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第28話 マサーガルンジアの港町、熱血レッド&静寂ライム

28話目です。

この先仲間になるであろうクリスタルナンバーズの仲間たちも登場します。この時点でクレードたちと合流するわけではありませんが。


<主な登場人物の紹介>


<クレード一行 計11人>

(宝石の輝士団クリスタルナンバーズ 3人)

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

クリスタルナンバーズNo.1。

◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)

・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。愛馬の名は「ベリル号」。

魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。

ナプトレーマ王国(※1)ではシェルージェと二人っきりになり、彼女と楽しいひと時を過ごした。

本来は真面目で大人しい人物ではあるが、シェルージェに対してメロメロになってしまう。

シェルージェのためならば過激な行動をしたり、無茶苦茶な言い訳をしたりする彼に対し、仲間たちの多くは呆れている。

クリスタルナンバーズNo.2。

◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)

・白い髪をしている新人音楽家で、ムーンマーメイド交響楽団の非常勤楽団員。

魔法の宝石グラン・ホワイトパールにより、クリスターク・ホワイトに変身できる。

クリスタルナンバーズNo.3。

(ナンバーズの協力者たち 8人)

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

鵺洸丸やこうまる(男・31歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

○ウェンディ・京藤院きょうどういん(女・20歳)

・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。公家の娘で柔道家。

○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。

○ススキ(女・22歳)

・ワトニカ将国エゾ藩出身のくノ一。

千巌坊せんがんぼう(男・39歳)

・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。

○リンカ・白鳥森はくちょうもり(女・22歳)

・ワトニカ将国サンナイ藩出身。津軽三味線を弾く新人音楽家。

アンシーとは以前からの友人。

沖津灘おきつなだ(男・32歳)

・ワトニカ将国ヤハタ藩出身。ワトニカ大相撲の現役力士で、大関経験者。遠賀川部屋所属。

豪快で細かいことは気にしない性格。


<その他人物>

◎シェルージェ・クランペリノ(女・18歳)

・黄色い髪(※長髪)をしている女盗賊。

魔法の宝石グラン・シトリンにより、クリスターク・イエローに変身できる。

実は貴族の国サフクラント公国の前大公の孫娘だが、貴族の生活が嫌になり家出した。元盗賊の頭ロイズデンたちの力を借り、南のナプトレーマ王国にやって来た。

一時的にオリンスと二人っきりになり、彼と楽しいひと時を過ごした。

変身できるようになったことで、クレードやアンシーたちは「仲間になってほしい」とシェルージェに頼むが、彼女はあっさり「O.K.」の返事をした。しかし公爵家の孫娘ということで、シェルージェの同行に対してはクレードたちも慎重になっている。

クレードたちはシェルージェを旅に同行させるかどうかについて、彼女の家族たちと話し合いをしたいと思っている。

この物語における重要人物の一人。No.4。

○レモン号(メス・4歳)

・シェルージェがオリンスと二人だけで行動している時、購入したメスのラクダ。

まだ買ったばかりだが、シェルージェはレモン号のことをとても気に入っている。

クリスターク・イエロー(シェルージェ)のジュエル・アビリティにより、イエローのブーツと融合もできる。

☆◎エリック・龍煌璃ロンフアンリー(男・31歳)

・エリックという洋風な名前だが、中国風の国、バンリ帝国(※2)出身。

赤い髪をした武闘家(拳法家)で、拳法の流派はバンリ国内で広く普及している「紅王流こうおうりゅう」で、様々な技が使える。

赤いカンフー服の上に金属製の肩当て・籠手・ブーツ等を身に着けている。長髪だが、広がらないようにまとめている。

身長184㎝。

現在の拳法の師は麒麟老師で、老師の3番弟子。

誕生日は1月5日。

この物語における重要人物の一人。No.9。レッド。

☆◎ニトイ・W・クロンティーク(女・18歳)

