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第27話(前編) アブジンベルノン神殿、ファラオのご加護を(前編)

27話目です。神殿に戻ったクレードやシェルージェたちが国王や王妃たちとやり取りする場面などが話の中心です。


(※今回の話も前編と後編に分かれています)


<主な登場人物の紹介>


<クレード一行 計11人>

(宝石の輝士団クリスタルナンバーズ 3人)

◎クレード・ロインスタイト(男・?歳)

・青色の髪をしている本作の主人公である魔法剣士。

魔法の宝石グラン・サファイアにより、クリスターク・ブルーに変身できる。

自分の出身地や年齢など、過去の記憶をいろいろなくしている。

◎オリンス・バルブランタ(男・29歳)

・緑色の髪をしている元ルスカンティア王国騎士団の騎士。

馬にまたがり騎兵として戦うことが多い。愛馬の名は「ベリル号」。

魔法の宝石グラン・エメラルドにより、クリスターク・グリーンに変身できる。

ナプトレーマ王国(※1)ではシェルージェと二人っきりになり、彼女と楽しいひと時を過ごした。

普段は真面目で大人しい人物ではあるが、シェルージェに対してメロメロになってしまう。

◎アンシー・ヒズバイドン(女・22歳)

・白い髪をしている新人音楽家で、ムーンマーメイド交響楽団の非常勤楽団員。

魔法の宝石グラン・ホワイトパールにより、クリスターク・ホワイトに変身できる。

(ナンバーズの協力者たち 8人)

○ナハグニ・按司里あじさと(男・31歳)

・ワトニカ将国リュウキュウ藩出身の侍。自称、うちなー侍。

鵺洸丸やこうまる(男・30→ 31歳)

・ワトニカ将国オガサワラ藩出身の忍者。

6月19日が誕生日で31歳になった。

○ウェンディ・京藤院きょうどういん(女・20歳)

・洋風な名前だがワトニカ将国キョウノミヤ藩出身。公家の娘で柔道家。

○ホヅミ・鶴野浦つるのうら(女・22歳)

・ワトニカ将国サド藩出身の女流棋士。

○ススキ(女・22歳)

・ワトニカ将国エゾ藩出身の新人くノ一。

千巌坊せんがんぼう(男・39歳)

・ワトニカ将国キノクニ藩出身の僧(坊主、お坊さん)。

○リンカ・白鳥森はくちょうもり(女・22歳)

・ワトニカ将国サンナイ藩出身。津軽三味線を弾く新人音楽家。

アンシーとは以前からの友人。

沖津灘おきつなだ(男・32歳)

・ワトニカ将国ヤハタ藩出身。ワトニカ大相撲の現役力士で、大関経験者。遠賀川部屋所属。

豪快で細かいことは気にしない性格。


<その他人物>

◎シェルージェ・クランペリノ(女・18歳)

・黄色い髪(※長髪)をしている女盗賊。

魔法の宝石グラン・シトリンにより、クリスターク・イエローに変身できる。

実は貴族の国サフクラント公国の前大公の孫娘だが、貴族の生活が嫌になり家出した。元盗賊の頭ロイズデンたちの力を借り、南のナプトレーマ王国にやって来た。

一時的にオリンスと二人っきりになり、彼と楽しいひと時を過ごした。

変身できるようになったことで、クレードやアンシーたちは「仲間になってほしい」とシェルージェに頼むが、彼女はあっさり「O.K.」の返事をした。しかし公爵家の孫娘ということで、シェルージェの同行に対してはクレードたちも慎重になっている。

この物語における重要人物の一人。

○ナプトダリオン160世(男・32歳)

・ナプトレーマ王国の現国王で、国の代表者。第244代国家元主。

本名は「カルムベトラー・ナプトダリオン」

この国では男性の王は「ツタムカーメン」と呼ばれる黄金のマスクを被るしきたりがあるため、現国王である彼も人前ではマスク姿である。そのため一部の人間を除き、その素顔は知られていない。

○パオトゥーラ・ナプトダリオン(女・27歳)

・国王140世の妻でルスカンティア王国の王妃。美人。

○ネフェルーグ・ラバルペリド(男・52歳)

