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第5話 大草原セレンゲティアヘ…

5話目です。

今回は遠く離れたルスモーン島(※1)から魔法大陸ムーンリアス本土にあるルスカンティア王国へたどり着いた主人公クレードも登場します。

また五人のワトニカ出身者も新キャラとして登場します。

よろしくお願いします。


<主な登場人物の紹介>

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。

持っている剣の名は「魔蒼剣」、盾の名は「アイオライトの盾」。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身する。

(クリスターク・ブルーは鳥の翼で空を飛べ、鮫の背びれのような翼により高速で泳げる)

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

ルスモーン島という島に流れ着き、そこでヴェルトン博士というアイルクリート第一魔法大学の元名誉教授の世話になった。

◎オリンス・バルブランタ(男・28歳)

・緑色の髪をしているルスカンティア王国騎士団に所属する正団員である騎士。

緑色の多い鎧と兜で全身を覆っている。

馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。愛馬の名はベリル号。使う武器は槍と斧。

この物語における重要人物の一人。

☆○ウェンディ・京藤院きょうどういん(女・20歳)

・洋風な名前だがワトニカ将国(※2)キョウノミヤ藩出身で、公家の娘。

柔道家で五段の腕前。柔道の腕を磨くため、短大を卒業後ルスカンティアへとやって来た。

語頭に「押忍」、語尾に「~ッス」と付けて話すことが多い。

「いつでも柔道ができるように」ということで普段から柔道着姿。しかし彼女の柔道着は「十二単」をイメージしたような、色鮮やかで派手なデザインばかり。

母方の従兄に、ロゼル・月帝つきみかどという侍がいる。

日本の世界遺産「古都京都の文化財」(文化遺産 1994年登録)からイメージしたキャラ。京都府出身のイメージ。

誕生日は12月15日。

☆○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女性棋士で女流二段の腕前。「異国の人々にも将棋を知ってほしい」という理由などから旅に出た。

ウェンディとは道中の船で出会い意気投合し、彼女と共にルスカンティアまでやって来た。

妖力(※ワトニカでは魔力を「妖力」という)により、将棋の駒から人形や小さな龍などを作ることができ、それらを操り戦う。

容姿は袴姿で眼鏡っ娘。

日本の暫定リスト掲載物件「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」からイメージしたキャラ。

新潟県出身のイメージだが、ワトニカの首都ヤマトエドのイルマ町に住む親戚の娘が送ってくれる狭山茶が大好き。

誕生日は3月8日。

☆○ススキ(女・22歳)

・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。

ススキはくノ一としての名前で、彼女の本名は、「モエ・豊中島とよなかじま」。

可憐な女性であるが気が弱く内気な性格。声も小さく、人との会話は苦手なほう。そのため自分の言葉や意見などを上手く主張できず、周りに流されやすい。

気弱な自分を変えたいと思い、くノ一大学を卒業後旅に出た。しかし道中の船で出会ったウェンディとホヅミのノリに流されてしまい、そのままルスカンティアまで一緒に来てしまった。

アイヌ風の衣装に、蕗の葉を模した傘を差している。

アサヒ(女・22歳)とニゼコ(女・22歳)という大学時代からの友人たちがいる。

キャラクターとしては、北海道出身で、コロポックル(※アイヌの伝承に登場する小人)をイメージ。そのため彼女が愛用する忍刀の名は「コロポックルの忍刀」という。

誕生日は10月16日。

☆○千巌坊せんがんぼう(男・39歳)

・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。冷静で物静かな性格。回復魔法(※ただしワトニカでは魔法は「妖術」という)が使える。

千巌坊という名は僧名の「千巌」と坊主の「坊」より。なお彼の本名は、「コウイチロウ・熊野道くまのみち」。

体型は大柄で、服装は法衣の上に絡子(※前掛けのような袈裟の一種)。そして編笠を被り、大きな錫杖を持っている。

己の修行のためルスカンティアの聖堂や教会を巡礼している。

日本の世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」(文化遺産 2004年登録)からイメージしたキャラ。和歌山県出身のイメージ。

誕生日は7月7日。

☆○ラドランク・カドルック(男・54歳)

・ルスカンティア王国西側に常駐している兵士たちを束ねる騎士団の副団長(三人いる副騎士団長の一人)。騎士団長ラグラードの弟。

誕生日は3月21日。

○ラグラード・カドルック(男・56歳→57歳)

・ルスカンティア王国騎士団の団長。国王29世や大臣のリガーデンたちから厚く信頼されている。

誕生日は4月8日で、57歳になったばかり。

○チャドラン・ルスディーノ(男・23歳)

・国王29世と王妃パリンサの息子で、ルスカンティア王国の王子。

政治に関してはまだ未熟であるが、父の跡を継ぎ次期国王になろうという気持ちは強い。

ワトニカ将国の大名家の娘であるルリコと出会い彼女と親しくなる。

○ルリコ・奄美大野あまみおおの(女・22歳)

・ワトニカ将国サツマダイ藩出身の女侍で、大名家、奄美大野家の長女で跡取り娘。「瑠璃姫」とも呼ばれる。

将来大名家を継ぐため異国のことも学ぼうと、大学を卒業後、社会人留学によりルスカンティアにやって来た。

ルスカンティアのチャドラン王子と出会い彼と親しくなる。

普段は着物姿で、戦闘中は日本風の甲冑を身に着ける。武器は火縄銃と短筒。

日本の世界遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(自然遺産 2021年登録)からイメージしたキャラ。鹿児島県出身のイメージ。

○セルタノ・リクゼストン(男・33歳)

・オリンスと同様、ルスカンティア王国騎士団に所属する正団員。

立場的にはオリンスの先輩であるが、セルタノとオリンスの関係は親友同士といったところ。

背が高く、肌は褐色。ワイルドな雰囲気の男。

馬にまたがり弓騎兵として戦うことが多い。愛馬は白馬で名はグレビー号。

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

準団員としてルスカンティア王国騎士団に所属している。

服装はシーサーが描かれた肩衣に袴。愛用する刀の名は「グスク刀」。

日本の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(文化遺産 2000年登録)からイメージしたキャラ。沖縄県出身のイメージ。

☆○鵺洸丸やこうまる(男・30歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

鵺洸丸は忍びとしての名前で、彼の本名は、「タケル・南嵐みなみあらし」。

修行のため約一年前ワトニカから遠く離れたルスカンティアへとやって来た。ナハグニと同様、準団員としてルスカンティア王国騎士団に所属している。

服装は紺色の多い忍装束で、口元を隠している。髪は長髪。

父の座頭丸ざとうまるはオガサワラ藩忍者部隊の隊長である。鵺洸丸は次男で兄がいる。

日本の世界遺産「小笠原諸島」(自然遺産 2011年登録)からイメージしたキャラ。東京都小笠原村出身のイメージ。

誕生日は6月19日。

(☆:新キャラ)