・異文明国家サンクレッセル連邦国の陸軍軍人で、今年(2050K年)4月に入隊したばかりの新兵。

黄緑色の髪をしており、髪型はツインテール。

服装は、上は黄緑色の長袖の軍服、下は黄緑色のミニスカート。ツインテールの髪型の上にヘルメットを被っている。

身長148㎝で、体格は小柄。胸はCカップ。

幼い頃とある大事件に巻き込まれ、両親や祖父母を一度に失ってしまう。

その事件の影響から、魂が抜けたように物静かな性格で、ハイライトのない暗い瞳をしている。

その性格故、自分からはほとんど喋らず、コミュニケーションもまともに取れないが、知力・体力ともに逸材。

彼女の名前の「W」はミドルネームで、サンクレッセル人には皆同じようにミドルネームがある。

誕生日は8月25日。

この物語における重要人物の一人で、クリスタルナンバーズ、最後のメンバー。No.15。ライム。

○ネフェルーグ・ラバルペリド(男・52歳)

・ナプトレーマ王国騎士団団長。

「ラーレのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、ファラオナイト(※)。

(※ナプトレーマの騎士団員は、男性の場合「ファラオナイト」、女性の場合「イシスナイト」と呼ばれる)

○イザベリス・デラムジャール(女・23歳)

・ナプトレーマ王国騎士団の女兵士。

「ネクベトのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、イシスナイト。

ナプトレーマ王国の兵士ではあるが、王国の北にあるサフクラント公国の出身。

ナプトレーマ王国内でサフクラントの前大公の孫娘シェルージェを見かけた人物。

(☆:新キャラ)


<名前のみの登場>

△イルビーツ・サウロザーン(男・35歳)

・ダールファン王国東部の騎士団を束ねる副騎士団長(三人いる副騎士団長の一人)。

行方不明になっていたシェルージェの捜索に協力するため、クレードや兵士たちと共にダールファン王国の東の国ナプトレーマ王国へとやって来た。

△タオツェイ・ネイザンロドン(男・30歳)

・バンリ帝国ランフォン特別区出身の拳法家。

麒麟老師の4番弟子で、エリックの弟弟子おとうとでし

ケルビニアン暦2050K年6月25日。

王やイルビーツたちとのあいさつを済ませ、アブジンベルノン神殿(※3)を後にしたクレードやネフェルーグ騎士団長率いる遠征部隊たちは、王都の港町地区へ向け移動していた。


