表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/113

第36話 シェルージェ memory ② ~ 緑髪のかつらに伊達メガネ、シェルージェの家出大作戦 ~

36話目です。

シェルージェの回想シーンの中でクリスタルナンバーズのサンナが登場しますが、サンナ(No.5)がアンシー(No.3)やシェルージェ(No.4)たちの仲間になるのは、まだ先になります。

アンシーやシェルージェたちが、サフクラント公国やアイルクリート共和国の先にあるベレスピアーヌ共和国を訪れたとき、シスターのサンナは力を貸してくれることでしょう。

しかしベレスピアーヌでは、ピンクの髪のサンナだけではなく、藍色の髪の女性もまたアンシーたちの力になることでしょう。


(今回の登場人物たちについては、前々回「○35・36話の主な登場人物の紹介」の回をご参照ください)

3年前、ケルビニアン暦2047K年5月後半。


最愛の父マグダイドを亡くし深く落ち込んでいたシェルージェはしばらく一人寝室に引きこもっていた。

だが今日は部屋から出て、家庭教師の授業をちゃんと受けていた。


家庭教師(男・50代)「どの国においてもきんの取引は大変重要な商売なのです」

 「我が国サフクラントで金が採掘できるのは主にラスメドス鉱山(※1)で、この鉱山はサフクランドス公爵家が代々管理して……」


シェルージェ「ねぇ先生、シェルージェ、インディアルス古文書館(※2)に行ってみたいよ」

 「たまには自分で本を読んで勉強したいんだ」

家庭教師「ほお、シェルージェ様がご自分から古文書館に…」

 「大変素晴らしい心がけですぞ。私も嬉しく思います」

 「今日はもう時間的に無理ですので、明日私や兵の方々と共にお出かけいたしましょう」

シェルージェ「あんまり大人数じゃなくていいからね。シェルージェとしてはお忍びで行きたいんだよぉ」



次の日、シェルージェは家庭教師や親衛隊たちと共に古文書館までやって来た。


シェルージェ「この古文書館もすごく久しぶりだなあ」

 「最初に来た時は本の数に驚いたけど、今も本でいっぱいだねぇ」

家庭教師(小声)「(ここは古文書だけではなく、一般の本もたくさん置いておりますからね)」

 「(古文書館はサフクラント最大の図書館でもあるのですよ)」

シェルージェ「へぇ、すごいじゃん」


家庭教師(小声)「(シェルージェ様、古文書館ではあまり大きな声を出してはなりませんぞ)」

 「(それもマナーなのですから)」

シェルージェ(小声)「(わ、分かったよぉ)」

 「(シェルージェもお忍びで来てるんだから、市民の人たちにバレないようにするから)」


女性職員(小声)「(シェルージェ様、お探ししたい本や古文書があれば、私がご用意いたしますので)」

シェルージェ(小声)「(いいよ、まずは自分で探すよぉ)」

お忍びのシェルージェは一人、本を探しに向かった。


家庭教師(心の中で)「(しかし今日は修道士やシスターの方々が多くいらしてますね)」


家庭教師は修道士やシスターの引率者と話をし、

家庭教師(小声)「(なるほど、皆様はベレスピアーヌ第二修道大学の方々でしたか)」

引率の教授(小声)「(サンディアルゴ・デコンポーラの巡礼路:サフクラント北部の道(※3)、ベレスピアーヌの道(※4)、歴史ある巡礼路を通り、各地の教会や聖堂などを巡礼するのも修道士教育の一環ですから)」