オリンスやチャドラン王子たちが王都を出発して数日後、ルスカンティアの王都の港、ラムルスの港町地区(※3)に一隻の大型帆船が着港した。そして帆船から、ウェンディ(柔道家)、ホヅミ(女流棋士)、ススキ(新人くノ一)という三人のワトニカ人女性たちが下りてきて…


ウェンディ「押忍!ようやくルスカンティアに着いたッス!」

 「異国を巡るウチの修行の旅がいよいよ始まるッス!」


ススキ(心の中で)「(どうしよう…ウェンディさんとホヅミさんのノリについ流されてこんな遠い異国まで来ちゃったけど…)」


ウェンディ「押忍!それにしても港町に吹く海風は気持ちいいッスね!」

ホヅミ「青く澄んだ海にぃ、白ぉい砂浜」

 「景色もきれいですぅ」

ススキ(心の中で)「(ウェンディさんは常にハイテンションだし、ホヅミさんは何か個性的な喋り方をするし…)」

 「(私これからこの二人とうまくやっていけるか心配だわ…)」

 「(二人ともアサヒやニゼコとは違うタイプだし…)」


心の中で心配するススキとは裏腹に、ホヅミとウェンディは、

ホヅミ「それでウェンディさぁん、これからどうするんですかぁ?」

ウェンディ「押忍!船着き場の人の話だとこの港町から中心街まで行く馬車が出ているらしいっス!早速馬車に乗って王都の中心街まで向かうっス!」

 「中心街なら強そうな兵隊さんともお相手できそうッスし、稼げる仕事もあるかもしれねぇッス!」

ホヅミ「でもぉ、いきなりの出発だとホヅミが疲れるですよぉ」

 「せめてぇ、今日と明日はぁ、この港町にお泊りしましょうよぉ」

 「ススキさんだってぇ、今すぐ出発したらぁ疲れちゃいますよねぇ?」

ススキ「は、はい…」

 「わ、私も少しはお、お休みしたいです…」

ウェンディ「うーん…確かにウチのことばかりじゃなくてホヅミさんとススキさんのこともちゃんと考えないといけないッスね…」


ウェンディ「よし、じゃあ今日と明日はもうゆっくりするッス」

 「ウチも自分では感じてないだけで、船旅の疲れが残っているかもしれねぇッスからね」

ホヅミ「そうですよぉウェンディさぁん、とにかくまずはぁゆっくりしましょうよぉ」

 「それにぃ聞いた話だとぉ、この港町にはぁサンゴの石やマングローブの木材で造った独特の建物も多いみたいですからぁ、ホヅミもちょっと見てみたいですよぉ」

ススキ(心の中で)「(うっ…私はとてもそんな気分には…)」

ウェンディ「押忍!なら早速宿を探して観光ッス!」


ホヅミ「でもその前にまずは何かお茶を飲むですぅ」

ウェンディ「おお、イイッスね!景気づけッス!」

ホヅミ「ウェンディさぁん、香りはぁ?」

ウェンディ「押忍!宇治茶ッス!」

ホヅミ「そして味は狭山茶ですぅ」


すると二人のお茶の話を聞いたススキも思わず、

ススキ「あ、あの…」

ウェンディ「押忍!どうしたんすか、ススキさん?」

ススキ「エ、エゾにはとうもろこしのお茶もあるんですよ…」



そしてその頃ルスカンティアの東部ルスクル村(※4)では、ワトニカから来た僧(お坊さん)が傷ついた兵士を妖術(※ワトニカでは魔法のことを「妖術」という)で手当てしていた。

千巌坊「回復の小妖術 浅陽治光・一灯…」

妖術(魔法)により兵士が回復した。


ルスカンティア兵①(騎士)「すまねぇな、ワトニカの坊さん…」

 「村の段々畑に現れた魔獣を倒したのはいいんだが、戦いで傷ついちまったよ…」

千巌坊「構わぬ…そなたが無事で何よりだ…」


ルスカンティア兵①(騎士)「しかし何で遠い異国の坊さんがこんなルスカンティアなんかに…」

千巌坊「ラリベルス村(※5)の聖堂へ礼拝に行くのだ…坊主としての修行のためにな…」

ルスカンティア①(騎士)「ラリベルス村か…このルスクル村から行くにしても三週間以上はかかるな…」

千巌坊「どれだけの道のりであろうと私は歩き続ける…」

 「我が道…生きる道…進む道…」



そしてまたその頃王国西部のロベルス村(※6)にはクレードがいた。

クレードはルスモーン島(※ルスカンティア王国領)でクリスターク・ブルーに変身し、空を飛び海を泳ぎ、遠く離れたルスカンティア王国本土のロベルス村にたどり着いたのであった。


しかし一週間に及ぶ移動の連続で激しく体力を消耗し、ロベルス村にたどり着くや否や気を失い倒れてしまった。そしてクレードは村人たちに助けられ、体を休めることができ意識も戻った。


だが体力が回復したクレードはその後突然村に現れた不審人物ということで村の兵士たちから持ち物を全て取り上げられ、村の砦で事情聴取されていた。


ルスカンティア兵②(長身の男)「なんだと!記憶を失ってルスモーン島に流れ着き、そこで150歳の元名誉教授に出会い、変身できる特殊な宝石やそれに関する論文などを貰い、空を飛んだり海を泳いだりして島を出ただと!?そのうえ世界はメタルクロノスなる魔法武装組織に狙われているだと!?」

 「バカな!そんな話を信用しろとでもいうのか!」

クレード「信用しないのならそれでもいいさ。別にお前になんか何も期待していない」

ルスカンティア兵②(長身の男)「おい!なんだその口の聞き方は!」


クレード「俺にこれ以上用がないのなら、さっさとどけ」

 「島のロッジにあった鎧や方位磁石はあんたらに返したし、俺も博士から言われたことを守れたしな」

ルスカンティア兵②(長身の男)「貴様!いい加減にしろ!」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「待ってください!落ち着いてくださいよ!」


クレードと長身の兵士が話しているところにメガネの兵士が割り込んできた。

ルスカンティア兵②(長身の男)「おい!こんな奴を信用しろっていうのか!」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「そこまでは言ってませんよ!」

 「でも青い剣(魔蒼剣)といい大きな宝石といい、この人が持っていた物はすごい魔力を放つ物ばかりでした!」

 「何よりこのクレードさん自身が凄まじい魔力の持ち主です!」

 「これだけの人であれば、僕たちだけでは対応しかねます!ここはラドランク副騎士団長に来ていただきましょう!」

ルスカンティア兵②(長身の男)「まあ、お前がそこまで言うのなら…」


クレード(心の中で)「(こっちの背の高い兵士はあまり魔力を感じていないようだが、メガネの兵士のほうは魔力に敏感だな…)」

 「(魔力を感じる者と感じにくい者…これが博士のいう魔力に対する個人差ということだろうか…)」


クレード(心の中で)「(しかし俺自身の魔力も凄まじいとはな…)」

 「(クリスターク・ブルーに変身できるようになったことで、俺自身の魔力も増えたのかもしれないな…)」


そして長身の兵士は、

ルスカンティア兵②(長身の男)「おい、悪いが伝令を頼む」

 「ザンジバルスの町(※7)へ行って、ラドランク副騎士団長に伝えてくれ」

 「凄まじい魔力を持った男が凄まじい魔力を帯びた宝石などを持ってこの村にたどり着いたとな」

ルスカンティア兵④(騎士)「分かりました。伝令隊を編成し、早急に町へ向かいます」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「頼みますよ」