・ナプトレーマ王国騎士団団長。

「ラーレのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、ファラオナイト(※)。

(※ナプトレーマの騎士団員は、男性の場合「ファラオナイト」、女性の場合「イシスナイト」と呼ばれる)

○イザベリス・デラムジャール(女・23歳)

・ナプトレーマ王国騎士団の女兵士。

「ネクベトのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、イシスナイト。

ナプトレーマ王国の兵士ではあるが、王国の北にあるサフクラント公国の出身。

ナプトレーマ王国内でサフクラントの前大公の孫娘シェルージェを見かけた人物。

○イルビーツ・サウロザーン(男・35歳)

・ダールファン王国東部の騎士団を束ねる副騎士団長(三人いる副騎士団長の一人)。

行方不明になっていたシェルージェの捜索に協力するため、クレードや兵士たちと共にダールファン王国の東の国ナプトレーマ王国へとやって来た。

☆○トトラジェフ・ベルモボレス(男・50歳)

・ナプトレーマ王国騎士団の副騎士団長(三人いる副騎士団長の一人)。王国西部の騎士団員たちを束ねており、西部の守備を任されている。

ダールファン王国騎士団のイルビーツとは顔見知り。

そんな彼も今は国王たちのいるアブジンベルノン神殿(※2)に来ている。

「アフリカクロトキのケペシュ」と呼ばれる鎌型の剣を使いこなす、ファラオナイト。

国王ナプトダリオン160世や騎士団長ネフェルーグからの信頼は厚い。

名前の由来は、エジプト神話の神「トート」と、古代エジプトの都市「ヘルモポリス」より。

誕生日は5月8日。

(☆:新キャラ)


<名前のみの登場>

△マデレウス・ガフィルダーデ(男・61歳)

・サフクラント公国騎士団団長で、マタドールナイト(※)。

(※サフクラントの騎士は、闘牛士をモチーフにしており「マタドールナイト」と呼ばれる)

△ベルンディーネ・サフクランドス(女・56歳)

・サフクラント公国の現大公で、第24代国家元首。

△ロイズデン・ギナデルク(男・47歳)

・シェルージェを盗賊として育てた盗賊団の元頭もとかしらで、元騎士団員でもある。

ピラミッド(※3)での戦いの後、姿を消した。

遠賀川おんががわ親方(男・60歳)

・沖津灘が所属する遠賀川部屋の親方。

天村あまむら理事長(男・61歳)

・ワトニカ大相撲会の理事長。第74代横綱「響天禄きょうてんろく」でもある。

△セーヤ・ダルファンダニア(男・25歳)

・ダールファン王国の王子。アンシーやリンカの親友マリーチェル(女・22歳)に愛を誓う。

△アリムバルダ・モルジノス(男・58歳)

・ダールファン王国騎士団団長。イルビーツの上司。

ケルビニアン暦2050K年6月24日の昼。

アブジンベルノン神殿、ラムゼノスの間(王座の間)。

クレードやシェルージェたちは、ナプトレーマ国王の待つアブジンベルノン神殿へとたどり着いたが、そこで待っていたのはナプトレーマの伝令隊たちだった。


一昨日神殿に戻った彼らはシェルージェに、

シェルージェ「えー、マジ!?イビサーレ島(※4)にたくさん魔獣たちが現れちゃったの!?」

ナプトレーマ兵①(伝令隊)「ハッ!シェルージェ様をお迎えするため、サフクラント公国騎士団が我が国まで出向くご予定でしたが、道中イビサーレ島にて大量の魔獣たちを確認したため、騎士団は急遽対処に当たることとなりました!」

