへの処罰は賠償金のお支払いだけでよろしいのでしょうか?」

サフクランドス大公「ええ、自由な処罰で良いというのなら、今回のシェルージェの件はそれで対応しおうかと思います」

 「ですがカダミリスの町での事も考えれば、ナプトレーマには随分とお手間をおかけしましたからね、お支払いにしても相応の額が必要になるでしょうね」

ピスパルカー侯爵「まあ、サフクラント貴族の名誉が守れたと思えば安いものでしょう」


サフクランドス大公「ナプトレーマだけではありません、行方不明のシェルージェを捜索するためにダールファン王国も遠征部隊を送っていただきました」

 「そして王国の副騎士団長の一人であるイルビーツ殿までナプトレーマに来ていただいたのです」

 「こうなればナプトレーマだけではなく、ダールファンに対しても相応の額を払わなければ申し訳ないでしょうね」

バルデンベイル公爵「2つの国が相手となると、100億カラン程度は用意しておきたいものですな」

ラプシェイア「分かりました…それでシェルージェの件を許していただけるのなら、いくらでもお支払いいたします…」

オルブラング「頼む…それでシェルージェのことをどうか許してあげてほしい…」


サフクランドス大公「クランペリノ家からは50億カラン程度、つまり半分程のお支払いで結構です」

 「残りの分は私たち他の貴族で支払わせていただきますので」

ラプシェイア「大公様!?」


ロベルジーノ「ラプシェイアさん、大公様も言ったではありませんか「シェルージェはクランペリノ家だけではなく、サフクラント全体を背負っている者」だと」

アンドロランス公爵「国を背負う貴族のお方の不祥事であれば、それは私たち国の貴族全員の責任でもあります」

バルデンベイル公爵「ならば今回の賠償金は我々も同じように支払うというのが筋でございますよ」

サフクランドス大公「周りが支えていくとシェルージェには言ったのです」

 「だから言った通りにするまでですよ」

ラプシェイア「み、皆さん…」


ここで王宮に来ている他の貴族たちも、

公爵こうしゃく「ご安心なさってください、ラプシェイアさん!」

 「我々も大公様と同じ想いでございますから!」

侯爵そうろうこうしゃく「同じ国の貴族同士、共に助け合いましょう」

ラプシェイア「貴族の皆様…本当にありがとうございます…」

オルブラング「前大公として、心より感謝します…」


ピスパルカー侯爵(心の中で)「(これだけの貴族の心を動かすとは、さすがは我がサフクラントの大公だ…)」

 「(私のような人間では到底真似できんよ…)」

スクレイザー(心の中で)「(今回は大人の対応を見たような感じです…)」

 「(僕もいろいろと参考になりました…)」


ここでシェルージェ本人も、

シェルージェ「みんな、本当にありがとう!」

 「シェルージェのせいで、いっぱいお金を出してくれるなんて…」

サフクランドス大公「シェルージェ、今回の一件で申し訳ないという気持ちがあるのなら深く深く反省しなさい」

 「そして二度と今回のような過ちを犯してはなりませんよ」

シェルージェ「うん…約束するよ、大公様…」

エルンビーナ「シェルージェ様…」


オリンス「待ってください、皆さん!」

 「カダミリスの町の件は俺にも責任があります!だからシェルージェちゃんだけを責めないでください!」


サフクランドス大公「今大事なことはシェルージェが反省し、考えを改めるかどうかです」

 「あなたにも責任があったとしても、私たちにとってそこは重要ではありません」

ロベルジーノ「考えを改め、シェルージェが成長してほしいというのが私たち貴族の願いです」

 「ここでオリンスさんについてあれこれ申し上げませんので、ご理解ください」


サフクランドス大公「オリンスさん、ひとまずお静かになさってください」

 「まだシェルージェには話がありますので」

クレード「そういうことだ、お前は引っ込んでろ」

オリンス(悔しそうに)「うぐぐっ!」

シェルージェ(心の中で)「(オリンス、シェルージェを庇ってくれて、ちょっと嬉しかったよ…)」


大公は話を続け、

サフクランドス大公「シェルージェ、あなたを誘拐したロイズデン・ギナデルクというナプトレーマの元騎士団員についてですが…」

シェルージェ「お、おかしらのこと!?」

サフクランドス大公「名門公爵家の孫娘を3年も誘拐していた…」

 「本来ならこの男がしたことは処刑に値するほどの大罪ですよ」

シェルージェ「大公様、お頭のことは許してあげてよ!」

 「そもそもシェルージェのほうからお頭について行きたいって言ったんだよぉ!」

 「悪いのはお頭じゃなくて、シェルージェなんだよぉ!」

ラプシェイア「シェルージェ…」