ルスカンティア兵②(長身の男)「しかし今から町へ行ったとしてもこの村へ副騎士団長が来るのは十日後くらいになりそうだな…」


ルスカンティア兵⑤(騎士)(心の中で)「(ザンジバルスの町か…ストーン・タウンと呼ばれるサンゴの石で作れた街並みが有名な所だな…)」

 「(だがあのきれいな町も遠い昔は奴隷市場などで栄えていたそうだが…)」


一方クレードは別のことを考えていた。

クレード(心の中で)「(ここの兵士たちはメタルクロノスのことを知らない…そうなると奴らはまだ宣戦布告をしていないのか?)」

 「(だがこの国では知られていないだけで、すでに他国を攻撃している可能性もある…)」

 「(いずれにせよもっと情報がほしいところだ…)」


ロベルス村から伝令隊がラドランク副騎士団長のいるザンジバルスの町へと向かった。当初はラドランクが村に来るまで十日程度かかると思われたが、ラドランクはその二日後430人ほどの兵士を率いてロベルス村に来た。

そして村の砦で…


ルスカンティア兵②(長身の男、少し緊張気味)「ふ、副騎士団長…随分とお早いお着きで…」

ラドランク「移動中に伝令隊と遭遇したからな。事情を聞いてこちらの砦まで足を運ばせてもらったよ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「先に村へ戻った伝令隊より話は伺っております」

 「何でもセレンゲディアの大草原(※8)で大きな戦いをするそうで…」

ラドランク「その通りだ。セレンゲディアには現在約2000匹の魔獣どもが巣くっているとされ、王都では討伐隊を編成し退治に向かわせたと聞いている」

ルスカンティア兵②(長身の男)「に、2000匹もですか…」


ラドランク「セレンゲディアは王都が管轄しているエリアで、討伐隊の数も約5000人と十分にいるが、我々王国西側の騎士団も援軍部隊として討伐隊に協力することにした」

ルスカンティア兵②(長身の男)「まあ、セレンゲディアもどちらかといえば王国の西寄りに位置していますからね…」


ラドランク「それに討伐隊にはチャドラン王子や兄のラグラード騎士団長も同行していると聞いている。尚更手を貸さないわけにはいかんだろ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「そうですね。チャドラン王子や騎士団長もいる以上動かないわけにも…」

ラドランク「そういうことだ。だからすまないがこの村からも戦いのために兵や物資、食糧や飲み水などをすぐ手配してほしいのだが…」

ルスカンティア兵②(長身の男)「わ、分かりました。早急に全てご用意いたしますので…」


ラドランク「では私はその間にクレードという者に会うことにしよう」

 「すまないがその彼をここまで呼んできてくれ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「はい。只今」


メガネの兵士に呼ばれてクレードがやって来た。そしてラドランク副騎士団長と対面し、

ラドランク「君がクレード君か、君のことは彼ら兵士から聞いているよ」

 「確かに話通り相当な魔力の持ち主のようだな」

クレード「記憶を失ってヴェルトン博士と出会い、その後ルスカンティアの本土まで来た。それが今の俺だ」


ラドランク「ルスカンティア国内の西側の守備を任されている私は多くの兵士や貴族、国民などと接しているが、クレード・ロインスタイト、つまり君という人物は知らないな…」

クレード「つまり俺がこの国の兵士や民である可能性は低いということか?一応確認のために聞くが」

ラドランク「村まで移動する最中、最新版の兵隊名簿を確認したよ。約45万人の兵士の名前が載ったぶ厚い名簿からな」

 「そして名簿によるとクレードという名前の兵士は我が国に40名ほどいるようだが、その中でロインスタイトという姓の者は一人も確認できなかった」

クレード「そうか。少なくとも俺はこの国の兵士ではないということか…」

ラドランク「名簿の記入漏れである可能性も否めないが、君がこの国の兵士であるという可能性は極めて低いと思える」

 「だが兵士でなかったとしても君がこの国の一般国民である可能性も一応あり得るかもしれない」

 「まあ国民全員の名簿については王都でなければ確認できないがな…」

クレード「王都か…そうなるとそこまで移動する必要があるわけか…」

 「それならやはり…」


ラドランク「君はこれからどうしたいのかね?この国の首都である王都まで確認に行く気か?」

クレード「俺は自分の記憶を取り戻したいし、博士に頼まれた論文も大学まで届けなきゃいけない。そのためにアイルクリート共和国まで行きたいと思っている」

 「仮にこの国の王都の名簿に俺の名前があったとしても、記憶はちゃんと取り戻したほうがいいと博士から言われたからな」

 「やはり王都で確かめるよりもアイルクリート共和国へ行き、魔法で確かな記憶を取り戻したほうがいいだろうな」


ラドランク「だが君は無一文でこのルスカンティアに来たのだろ?金のない状態でアイルクリートまで旅ができるのかね?」

クレード「金についてはしょうがない。博士も持っていなかったからな」

 「だから俺の剣の腕で稼ごうと思っている」

 「博士から前に聞いた話だが、ルスカンティアに限らず魔法大陸ムーンリアスでは、魔獣の死体を換金屋まで持っていけば金に換えてくれるのだろ?ならばそのやり方で金を稼ぐつもりだ」

ラドランク「君の行為は否定せんよ。実際国の騎士団員でもない非正規の戦士たちなどはそうやって生計を立てているからな」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「それだけ魔獣が多いんですよ。倒しても倒してもきりがないくらいに」

クレード「ならば町や村の外には金の元である魔獣どもがゴロゴロいるわけか。そいつは楽しみだ」


自分で稼ごうとするクレードだが、ラドランクはそんなクレードに、

ラドランク「クレード君、金が欲しいのなら私たちのとこで仕事をしてみないか?」

 「君もすでに聞いていると思うが、今我が国では大量の魔獣どもが出現しており、我々ルスカンティア王国騎士団はこの魔獣どもを討伐しなければならない」


ラドランク「クレード君、魔獣どもの討伐のため我々騎士団と同行してはくれないかね?報酬も後でちゃんと用意するぞ」

クレード「そうか。ならまずはあんたたちのところで仕事してみるか」

ラドランク「だがその前に君の剣の腕を確かめさせてもらおう」

 「すまないが兵士の訓練場を貸してくれ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「はい、どうぞお使いください」