家庭教師(小声)「(それで巡礼中にこの古文書館に立ち寄ったわけですね)」

引率の教授(小声)「(ええ。短くてもいいので学生たちにはこの古文書館で調べた事をレポートにしてもらいますので)」


レポートに書くテーマを見つけるため、ある学生シスターたちは館内の古文書を見て回り、


学生シスター①(小声)「(新大陸「グアナプエルトの歴史地区(※5)」の調査、このテーマはどう?)」

学生シスター②(小声)「(そうねぇ、この地区に建てたといわれているバレンジアナ教会(※5)も気になるし)」

学生シスターのサンナ(小声)「(それじゃあ私たちは文献を見て、この歴史地区と教会について主にまとめましょう)」


学生シスター③(小声)「(この古文書館には新大陸や開拓に関する歴史資料が多く残っているから、とても勉強になるわね)」

サンナ(小声)「(新大陸…今の科学大陸で、サンクレッセル連邦国のことね)」

学生シスター④(小声)「(サンナにとって新大陸や連邦国に関する話とかは感慨深いものがあるんじゃないの?)」

サンナ(小声)「(そうね)」

 「(私の名前、サンナの「サン」はサンクレッセル帝国(※6)や連邦国に由来するから)」


一方シェルージェも古文書館でワトニカの忍者に関する本を見つけ、

シェルージェ(心の中で)「(先端に付いている鉤を壁の出っ張りとかに引っ掛けて登る…)」

 「(なるほど。これが忍者の「鉤縄かぎなわ」かあ…)」

 「(確かにこれならフック付きのロープで代用できそう)」

 「(よーし、王宮に戻ったら探してみよう)」


黄色の髪のシェルージェとピンクの髪のサンナ、広い古文書館の中で二人が出会うことはなかった。だがこの二人は3年後に出会い、そしてクリスタルナンバーズの一員として戦っていくのであった。



シェルージェが古文書館に行ったことは、母や祖父たちにも伝わり、

オルブラング「シェルージェが自分からインディアルス古文書館に行っただと?」

 「一体どういう風の吹き回しだ」

マーシャ「まあいいじゃないですか」

 「あのが教養とかに興味を持ったのはとてもいいことだわ」

オルブラング「そうだな。少しは本を読んでいろいろ知ってもらわねばな」

ラプシェイア「…」

シェルージェが古文書館に行ったことを疑問に思わなかった祖父母だが、母のラプシェイアだけは違和感があった。


数日後。

自分の部屋にいるシェルージェは、大きなリュックサック、札束(家出のための資金)、着替え、燻製の肉やチーズ(非常食)、水筒、伊達メガネやかつら(変装用の)、武器となるサンフラワーブーメラン(対魔獣用)、ヤシの木ブーメラン(対ならず者など、人間相手の場合)、そしてフック付きのロープなどを並べていた。