その道中シェルージェはクレードたちの駱駝車(※4)へ行き、鵺洸丸とススキに顔を合わせ、自己紹介をした。そして、

シェルージェ「うーん、忍者にくノ一かあ…」

アンシー「プリンセス、二人のことが気になるのですか?」

シェルージェ「そりゃあそうだよ。だっておかしらでさえ、「悔しいが忍者は盗賊より優れている」って認めていたくらいだもん」

ススキ(心の中で)「(確かに「盗賊にできて忍者やくノ一にできないこと」なんて何もないと思うけど、それはシェルージェ様の前で言えることではないわ…)」


シェルージェ「シェルージェも女忍者「くノ一」になれば、もっとみんなの役に立てるかもしれないけど、くノ一って簡単にはなれないんでしょ?」

ススキ「そうですねぇ…私もくノ一高寺小屋(※5)やくノ一大学を卒業してやっと「くノ一」と名乗れるほどの人間になりましたし…」

鵺洸丸「それがしは忍者高寺小屋(※5)や忍者大学へ入る前から忍びとして修行しておりました…」

 「尤もそれがしは代々忍びの家系。ススキ殿のご家庭とは立場も異なりますが…」

シェルージェ「そっかあ、何か学校に行かないと無理っぽいなあ…」

鵺洸丸「寺小屋へ行かず独自に修行を積んで「忍び」と呼ばれるほどに成長した者も中にはおりますが、そういった例はかなり稀です…」

 「やはり忍びになるには、専門の寺小屋や大学で学ぶのが一番かと…」

シェルージェ「ちぇ、簡単にはいかないなあ」


シェルージェ「でもシェルージェ、忍者のことを本で知ったから、それが役に立ったんだよ」

鵺洸丸「ほお、姫様が忍びに関する書物を…」

シェルージェ「忍者って壁とかをよじ登るのに、「鉤縄」って道具を使うんでしょ」

 「シェルージェも鉤縄を知って、王宮の中にフックの付いたロープがあるか探したんだ」

 「それを使って王宮の壁を越えて、家出しようと思ってね」

ススキ「鉤縄をヒントにしたのですか?」

シェルージェ「うん。道具置き場からフックの付いたロープを見つけて、壁に引っ掛けて登って、それで家出に成功したんだよ」

ススキ「そんな方法で家(王宮)を出てしまったんですか…」

鵺洸丸「ロープで壁を登るとは…」

 「案外姫様には忍びの素質があるかもしれませぬ…」

シェルージェ「でも簡単にはなれないんでしょ。だったら別にいいよ」


オリンス「シェルージェちゃん!たとえ「くノ一」になれなかったとしても俺は君が好きだよ!」

 「シェルージェちゃんには代わりに盗賊としての腕があるんだし、それで頑張っていこうよ!」

シェルージェ「盗賊のシェルージェちゃんかあ…」

 「まあ捕まらないんなら、肩書きは「盗賊」でも別にいいかな」

オリンス「うん!素直でありのままのシェルージェちゃんが一番だよー!」

シェルージェ「ありがとう、オリンス」

 「何かシェルージェちゃん、吹っ切れた気がするよ」


オリンス「シェ、シェルージェちゃーん!」

オリンスはシェルージェに抱きついた。

シェルージェ(ちょっと困っている)「オ、オリンスぅ!?」


またシェルージェに抱きついたオリンスに対し、仲間たちは、

アンシー「ちょっと!すぐ抱きつこうとするんじゃないの!」

沖津灘「ハッハッハッ!やはりオイが止めねばならんたい!」


ホヅミ(小声)「(シェルージェ姫、オリンスさんにぃ対してはぁ、恋人というよりぃ友達として彼を見てそうですぅ)」

リンカ(小声)「(確かに姫様を見てても、恋をしているって感じがしねぇだ…)」

ウェンディ(小声)「(押忍。だったら姫様に抱きつくなんて千年早いッスよ)」


オリンスの様子を見ていたクレードは、駱駝車を操作している千巌坊に近づき、

クレード(小声)「(おい、千巌坊)」

 「(後であのアホに思いっきり喝を入れてくれ)」

 「(このままじゃ俺たちまで奴の煩悩に飲まれそうだ)」

千巌坊(駱駝車を操作しながら小声で)「(クレード、私はその煩悩にこそ、解決の糸口があると思っている…)」

クレード(小声)「(どういう意味だ?)」

千巌坊(駱駝車を操作しながら小声で)「(今はオリンスの中の煩悩を溜めておくのだ…爆発させるくらいにな…)」

クレード(小声)「(あいつはそれで元の性格に戻れるのか?)」

千巌坊(駱駝車を操作しながら小声で)「(今は賭けたいと思っている…我々にできることはそのチャンスを見逃さないことだ…)」


二日後の27日の昼。

クレードやアンシー、シェルージェ、遠征部隊は王都の港町地区、マサーガルンジア地区(※6)へとやって来た。

アンシー「立派な城壁に囲まれているのね、この港町は」

イザベリス「城壁はサフクラントの方々が築いたのです」

 「この地区は大昔サフクラントから移住した人々が開拓した港町なのですよ」

 「尤も地元住民たちとの対立などもあり、移住した人々の多くはその後サフクラントに戻ってしまったようですが」

シェルージェ「へぇ、サフクラントの人がこの国で町を作ったんだぁ」

イザベリス「厳密に言えば、移住した当時はまだアイルクリート帝国領サフクラント地方でした」


ホヅミ「サフクラントってぇ、建国してぇ350年くらいでしたよねぇ?」

イザベリス「ええ、サフクラント地方の領主であったサフクランドス家と、地方の名門公爵家であったクランペリノ家やバルデンベイル家などが政治や開拓の中心となり建国されたのです」