ラドランク「クレード君、こちらに来てくれ」


砦内の訓練場に移動したクレード。一方のラドランクは複数の兵士を従えていた。

ラドランク「クレード君、戦いの準備は大丈夫かね?」

クレード「鎧と兜を貸してくれたことには感謝する」

ラドランク「君も剣士であるのならそれくらいは身に着けておかねばな」


クレード「それよりもあんたの後ろにいる五人が俺の相手か?」

ラドランク「そうだ。君にはこれから我が国の兵士たち五人を相手にしてもらう」

 「二人以上倒せば合格とし、前線で魔獣どもと戦うことを許そう」


クレード「一人、もしくは誰も倒せなかったら俺はどうなる?」

ラドランク「そのときは荷物の見張りや整理役、キャンプ時の食事を作る調理役の補助などだな。まあ前線で戦う仕事と比べれば報酬もだいぶ下がるが」


続いてラドランクは、

ラドランク「いずれにせよ君を我が騎士団の臨時団員として採用しよう」

 「ただし仕事内容や報酬はこの勝負の結果次第になるがな」

クレード「ならば金が多く貰えるほうを選ぶか」

 「よし、早速勝負といこうか」


クレードは訓練用の剣を構えた。そして、

ルスカンティア兵⑥(騎士)「いい度胸だな!まずは俺が相手になってやる!」

クレード「御託はいいから、さっさとかかってこい」

ルスカンティア兵⑥(騎士)「言ったな!後悔しても遅いぞ!」

 「ハアアッ!」

兵士は剣を振りかざしクレードに向かってきたが、クレードはあっさりと見切り攻撃をかわす。

ルスカンティア兵⑥(騎士)「な、何!?」

クレード「どうした?それでお終いか?」

そしてクレードは剣を振り兵士を倒した。

ルスカンティア兵⑥(騎士)「グワッ!」

クレードの一撃で兵士が倒れ、そして、

クレード「弱すぎる。話にならん」


クレードの強さを見たラドランクも驚き、

ラドランク(驚きながら)「なんと!あれほどの腕前とは…」

ルスカンティア兵⑦(騎士)「副騎士団長!次は俺がいきます!」

クレード「何でもいいから、早くしてくれ」

ルスカンティア兵⑦(騎士)「くっ!」


剣を構えその場から動かない兵士ではあったが、

クレード「なるほど、俺の攻撃を見切る気か」

 「だが、全くの無駄ということだ」

クレードは素速い動きで兵士に近寄り、

ルスカンティア兵⑦(騎士)「は、速…」

クレード「面倒だ、倒れてくれ」

クレードは剣を振りまた兵士を一人倒した。そして、

クレード「弱い、弱すぎて話にならん…この国の騎士団はザコの集まりのようだな」


ルスカンティア兵⑧(騎士)「き、貴様!」

ラドランク「待て!彼は合格だ。これ以上の戦いは無意味だ!」

ルスカンティア兵⑨(騎士)「ですが副騎士団長!」

ルスカンティア兵⑩(騎士)「このままでは我々ルスカンティア王国騎士団の立場がありません!」

クレード「だったら三人まとめてかかってこい。どのみち一瞬で終わるだろうがな」


ルスカンティア兵⑧(騎士)「貴様!もう許さんぞ!」

ルスカンティア兵⑨(騎士)「俺たちを甘く見るなよ!」

ルスカンティア兵⑩(騎士)「うおおっ!」

クレード「やれやれ」


三人の兵士たちが一度に攻めてきたが、クレードに敵うはずもなくあっさりと倒された。

ルスカンティア兵⑧(騎士)「ぐおっ…」

ルスカンティア兵⑨(騎士)「ぐはっ…」

ルスカンティア兵⑩(騎士)「うぐっ…」


クレード「この程度の腕で2億の民を守ろうとはな…聞いて呆れる…」

 「何人集まろうが所詮ザコはザコか」

ルスカンティア兵⑧(騎士)「うっ…」


床に倒れている兵士たちに対し、ラドランクは、

ラドランク「悪いが倒れた者たちを介抱してやってくれ」

ルスカンティア兵⑪(騎士)「は、はい。直ちに…」

ルスカンティア兵⑨(騎士)「くそ…あいつ、なんて強さだ…」

ルスカンティア兵⑪(騎士)「しっかりしろ。ちゃんと肩につかまるんだ…」

倒れた兵士たちは皆医務室へと運ばれた。


そしてラドランクはクレードに対し、

ラドランク「クレード君、君の実力は十分分かった…約束通り前線で戦ってもらおう…」

クレード「なんならあと100人くらい兵士を連れてきてもいいぞ。一人残らず蹴散らしてやるがな」

ラドランク「もういいだろう…君もこれ以上我が国の兵士たちを侮辱するような発言は止めたまえ…」

クレード「まあ、金には代えられないからな。もう大人しくするよ」


クレードの実力を見てラドランク副騎士団長は、

ラドランク「君の実力は予想以上だった…正直副騎士団長である私が君に挑んでも勝てはしないだろう…」

クレード「実力を認めてくれたことは素直に感謝する」

ラドランク「これから戦場へ向かう君に私からの餞別だ。その鎧と兜は君にあげよう」

クレード「そいつは助かる。さすがに防具がまともにないと、俺でもちょっと不安だからな」


ラドランク「それとルスモーン島のロッジから持ってきたリュックサックと方位磁石も君にあげよう」

クレード「いいのか?リュックも磁石もあんたらに返したのに?」

ラドランク「鎧と兜と同様それらも餞別だ。リュックにしても磁石にしても君がルスカンティアの本土まで来るのに役に立った物だというのなら、この先も持っていて損はないだろう」

クレード「続けて悪いな。物をまとめて入れられるリュックは役に立つし、方角が分かる磁石もありがたい」


ラドランク「ちなみに方位磁石はコンパスともいうぞ」

クレード「ならコンパスとも呼ぶか。何となくだが俺はそっちの響きのほうが好きだ」

ラドランク「まあ円を描く文房具もコンパスというがな」


クレードやラドランクは訓練場を出て別の部屋で、魔蒼剣、アイオライトの盾、グラン・サファイアや論文などの持ち物、リュックサックとコンパス(方位磁石)、そして臨時団員の雇用契約書を兵士から受け取った。


クレードは雇用契約書にサインし、騎士団の紋章を受け取った。そして、

ラドランク「君が持っていたグラン・サファイアなる青い宝石、グラン・ジェムストーンなる原石、大学に渡す論文や君宛てに博士が書いたというレポートなどを自分でリュックに詰めて出発の準備をしてくれ」