シェルージェ(心の中で)「(シェルージェにはお小遣いもいっぱいある。そして王宮中から物を探して、家出に必要なのもだいぶ揃った…)」

 「(あとはいつ実行しようかなあ…)」


並べられた品々の中にはシェルージェの肖像画が描かれたクランペリノ家の紋章もあった。シェルージェは自分が持つべき紋章を見て、

シェルージェ(心の中で)「(なんか気になるんだよね…)」

 「(シェルージェ、貴族の生活から抜けたいはずなのに、それでも紋章は持っておかなきゃいけない気がするんだ…)」


その時部屋をノックする音が聞こえた。

ラプシェイア「シェルージェ、お部屋にいるのよね?」

シェルージェは部屋の扉を開けたが、母ラプシェイアを部屋に入れようとはしなかった。


ラプシェイア「ねぇ、シェルージェ、あなた、何か考えていることがあるの?」

シェルージェ「や、やだなあ、お母さん」

 「別に変ったことなんてないよぉ」

ラプシェイア「本当にそうなの?」

 「私、お父さんが亡くなってから、あなたが変わった気がするの…」

シェルージェ「いやいや、シェルージェ、もう立ち直ったからぁ」


ラプシェイア「大好きなお父さんが亡くなった後、古文書館に行くなんて何か変だわ…」

 「勉強嫌いな以前のシェルージェなら古文書館に行くなんて、考えられないもの…」

シェルージェ「お母さん、シェルージェだってたまにーはお勉強しようと思うときもあるんだよぉ」

ラプシェイア「そうなの?それは本当に信じていいことなの?」

シェルージェ「も、もちろん…」


ラプシェイア「まあいいわ、お母さん、これ以上は追求しないから…」

 「でも何か思ったらすぐお母さんに話しなさい」

 「全ての事に力になれるわけじゃないけど、話すだけでも気持ちは楽になるから…」

シェルージェ「分かったよぉ、何かあったらシェルージェ、ちゃんと話すからね」

ラプシェイア「お願いね…お母さんはいつだってあなたのことを心配しているんだから…」

母は部屋の前からいなくなった。


そして、シェルージェは、

シェルージェ(心の中で)「(ごめんね、お母さん)」

 「(シェルージェ、お母さんのこと裏切っちゃうよ…)」


5月から6月になったある日、シェルージェは一人寝室で、

シェルージェ「それじゃあ、お父さん」

 「シェルージェ、行ってくるね」

 「お母さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、王宮で暮らすみんなのことを守ってあげてね」

シェルージェは父の形見であるワオキツネザルとムナジロクイナモドキの彫刻に向かって話しかけた。


時間は11時40分頃、シェルージェは自分の寝室から出た。


途中メイドに会い、

メイド①「あら、シェルージェ様、お出かけですか?」

シェルージェ「うん、ちょっとお庭に行ってくるよ」

メイド①「もうすぐ、お昼ごはんですからね」

シェルージェ「大丈夫だよ。ちゃんと食べに行くから」


パルテレレ庭園(※7)に着いたシェルージェは、茂みの中に前もって隠してあったリュックを取り出し、

シェルージェ(心の中で)「(別の日にリュックを隠しておいて正解だったよ)」

 「(おかげで今日はメイドさんたちにも怪しまれなかったし)」

シェルージェはリュックを背負った。

(そのリュックには持っていくのをためらったクランペリノ家の紋章も入っていた)