シェルージェ「そう考えるとシェルージェちゃんのクランペリノも大したものだよね。堅っ苦しい貴族の一族だけどさぁ、国を一つ作っちゃたんだもんね」


イザベリス「そのクランペリノ家の未来を担うのは他ならぬあなた様なのですよ、シェルージェ様」

シェルージェ「結局そうなるかもしれないよね…シェルージェちゃんにはお兄さんや弟、お姉さんや妹もいないから…最後にはシェルージェちゃんが何とかしないといけないかもね…」


シェルージェの言葉を聞いたウェンディや他の女子たちは、

ウェンディ(小声)「(ご兄弟もいないシェルージェ姫…)」

 「(名門公爵家の一人娘として生まれた姫は周りからすごく期待されていたはずッス)」

 「(だけどその期待とかが姫を苦しめ、そして公爵家の娘から女盗賊へと変わってしまったんッスよね…)」

リンカ(小声)「(名門公爵家の一人娘として感じていた姫のプレッシャーは半端なかったと思うだ…)」

ススキ(小声)「(お姫様として生まれることは、必ずしも幸せではないのかもしれないわね…)」

アンシー(小声)「(名家ゆえの苦悩…シェルージェ姫は生きている限り縛られ続けるわけね…良くも悪くも…)」


シェルージェを心配するアンシーたちだが、ベリル号に乗ったオリンスが、

オリンス「大丈夫だよ、シェルージェちゃん!君には俺がついているよ!」

 「君一人だけを悩ませたりはしない!」

 「公爵家の人間としてやるべき事があるなら、俺も一緒に手伝うから!」

シェルージェ(ちょっと引いている)「えっ?あ、ありがとう、オリンス…」

イザベリス「シェルージェ様、この者は下心丸出しです。品がありません」

 「ナプトレーマ王国の伯爵家の娘として、この者にシェルージェ様を任せたいとは思えませんが…」


オリンス「安心してください、イザベリスさん」

 「俺が夫としてシェルージェちゃんのことを生涯支えていきますから」

イザベリス「それは、あなたがシェルージェ様とご結婚なさるということですか!」

 「冗談も休み休みにしてください!」

シェルージェ「そうだねぇ、オリンスにはいろいろと助けてもらったけど、結婚となるとさすがのシェルージェちゃんでも考えちゃうなあ…」

ベリル号「ヒッー」

クレード「まったく、ベリル号も呆れているぞ」


一行は港町地区の船着き場に着き、そこで駱駝車を動かしていた四頭のラクダたちと別れることになった。

ホヅミ「馬車を引いてくれたぁラクダさんたちともぉ、ここでぇお別れですねぇ」

ナプトレーマ兵①(ファラオナイト)「申し訳ありませんが、それが「南の月馬車協定」の取り決めでございますので」

ナプトレーマ兵②(ファラオナイト)「ラクダたちは我々が引き取らせていただきます」


ラクダたち「ブェッ!」

千巌坊「そなたらには世話になったな…」

ススキ「ナミーブル砂漠(※7)、ダールファン王国、ナプトレーマ王国…」

 「砂漠地帯を旅することができたのはあなたたちのおかげよ」

ウェンディ「押忍!ルスカンティアからここまでお疲れ様ッス!」

鵺洸丸「また誰かを運ぶ日が来たら、力になってくれ…」

沖津灘「172kgのオイまで運んでくれて感謝するたい!」

クレード「お前らも元気でな」

ナハグニ「んじちゃーびら(※8)でござる!」

リンカ「ラクダさんたち、へばな(※9)」

ラクダたち「ブェー!」

クレードたちはここまで自分たちを運んでくれたラクダたちに別れのあいさつをした。


そしてラクダたちは兵士たちに引かれ去っていった。

ナプトレーマ兵③(ファラオナイト)「馬車を引く馬についてはサフクラント公国の港町や町の砦などでご用意いたします」

ナプトレーマ兵④(イシスナイト)「そちらに着きましたら、また協定書をお見せください」