 「それと臨時団員として我々と同行する以上はその紋章を鎧に付けてくれ」


クレードは受け取った紋章を見て、

クレード「紋章に刻まれているこの動物は鹿か?」

ラドランク「確かに見た目は鹿のようだが、それはトムソンガゼルというウシ科の動物だ」

クレード「トムソンガゼル?」

ラドランク「そうだ。我が国の騎士団員に与えられる紋章は4種類あり、トムソンガゼルの紋章は臨時団員のものだ」


続いてラドランクは騎士団の雇用形態についてクレードに話をした。

ラドランク「騎士団の団員たちは雇用形態により、正団員・正団員見習い・準団員・臨時団員の4つに分かれている」

 「だからそれぞれの立場を区別するために紋章も4つあるわけだ」


ラドランク「せっかくだから、それらの雇用形態についても話をしよう」

 「我がルスカンティア王国騎士団に限らず、他国の騎士団もこの4つの雇用形態に分けているようだしな」

 「君もこれから各国を旅するというのなら騎士団の雇用形態というものを知っておいたほうがいいだろう」


ラドランクは説明を始め、

ラドランク「まずは正団員についてだ」

 「正団員とは無期雇用の団員、いわば正規の団員だ。無期雇用であるため定年まで仕事が保障されている。また準団員に比べ給与や各種手当、待遇なども充実しているが、その分仕事の量も多く、責任も重い」

 「それでいて誰もが正団員になれるわけではない」

 「正団員になるには最長2年間の訓練や研修の期間が課せられた正団員見習いとなり、そして修了試験に合格した者だけが正団員になれる」

 「だが正団員見習いになるのにも試験はある」

 「高校や大学を卒業した者たちが新卒として毎年何万人も受けにくるが、不合格となる者のほうがずっと多い。決して楽ではない」

ルスカンティア兵⑫(騎士)「机の上で教養などをずっと勉強してきた者たちがいきなり剣などの武器を扱うのは難しいからな」

クレード「まあそれもそうだろうな。俺も体が剣の扱いを覚えていなかったら今頃は非力な人間だっただろうな」


続いて、

ラドランク「次は準団員についてだ。こちらは正団員とは逆に有期雇用の団員だ。半年ごとの契約期間を定め、その中で仕事をしてもらっている」

クレード「ならその契約期間の半年が経つとどうなるんだ?」

ラドランク「能力があれば引き続き団員として雇用するし、場合によっては正団員見習いにもなれる。だが上司の団員などがその者に適性がないと判断すればそこで解雇もあり得る」

クレード「雇用の安定性で見れば正団員のほうが確実というわけか」


ラドランク「だが他国から修行に来る者などはあえて準団員で働く者も多い」

 「契約期間が終われば本人の意志で仕事を辞めることも可能だからな」

 「他国の騎士団員が別の国の準団員としてまず働き、その後自国の騎士団員で働く。そういう生き方をしている兵士や戦士たちもムーンリアスには多いのだ」


ルスカンティア兵⑫(騎士)「そういえば王都の騎士団の中にはワトニカから来た侍と忍者がおりましたね。確か侍の名はナハグニ、忍者の名は鵺洸丸と」

ラドランク「何でもその二人は準団員として働いているようだな。まあ私はそのワトニカ人の二人と会ったことはないが」

クレード(心の中で)「(ワトニカ人、つまりワトニカ将国の人間か…)」

 「(ヴェルトン博士は他国でワトニカ人と会う可能性もあると言っていたが、早速か)」


続いて、

ラドランク「最後は臨時団員についてだ」

クレード「今の俺の立場か」

ラドランク「臨時団員は主に短期のアルバイトで雇う団員たちだ」

 「一日だけの警備の仕事もあれば、二ヶ月程度雇用契約を結び仕事を手伝ってもらうこともある」

 「雇用期間が短いことやアルバイトという立場から、給与や報酬も4つの雇用形態の中では一番少ないし手当の額も多くはない」

 「だがその臨時団員でも採用のための面接等は行う。たとえ一日だけの雇用だとしてもだ」


続いて、

ラドランク「また他国の騎士団が援軍に来た場合、味方や同盟であることの証として臨時団員と同様にトムソンガゼルの紋章を付けてもらうこともある」


ラドランクや兵士からの話は続き、

ルスカンティア兵⑫(騎士)「臨時団員はトムソンガゼルの紋章を身に付けるが、正団員はライオンの紋章を、正団員見習いは子供のライオンの紋章を、準団員はサイの紋章を身に付けるのだ」


雇用に関する話が終わり、ラドランクが、

ラドランク「島で博士と出会ったこと、君がスーツとマスク姿の戦士に変身できるようになったこと、メタルクロノスという魔法武装組織の話なども正直すぐには信じられんが、少なくとも私は君の剣の腕や魔力を評価したいと思っている」

 「頼む…君のその力で私たちの国を助けてくれ…」

クレード「心配するな。鎧と兜、そしてリュックとコンパス(方位磁石)の分はしっかりと働いて返してやるよ」


ラドランク「しかし君はその飛行能力でモスモーン島から遠い海を越えこのロベルス村にまでやって来たのなら、また飛行能力を使いアイルクリートまで行けばいい気もするのだがね…」

クレード「長距離飛行は予想以上に疲れたからな」

 「短時間での飛行ならいいが、何日もかかるような長時間の飛行はもう遠慮したい」


砦を出たクレードとラドランクたち。

兵士や物資の手配も終わり、クレードやラドランクとその援軍部隊はセレンゲディアに向けて出発することに。

そして砦の兵士たちに別れを告げ、

ルスカンティア兵②(長身の男)「あんた、口は悪いが剣の腕前は相当なものだ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「魔獣たちとの戦いでは戦力がいくらあっても困ることはありません」

 「クレードさん、僕たちの国のためにお願いします」

クレード「あんたら兵士には飯と宿の恩があるからな。どんな形であれその恩を返してやるよ」


ラドランク「兵や物資の手配に心から感謝する。それでは我々はこれよりセレンゲディアに向けて出発する」

ルスカンティア兵②(長身の男)「我々はここで騎士団の勝利を祈っております」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「村の警備は任せてください」

ラドランク「そうか。では失礼するぞ」

クレード「じゃあな」

出発するクレードたち。


その後ろ姿を見て砦の兵士たちは、

ルスカンティア兵②(長身の男)「クレード・ロインスタイト…」

 「口の悪い奴だったが、根は真面目な奴だと思うぞ」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)「ええ、何だかんだ言ってもちゃんと人を助けてくれる人だと僕も思いましたよ」


クレードやラドランクたちを見送ると兵士たちは話題を変え、

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)(小声)「(クレードさんが言っていたメタルクロノスという組織ですが…)」

ルスカンティア兵②(長身の男)(小声)「(ああ、俺たち兵士の口から公にしないようラドランク副騎士団長から言われたな…)」

ルスカンティア兵③(小柄なメガネの男)(小声)「(公表するかどうかを決めるのは国王様ということですね)」

ルスカンティア兵②(長身の男)(小声)「(まあそんな厄介な組織なんて存在してほしいとは思わんがな…)」



ロベルス村を移動するクレードたち。移動中村の浜辺で、

女の子「ペンギンさん、いっぱいお魚を食べてね」

男の子「漁師のお父さんが今朝いっぱい捕ってきてくれたんだよ!」

ケープペンギン「ハッ!ハー」(鳴き声)


