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第40話 シェルージェ memory ⑥ ~ 海賊は幕を引いた、盗賊は未来に賭けた ~

節目といえる40話目です。1年半程度連載して、ようやくここまできました。

ですがクリスタルナンバーズの物語はまだまだ続きます。今後ともよろしくお願いします。


前回39話投稿後、本作をブックマークしていただいた方、本当にありがとうございます。

「作者のためにキャラが頑張るのではなく、キャラのために作者が頑張る」をモットーに作品を書いております。どうかよろしくお願いします。


<主な登場人物の紹介>


◎シェルージェ・クランペリノ(女・当時10代)

・黄色い髪をしている名門公爵家クランペリノ家の人間で、3年前の大公(※サフクラントの国家元首)オルブラング・クランペリノの孫娘。

マナーや教養にうるさい貴族の生活が嫌になり、さらに最愛の父マグダイドを亡くしたことで、家出を決意。荷物をまとめ実家である王宮を抜け出す。

公都こうと(※サフクラントの首都)でロイズデン(偽名ヨークガルフ)たち盗賊と出会い、彼らと共に公都を脱出する。

そしてロイズデンたちと共にキャプテン・ゼベルクの船に乗り南のナプトレーマ王国(※1)までやって来た。

ロイズデンたちのアジトで盗賊の仲間として歓迎される。

この物語における重要人物の一人。

○ヨークガルフ(本名:ロイズデン・ギナデルク)(男・当時40代)

・サフクラント公国の南の国、ナプトレーマ王国の元騎士団員。

騎士団員から盗賊になった男。

ヨークガルフは盗賊としての偽名。

シェルージェと出会い、行動を共にするようになるが、シェルージェが公爵家の孫娘ということで、内心では彼女を心配している。

○モルバッサン(男・当時40代)

・ナプトレーマ王国で暗躍する盗賊。

ロイズデン(偽名ヨークガルフ)を盗賊の仲間に誘った一人で、今ではロイズデンにとっては良き相棒。

モルバッサンは盗賊としての偽名。

○オドン(男・当時40代)

・ナプトレーマ王国で暗躍する盗賊。

モルバッサンと共にロイズデンを盗賊の仲間に誘った一人。

オドンは盗賊としての偽名。

●キャプテン・ゼベルク(男・享年80歳)

・ナプトレーマ王国やサフクラント公国近海などを主な縄張りとしていた海賊のかしら

キャプテン・ゼベルクの名は海賊としての名前であり、彼の本名ではない。

ゼベルクの海賊団はロイズデンの盗賊一味とは同盟関係にあって、よく行動を共にしていた。

豪快で威勢のいい性格で、ロイズデンたちとも仲が良かった。

白髪頭で三角帽子を被り、白い髭を蓄えていた。

「黒鰐の舶刀」という舶刀カットラスを武器にしていた。

所持していた海賊船の名は「ブラック・クロコダイル号」。


○イザベリス・デラムジャール(女・現在23歳)

・ナプトレーマ王国騎士団の女兵士。

ナプトレーマ王国の兵士ではあるが、王国の北にあるサフクラント公国の出身。

王国内でサフクラントの前大公の孫娘シェルージェを見かけた人物。

○ラプシェイア・クランペリノ(女・現在43歳)

・シェルージェの母。

公爵家の当主を引退した父オルブラングに代わり家を継いでおり、「クランペリノ公爵」の称号を持つ。

娘シェルージェへの愛情は深く、彼女に優しく接している。

○オルブラング・クランペリノ(男・現在72歳)