ナプトレーマ兵②(伝令隊)「王都の港町地区にイビサーレ島からの使者たちが来られました!」

 「彼らより話を伺いそれをお伝えするため、我らはこうして神殿まで参りました!」


シェルージェ「マジかあ、マデレウスさんまでシェルージェのために動いてくれたんだ…」

 「それは悪いことしちゃったな…」

アンシー「騎士団長を動かすくらい、プリンセスはサフクラントで特別な方だということなのですよ」


ナプトレーマ兵③(伝令隊)「島の魔獣たちの討伐が終わり次第お迎えに上がるとのことです!」

 「シェルージェ様には今少しお待ちいただきたいと!」

シェルージェ「いや、待ってるだけじゃダメだよ!」

 「すぐにマデレウスさんたちを助けにいかなきゃ!」


パオトゥーラ(王妃)「シェルージェ様、戦いに赴くのですか?」

シェルージェ様「当たり前じゃん!」

 「シェルージェ様のせいでサフクラントのみんなを戦いに巻き込んじゃったみたいだし!」

ナプトダリオン160世(国王)「ですがシェルージェ様、魔獣たちの出現は決してあなたのせいではございません。魔獣たちのほうから現れたのです」

シェルージェ「とにかくシェルージェはイビサーレ島に行くよ!」

 「お祖父ちゃんが大公を辞めちゃったみたいだから、シェルージェはもう一番偉い人の孫娘じゃないけど国の人たちにできることをしなきゃ!」


クレード「そうやって国や国民たちに対する責任感があるというのに、お前は伸び伸びと盗賊をしていたようだが…」

シェルージェ「おかしらたち盗賊団と別れた後だから、そう思えるんだよ!」

 「細かいところまで突っ込まないでよ!」

オリンス「シェルージェちゃんの言う通りだ!クレードも今言うべきことじゃないよ!」

アンシー「たとえ盗賊になったとしても、プリンセスの心の奥には公爵家の孫娘としての自覚が残っていたのよ」

 「だからそれでいいじゃない、クレード」

クレード「まあ遅咲きになったとしても、想いが現れたのなら良いことだが…」


オリンス「シェルージェちゃん、俺は何があっても君の味方だよ!君を否定したりするもんか!」

シェルージェ「ありがとう、オリンス。頼りにしているよ」

オリンス「シェルージェちゃん!シェルージェちゃーん!」

オリンスは大声で叫んだ。


イザベリス「ちょっと、オリンスさん!国王や王妃様たちの前ですよ!」

 「態度を弁えてください!」

ナプトダリオン160世「そうですねぇ、ここは歴代の王や女王、ファラオたちが暮らしてきた由緒ある神殿でございます。必要以上に叫ぶのはこの神聖な場にそぐわないかと…」

イザベリス「国王様のおっしゃる通りです!」

 「オリンスさん!あなたも元騎士団員であるのなら、もっと誠実な心を持ってください!」

オリンス「俺はいつだって誠実ですよ。その心がシェルージェちゃんに向いているだけです」


千巌坊「いや…誠実さというよりも煩悩で動いているように思うのだが…」

ウェンディ「押忍!オリンスもナハグニみたいな下心丸出しの男になってしまったッス!」

ナハグニ「だから拙者のことは健全な男児と言ってくだされ!」


イルビーツ「うーむ、オリンス殿は真面目で大人しい方だと思っていたのですが…」

クレード「シェルージェと出会うまではそういう奴だったかもしれない」

アンシー「なんだか眠っていた恋心や性欲がいっきに爆発した気がするわ…」

ネフェルーグ「やれやれだな」


一方でネフェルーグは、

ネフェルーグ(心の中で)「(それにしても、元騎士団員で…誠実な心か…)」

 「(あの男に誠実さがあったとすれば、それはシェルージェ様に向けられたのだろうな…)」


ナプトレーマ兵④(ファラオナイト)「ネフェルーグ騎士団長、シェルージェ様はサフクラント領のイビサーレ島にお向かいしたいとのことですが、我々ナプトレーマ王国騎士団はいかがいたしましょうか?」