ケープペンギンたちに魚をあげる子供たちを見てクレードたちは、

クレード「あれがペンギンという生き物か。記憶をなくしてから初めて見るな」

ラドランク「ケープペンギン…魔法大陸ムーンリアスに生息する唯一のペンギンだ…」

 「本来は野生動物なのだが、この村ではペンギンをまるでペットのように可愛がっているよ」


クレード「ちなみにペンギンには他の種類もいるのか?」

ラドランク「南極にはコウテイペンギンとアデリーペンギンという種類もいる。そしてこの2種類のペンギンは王都の港町地区の動物園でも飼育されている」

クレード「南極…最果ての極寒の地か…だがそのペンギンたちのように住んでいる生き物もいるということか…」

ラドランク「その極寒の地である南極のペンギンをこの暖かい国で飼育ができるのも魔法のおかげだ」

 「魔法使いが魔法で氷を作ったり、魔法で冷気を出したりすることで飼育ができている」

クレード「大したもんだよ。魔法の力は万能だな」

ラドランク「万能か…果たして魔法がそこまでのものなのかははっきりと言えんがな…」


続いてラドランクは子供たちを見たためか話題を変え、

ラドランク「クレード、私は子供が大切だと思っているよ」

クレード「そりゃあ俺たち以上に未来があるからな」

ラドランク「そうだ。その未来こそが大事なんだ」


ラドランク「君はよく知らないかもしれないが、このロベルス村には昔感染の可能性が高い病人や国内の政治に反対する者などを強制的に収容する施設があった」

 「病人や政治犯を容赦なく収監する…そのため当時はこの村を「監獄村」と呼ぶ者も多くいた」

クレード「そうなるとまるで負の遺産だな。この村は」

ラドランク「今となってはもう遠い昔の話だ。だがその過去の影響からか今でもこの村を良くない目で見る人間たちは多少なりともいる」

クレード「だから未来ある子供たちに託すわけか。この村の悪いイメージを完全に払拭してもらうために」

ラドランク「その通りだ。察しがいいな」

 「過去の過ちを学び、それらを繰り返さない。私がこの村の子供たちに期待していることだ」

クレード「ならば守らなければならないな。あの子たちやあのケープペンギンたちも」


子供のことを考えるクレード。しかし一方で思うこともあった。

クレード(心の中で)「(子供か…メタルクロノスにもいるんだよな、子供が二人…)」

 「(たとえ悪しき組織にいたとしても、戦いたくないものだ…子供とはな…)」



ロベルス村を出て移動を続けるクレードやラドランクとその援軍部隊約450人。数日後、彼らは高原地帯にたどり着いた。

ラドランク「この高原を越えれば、その先にセレンゲディアの大草原がある」

 「兵の諸君、もうひと踏ん張り頼むぞ」

ルスカンティア兵⑬(騎士)(笑いながら)「副騎士団長、移動だけで疲れているようではこの先戦えませんって」


クレード(心の中で)「(セレンゲティアの大草原、博士から国の名所として教えてもらった場所がよりによって戦場になってしまうとはな…)」


その時援軍部隊は別部隊の兵士たちと遭遇した。

ルスカンティア兵⑭(騎士・別部隊)「き、騎士団の部隊がこんな所に!?」

ルスカンティア兵⑮(魔法使い・別部隊)「ラドランク副騎士団長もいらっしゃる!これは「地獄に仏」かもしれないぞ!」

ルスカンティア兵⑯(騎士)「何だ、お前たちは!?この辺りの兵たちか!?」

ルスカンティア兵⑰(女性聖侶※9・別部隊)「はい!私たちはルスジンバブエやルスカミの遺跡(※10)で魔獣たちと戦っていたのですが、その魔獣たちがあまりに多くて私たちだけでは対処ができず助けを求めにきたのです!」

 「お願いします!ラドランク副騎士団長、別部隊の皆様!遺跡で戦っている私たちの仲間に力を貸してください!」


ルスカンティア兵⑯(騎士)「バカな!我々はセレンゲティアに急いでいるのだぞ!」

ルスカンティア兵⑱(騎士)「今セレンゲティアには約2000匹の魔獣どもがいて、王都から討伐隊が出たのだ!」

ルスカンティア兵⑲(魔法使い)「我々は援軍部隊として討伐隊と合流せねばならん!」

ルスカンティア兵⑳(騎士)「討伐隊にはチャドラン王子やラグラード騎士団長も同行しているのだぞ!優先順位というものを弁えてくれ!」

ルスカンティア兵㉑(騎士)「そちらだけで何とか対処致せ!」

ルスカンティア兵⑰(女性聖侶・別部隊)「そ、そんな…」


気を落とす女性兵士。しかしラドランク副騎士団長は声をかけ、

ラドランク「分かった。早急にそちらに兵を送ろう」

ルスカンティア兵⑯(騎士)「ふ、副騎士団長!?しかし…」

ラドランク「この高原地帯はまだ我々西側の騎士団が管轄するエリアだ。この辺りに駐在している兵の不足を招いたのは我々の責任でもあるからな」

ルスカンティア兵⑱(騎士)「で、ですが今は…」

ラドランク「遺跡の魔獣どもを放っておけば周辺の集落にも必ず被害は出る。なんとしてもそれは防がねばならん」

ルスカンティア兵⑲(魔法使い)「分かりました…我々兵は副騎士団長に従います…」

ラドランク「犠牲者が出るかもしれない状況であれば、王子や騎士団長の兄とて理解してくれるはずだ」

ルスカンティア兵⑰(女性聖侶・別部隊)「副騎士団長…ありがとうございます…」


ラドランク「だが450人ほどいる援軍部隊全員で遺跡に向かうわけにもいかない。だから部隊の中から100人ほど兵を送ろう」

ルスカンティア兵⑳(騎士)「しかし副騎士団長、ここから遺跡まで行くとなると討伐隊との合流に間に合いません。移動に数日はかかるため、12日中に合流するのは無理でございます」