ここでアンシーが、

アンシー「南の月馬車協定書、南の月(南側の大陸)の砂漠地帯を移動する際使われる協定書ね」

クレード「他国や他の地域から馬車で砂漠地帯を移動する際、馬車の馬をラクダに変えてくれるサービスのようなものだ」

アンシー「逆に砂漠地帯から緑のある平地とかに移動する場合はラクダを馬に変えてくれるのよね」

クレード「その通りだ。無料で対応してくれるから、ありがたいもんだよ」

アンシー「北の月(北側の大陸)にも「北の月馬車協定書」があるから、なんとなく分かったけど」

クレード「その協定も南の月(南側の大陸)と同じようなもんか?」

アンシー「ええ、ラープ帝国やバンリ帝国の砂漠地帯とかを移動する際、無料で馬をラクダに変えてくれるのよ」

クレード「なら、北の月(北側の大陸)を旅するときには手に入れておきたいな」


ここで話題を変え、

クレード「そういえば、アンシー、リンカ」

 「お前らはこの国の音楽や楽器の音を聴くことができたのか?」

アンシー「それなら大丈夫よ」

 「私たち、魔獣退治の合間に聴くことができたから」

リンカ「おらたち、サブラーダットっていう海沿いの町(※10)にも寄っただ」

 「その町にはでったらだ(※9)劇場があったから、おらたちは素晴らすい音楽を楽しめただ」

アンシー「演奏会を通じて、素焼きの「タムタム」といった太鼓のような打楽器、「カルカバ」っていう鉄製のカスタネットなんかを知ることができたわ」

リンカ「他にも「シストラム(または、シストルム)」っていう古代の楽器なんかも紹介していただ」

アンシー「ダールファンにあった太鼓のような「ダラブッカ」は、このナプトレーマでも伝統楽器として広まっていることも分かったのよ」

リンカ「ダラブッカの音をまた聴けて良かっただ」

 「同じ楽器でも演奏する音楽家によって雰囲気も変わるんだよ」


アンシー「でも私にとって一番印象に残ったのは「弓形ハープ」の演奏だったわ」

リンカ「そりゃあハーピスト(※11)のアンシーにしてみれば印象深いべ」

 「形は違っても、同じハープなんだべから」

アンシー「弓形ハープはいにしえの時代から弾かれし楽器。「アマルーナヒム」を奏でる際は今回聞いた音や演奏をイメージしてみるつもりよ」


港の作業員や船乗りたちがクレードたちの馬車の車両(箱)部分や遠征に必要な物資などを船に積み込んでいる。

その際シェルージェは愛ラクダのレモン号も連れて行きたいと話した。

イザベリス「シェルージェ様、ラクダのレモン号をサフクラントにお連れしたいというわけですね?」

シェルージェ「だってシェルージェにとっては大切なパートナーなんだもん」

 「レモン号のおかげでイエローは早く走れるんだもん」

レモン号「プエー!」


ネフェルーグ「シェルージェ様、お気持ちは分かりますがラクダは決して万能な動物ではございません」

 「移動手段として使えるのはナプトレーマのような砂漠地帯、背の低い草が茂っている草原地帯くらいです」

 「山道や湿地帯、雪原など苦手な環境のほうが多いのです」

イザベリス「シェルージェ様、レモン号の幸せを考えれば、この砂漠の国ナプトレーマに置いていくのが良いのかもしれませんよ…」


シェルージェ「ラクダだけで世界一周できないのはシェルージェでも分かるよ」

 「でもね、レモン号をこの国に置いていったらもう二度と会えない気がするんだ…」

イザベリス「シェルージェ様…」

シェルージェ「だから、せめてシェルージェちゃんの王宮まで連れて行きたいんだ」

 「お母さんや王宮の人たちに「ペットとして飼ってほしい」って頼んでみるよ」

レモン号「プッ、プッ!」


ネフェルーグ「分かりました。シェルージェ様の愛ラクダであれば、共に船にお乗せいたしましょう」