・シェルージェの母方の祖父。

サフクラント公国の前大公で、第23代国家元首。「クランペリノ大公」の称号を持っていた。

現在は大公だけではなく、公爵家の当主も引退している。

孫娘のシェルージェが家出した後、体調をかなり崩し、やつれてしまった。


△クレード・オリンス

クレード(主人公)とその仲間。

二人は名前のみの登場。

季節が夏になったある日、ルシアたちは海へ来ていた。

ルシア「うーん!海は気持ちいねぇ!」

ルシアは楽しそうに海で泳いでいた。


海から少し離れた所でヨークガルフは、合流したキャプテン・ゼベルクと話をしていた。

キャプテン・ゼベルク「あのサフクラントの姫様を見てると、ガラホナザーフ島(※2)での戦いの事も思い出しちまうなぁ…」

ヨークガルフ「40代の俺が生まれた頃の話だったよなあ…」


キャプテン・ゼベルク「サフクラント公国領、ガラホナザーフ島…」

 「月桂樹の森と霧に包まれたその島の砦に当時の仲間や同盟を組んでいた海賊たちが捕まってな」

 「俺と残った仲間たちはあいつらを救出するために、騎士団相手に戦いを挑んだ」

ヨークガルフ「確かその戦いはあんたら海賊が勝利したんだよな?」

キャプテン・ゼベルク「ああ、仲間たちを救出し勝利できたのもこの「黒鰐くろわに舶刀カットラス」のおかげだ…」

 「だがこの舶刀で何人もの騎士団員を殺したよ…数も覚えてないくらいな…」


ヨークガルフ「その戦いであんたの悪名がより轟いたんだよな?」

キャプテン・ゼベルク「祖国のナプトレーマだけでなく、北のサフクラントにまで轟いたよ…」

 「俺は凶悪な海賊として世に知られるようになった…」


ヨークガルフ「だが最近のあんたは随分大人しいんだろ?」

 「10年前騎士団にいた時、あんたの名前や悪行を少し聞いたことがあるが、俺を含め海であんたや海賊団に遭遇した奴はほとんどいなかった」

キャプテン・ゼベルク「さすがの俺も年には勝てなかった…」

 「80近くなった今じゃ俺自身も体力が衰え、それと同時に仲間の数もかなり減った…」


一方、海にいるルシアは、

ルシア「チチュウカイモンクアザラシさん。どっちが早く泳げるかルシアと競争だよ」

チチュウカイモンクアザラシ「グゥー」

ルシア「そーれ!」


アザラシと楽しく泳ぐルシアを見て、

キャプテン・ゼベルク「あの姫様にガラホナザーフ島の話をしたら、俺を悪く思うだろうな…」

 

キャプテン・ゼベルク「アウトローの海賊たちなんかを助けるために、正義を掲げる騎士団員を何人も殺した…」

 「過去の話とはいえ、あの貴族の姫様から見れば、自分の国の兵士が何人も俺に殺されたんだからな…」

ヨークガルフ「そんなの話さなきゃいいだけだろ…」

 「ルシアだって、あんたの口からそんな話が出たら驚いちまうよ…」

キャプテン・ゼベルク「ハッハッハッ…口にすることだけが全てじゃねぇってわけか……」

 「うぐっ!」


ヨークガルフ「おい、どうしたゼベルク!」

キャプテン・ゼベルク「すまねぇな、突然胸の辺りに痛みを感じた…」

ヨークガルフ「無理すんなよ、もう80近くのジジイなんだし」

キャプテン・ゼベルク「はっ、俺より30歳以上も若いお前に心配されるとはな…」

ヨークガルフ「街へ行って回復魔法をかけてもらうなり、闇医者を呼んで診てもらうなりするんだな」

キャプテン・ゼベルク「そ、そうだな……」



それからあっという間に3年近い月日が流れ、盗賊一味の数はかしらのヨークガルフ(本名、ロイズデン)、モルバッサンやオドンたち17人の仲間、そしてルシア(シェルージェ)を合わせた19人となっていた。


