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第27話(後編) アブジンベルノン神殿、ファラオのご加護を(後編)

(※第27話の後半部分です)

6月24日の夜、MW=アベリ=ベンジャリン自然保護区(※8)での戦いを終えた鵺洸丸とススキはアンシーたちと合流し、神殿の休憩室で話をしていた。


鵺洸丸「なるほど。クレード殿・オリンス殿・沖津灘殿の三人は今地下牢に…」

アンシー「クレードはそこまで咎められなかったし、この国で問題を起こしていない沖津灘は自分から牢に入ったけど、オリンスが一番酷かったわ」

 「副騎士団長のトトラジェフさんに無茶苦茶なことを言って、シェルージェ様を無断で連れ回した件を正当化しようとしたのよ」

リンカ「トトラジェフさんも内心ではオリンスさんに怒っていたべ…」

ナハグニ「しかし結果としてシェルージェ姫は楽しんだことだし、オリンス殿の行いは良かったのだと思うでござるが…」

ホヅミ「ナハグニさぁん、それでぇ済むんならぁ、そもそもオリンスさんはぁ咎められないですよぉ」

鵺洸丸「まあオリンス殿も地下牢で反省してくれれば良いのだが…」

ウェンディ「押忍。正直それは無理そうッス」

千巌坊「様子を見に行っても良いかもしれぬが、オリンスたちは今宵囚人扱い…気軽には行けぬ…」


続いてススキが話題を変え、

ススキ「それにしても捜していたシェルージェ様がクレードさんたち同様、宝石の戦士になったなんて驚きだわ…」

鵺洸丸「シェルージェ様は一国の姫君として歓迎され、我らとは違う特別なお部屋でお休みになる…」

 「姫様にお会いするのは明日になるだろう…」


ここで女子たちが、鵺洸丸とススキの二人を見て、

ウェンディ(小声)「(そういえばあの二人、ダールファンの時も今回も一緒に行動してたッスね)」

ホヅミ(小声)「(ススキさんはぁパンディアガルラの村(※9)での戦いの後ぉ、鵺洸丸さんのいるぅMWの自然保護区にぃ向かったみたいですねぇ)」

リンカ(小声)「(ススキさんが来てくれたことに、鵺洸丸さん、感謝していただ…)」

アンシー(小声)「(表向きは「仲間のため」ってことなんだろうけど、本当はそれ以上の目で彼のことを見ていると思うわ)」

ウェンディ(小声)「(押忍。とにかく後でススキさんに確認してみるッス)」


リンカ(心の中で)「(ススキさん…おらはな(※5)の恋を応援するだ…)」

 「(鵺洸丸さんが別の女性を好きになったとしても、彼を奪っちまうだ…)」


一方神殿の地下牢では見張りの兵士が、

ナプトレーマ兵⑤(心の中で)「(三人とも大人しく寝たようだな…)」

静かに眠るクレードと沖津灘であったが、オリンスだけは、

オリンス(寝言)「シェルージェちゃん…俺のシェルージェちゃん♡」

寝ているオリンスはシェルージェの夢を見ながら、一人にやけていた。


次の日25日の昼頃、出発の準備を終えたことでクレードたち三人も地下牢から釈放された。

そしてクレードたちは報酬1000万カラン等を受け取り、シェルージェやネフェルーグ騎士団たちと共に神殿の入り口で国王やイルビーツたちとあいさつしていた。


ネフェルーグ「国王様、我々遠征部隊はこれよりイビサーレ島へ向けて出発いたします」

イザベリス「シェルージェ様のためにもサフクラント公国騎士団や島に住む方々をお助けいたします!」

ナプトダリオン160世(国王)「頼みましたよ、皆さん」

 「シェルージェ様のため、隣国サフクラント公国のために力を貸してください」

イザベリス「ハッ!私たちにお任せください!」

ネフェルーグ「国王様、我々が到着する前に戦いが終わっていましたら、直ちに王都へと戻りますので」

ナプトダリオン160世「そうですね。我々の助けは不要になるかもしれませんし、マデレウス殿たちとも行き違うことになるかもしれませんね」


ナプトダリオン160世「ですが新たな情報等を得られなければ島へと向かってください。たとえ戦うことがなかったとしても、隣国へ赴き、その国の方々にごあいさつするのも大事なことですから」