ネフェルーグ「そうだな。まずはその話が先だな」


ネフェルーグ騎士団長は国王と王妃に話しかけた。

ネフェルーグ「国王様、王妃様」

 「我々ナプトレーマ王国騎士団としては、部隊を編成しシェルージェ様とご一緒にイビサーレ島へ向かいたく思います」

ナプトダリオン160世(本名:カルムベトラー)「騎士団長、我が国も部隊を動かしたいということですか?」

ネフェルーグ「サフクラント公国騎士団の部隊は、シェルージェ様の件でこの国までお越しいただくご予定なのです」

 「ならばその道中でトラブル等があった場合、お助けするのが迎える側の責任かと思いまして」


ネフェルーグ「それに今回の一件では異国の騎士団長までもが動いているのです」

 「それでしたら、同じ騎士団長の地位にある私が顔を出さねば、サフクラントのマデレウス騎士団長に失礼かと」


パオトゥーラ「騎士団長、そのお言葉、待っておりました」

 「騎士団長であるネフェルーグ殿のご判断を確認したく、私やカルムベトラーも独断で兵を動かさず待っていたのですから」

ネフェルーグ「国王様、王妃様、騎士団長である私のことをそこまで信頼していただき、誠にありがとうございます」


シェルージェ「ええっ!?じゃあナプトレーマの騎士団も島に来てくれるってわけ!?」

ナプトダリオン160世「あまり交流があるとは言えませんが、サフクラントは我が国にとって隣国でございます」

 「ならばお助けするのが務めというもの。今こそ兵たちを動かしましょう」


ネフェルーグ「シェルージェ様、我らナプトレーマ王国騎士団も島へ同行したく思います。よろしいでしょうか?」

シェルージェ「もちろんだよ!シェルージェの国のために来てくれるなんて嬉しいよ!」

イザベリス「シェルージェ様、私もサフクラント出身の人間としてお供いたします」

 「私がナプトレーマでシェルージェ様をお見かけしたことは、サフクラントの方々にお伝えしたいことですし」

シェルージェ「国王様!王妃様!騎士団長!イザベリスちゃん!みんな、ありがとう!シェルージェ、助かるよ!」

ナプトダリオン160世「シェルージェ様、礼には及びませんよ」

 「サフクラント公国に対してできる事をしたまでです」


パオトゥーラ「クレード殿たちもこれよりサフクラント公国に向かわれるわけですね?」

クレード「もちろん、そのつもりです」

 「シェルージェ様のご家族に会い、ご令嬢が変身能力を得たことなどの事情を説明するつもりでございます」


ナプトダリオン160世「ピラミッドから戻った伝令隊よりいろいろと話は聞いております」

 「魔法武装組織メタルクロノスの件、そしてシェルージェ様もクレード殿、オリンス殿、アンシー殿たちと同様、宝石のように輝く戦士に変身できるようになったという事を」

クレード「ハッ!いずれも間違いございません」

シェルージェ「イエローだよ、イエロー」

 「シェルージェ今は、グラン・シトリンでクリスターク・イエローに変身できるんだ」


クレード「メタルクロノスと戦っていくには、シェルージェ様の力が必要不可欠でございます」

 「そのため今後も我らと行動を共にしていただきたいかと」

アンシー「ですがシェルージェ様は前大公の孫娘であり、名門公爵家の一員です。ご家族様はシェルージェ様が私たちとご同行することを許してくださらないかもしれません」

ナプトダリオン160世「確かにシェルージェ様をお連れすることは、一国の姫君を旅に出させるようなもの」

 「ご家族であるクランペリノ公爵家の方々も安易にお許しするとは考えにくいですね」

パオトゥーラ「ましてやシェルージェ様は3年も行方不明となり、その間ご家族ともお会いしていないのです」

 「3年ぶりにお嬢様と顔を合わせたとしても、またすぐにいなくなってしまうのではご家族も穏やかではいられないでしょう」

アンシー「だから直接お会いし、しっかりお伝えしたいのです」

 「私たちにとってシェルージェ様が必要だということを」

ナプトダリオン160世「分かりました。それだけのお気持ちがございますのなら、ぜひお伝えください」


アンシー「メタルクロノスのこともご家族にお話しすることになりますが、それも覚悟の上です」

リンカ(心の中で)「(ア、アンシー…そったらに(※5)はっきり喋れて、大したもんだ…)」

 「(おれは友人として誇らしいだよ…)」


シェルージェ「だからアンシーちゃんもそんな大げさに考えなくていいよぉ」

 「お祖父ちゃんやお母さんがいくら反対したって、シェルージェは旅に出るんだから」

オリンス「大丈夫だよ!シェルージェちゃん!」

 「ご家族が何を言ったって俺は君を連れて行くから!」