ケルビニアン暦2049K年12月。

ゼベルクの仲間だった元海賊たちがヨークガルフたちのアジトへやって来た。

元海賊たちはゼベルクについて、

ヨークガルフ「そうか…ゼベルクが亡くなったのか…」

ルシア「そ、そんなぁ…」

元海賊①「やまいが進行したんだろうな…」

 「亡くなる前はかなり息が上がっていて、苦しそうだった…」


元海賊②「だがキャプテンは最後まで嬉しそうに船に乗っていたよ」

 「息切れしながらも、自分の人生を誇っていた」

元海賊③「死ぬまで海賊をやれた、愛するブラック・クロコダイル号の上で人生を終えることができた、だから何も後悔はないってな」


ヨークガルフ「まあ、あのゼベルクならそう言うだろうな…」

モルバッサン「部下の数もだいぶ減っただろが、あんたらのように最後まで付き合ってやった人間たちもいたんだしな」

 「ゼベルクにしたらいい人生の幕引きだったと思うぜ」


元海賊①「騎士団や他の海賊たちとは戦ってきたが、キャプテンは決して民間人の船を襲うような真似はしなかった」

 「悪名がどれだけ轟こうと、それだけは何があっても守ってきた」

ヨークガルフ「最後まで自分の決めた筋を通したか…それならゼベルクも人生に悔いはないはずだ…」


続いて、

元海賊①「俺たちはキャプテンの遺体を火葬した」

 「そして砕いた骨をキャプテンの故郷であるケルクアレンの町(※3)近くの海に流したんだ」

元海賊②「海賊というアウトローになったキャプテンは何一つ地元に貢献できなかった」

 「だが古代のカルタタンゴ遺跡(※3)が今もしっかりと残っている故郷をキャプテンはずっと愛していた」

ヨークガルフ「それは俺にも話していたよ」

 「幼い頃から町の遺跡にロマンを感じていた。だから青く果てしない海にもロマンを感じられたとな…」


元海賊③「キャプテンが亡くなり、俺たちはブラック・クロコダイル号(海賊船)も爆破した」

 「船はもう海の藻屑だよ」

モルバッサン「それはもったいない事をしたんじゃないのか?」

 「あんたらの船としても使えただろうに?」


元海賊①「あの船の主はキャプテンだけだ」

 「キャプテンが誰よりも愛した船だからこそ、他の誰かが船長になって使うのは良くないと思ってよぉ」

元海賊②「それに何十年も使っていた船だ。所々に傷みもあったしな」

 「キャプテンの死とともにその役目も終わらせることにしたんだ」


ヨークガルフ「俺もそれで良かったと思うぜ」

 「最後までゼベルクと一緒に時を過ごせたんだ、あの船も本望だろう」

元海賊③「ブラック・クロコダイル号の魂が地獄にいるキャプテンのところまで届いてほしいものだよ」


ここで海賊の一人がヨークガルフに何かを渡そうと、

元海賊①「ヨークガルフのかしら、これをあんたたちの盗賊団に渡す」

 「うまく使ってくれよ」

ヨークガルフ「これはゼベルクが持っていた「黒鰐くろわに舶刀カットラス」じゃねぇか」

 「何で盗賊の俺たちに?」

元海賊②「ブラック・クロコダイル号はガタがきていたが、そのカットラスはまだまだいけるはずだ」

元海賊③「強い武器だからこそ、信用しているあんたらに託すぜ」


オドン「だがカットラスは船の上で戦う兵士や海賊とかが使う武器だろ」

 「使うんなら盗賊の俺たちよりもお前ら海賊のほうが向いているだろ、どう考えても」

元海賊①「俺たちゼベルク一味はもう解散したんだ」

 「俺たち一味もブラック・クロコダイル号と同様、キャプテンの死をもって終わりだ」

 「この俺の含め、ほとんどの奴は海賊を辞めて堅気になるよ」

元海賊②「俺もこの国でタコつぼ漁を始めることにしたからな」

ヨークガルフ「そうか。それじゃあお前らが持っているよりも盗賊を続ける俺たちが持ってたほうがいいな。一応は」