ラドランク「遺跡に向かう者たちはセレンゲティアの戦いに参加しなくてよい。その代わり向こうでしっかりと戦ってくれ」

ルスカンティア兵⑳(騎士)「ハッ!それでしたらお任せください!」


ラドランク「遺跡に向かう部隊の人員を考えている時間はない。戦う意志のある者から順に向かってくれ」

ルスカンティア兵㉑(騎士)「ハッ!」


兵たちが動き出す中でクレードも、

クレード「ならば俺も遺跡に向かおう」

ラドランク「クレード、行ってくれるのか?」

クレード「ロベルス村に俺が来たことで、副騎士団長のあんたに手間をかけさせ時間も取らせた」

 「そう考えると俺のせいで時間に余裕がなくなったのかもしれない。だからその詫びはしなければならないと思っている。どんな形であれな」

ラドランク「物資や食糧などの補給のためにどのみちロベルス村の砦には立ち寄るつもりだった。君が村にいたかどうかはそこまで関係ない」


ルスカンティア兵⑬(騎士)(心の中で)「(まあ厳密に言えば、村に寄って補給を受けなければならないほど物資には困ってなかったんだがな…)」

 「(副騎士団長も伝令隊の話を聞いてクレードに興味を持ったのか、直接会うために村の砦まで行ったことだしな…)」

ルスカンティア兵㉒(騎士)(心の中で)「(今の副騎士団長の発言はクレードに対して気を遣ったのだろうな)」


クレード「まあとにかく俺にも一仕事させてくれ」

ルスカンティア兵⑱(騎士)「だがクレード、俺としてはお前にはセレンゲティアで戦ってほしかったぞ」

 「お前は口の悪い男だが、剣の腕は確かだ」

 「お前がセレンゲティアの戦いに来てくれれば百人力だったんだが…」

クレード「ならば遺跡の魔獣どもを倒したらすぐそちらへ向かおう」

ルスカンティア兵㉓(騎士)「おい、聞いてなかったのか?」

 「遺跡に向かうとなるとセレンゲティアの戦いには間に合わんぞ。日程的に」

クレード「心配するな。俺はクリスターク・ブルーに変身すれば高速で空を飛べる。その能力を使うまでだ」


ラドランク「確かグラン・サファイアという青い宝石によりマスクとスーツ姿の戦士に変身できるんだったな…」

クレード「ああ、その特殊能力を使って遺跡からセレンゲティアまで行ってやるさ」

ラドランク「ロベルス村では長距離飛行はもう遠慮したいと言ってなかったか?」

クレード「こうなれば話は別だ」


兵士たちの呼び声が聞こえた。

ルスカンティア兵⑰(女性聖侶・別部隊)「遺跡への道はこちらでございます!」

ルスカンティア兵㉑(騎士)「急を要する!遺跡に向かう者たちはもう全員移動を開始してくれ!」

ラドランク「行ってくれ、クレード。私は君が遺跡の魔獣どもを倒し、セレンゲティアに来ると信じているぞ」

クレード「あんたたちも無事でいてくれよな」

ルスカンティア兵⑬(騎士)「頼んだぞ、クレード」

クレードは他の部隊と共にルスジンバブエやルスカミの遺跡へと向かった。



そしてケルビニアン暦2050K年4月12日。

オリンスやチャドラン王子たち討伐隊はセレンゲティアの大草原に到着し、先にたどり着いていた遠征部隊ともキャンプ地で合流した。


そして遠征部隊にいた忍者の鵺洸丸がラグラード騎士団長に、

鵺洸丸「ラグラード殿、これがそれがしが作成したセレンゲティアの見取り図にござりまする」

ラグラード「相変わらず仕事が早いな。助かるよ鵺洸丸」

鵺洸丸「見取り図には敵である物の怪たち(※ワトニカでは魔獣のことを「物の怪」という)がどこにいるかを書き申した」

ラグラード「この図を見る限りでは魔獣どもは草原中の至る所にいるわけか…」

鵺洸丸「どこかに偏って群れているわけではございませぬ。草原は今や物の怪だらけ」


鵺洸丸とラグラードが話をしているとルリコとチャドラン王子たちがやって来て、

チャドラン「鵺洸丸殿、余もこちらへ参りました」

ルリコ「あなたが鵺洸丸さんですね」

鵺洸丸「チャドラン王子!?それにそちらの女性はワトニカの方か!?」

ルリコ「私は、ルリコ・奄美大野、サツマダイ藩の現大名、トラツグ・奄美大野の娘にございます」

鵺洸丸「な、なんと!?サツマダイの姫君がこのようなお所に!?」


ルリコと鵺洸丸は二人になり、ルリコは自分が遠いルスカンティアまで来たこと、セレンゲティアの戦いに参加することなどを鵺洸丸に話した。

鵺洸丸「左様でござりましたか…」

ルリコ「この国に来て、オリンスさん、セルタノさん、ラグラード様…そしてチャドラン王子、いろいろな方々にお世話になっております」

鵺洸丸(心の中で)「(ムッ…あの男の名前が出ておらぬ…)」


鵺洸丸はルリコに聞いた。

鵺洸丸「る、瑠璃姫様…ナワグニ殿にはお会いなされましたか…」

ルリコ「ああ、あのリュウキュウの人ですか…」

鵺洸丸「あ、あの者はどのように感じておられますか?」

ルリコ「ただ気持ち悪い人です。下心が見え見えでデリカシーもないので、あまり関りたいとは思いませんが…」

鵺洸丸「ま、まあ瑠璃姫様、ナハグニ殿が女子おなごにだらしいことはそれがしもよく存じておりまする…」

 「ですが、今いるルスカンティアは我らが祖国ワトニカから遠く離れた異国の地、どうかこのような場所で出会ったワトニカの同胞ゆえ、あの者のことも多少は大目に見ていただきたく…」