ホヅミ「オリンスさんはぁ黙っててぇくださいよぉ」


ナプトダリオン160世「無理して同行するかはさておき、私とパオトゥーラからクランペリノ公爵家の方々へお手紙を書きましょう」

 「シェルージェ様の旅に出たいというお気持ちやお仲間であるアンシー殿たちのお気持ちなども併せて書かせていただきます」

シェルージェ「えー、手紙書いてくれるのぉ?」

 「そんな気を遣わなくても大丈夫だよぉ」


ナプトダリオン160世「シェルージェ様がこの国に来られた以上、お手紙は必要になりますよ」

 「シェルージェ様はクランペリノ公爵家の孫娘、それほどの御方が国に来たとなれば王である私や王妃のパオトゥーラでさえも対応せざるを得ないのです」

シェルージェ「うーん、そう考えるとクランペリノ公爵家もなんだかんだ言ってすごいよねぇ」

 「王様や王妃様さえも動かしちゃんうんだから…」


パオトゥーラ「シェルージェ様からすれば、ご実家であるクランペリノ家に対してご不満もありましょう」

 「ですが、クランペリノ家が紛れもない名家だということは覚えておいてください」

 「クランペリノ家の血筋であるシェルージェ様だからこそ、王妃の私や王のカルムベトラーも特別なご対応をしているのですから」

ナプトダリオン160世「今回のお手紙についてもそのご対応のうちということなのですよ」


クレード「シェルージェ様、そのお手紙があればご家族との話し合いもスムーズにいくかもしれません」

 「ここは国王様や王妃様に書いていただきましょう」

シェルージェ「分かったよぉ。役に立つかもしれないなら、書いてもらうよぉ」

アンシー「国王様、王妃様、どうかお手紙よろしくお願いいたします…」

ナプトダリオン160世「ご心配なさらず、今から書かせていただきますので」

 「手紙についてはシェルージェ様のご家族であるクランペリノの方々以外にも、サフクラントの現大公であるベルンディーネ・サフクランドス様にも書かせていただきます」

 「今回のシェルージェ様に関する件をお伝えさせていただきますので、どうかお渡しください」


シェルージェ「ベルンディーネさんかあ、シェルージェがクランフェルジスの王宮(※6)に戻ったら心配して来てくれそうだな…」

ナプトダリオン160世「ベルンディーネ様だけではございませんよ、きっと国中の方々がシェルージェ様のことをご心配なさっているはずです」

パオトゥーラ「ご家族や国民の方々に元気な顔をお見せください。喜んでいただけるはずです」

シェルージェ「お母さんたちじゃなくて、国中のみんなもか…」


ネフェルーグ「国王様、我々も人員の編成や物資の手配等、遠征の準備がありますので…」

イザベリス「私も遠征部隊の一人として、ネフェルーグ騎士団長たちと話をしたく…」

ナプトダリオン160世「分かりました。ネフェルーグ殿、イザベリスさん、準備をよろしくお願いいたします」

ネフェルーグ「ハッ!早ければ明日には出発いたします」

ナプトダリオン160世「そうですね。皆様もピラミッドでの戦いからお戻りになったばかりでお疲れかもしれませんが、早急に対応してください」

イザベリス「国王様!我々騎士団は問題ございません!ぜひお任せください!」


ダールファン兵①(サンドナイト)「イルビーツ殿、我々ダールファン王国騎士団はいかがいたしましょうか?」

ダールファン兵②(サンドナイト)「我々もシェルージェ様やネフェルーグ騎士団長たちと共にイビサーレ島へ向かいましょうか?」

イルビーツ「いや、それはできない。サフクラントはダールファンにとって隣国ではないし、特別な同盟関係などを結んでいるわけでもないのだ」

 「もしサフクラント領での戦いにダールファン王国騎士団が介入すれば後々ご面倒をおかけするかもしれない…」

ダールファン兵③(サンドナイト)「そうですな。我々にも立場や規律がありますし」

ダールファン兵①(サンドナイト)「では遠征を今日で終わりにし、我々はダールファンへと戻りますか?」

イルビーツ「いや、サフクラントのことは無理だとしても、このナプトレーマでならできることがあるはずだ」


イルビーツがネフェルーグに、

イルビーツ「ネフェルーグ騎士団長、我々ダールファン王国騎士団の遠征部隊は、これより王都の部隊と協力したく思います」

 「どうかこの王都を守るため、我々にも手伝わせてください」

ネフェルーグ「イルビーツ殿、我々に力を貸してくださるのですか?」

イルビーツ「我々ダールファンの騎士団はイビサーレ島での戦いに介入できません。ですが隣国であるナプトレーマ国内での戦いであれば対応ができますので、どうか我々のことを」