モルバッサン「俺たち盗賊の中で舶刀をうまく扱える奴はいないが、武器になるんなら持っておいて損はない」


元海賊③「あんたら盗賊団には世話になったな」

元海賊①「渡すモンも渡した」

 「それじゃあ、俺たちはもう行くぜ」

ヨークガルフ「お前らの新しい人生がうまくいくことを願ってるよ」

元海賊②「過去の事を問われて罪になったら、それはしょうがねぇ」

 「そのときは喜んで処刑されてやるさ」

元海賊たちはアジトを出て行った。


ルシアは彼らを見て、

ルシア「あの人たち、全然落ち込んでなかったなあ」

 「自分たちのキャプテンが亡くなったのに、悲しくないのかなあ…」

モルバッサン「亡くなった直後は結構悲しんだかもしれねぇ」

 「だが少なくとも今は前向きな気持ちになっていると思うぜ」


ヨークガルフ「根が明るく、大声で笑う。ゼベルクはそんな男だった」

 「死んだ後も周りがくよくよしてたら、むしろゼベルクに悪いからな」

オドン「豪快な奴だったんだ」

 「地獄から「俺のことなんかで落ち込むな!」とか言ってきそうだ」


モルバッサン「まあ、落ち込んで悲しむことだけが、故人に対する計らいじゃねぇってことだよ、ルシア」

ルシア「落ち込むことだけじゃないかあ…」

ヨークガルフ(心の中で)「(シェルージェ(ルシア)、まだ親父さんの死を引きずっているのか…)」

 「(だとしたらお前がいるべき場所はやはり…)」


一方、

ヨークガルフ(心の中で)「(それにしても、アウトローから堅気になる生き方か…)」

 「(ゼベルク、悪いが今の俺には難しいかもな…)」

 「(簡単に抜け出せる道じゃないだろう…一度でもアウトローに染まちまったのなら…)」



それから半年ほど経った、2050K年の5月22日。

この日ピラミッド(※4)近く来ていたルシア(シェルージェ)たち盗賊団は騎士団の部隊と遭遇し、ラクダに乗って逃げることに。


逃げ出すルシアたちに兵士はナイフを数回投げた。そしてそのナイフの一つがルシアの顔を掠め、顔を隠して布がほどけた。

ルシア(シェルージェ)の素顔を見た女兵士のイザベリスが、

イザベリス「長い黄色い髪にそのお顔…」

 「もしやあなた様はサフクラントのシェルージェ・クランペリノ様では!?」

ルシア「!!」

盗賊①「クソが!」

仲間の盗賊が投げた砂袋により、周囲は砂煙に包まれた。

ナプトレーマ兵(ラクダに乗ったファラオナイト)「くっ!小賢しい真似を!」

イザベリス「ゴホ…っ!」

兵士たちの足が止まっているうちにルシア(シェルージェ)たちは逃げ出した(※5)。


アジトに戻り、ルシア(シェルージェ)たちは、

ルシア「何よ、あの女!」

 「何でルシアがシェルージェだって分かったのよ!」

モルバッサン「その女兵士、サフクラント出身だろうな」

 「まあサフクラントの人間がナプトレーマで兵士をしている理由は分からんが」

オドン「とにかくそんな奴が騎士団にいるってことかよ…」

ヨークガルフ(心の中で)「(さあて、これからどうするか…)」



ある日、アジトの中で、

モルバッサン「ルシア、気がかりだろうが、今日のメシのおかずを獲りに行くぞ」

盗賊②「魔獣の肉でも食って元気出そうぜ」

盗賊③「肉だけじゃねぇ、魔獣どもの死骸を闇市の商人に売って金を稼がねぇとな」

 「俺たちが生きていく収入源なんだし」

盗賊②「そうだ。お前のおやつ代にもなるんだぞ」

ルシア「別にいいよ、ルシア、なんか乗り気じゃないもん…」

そう言ってルシアは自分の部屋に戻った。


盗賊②「大丈夫か、あいつ?」

オドン「あれじゃあ、こっちが心配になっちまうよ…」

ヨークガルフ「そうだな。俺が様子を見てくる」


ヨークガルフはルシア(シェルージェ)の部屋の扉をこっそり開け、中の様子を見た。

部屋には昼寝をしているルシアがいた。

ルシア(寝言)「うーん…」