ルリコ「いや、それは全く関係ないと思いますが」

 「どこだろうと誰だろうと、気持ち悪い人は気持ち悪いんですよ」

鵺洸丸「う、うーむ…」

ルリコ「では鵺洸丸さん、私はチャドラン王子のとこへ戻りますので、また後ほど」


鵺洸丸(心の中で)「(女子おなごの心が読めぬとは…それがしもまだまだ未熟ということか…)」

 「(それにしても瑠璃姫、チャドラン王子のことがお気に召すか…)」


ルリコと一旦別れ、鵺洸丸はオリンス・セルタノ・ナワグニと合流した。

オリンス「鵺洸丸、良かった、無事だったんだね」

セルタノ「早めに到着して草原の魔獣どもを調べるとはやるじゃねぇか。さすがは忍者ってことか」

鵺洸丸「オリンス殿、セルタノ殿、そなたらも無事で何よりだ」

ナワグニ(寂しそうに)「鵺洸丸殿…拙者、ルリコ殿からは大人しく身を引くでござる…」

セルタノ「だからルリコはお前なんか全く眼中にねえって」

鵺洸丸「ナハグニ殿、それがしその件はよく分かり申しておる」


そしてその日の夜、オリンスたち討伐隊は部隊を指揮するラグラード騎士団長から戦いに関する説明を聞き、そしてラグラードは、

ラグラード「小規模でも大規模でも戦いの前に必ず言っていることだが、何度でも聴いてほしい」

 「「国や民を守るためならば兵士の命など惜しくはない」、そんな考え方はもはや古い時代の話だ」

 「国や民は確かに大事だ。だが自分の命もそれらと同じくらい大切にしてほしい。たとえそれが兵士という立場であってもだ」

 「諸君らにはこれから魔獣どもと戦ってもらう。だが何としても全員が生き残ってくれ」

 「くれぐれも無理はしないでほしい。私からは以上だ」


続いてラグラードはチャドラン王子に声をかけ、

ラグラード「チャドラン王子、どうか王子も兵たちにお声をかけてください」

チャドラン「分かりました…余も失礼いたします」


チャドラン王子が兵たちの前へ出て話をした。

チャドラン「騎士団の皆さん、今回の戦いに参加してくれたことを王子として心より感謝いたします」

 「余もラグラード殿と同じ想いでございます…どうか決して無理はなさらずに…」


チャドラン王子に兵士たちが声をかけた。

ルスカンティア兵㉔(騎士)「お任せください、王子様!」

ルスカンティア兵㉕(騎士)「我々騎士団は簡単には負けませぬ!」

ルスカンティア兵㉖(魔法使い)「皆で生き残り、再び王子様に顔をお見せいたしましょう」


そして話を聞いているルリコも、

ルリコ(心の中で)「(チャドラン王子…このルリコ・奄美大野、力の限り王子をお守りいたします…)」


ラグラード騎士団長とチャドラン王子の話も終わり、兵たちは明日の戦いに備え皆休んでいた。

そして、オリンス・セルタノ・ナハグニ・鵺洸丸の四人は焚き火の周りで…


オリンス「セルタノたちは第一部隊で先陣を切るんだね」

セルタノ「ああ、機動力と遠距離攻撃を兼ね備えた弓騎兵の役目だからな」


オリンス「それで次の第二部隊にアーチャーや魔法使い、遠距離攻撃ができる部隊が続き…」


鵺洸丸「そして次の第三部隊にはナハグニ殿やそれがし、馬に乗らぬ兵たちが出陣するわけか」

オリンス「うん。弓や魔法による遠距離攻撃で先にダメージを与え、それから剣士や槍兵たちで倒すんだ」


ナハグニ「それで最後の第四部隊として、オリンス殿を始めとした騎兵部隊で残った物の怪どのを倒すと…」

オリンス「その通り。馬に乗って戦う俺たち騎兵には機動力がある」

 「後から向かっても馬に乗らない剣士や槍兵たちにすぐ追いつけるからね」

ナハグニ「移動により生じる差を出陣するタイミングで調整するわけでござるな」


鵺洸丸「まあいずれにせよ全体の作戦としては、先に遠距離攻撃でダメージを与え、その後弱ったところを近接攻撃で倒すということ」

ナハグニ「遠距離攻撃と近接攻撃の組み合わせによる効率的な戦い方と思うでござる」

セルタノ「この戦法はルスカンティアのみならず他国でも広く取り入れられていると聞く」


ナハグニ「しかしそうなると遠距離攻撃をする第二部隊にルリコ殿が加わってほしいところでござるなあ」

オリンス「確かに弓や魔法の攻撃にルリコの火縄銃も加われば心強いかもね」

鵺洸丸「瑠璃姫の銃の腕は確かか?」

セルタノ「ああ、大したもんだった」

オリンス「セレンゲティアに向かう途中魔獣たちとも遭遇して、討伐隊の先頭辺りにいたルリコや王子を守る親衛隊たちも応戦したんだ」

ナハグニ「あの時のルリコ殿の戦いは実に見事でござった」

 「物の怪どのに弾を外すことなく当て、一人で何匹も退治したのでござるよ」

鵺洸丸「そうか、ならば前線に立たぬのは惜しいところ…」


セルタノ「まあルリコは親衛隊の手伝いをすることになったしな」

オリンス「うん、王子を守るのも大切な役目だよ」

 「それにルリコは、きっとチャドラン王子のことが…」

ナハグニ(慌てながら)「ま、待つでござる!は、話はもう終わりにするでござるよ!」


セルタノ「まあ俺も少し眠いことだし、そろそろ休むか…」

鵺洸丸「それがしも明日のいくさに備えよう…」

オリンス「分かったよ。みんなお休み」

オリンスたちは就寝した。


そして夜がさらに更けた頃、国の西側からやって来たラドランクたち援軍部隊が討伐隊と合流した。そしてラドランクは兄であるラグラード騎士団長と話し、

ラグラード(兄)「ラドランク、援軍に感謝するぞ」

ラドランク(弟)「兄者やチャドラン王子も動く以上、放っておくわけにもいかんだろ」


そしてラドランクは兄ラグラードにクレードのことを話した。

ラグラード(兄)「クレード・ロインスタイト…そのような剣士がこの国を訪れるとは…」

ラドランク(弟)「口の悪い男だが、剣はかなりの腕だ。どうか期待してほしい」


ラグラード(兄)「しかしルスジンバブエやルスカミの遺跡からこのセレンゲティアに向かうようだが、本当に明日の戦いに間に合うのか?普通に考えれば距離的に間に合うものではないが…」

ラドランク(弟)「能力を使い空を飛んで来ると言っていたよ」

ラグラード(兄)「空を飛ぶか…魔法国アイルクリートでも最近はあまり聞かない話だな」

ラドランク(弟)「まあ我々の常識では考えつかないことをやってくれるさ、あの男ならば…」


そして夜が明け、日が昇り、討伐隊が動き出した。

ラグラード騎士団長の声が響き渡る。

ラグラード「ルスカンティア王国騎士団、出陣!これよりセレンゲティアの魔獣どもを一掃する!」

そしてオリンスは愛馬ベリル号にまたがり、心の中で、

オリンス(心の中で)「(俺たちは負けない…今回の戦いも絶対生き延びるんだ!)」

・いよいよ始まる大草原セレンゲティアでの戦い。果たしてオリンスたちは無事勝利できるのか?そしてクレードは現れるのか?

次回へ続く。


※1…島の由来は、モーリシャスの世界遺産「ル・モーンの文化的景観」(文化遺産 2008年登録)より

※2…将国の名前の由来は、和風の「和」と源氏物語の「いづれの御時にか」より

☆※3…港町地区の名前の由来は、ケニアの世界遺産「ラム旧市街地」(文化遺産 2001年登録)より

☆※4…村の名前の由来は、ナイジェリアの世界遺産「スクルの文化的景観」(文化遺産 1999年登録)より

☆※5…村の名前の由来は、エチオピアの世界遺産「ラリベラの岩窟教会群」(文化遺産 1978年登録)より

※6…村の名前の由来は、南アフリカの世界遺産「ロベン島」(文化遺産 1999年登録)より

☆※7…町の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「ザンジバル島のストーン・タウン」(文化遺産 2000年登録)より

※8…大草原の名前の由来は、タンザニアの世界遺産「セレンゲティ国立公園」(自然遺産 1981年登録)より

※9…聖侶とは回復魔法やバリア魔法などの使い手。

☆※10…遺跡の名前の由来は、ジンバブエの世界遺産「国史跡グレート・ジンバブエ遺跡」(文化遺産 1986年登録)と、同じくジンバブエの世界遺産「国史跡カミ遺跡群」(文化遺産 1986年登録)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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