ネフェルーグ「かしこまりました。それではダールファンの方々には王都の守備をお願いいたしましょう」

 「騎士団長の私が王都に戻るまでの間、よろしくお願いいたします」

イルビーツ「ハッ!我々を受け入れていただき感謝いたします!」

ダールファン兵②(サンドナイト)「ネフェルーグ騎士団長のため、ナプトレーマの方々ために、できることをいたします」


ネフェルーグは近くにいた騎士団員と軽く話をし、イザベリスと共に遠征の準備をするため席を外した。

またイルビーツやその部下たちもクレードに軽く挨拶し、一人の騎士団員と話をしてその場を離れた。


そして国王と王妃がシェルージェに、

ナプトダリオン160世(国王)「それではシェルージェ様、お手紙を書くためにお話ししたい件がございますので、お手数ですが別の部屋まで移動をお願いします」

パオトゥーラ(王妃)「ラムゼノスの間でお立ちのままではシェルージェ様もお疲れでしょう。お茶やお菓子などもご用意いたしますので、どうか私たちと来てください」

シェルージェ「えーっ!お茶やお菓子もくれるのぉ!悪いねぇ!」

ナプトダリオン160世「それくらいの事はお気になさらず。私たちとしてはシェルージェ様とロイズデン・ギナデルクの件についてもお話ししたいので」

シェルージェ「えっ、おかしらのこと!?」

 「だったら許してあげてよぉ!シェルージェが自分からお頭について行ったんだし、お頭も使ってたスカラベのケペシュを騎士団に返したんだし、アジトに残してきたお宝も全部返すんだから、もういいじゃん!」


ナプトダリオン160世「シェルージェ様、スカラベのケペシュや他の宝の件はともかく、あの男がシェルージェ様を誘拐した主犯であるのなら、それは大公様にお伝えしなければならないことなのです」

パオトゥーラ「ましてやあの者はこの国の元騎士団員、国王や王妃として私たちもご家族や大公様に深くお詫びをしなければならない立場なのですよ」

シェルージェ「うーん、お菓子食べたいからとりあえずついてくるけど、もしお頭を見つけて処刑しようと考えてるんなら、シェルージェ、国王様、王妃様、大公様たちを絶対に許さないよ!」

ナプトダリオン160世「シェルージェ様、場所を変えましょう。お話はまたそちらで」


ここでシェルージェを見ていたオリンスが、

オリンス(心の中で)「(ああ、怒っているシェルージェちゃんも可愛いなぁ…)」


シェルージェや国王たちは話し合いのためラムゼノスの間(王座の間)を離れた。オリンスも無理やりシェルージェについていこうとしたが周りの兵やクレードたちに止められた。