ヨークガルフ(心の中で)「(シェルージェ…シエスタ中か…)」

ルシア(寝言)「お母さん…お祖母ちゃん…」

ヨークガルフ「…」

 (心の中で)「(シェルージェ、やはり心の底じゃ故郷に帰りたいと思っているんだろうな…)」



6月15日。

ルシアはかしらのヨークガルフと話をしていた。

ヨークガルフ「ルシア、いや、シェルージェ…」

 「お前の口から聞いておきたい事がある」

シェルージェ(ルシア)「おかしら…」

ヨークガルフ「昨日外に出ていた仲間たちがダールファンの兵士を見かけたそうだ」

シェルージェ「ダ、ダールファン!?」


ヨークガルフ「ナプトレーマとその隣の国であるダールファン。両国の結びつきは強い」

 「緊急事態ともなれば、国境を超えて兵士たちが駆けつける」

シェルージェ「そ、それって、つまり…」

ヨークガルフ「あの女兵士の話が伝令となり、それがダールファン王国騎士団にも伝わったんだろう」

 「そしてナプトレーマの兵たちとお前を探すためにダールファンも部隊を動かした」

 「そういうことだろうな…」

シェルージェ「そ、そんなあ…」

 「シェルージェを探すためだけに、サフクラントとあんまり関わりのない国まで動くなんて…」

ヨークガルフ「お前の血がそれだけ高貴だということだ」

シェルージェ「うっ…」


ヨークガルフ「シェルージェ、自分の立場が分かったのなら、今すぐクランペリノ家の紋章を持って兵士たちに投降しろ」

シェルージェ「!!」 

ヨークガルフ「大丈夫だ。前にも言ったが、紋章がお前を守ってくれるはずだ」

 「紋章を見れば向こうだって簡単にお前を処罰することはできないだろう」

シェルージェ「それってシェルージェにまた貴族の生活をしろってわけ!?」

 「そんなのヤダよ!今王宮になんて帰りたくないよ!」


ヨークガルフ「現状を考えろ。ナプトレーマだけじゃなく、ダールファンからも援軍が来たこの状況でお前を守り切れるわけがない」

 「もうお手上げなんだよ。俺たち盗賊団だって解散を考えているくらいだ」

シェルージェ「でもっ!でもっ!」


ヨークガルフ「騎士団を甘くみるな。たまに盗賊に負ける騎士団員もいるが、ほとんどの奴は盗賊なんかよりも強い」

シェルージェ「ヨークさんたちでも勝てないっていうの…」

ヨークガルフ「だからこそ、余計にお前のことが心配なんだよ」

シェルージェ「!?」


ヨークガルフ「俺だけじゃねぇ、盗賊をやっているお前のことを仲間たちも心配している…」

シェルージェ「シェ、シェルージェのせいで、おかしら以外のみんなも!?」

ヨークガルフ「俺たちのことを気遣ってくれるのなら、もう出て行ってくれ…」

 「それで俺たちの悩み事が一つ消えるんだからよぉ…」

シェルージェ「だ、だけど!」


ヨークガルフ「シェルージェ…もうお袋さんたちのところに帰ってやれよ…」

シェルージェ「!!」

ヨークガルフ「お前は強がっているが、シエスタ中(※6)、寝言でお袋さんや祖母ばあさんのことをよく口にしているんだよ」

 「それはお前が心の底ではお袋さんたちに会いたいと思っている証拠だ」


シェルージェ「な、何よ!」

 「お頭はシェルージェがシエスタしている時、お部屋の中に入ってきたの!?」

 「寝ている女の子の部屋に勝手に入るなんて、相変わらずデリカシーないよ!」

ヨークガルフ「デリカシーなんて気にしていたら盗賊稼業はうまくいかねぇんだよ」

 「これも前に言ったことだぞ」

シェルージェ「ううっ!」


ヨークガルフ「とにかく荷物をまとめてこのアジトから出て行け」

 「そして今日はふかふかのベッドでゆっくり休め」

シェルージェ「ヤダ!ヤダ!ヤダ!」

 「まだシェルージェは盗賊続けるもん!」

 「シェルージェじゃなくて今はルシアだもん!」