ネフェルーグ「ハッ!」


続いてネフェルーグは、自身が不在の間王都や神殿を守るトトラジェフとイルビーツたちに、


ネフェルーグ「トトラジェフ、私は再度王都を離れる。防衛のほうを引き続き頼むぞ」

トトラジェフ「ハッ!このトトラジェフ、命に代えても国王様や市民の方々をお守りいたします!」


ネフェルーグ「イルビーツ殿、ダールファン王国騎士団の方々、改めてよろしく頼みますぞ」

イルビーツ「ハッ!ネフェルーグ殿のご期待を裏切るような真似は決していたしません!トトラジェフ殿たちと共に、必ずや守り抜いてみせましょう!」

ダールファン兵①(サンドナイト)「我らダールファン王国騎士団、一歩も退きませぬ!」

ダールファン兵②(サンドナイト)「全ては両国のより良い未来のため!我々もできることをいたします!」


そしてトトラジェフとイルビーツはお互いにあいさつし、

トトラジェフ「イルビーツ殿、そしてダールファン王国騎士団の方々、この度はよろしくお願いいたしますぞ」

イルビーツ「トトラジェフ殿、こちらこそよろしくお願いいたします」

トトラジェフ「イルビーツ殿とは何度かお会いしたことがございますが、共に行動するのは今回が初めてですな」

 「ダールファン王国騎士団の力、期待しておりますぞ」

イルビーツ「トトラジェフ殿も「アフリカクロトキのケペシュ」なる強き剣をお使いになる方、機会があればそのお力をぜひ拝見したいものですよ」


続いて国王がシェルージェに、

ナプトダリオン160世「シェルージェ様、ご家族とベルンディーネ様にお手紙をよろしくお願いしますね」

シェルージェ「そうだね。国王様が昨日書いて渡してくれたんだもんね」

ナプトダリオン160世「どちらの手紙にも誘拐の主犯であった盗賊ロイズデンの処遇についても書いております。どうか忘れずにお渡しください」


シェルージェ「ありがとね、国王様」

 「おかしらのことを許してくれて…」

ナプトダリオン160世「シェルージェ様、許したのはあくまで誘拐の件とスカラベのケペシュや一部の宝を盗んだ件だけです。あの者がやってきた事全てを無罪にしたわけではありません」