そして残ったクレードたちの前に先程ネフェルーグやイルビーツたちと話をした騎士団員が、


トトラジェフ「皆様、ネフェルーグ騎士団長は遠征の準備等お仕事がございますので、ここからは私が皆様のご対応をいたしましょう」

クレード「あんたも騎士団の一員か?」

トトラジェフ「ナプトレーマ王国騎士団、副騎士団長の一人、トトラジェフ・ベルモボレスと申します。王国西部の兵たちを束ねております。以後お見知りおきを」

アンシー「トトラジェフ副騎士団長ですね、私はアンシー・ヒズバイドンと申します」

アンシーに続きクレードたちもトトラジェフに軽く自己紹介をした。


トトラジェフ「シェルージェ様の捜索のためネフェルーグ騎士団長が王都を離れていた時、騎士団長に代わり私が王都で兵たちの指揮を執っておりました」


ナハグニ(心の中で)「(そういえば、この間の会議でこのお方の名前が出ていたでござるなあ)」

 「(「王都を離れる私の代わりに、トトラジェフに指揮や防衛を頼む」などと、ネフェルーグ殿がおっしゃっていた…)」


一方オリンスは、

オリンス「シェルージェちゃんが俺の前からいなくなった…シェルージェちゃんが俺の前から…」 ぶつぶつ…

トトラジェフ「あの緑色の鎧を着た方はオリンス殿ですね」

 「ピラミッドでの戦いではご活躍したと聞いているのですが、どうも…」

クレード「まあ元は真面目な奴だったんだがな、シェルージェ様と出会ってからああなってしまった」

トトラジェフ「そうでしたか。ですが私はそちらのオリンス殿、そしてクレード殿を処罰するようネフェルーグ殿から言われております」

 「申し訳ごいませんが、お二人にはこの後刑罰を受けていただきます」

クレード「やはりシェルージェ様捜索の件に関してか?」

トトラジェフ「左様です」


トトラジェフ「クレード殿はシェルージェ様を誘拐した主犯と接触したにもかかわらずそれを報告しなかった件について、オリンス殿は独断でシェルージェ様を四日間連れ回した件についてです」

 「シェルージェ様は無事に保護されたものの、我々騎士団も立場上お二人の行動を見過ごすわけにはいきません」

クレード「まあ仕方ないか。俺も一応は覚悟したんだしな」

トトラジェフ「クレード殿に関しては深く言及しませんが、騎士団の協力者として態度を弁えてほしかったですね。「報告すべきことは報告する」。騎士団員のみならず社会人が上司などにすべき行いです」

 「報告は社会人の常識である「報連相ほうれんそう」の一つです」

 「大事なことであるということはお忘れなく」


クレード「俺の問題は報告しなかったことだとしても、あの男を捕らえず逃がしたことについては別にいいのか?」

 「エネディナープ山塊(※7)で元盗賊団のかしらと接触したとき、その気になれば俺はあの男をその場で捕らえることもできたんだが」

トトラジェフ「確かにその時に誘拐の主犯であるロイズデンを捕らえていれば、騎士団にとっても大手柄でしたでしょうね」

 「ですがロイズデンと接触したのはクレード殿だけではございません。ネフェルーグ騎士団長や他の騎士団員たちもピラミッドの前に現れたあの者を捕られることができなかったのですから、クレード殿にだけあれこれ言いませんよ」