シェルージェは後ろを向いて走り出し、ヨークガルフの前からいなくなった。


ヨークガルフ(心の中で)「(シェルージェ、お前は「まだ盗賊を続ける」とか、「まだ」って言葉を使うよな)」

 「(「まだ」ってことは、「いつかは故郷に帰ってもいい」と心の底では思っているってことだぜ。だからそんな言葉も出てくるんだぞ…)」



次の日、6月16日。

ヨークガルフ「ルシア(シェルージェ)はどうした?」

 「まだふてくされているのか?」

モルバッサン「かしら、しょうがねぇから何人か連れてその辺を散歩してこいよ」

オドン「俺たちは一応アジトに残っておくからよぉ」

ヨークガルフ「悪いな、お前ら…」


ヨークガルフルシアの部屋に行き、

ヨークガルフ「ルシア、そこでふてくされててもしょうがねぇから、とりあえず散歩にでも行くぞ」

ルシア(シェルージェ)「ぶぅ」


ふてくされていたルシア(シェルージェ)だが、外に出ると、

ルシア「お散歩、お散歩、らんらんらん♪」

盗賊④(小声)「(楽しそうだな、ルシアの奴)」

盗賊⑤(小声)「(あれこれ考えない天真爛漫な娘だからな)」

 「(まあ、そういう性格だからこそ、こっちが助かるときもあるがな)」


盗賊④(小声)「(だがルシアが公爵家の娘だと思えば、一緒にいるだけでプレッシャーを感じるよ…)」

盗賊⑤(小声)「(貴族、それも公爵家の娘がずっと盗賊をやっていくのはやっぱり無理があるよな…)」


ルシア「るんるん♪」

ヨークガルフ(心の中で)「(シェルージェ(ルシア)、ひとまず楽しんではいるが、いつまでもこんな状況でいられるわけじゃ…)」

ルシア(シェルージェ)は楽しそうに散歩をしているが、かしらのヨークガルフはやはり彼女を心配していた。

そんなときシェルージェを捜索するクレードやオリンスたちと出会い、

ヨークガルフ(心の中で)「(賭けてみるか、あの青い髪の剣士に…)(※7)」


(回想終わり)



シェルージェは続きを話し、

シェルージェ「アジトの近くでオリンスたちと出会ったんだ…」

 「オリンスと街に出かけて買い物したり、サンフラワーブーメランで魔獣たちとも戦ったりもしたよぉ(※8)…」

 「その後ね、ピラミッド近くの町で、シェルージェのことを騎士団に話して……」

ラプシェイア(母)「シェルージェ、あなたにそんな事があったなんて…」

オルブラング(祖父)「うーむ…」

家出をした後の事をいろいろ話したシェルージェ。

ラプシェイアやオルブラング、家族はそれの事実をどう受け止めるのか?

そして愛するシェルージェに何を語るのか?

次回へ続く。


※1…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より

☆※2…島の名前の由来は、スペインの世界遺産「ガラホナイ国立公園」(自然遺産 1986年登録)より

☆※3…町や遺跡の名前の由来は、チュニジアの世界遺産「ケルクアンの古代カルタゴの町とその墓地遺跡」(文化遺産 1985年登録 1986年拡張)より

※4…元ネタは、エジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」(文化遺産 1979年登録)の「ピラミッド」より

※5…この辺りの詳細は、第19話「シェルージェ捜索会議」の回に書かれています。

※6…シェルージェにとってのシエスタは昼寝。

※7…この辺りの詳細は、第21話「誘拐犯たち」の回に書かれています。

※8…この辺りの詳細は、第22話「男29歳、人生初デート」(前編・後編)の回、第24話「決戦のピラミッド!」(前編・中編・後編)等の回に書かれています。

(☆:物語初登場の世界遺産)

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