 「シェルージェ様には申し訳ありませんが、あの者は見つかり次第捕らえ、裁判にかけるつもりです」

 「そこだけはご了承ください」

シェルージェ「だったらもう安心だよ」

 「お頭は捕まらないし、捕まるような悪い事もしない」

 「シェルージェはそう信じているよ」

ナプトダリオン160世「大した盗賊ですな。名門公爵家の方にここまで好かれるとは」


ネフェルーグが国王に話しかけ、

ネフェルーグ「国王様、ロイズデンの罪を一部許していただき、誠にありがとうございます…」

 「今は盗賊だとしても、あの者も元騎士団員であり、私の部下…」

 「ロイズデンのことは私も少なからず責任を感じておりますので…」


ネフェルーグは国王ナプトダリオンに頭を下げた。そして王は、

ナプトダリオン160世「ネフェルーグ騎士団長、もしあの者を裁判にかける時が来たら、あなたにも立ち会ってもらいますよ」

ネフェルーグ「ハッ…」


またイルビーツも国王に、

イルビーツ「国王様、あの者の裁判には私も立ち合わせてください」

ナプトダリオン160世「イルビーツ殿?」

イルビーツ「ピラミッドでの戦いに勝利できたのは、あの者の加勢もあったからです」

 「たとえ一時いっときであったとしても、共に戦った者を信じたいのです」

ナプトダリオン「分かりました。その時はダールファンに伝令隊を送りお知らせいたしましょう」

イルビーツ「よろしくお願いします」

イルビーツも国王に頭を下げた。


一方王妃パオトゥーラはアンシーやリンカたちと話をし、

アンシー「アマルーナ(※10)ヒム、ここナプトレーマで古来より伝わる賛歌なのですね」

パオトゥーラ「上手く弾きこなすことができれば、ヒエログリフ型の強力な光弾を作ることができるでしょう」

アンシーはパオトゥーラより、「アマルーナヒムの楽譜」を受け取った。

アンシー「王妃様、楽譜を頂きありがとうございます」

 「アマルーナヒム、必ずや弾きこなしてみせます」

パオトゥーラ「ハープは我が国でも伝統的な楽器です」

 「ハープを扱えるあなたであれば、素晴らしきヒム(賛歌)を奏でることができるはずです」

リンカ「アンシーの腕前ならきっと大丈夫だ」

 「王妃様のためにもけっぱって(※5)曲をマスターするだよ」

アンシー「そうね、リンカ」

 「音楽を使って、古代文字ヒエログリフを上手く表現してみせるわ」

パオトゥーラ「アンシーさんのご活躍をお祈りいたします」


そしてクレードたちはダールファン王国騎士団の副騎士団長イルビーツに別れのあいさつをし、

クレード「イルビーツ副騎士団長、あんたにはいろいろ世話になったな」

鵺洸丸「ダールファンからナプトレーマまで、共に戦えて嬉しく思いますぞ…」

イルビーツ「そう言っていただき私も嬉しいですよ」

 「魔獣退治からシェルージェ様の捜索まで、うまくいったのは全て皆さんのおかげです」

ススキ「ここから先の戦いは私たちにお任せください」

沖津灘「島の魔獣など、オイの突っ張りで弾き飛ばしてやりますたい!」

イルビーツ「ご武運をお祈りします」

 「皆さんが力を合わせればいかなる敵にも負けないでしょう」

アンシー「イルビーツさん、ダールファンには私やリンカの親友であるマリーチェルもいるはずです」

 「戻ったら彼女のこともよろしくお願いします」

イルビーツ「マリーチェルさん、セーヤ王子に光を与えてくれた女性ですね」

 「まだお会いしておりませんが、王子が愛するお方であれば、何があってもお守りいたしましょう」

リンカ「副騎士団長、よろすくお願いしますだ」


シェルージェもイルビーツに、

シェルージェ「イルビーツさん、いろいろありがとね」

 「シェルージェのためにダールファンから来てくれて」

イルビーツ「シェルージェ様がご無事で何よりですよ」

 「私もダールファンに戻ったら、アリムバルダ騎士団長に胸を張ってご報告できますので」

シェルージェ「その騎士団長さんもシェルージェのこと心配してくれたんだよね…」

 「いろいろ悪かったなあ…」

イルビーツ「そこはご安心ください」

 「シェルージェ様がご無事である事は、アリムバルダにとっても喜ばしい事ですから」


イルビーツ「ですがシェルージェ様がクレード殿たちと同じマスクとスーツ姿の戦士に変身できるようになった事を知ればアリムバルダも驚きますよ」

シェルージェ「そうだよねぇ、こんな事になるなんてシェルージェも全く予想できなかったよぉ」


皆がイルビーツにあいさつする中オリンスだけは、

オリンス「シェルージェちゃん…これから俺たちと一緒に旅を…♡」

クレード「おい緑のアホ、お前もイルビーツ副騎士団長にあいさつしろ」

イルビーツ「結構ですよ。私が何を言っても今のオリンス殿には届かないでしょう」

ホヅミ「この人ぉ本当はぁ、こんなにぃ女性にぃだらしない人じゃないはずなんですぅ」

ウェンディ「押忍!真面目で誠実だった頃の彼はどこかに行ってしまったッス!」

イルビーツ「そうですねぇ…しかし私としては、オリンス殿は近いうちに元に戻ると思いますよ」

 「愛するシェルージェ様をお守りするためには「冷静さ」も必要になるでしょう」

 「根が真面目なオリンス殿であれば早いうちにはお気づきになるかと…」

クレード「冷静さか…」

ナハグニ「拙者は別に今のままのオリンス殿でも良いと思うでござるが、シェルージェ様への愛に「冷静さ」が加われば、オリンス殿はより強くなるかもしれないでござるなあ」


クレードたちのあいさつが終わり、イザベリスが最後に、

イザベリス「それではイルビーツさん、私、島へ行って参ります!」

イルビーツ「頼みましたよ、イザベリスさん」

イザベリス「は、はい!」 ドキッ!

イルビーツ「これから向かわれるサフクラントはイザベリスさんにとっては祖国です。ご両親の離婚など思うところはあるかもしれませんが、祖国のためにお力を貸してあげてください」

イザベリス「も、もちろんです!」

 「わ、私、精一杯頑張りますから!」

イルビーツ(笑顔で)「お願いしますね」

イザベリス(心の中で)「(イ、イルビーツさん…え、笑顔が素敵…)」

イルビーツに期待され、イザベリスはときめていていた。


建国約5000年、ムーンリアス最古の国、ナプトレーマ王国。

歴代の王や女王たちが暮らしてきたアブジンベルノン神殿を後にした。

旅立つクレードやシェルージェたちに、ファラオ(歴代の王たち)のご加護があらんことを。

サフクラント公国領イビサーレ島へ向かうため、クレード一行やネフェルーグたちナプトレーマ王国騎士団は港町へ。

次回へ続く。


※1…王国の名前の由来は、「ナイル川」と、古代エジプトの王朝「プトレマイオス朝」より

※2…神殿の名前の由来は、エジプトの世界遺産「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」(文化遺産 1979年登録)より

※3…元ネタはエジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」(文化遺産 1979年登録)の「ピラミッド」より

☆※4…島の名前の由来は、スペインの世界遺産「イビサ島の生物多様性と文化」(複合遺産 1999年登録)より

※5…元ネタは津軽弁など。『そったらに』は「そんなに」、『な』は「あなた」、『けっぱって』は「頑張って」の意味。

☆※6…王宮の名前の由来は、スペインの世界遺産「アランフェスの文化的景観」(文化遺産 2001年登録)の「アランフェスの王宮」より

※7…山塊の名前の由来は、チャドの世界遺産「エネディ山塊:自然的・文化的景観」(複合遺産 2016年登録)より

※8…自然保護区の名前の由来は、ニジェールなどの世界遺産「W=アルリ=ペンジャリ国立公園複合体」(自然遺産 1996年登録 2017年拡張)より

※9…村の名前の由来は、マリの世界遺産「バンディアガラの断崖」(複合遺産 1989年登録)より

※10…「アマルーナ」の名前の由来は古代エジプトの「アマルナ時代」より

(☆:物語初登場の世界遺産)

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