トトラジェフ「それにロイズデンを捕らえ刑罰を与えたとしても、シェルージェ様ならその事に反対していたでしょう」

 「そう考えると簡単にいく話ではありませんので、ロイズデンの身柄確保の件についてはこれ以上…」

クレード「そうか。あまり咎めないでくれたことに感謝するよ」

トトラジェフ「まあ問題があるとすれば、クレード殿よりもオリンス殿でしょうな」


トトラジェフはオリンスの顔を見て、

トトラジェフ「オリンス殿、あなたの行動はクレード殿以上に問題です」

 「本来ならあなたはシェルージェ様を保護した時点ですぐに捜索班に報告し、シェルージェ様を我々騎士団に預けてもらいたかったのです」

 「6月16日にクレード殿から報告があり、オリンス殿はシェルージェ様を発見するや否や、勝手に連れ去ったと聞いております」

 「それから19日までの間、シェルージェ様を連れ去ったあなたを探すのに手間やコストを費やしました」

 「それについてはどのように穴埋めしていただけるのかと?」


オリンス(爽やかな表情で)「トトラジェフさん、俺は悪い行為をしたとはまったく思っていません」

 「むしろシェルージェちゃんは俺と街を巡ったり食事をしたりして楽しんでくれたのです」

 「今回の手間賃はシェルージェちゃんを喜ばせるための接待交際費として処理してください」

トトラジェフ「…」


呆れた言い訳をするオリンスに仲間たちは思わず、

アンシー(小声)「(あんな言い訳、本気で通ると思っているのかしら…)」

ウェンディ(小声)「(押忍。あの人本当に元騎士団員なんッスか?)」

リンカ(小声)「(騎士って市民のお手本にならなきゃならねぇ、名誉ある人たちだべ)」

ホヅミ(小声)「(今のぉオリンスさんじゃあ、ほど遠いですぅ)」

千巌坊(小声)「(なんということだ…今のオリンスは私と初めて出会った時の彼ではない…)」


呆れる仲間たちに対しナハグニだけは、

ナハグニ(心の中で)「(さすがはオリンス殿、愛する女子おなごのためならば、いかなる筋も通そうとするとは)」


ナハグニだけはオリンスの言い訳に納得していたが、言われたトトラジェフはオリンスに、

トトラジェフ(怒った様子で)「オリンス殿、申し訳ごいませんがその弁解は通じませんので、クレード殿と同様この後刑罰を受けていただきます…」

オリンス(爽やかな表情で)「そうですか…ですがお話を聞いても俺は自分が間違っていたなんて微塵も思いませんよ…」

 「全てはシェルージェちゃんのためだったのです」

トトラジェフ「…!!」


アンシー(小声)「(まずいわ、トトラジェフさん、本気で怒りそうよ…)」

クレード(小声)「(分かったよ。俺が対処する)」


クレード「副騎士団長、それで俺たちへの罰は何だ?」

トトラジェフ「皆様はこれからシェルージェ様と共にイビサーレ島へ向かい、島で魔獣たちと戦いをすることになると思いますので、そこまで厳しい罰は与えません。私もネフェルーグ騎士団長からも言われておりますので」

アンシー「それでしたら二人にはどのような刑罰を?」

トトラジェフ「ますは始末書を書いていただきます。その後神殿の地下牢に入っていただきます」

 「尤も出発の準備が終わり次第、牢から釈放いたしますが」


クレード「書類と少しの間牢に入るだけでいいのか?」

 「俺とオリンスの報酬を0にしてくれても別にいいんだぞ」

トトラジェフ「ネフェルーグ騎士団長も最初はそういう案を出していらっしゃいましたが、皆様は旅をしている方々、戦った分などの報酬がなくなれば後々困るかもしれないでしょうからね」

 「クレード殿とオリンス殿がそれで良くても、他の方々にとってご迷惑になるのならそれは申し訳ごいませんので、報酬に関してはきっちりご用意いたしましょう」

アンシー「ありがとうございます…助かります…」

クレード「仲間のために感謝する」


クレードやアンシーたちはトトラジェフに頭を下げた。そして、

トトラジェフ「では、クレード殿、オリンス殿、まずは向こうの部屋で始末書を…」

沖津灘「トトラジェフ殿、待ってくだされ」


今まで黙っていた沖津灘が口を開いた。

沖津灘「トトラジェフ殿、オイもクレード殿たちと同様処罰してほしいたい!」

トトラジェフ「沖津灘殿、そなたに問題行為はなかったと思いますが…」

沖津灘「ナプトレーマのお方たちから見ればそうかもしれんたいが、天村理事長たち大相撲会や遠賀川親方からすれば話は別たい!」

 「オイは本来関脇として先月の夏場所に出場しなければならんかった役力士だったたい!それなんに休場して異国で修行するなど、実に言語道断な行為をしてもうたたい!」

 「そげん問題んあるオイが異国で報酬ば貰って浮かれていては、迷惑ばかけとる親方に対して申し訳ないし、同じ部屋の力士たちにも示しがつかんたい!」

 「トトラジェフ殿!オイにも罰を頼むたい!」


トトラジェフ「いいでしょう、沖津灘殿」

 「そこまでおっしゃるのでしたら、そなたも始末書を書き牢に入っていただきます」

沖津灘「トトラジェフ殿!感謝するたい!」


ウェンディ(小声)「(押忍。沖津灘も律儀ッスね)」

リンカ(小声)「(上位力士として彼なりに振る舞ったんだべなあ)」

千巌坊(小声)「(まあ本人がそう望むのなら、止めはせん…)」

トトラジェフに連れられ、クレード・オリンス・沖津灘の三人は別の部屋で始末書を書き、神殿の地下牢に入った。


そして夜になり、鵺洸丸やススキたちが神殿に戻ってきた。

(※後編へ続きます)

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