シェルージェ「悪いね、ネフェルーグさん」

ネフェルーグ「シェルージェ様、サフクラントは砂漠や草原の多い土地ではございません」

 「レモン号にとって歩きやすい環境ではない以上、無理をさせてはなりませぬぞ」

シェルージェ「そうだね。ラクダなんてほとんどいない国に来てもらうんだから、気を遣ってあげないとね」

レモン号「プエン!プエン!」

イザベリス「まあいざとなれば向こうの兵士たちがレモン号を馬車に乗せて運んでくれるかもしれませんよ」


出発の準備を終え、クレードやシェルージェたち、ネフェルーグたち遠征部隊を乗せた船が出航した。

そして船の上で、

シェルージェ「待ってて、サフクラントのみんな!」

 「シェルージェちゃんがお助けしちゃうんだから!」

オリンス「ああ…シェルージェちゃん、勇ましい君がすごく可愛く見えるよぉ…♡」


一方クレードとアンシーは、

クレード(小声)「(やはりこの国もメタルクロノスについてはまだ公表しないか)」

アンシー(小声)「(ピラミッド(※12)での戦いに裏で関与していた可能性もあるけど、それも確かではないからね)」

 「(今の時点では状況的にも言いづらいと思うわ)」

クレード(小声)「(まあ、王や騎士団長たちがメタルクロノスのことを知ってくれれば今は十分だと思っているよ)」


オリンス「シェルージェちゃん…シェルージェちゃーん…♡」

デレデレになっているオリンスを見てアンシーは、

アンシー「彼、本当に大丈夫かしらね…」

 「見ているだけで不安になるわ…」

クレード「千巌坊も気にしている」

 「なんとかあいつを元の性格に戻さないとな」

アンシー「そうね、今のままじゃ戦いにも影響が出そうだわ…」

船に乗りサフクラント領イビサーレ島(※13)に向かう一行。



一方その頃、北の月(北側の大陸)のバンリ帝国では、

エリック「ハッ!ハァァァッ!」

ここはバンリ帝国のタンカキン山(※14)、赤みがかった岩山などが美しいこの地で、エリック・龍煌璃ロンフアンリーという赤い髪の武闘家(拳法家)が一人修行していた。

エリック「ハッ!タァッ!」

拳を突き出し、足を上げるなど、ひたすら体を動かすエリック。


ある程度体を動かしたところで彼は岩に腰掛け休憩していた。そして、

エリック(心の中で)「(我が友、タオツェイよ、お前がいなくなってから修行に張り合いを感じないぞ)」

 「(タオツェイほどの拳法家はこのバンリにもそうそういないのだからな)」

 「(だが俺は信じているぞ!より強くなったお前が再び俺の前に現れる日が来ることを!)」



一方その頃、科学大陸のサンクレッセル連邦国では、

ニトイ「…」

ニトイという黄緑色の髪をした陸軍新兵が訓練所で戦車の模擬戦を行っていた。

ニトイは自分の戦車を上手く操縦し、訓練相手の戦車にペイント弾を当てた。

陸軍兵士①(一等兵)「ペイント弾命中!軍曹!自分たちの負けであります!」

陸軍兵士②(軍曹)「くっ!この俺でもまるで歯が立たんとは…」

陸軍兵士①(一等兵)「相手が18歳の女性新兵だというから、驚きであります!」

ニトイ「…」

一人だけで戦車を動かすニトイは、二人乗りの戦車相手に勝利した。


その様子を見ていた女性教官たちは、

女性教官①(30代)「信じられないわ…18歳のが何人もの男性軍人を打ち負かしているなんて…」

女性教官②(40代)「ついこの間まで普通の女子高生だったとは思えないわよね…」

女性教官①(30代)「これだけの操縦技術があれば、一年後には二等兵として、実戦に参加させることもできると思いますが、ニトイ新兵の場合は…」

女性教官②(40代)「そうよね、いくら腕前が優れていてもコミュニケーションが取れなければ難しいわよね…」