そして見回りをする兵士たちなどに隠れながら、王宮を取り囲む壁の前までやって来た。

シェルージェ「(お昼の時間帯はたくさんの人が休憩するから、見回りも少ないんだよね)」

 「(王宮を脱出するなら、今がチャンス)」


シェルージェはリュックの中からフック付きのロープを取り出し、先端のフックを壁の出っ張りに引っ掛けた。

シェルージェ(心の中で)「(いいぞ!ちゃんと引っかかった!)」

リュックを背負ったシェルージェはロープを使い王宮の壁をよじ登った。


壁上まで登ったシェルージェはロープを手繰り寄せ、

シェルージェ(心の中で)「(今度は反対側の出っ張りにフックを引っ掛ければいいのね)」

シェルージェは再度壁にフックをかけ、そしてロープを使って壁を下りた。


シェルージェ(心の中で)「(やったー!王宮の外に出られた)」

 「(よーし、近くの茂みに入って急いで変装しちゃおう)」

シェルージェは深い茂みの中で、緑髪のかつらを被り、伊達メガネをかけ、手鏡を見ながら厚化粧をした。


シェルージェ(心の中で)「(変装もバッチリ!街へ行こう!)」

変装したシェルージェは公都の街へと向かって行った。


その頃クランフェルジスの王宮内(※7)では、

オルブラング「シェルージェはどうした?」

 「食事のマナーを注意されるのをいつも嫌がっているが、食べるときは誰よりも早くテーブルに着くというのに」

ラプシェイア「私、部屋に行ってくる」

 「シェルージェを呼んでくるから」


シェルージェの寝室に向かったラプシェイア、そして、

ラプシェイア「大変よ!シェルージェが部屋にいないわ!」

オルブラング「何っ!?」

マーシャ「どういうことなの?」

ラプシェイア「部屋にシェルージェからの置手紙があったの!」

オルブラング「お、置手紙?」


ラプシェイア「手紙にはこう書かれているわ!」

 「お父さんが亡くなってとても悲しいです。貴族の生活も嫌になりました…」

 「しばらく家出するから、当分の間探さないでほしいって!」

オルブラング「シェルージェ…なんてバカなことを…」

マーシャ「あの娘はまだ王宮内にいるかもしれないわ」

 「急いで探しましょう」

サフクラント兵①(王宮兵士)「ハッ!急ぎシェルージェ様を探してまいります!」


数時間後。


サフクラント兵①(王宮兵士)「申し訳ございません!皆で王宮中を探しましたが、シェルージェ様のお姿が見当たりません!」

メイド②「お部屋も一つ一つ、お庭も隅々まで探したのですが、どこにもいらっしゃいません!」

ラプシェイア「それじゃあまさか、王宮の外に出ちゃったっていうの!?」

サフクラント兵②(王宮兵士)「しかし門番をしていた兵たちの話では、シェルージェ様らしき人物を見かけていないと」

ラプシェイア「ならどうして王宮内にいないの!?あの娘は一体どこに行ったの!?」


オルブラング「まさか壁をよじ登って外に出たとでもいうのか…」

マーシャ「あなた、あのの運動能力はすごいですが、壁を登るなんて器用なことはとても…」

ラプシェイア「そういえばあの、この間自分から古文書館へ行きたいって言ったのよね…」

 「まさか、道具を使って壁を登る知識とかを本で知ったんじゃ…」

オルブラング「だとしたら、シェルージェは初めから家出を考えていたのか…くっ…」


マーシャ「王宮を出ていった可能性があるのなら、公都内も探してみましょう」

 「まだそう遠くへは行っていないと思うわ」

サフクラント兵③(王宮兵士)「ハッ!それでしたら急ぎ捜索隊を編成し、公都内を捜索いたします!」

ラプシェイア「お願い…シェルージェを見つけて…」


オルブラング「なんというバカな孫娘だ…ここまで心配をかけ…」

 「ゴホッ!」


マーシャ「あなた、どうしたのですか、急に」

オルブラング「すまん…突然体に痛みがきた…」

メイド③「急いで王宮医や回復魔法を使える人を呼んできます!」

執事(男性)「オルブラング様!ひとまず寝室へ!」

オルブラング「す、すまない…」


オルブラング(心の中で心配そうに)「(シェ、シェルージェ…)」


その頃シェルージェは公都内で、

シェルージェ(心の中で)「(美味しい!アルト・ドーロン産(※8)の葡萄で作ったぶどうジャムとパンの組み合わせは最高だよぉ!)」

心配する家族の気持ちも知らず、シェルージェは公都内で買い食いを楽しんでいた(※9)。

王宮を飛び出したシェルージェの運命や如何に!?

次回へ続く。


☆※1…鉱山の名前の由来は、スペインの世界遺産「ラス・メドゥラス」(文化遺産 1997年登録)より

☆※2…古文書館の名前の由来は、スペインの世界遺産「セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館」(文化遺産 1987年登録)より

☆※3…道の名前の由来は、スペインの世界遺産「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路:カミーノ・フランセスとスペイン北部の巡礼路群」(文化遺産 1993年登録)より

☆※4…道の名前の由来は、フランスの世界遺産「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」(文化遺産 1998年登録)より

☆※5…歴史地区の名前の由来は、メキシコの世界遺産「グアナフアト歴史地区と鉱山」(文化遺産 1988年登録)、教会の名前の由来は同歴史地区と鉱山の「バレンシアナ教会堂」より

※6…サンクレッセル連邦国の旧国名。

前身のサンクレッセル帝国は元々魔法大陸にあり、その後新大陸に本土を移した。

新大陸にて帝国から連邦国と国名を変えた。

※7…王宮の名前の由来は、スペインの世界遺産「アランフェスの文化的景観」(文化遺産 2001年登録)の「アランフェスの王宮」、庭園の名前の由来は同王宮の「パルテレ庭園」より

☆※8…産地の名前の由来は、ポルトガルの世界遺産「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」(文化遺産 2001年登録)より

※9…超勉強不足により0から9までしか数字を覚えられないシェルージェだが、店員にお札や小銭を見せることで買い物ができているようだ。

(☆:物語初登場の世界遺産)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