シェルージェ「もしお頭を捕まえて、処刑しようと思ってるんなら、シェルージェ、大公様を絶対に許さないから!」


サフクランドス大公「落ち着きなさい、シェルージェ」

 「これからナプトレーマに支払う賠償金の中にはあの男が迷惑をかけた分も含まれていますから」

シェルージェ「大公様!?」


サフクランドス大公「全ての罪というわけではないようですが、ナプトダリオン様やパオトゥーラ様は、ロイズデンが行った誘拐の件については少なくともお許しになり、さらにあなたから直接許してほしいと言われたのですから、私からは何もいたしませんよ」

シェルージェ「それじゃあ大公様はお頭を許してくれるの?」


サフクランドス大公「元騎士団員の行動ということもあり、ナプトダリオン様たちもお手紙で深くお詫びしております」

 「そのうえで、シェルージェの気持ちを加味し、私たちサフクラントの人間に「どうかお許しいただきたい」とおっしゃっているのです」

 「ここまで真摯にご対応していただいたのなら、サフクラントでの処刑については差し控えるつもりです」


サフクランドス大公「誘拐など一部の罪以外でロイズデンを処罰するというのなら、それはナプトダリオン様たちのお言葉通り、ナプトレーマに委ねます」

 「私たちサフクラントの貴族はあの男に深く関わるつもりはありません」

シェルージェ(泣きながら)「ありがとう、大公様!お頭の命を奪わないでくれて!」

サフクランドス大公「先程も話した通り、元騎士団員であるロイズデンの無礼については、お金を支払うという形で同じく対応します」

 「私自身もその者のことでこれ以上事を荒立てる気はありませんからね」


ここでクレードと、仕方なく大人しくしていたオリンスも思わず、

クレード「大公様があの者を許していただいたことには、私も深く感謝いたします」

 「たとえあの者が盗賊団のかしらであっても、共にピラミッド(※4)で魔獣たちと戦い、窮地を乗り越えた仲でもありますので」

オリンス「シェルージェちゃんにとってあのお頭は、とても大切な人なんです!」

 「処刑を差し控えていただき、本当にありがとうございます!」

サフクランドス大公「大した盗賊ですよ、皆さんからこれほどまでのお言葉が出てくるなんて…」


ピスパルカー侯爵「盗賊に落ちぶれたとしても、そこは元騎士団員」

 「その男の中には譲れない正義感などもあるのでしょうな」

アンドロランス公爵「元騎士団員だったからこそ、お姫様のようなシェルージェちゃんを放っておけず、彼なりに手を差し伸べてきたのかもしれませんね…」


ここでバルデンベイル公爵が、

バルデンベイル公爵「さて皆様、話もだいぶまとまったと思いますので、そろそろお食事にいたしましょう」

シェルージェ「いいねぇ、バルデンベイル公爵さん!」

 「シェルージェ、お腹ペコペコだよぉ!」

マーシャ「それでしたら、お食事をお持ちいたしましょう」

 「今、執事さんやメイドさんたちに声をかけますので、少々お待ちを」


シェルージェ「お食事、お食事♪」

クレード(心の中で)「(気持ちの切り替えが随分早いな)」

 「(さっきまでかしらのことで泣いていたというのに…)」


一方ウェンディはシェルージェに対する貴族たちの対応などを見て、

ウェンディ(心の中で)「(押忍。貴族の皆さんの対応、実に良かったッス)」

 「(ウチも貴族社会の悪口を言ってたッスけど、この社会もまだまだ捨てたもんじゃねぇッス)」


またタオツェイも、

タオツェイ(心の中で)「(そうだ、この結束力や繫がりこそが貴族社会の強みなんだ…)」

 「(バンリ本土の人間たちにこんな社会が作れるはずがない…)」


大広間に大量の料理が運ばれ、シェルージェたちはパーティを楽しんだ。


そしてパーティが終わり、シェルージェは貴族たちと別れることに…

次回はサフクラントの貴族たちとの別れの場面を書きます。

引き続きよろしくお願いいたします。


※1…王宮の名前の由来は、スペインの世界遺産「アランフェスの文化的景観」(文化遺産2001年登録)の「アランフェスの王宮」より

※2…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より

※3…町の名前の由来は、リビアの世界遺産「ガダミス(or ガダーミスの)旧市街」(文化遺産 1986年登録)より

※4…元ネタはエジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」(文化遺産 1979年登録)の「ピラミッド」より

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