女性教官①(30代)「戦場においては上官や仲間たちとのコミュニケーションは必須です。上官からの指示、共に戦う仲間たちの状況や行動などをきちんと把握できなければ、部隊全体に危険が及ぶことになります」

女性教官②(40代)「実戦に参加させるにはニトイ新兵の性格を変える必要があると思うけど、陸軍上層部がどう判断するかよね…」


少し話題を変えて、

女性教官①(30代)「新兵の性格を変えるには何が必要でしょうか?」

女性教官②(40代)「そうね、彼氏でもできれば、ニトイ新兵の考え方も変わるかもしれないわね」

女性教官①(30代)「彼氏ですか…しかし魂が抜けたようにほとんど何も喋らず、表情さえもろくに変わらない彼女を好きになる男性がそうそういるでしょうか?」

 「暗い雰囲気で何を考えているのか分からないような彼女を?」

女性教官②(40代)「そういう無機質なには案外、真逆の熱い男性が良いかもしれないわね」

 「燃えるような熱い心を持った男性…そんな人と出会ったら新兵も変わっていけるかもね」



エリック「ハァァァッ!」

更なる高みを目指す、熱き男エリックは修行に励んでいた。

エリックの言うタオツェイという人物とは?

クリスタルナンバーズ最後のメンバー、ニトイと出会う日はいつになるだろか?

またイビサーレ島へ向かうクレードやシェルージェたちであるが、その頃南のルスカンティア王国では…

次回へ続く。


※1…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より

※2…帝国の名前の由来は、中国の世界遺産「万里の長城」(文化遺産 1987年登録)より

※3…神殿の名前の由来は、エジプトの世界遺産「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」(文化遺産 1979年登録)より

※4…馬の代わりに駱駝で動かす馬車といったところ。クレードたちも一台所持しており、騎士団と行動中も自分たちの駱駝車を使っている。なお動かす動物を駱駝から馬に変えれば普通に馬車になる。

※5…元ネタは江戸時代の教育施設「寺小屋」より。「高寺小屋」はワトニカの高校のこと。

くノ一高寺小屋や忍者高寺小屋は忍びについて学ぶ専門の高寺小屋(高校)。

☆※6…地区の名前の由来は、モロッコの世界遺産「マサガン(アル・ジャディーダ)」(文化遺産 2004年登録)より

※7…砂漠の名前の由来は、ナミビアの世界遺産「ナミブ砂海(or ナミブ砂漠)」(自然遺産 2013年登録)より

※8…元ネタは沖縄の方言。『んじちゃーびら』は「さようなら」の意味。

※9…元ネタは津軽弁など。『へば(な)』は「さようなら」、「それじゃあ」など、『でったらだ』は「大きい」、「大きな」などの意味。

☆※10…町の名前の由来は、リビアの世界遺産「サブラタの考古遺跡」(文化遺産 1982年登録)より

※11…「ハーピスト」とは「ハープ奏者」のこと。

※12…元ネタはエジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」(文化遺産 1979年登録)の「ピラミッド」より

※13…島の名前の由来は、スペインの世界遺産「イビサ島の生物多様性と文化」(複合遺産 1999年登録)より

☆※14…山の名前の由来は、中国の世界遺産「中国丹霞」(自然遺産 2010年登録)より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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